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王女ソフィアの野望  作者: kaji
第一章「ストレガ編」
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第六話「クレア大臣。実は○○だった」

 朝起きると城が騒がしかった。騎士や使用人があっちこっちで走り回っている。今までこんなことは無かったのでどうしたのかと思い、部屋の外に出た。

「早くしろ。急がないか!」

「ドーナッツだ。それと大吟醸も忘れるな!」

「なんだこれは」

「クレア大臣がお帰りになるのですよ。そんなことも知らないんですか」

「げ! マキナいつの間に!」

いつの間にかに現れたマキナによるとクレア大臣が帰ってくるらしい。クレア大臣はソフィアの姉にあたる人物で、アレスも実際には会ったことがなかったが、オットーによると実務は事実上クレア大臣がやっているらしい。対外的な交渉はクレア大臣が務めているという話だ。そのため長期で城を離れることがよくあるということだ。

(いったいどんな人物なのだろうか)

「ソフィアの姉らしいからキツイ性格だろう。あまりお近づきにならないほうがいいのかもしれない。今のうちにどこかに身を潜めていたほうがよさそうだ」

ほとぼりが収まるまでどこかで時間を潰そうと、城を抜けだそうと思っていると、マキナに捕まった。

「逃げようとしても無駄ですよ」

アレスはいつの間にかに手錠をかけられていた。

「何の真似だ」

「今アマーロで流行っている手錠プレイですよ。つい私も欲しくてお取り寄せしちゃいました。やはり初めてはアレス様にやってもらおうかと思いまして」

「マキナよ、頼むから気配を消して近づくのはやめろ……」

「私の数少ない楽しみの一つなんです。やめろと言われても止められませんよ。さあ、行きますよ」

マキナに連行され玄関前まで連れて行かれた。そこでようやくアレスはマキナに手錠を外された。どうやら玄関で並んで出迎えなければならないらしい。どこかの妹とは大違いだ。

騎士軍団と使用人総出で並んでお出迎えをする。これだけでクレア大臣のすごさが分かる。ジェラルド国王があんな(着ぐるみ)状態なのだから、クレア大臣が実質のトップと言っても過言ではないからかもしれない。

しばらく待っていると、口ひげがチャームポイントの騎士軍団長アルフレドを伴ってクレア大臣が来た。

「クレア大臣。アルフレド様お帰りなさいませ!」

「お帰りなさいませー! ファー!」

「クレアちゃーん! おかえりー!」

突如として、騒がしくなった。俺の位置からは見えないがどうやら帰ってきたらしい。

「みんなー。ただいまー。おみやげだよー。マルサラ産の岩塩で作った煎餅だよー」

一人一人に何かを手渡しているようだ。アルフレドの髭は見えるのだが、肝心のクレア大臣が見当たらない。みんななぜか、にやついているというか微笑んでいる。

ようやくこちらまで来た。現在のトップがどんな人物か気になっていたので、アレスは身構えていた。

「はい、どうぞ」

声は聞こえるが、姿が見えなかった。全く見当たらない。俺には見えないのだろうか。辺りをキョロキョロと見ましている所を隣にいたマキナに脇腹をつつかれた。

「下です……」

「お、おお! ちっちゃ!」

思わず口に出てしまった。それもそのはずでクレア大臣は5,6歳の幼女にしか見えない体型をしていたのだ。短いブロンドの髪の色はソフィアの姉だということが分かる。黒いローブを翻して、アレスに煎餅を手渡そうとしている。

「貴様、クレア大臣になんという無礼な言葉を」

「構いませんよー。アレス君。はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます。頂戴いたします」

アレスは受け取りやすいように片膝をついて受け取った。その姿を見て、クレア大臣はにっこり笑って次の人に向かった。

「……とんでもない馬鹿ですね。クレア様にちっちゃ……なんて言うなんて」

「……うるさいな」

 マキナが他の人に聞こえないようにぼそっと言ってきた。そういえばなんで俺の名前を知っているんだ。俺のような末端の騎士のことなど知っているはずないのに……。アレスは何か引っかかるものを感じていた。



「全く、あなたはとんでもないわね」

「そのとおりです。本当でしたらギロチンにされても仕方がないですぞ」

 アレスは今日のクレア大臣への暴言の件で、ソフィア様の部屋に呼ばれて、オットーとソフィアから説教を受けていた。アレスは床に正座させられ、今二時間ほど経過していた。もう足の感覚が殆ど無い。ソフィアとオットーの後ろにマキナが控えていて、こちらをニヤニヤと見ていた。

「こんにちはー」

「ね、姉さん? どうしてここに?」

そこになぜかクレア大臣がやってきた。軍団長のアルフレドを伴わないで一人でやってきた。

「アレス君を貸してもらおうかと思って」

「な、なんでこいつを?」

「クレア大臣、せめて独房行きくらいでゆるしていただけませんか?」

「んーん? 違うの。個人的に用があってきたの? それでいいの?」

「いいと言いますか。なんといいますか」

 珍しくソフィア様が言い澱んでいた。

「じゃあいいね。借りていくね」

「あ、あ。ちょ、ちょっと。痛!」

 アレスはいきなり引っ張られたもので、足がひどくしびれていたもので思い切りつんのめってドアに頭を強打していた。

「あ、ごめんー。んじゃ借りて行くねー。んしょ、んしょ」

 クレア大臣は起き上がれないアレスを引きずって自分の私室へと連れて行った。

「クレア大臣は何の御積りなのでしょうね」

「姉さんの考えること何て分かるはずがないじゃないの!」

「何も起きなければいいのですが……」



「それでなぜ俺は連れてこられたんですか?」

「見せたいものがあるのー」

 そう言うと、壁際にあった白い布をクレア大臣は取り払った。そこには一台の機体があった。

「これは?」

「木蓮弐式。マルサラの技術にクレアのオリジナルを加えた、機動兵器なの」

 人型の機械のように見えるが腕は着いていない。その代わりに大きな二本の足と胸にあたる部分に大きなくちばしのようなものが付いている。人と言うよりは鳥のようなデザインだ。

「クレアね。今回マルサラには機械技術を学びに行ったのー。知ってるよね。国王のこと」

「はい。知ってます」

「クレアねー。この国をこの木蘭弐式で守ってみせる。今国外は大変なことになってるの。特にアマーロとロゼッタは毎日小競り合いが続いてる。マルサラもそれを見て、兵器を強化してるの。いつ、ストレガが襲われるか分からない。うちも騎士団は強力だけど、こんな兵器が投入されたら一溜りもないと思うの。だからクレアが国王になるの」

「ソフィア様も恐らくその気だぞ」

「でもあの子は何もできないの。人をひきつける魅力はあるけどもそれだけ、クレアはね。この機械でバルガス大陸の一番になってみせるの」

「そうか……」

「まあ、それは置いておいてー。クレアのこと覚えてない?」

「んー」

「これをかければ分かるかなー?」

黒縁メガネをかける。ソフィアと同じブロンドのくせっけの黒縁メガネ何か見覚えがあるような気がした。

「クレアってあのクレアか!」

そういえば小さい時に騎士学校に送られる前に女の子二人と遊んでいたことがある。たしかにそうだ。そうだったらもう一人はソフィアだったのだろうか。

「そうだよー。クレアだよー。ようやく思い出したね」

よほど嬉しかったのか、クレア大臣はアレスに抱きついた。

「おい。ちょっと」

「姉さんみせたいものって……」

そこに運悪くソフィアとマキナが入ってきた。

「アレスさん、なんと鬼畜な」

「お前ら、わざとやってるだろー!」

「一刻も早く、騎士軍団長とオットーさんにお教えしないと団長―さん。オットーさんー! アレスさんがクレア大臣に手を出しましたよー! さっそくギロチンにしましょう」

マキナが嬉々として騒ぎ出した。

「おい、こら、やめろ!」

「それよりも話しがあるんでしょ」

「クレアが必ず、国王の後を継ぐからね。この機械で」

「私が継ぐわ。姉さんには無理よ」

「なんでよー」

「だって、どう見ても幼女にしか見えないわ。説得力なんてないじゃない。誰が幼女のしゃべっていることを真面目に聞くと思うの」

「そんなの、アイリスの魔法でなんとかなるもん。魔法で大きくしてもらうもん」

「無理よ。いくら姉さんの頭がよくったって人には分相応というものがあるの。姉さんはその器ではないわ」

「じゃあ勝負よ。どちらがふさわしいか。追って勝負方法は伝えるから、首を洗ってまってなさいよー」

 びしっとクレア大臣はソフィアに指を突きつけた。それを見たソフィアはやれやれという様子でクレア大臣に言った。

「姉さん。国王は勝負で決めるものではないわ。前国王の任で決まるものだわ。姉さん、いい機会だから聞くけど、あの慎重なジェラルド国王のことだから、遺言の一つでもあったのではないの?」

「ギク、なんのことー?」

「そうでなければ第一継承権がある姉さんが有利なはずだわ。わざわざ勝負などといわないはず、出しなさい。怒らないから」

ソフィアはまるで子供を叱るお母さんのように言った。ソフィア達は忘れているようだが、第一継承権は着ぐるみの中の人であるガストン王子が持っている。

「そ、そんなの。持ってないもんー」

「に、逃げるなー」

ものすごい速さでクレア大臣は部屋からいなくなった。

「アレス特命よ。クレア大臣に張り付いて遺言を奪取しなさい」

「はい、はいー?」

「いいから早く追いかけなさい!」

「わ、分かった」

 今まで平和だと思っていたが、国外では大変なことになっているようだ。確かに早く国王は決めておいた方がいいだろう。果たしてどちらが国王になったほうがいいだろうか。そして俺はどちらの側に着いたほうがいいだろうか。アレスはクレア大臣を追いかけながらそんなことを考えていた。


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