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王女ソフィアの野望  作者: kaji
第一章「ストレガ編」
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第四話「ジェラルド国王の正体」

次の日、いつもの日課のソフィア様の挨拶が終わった所で、廊下にバナナが見えた。マキナのやつだなと思いつつもアレスは、その罠に引っかかってやるほどお人好しではないので無視してその脇を通ることにした。だが、避けてあるこうとしたその瞬間、足が何かに捉えられて倒れてしまった。

「ぐふぉ!」

見ると左足ががっちりと地面にくっついて離れないのだ。何かよく分からない粘着性のものが俺の靴と廊下の床をくっつけているのだ。

「あれー。何をしているんですかー。アレス様ぁー」

どこか見えない所で隠れていたのかマキナが沸いて出た。ものすごくいやらしい顔をしていた。

「ぐ……この野郎」

「まさかぁ、動けないんですかー」

「馬鹿なことを言うな。敵の気配を感じたので床に耳を当てて、確認していたのだ」

「でしたらもう起き上がったらいいのではないですか」

 そう言いながらマキナはアレスの頭の上に右足を載せて押しつぶしてくる。

(く……この女。後で殺す。絶対に殺す)

「う。うぉっほん」

「あ。国王様おはようございます」

見ると、マキナと戯れているところに国王がやってきたようだ。マキナは慌てて、アレスに載せていた足を避け、バナナを片づけて目礼した。アレスも何とか手を使って起き上がった。

無言で立ち去る国王。相変わらずオーラがある方だ。ただ先日から気になることがあるのだ。国王は着ぐるみを着ているのではないか疑惑だ。あれだけの場面に立ち会って普通に通りすぎるのはおかしい。これはなんとしてでも解明しなくてはならない。

「マキナ。頼みがある」

「なんですか?」

「国王に熱湯をかけてもらえないか?」

「……はあ!?」

「あのチャックが本物だとしたら、おそらく着ぐるみなのかも知れない。熱湯をかければ普通脱ぐだろ」

「着ぐるみじゃなかったら?」

アレスはマキナの肩に手を載せて微笑んだ。

「良くて国外追放。悪くてギロチンかな?」

「あんたがやれ!」

「いや。俺は立場があるだろ。お前なら何とか誤魔化せるだろ。メイドだし」

「その論理展開はおかしい。あんたがやってギロチンにかけられればいいんだ!」

「うるさいぞ! お前ら!」

いつの間にか引きこもりのソフィア様が廊下まで出てきていた。どうやらソフィア様の部屋の前で押し問答していたようだ。ソフィア様はアレスに滅びろと告げるとマキナに近づいていった。

「うるさくて本も読めない。マキナ、ずいぶんとこの騎士と仲良くなったものだな」

「ま……まさか。こんな男、嫌いです」

マキナは顔を真っ赤に染めながら、思いっきりアレスの右足を踏んづけていた。今日に限って何故かマキナは思い切りとんがったピンヒールを履いていた。

「そうか……そうは見えないがな」

ソフィア様はマキナからアレスに視線を移してアレスを舐めるように見つめた。いったい何なんだ。

「ふーん。そう」

と言うとソフィアは部屋に入っていった。

「ソフィア様、誤解してらっしゃいます」

そう言ってマキナも部屋に入っていった。

「どうでもいいけどこれを何とかしてくれ……」

アレスの靴はくっついたままだった。


仕方が無いのでアレスは靴を放置して国王の様子を探ることにした。ブランドの良い靴だったのだが仕方がない。今度、代わりに国費で買うことにすることにした。それはさておいて、国王の部屋の前まで行ったが、部屋の前に門番がいて中に入ることができなかった。何度事情を話しても、「国王様はお休み中です」の一点張りだ。情報が少ないので城の者に国王の情報を聞いて回ることにした。

「国王は部屋の中から出ることは殆どございません」

「ジェラルド様のご病気はかなり悪いらしいわよ」

「ここだけの話だが、ジェラルド様は水虫らしいぞ」

「これはお前だけに教えるが、ご飯をよく噛むと甘く感じるぞ」

皆の話を総合すると、朝の五時頃には決まってジェラルド国王は部屋の外に出ることがわかった。やはり熱湯をかけるしか手は無いようだ。気は進まないがこの国のためにこれはやって置かなければならない。主にマキナが……。


「絶対に嫌です」

「頼むよ。そういうの得意だろ」

「嫌ですし、そもそも変態の言うことは聞けません」

頑ななメイドのマキナさん。この手の女に下手に出るのはどうやら間違えのようだ。アレスは攻め方を変えることにした。

「怖いんだな」

「何が……ですか」

 マキナは一瞬眉毛をピクッとさせ、不機嫌そうな反応を見せた。アレスはこれならいけるとその瞬間確信した。

「お前がその程度のメイドだとは思わなかったよ。お前なら朝飯を食べるようにジェラルド様に熱湯をかけるなど造作無いと思っていたのだが、違ったようだな。リサにでも頼むよ」

「ちょっと待ってください。誰もやらないなんて言ってない」

 リサはマキナと同じメイドで、マキナはリサのことを一方的にライバル視していた。ちなみにリサの方は全く相手にしていない。やはりマキナにはこの方法が一番いいようだ。

「どうした。無理なんてしなくてもいいぞ。俺はリサに頼むからな」

「やってやるよ」

マキナは白のカチューシャを揺らして、腕組みをして上から目線で言った。

「いや、俺が悪かった。お前に頼む前にリサに頼むべきだった。最初にお前に頼んだおれが馬鹿だったよ」

「リサはダメです。あいつは絶対に失敗する。あいつは頭がいいだけでこういうことは私の方が得意です。それと私の方が絶対に可愛いですから」

「だったらアレス様お願いします。私にやらせていただけませんか? とお願いしろ」

「はい。アレス様お願いします。私にやらせていただけませんか? あれ?」

「よーし。そこまで言うならやらせてやろう。明日の朝五時前に熱湯を持ってジェラルド様の部屋の前に集合だ。いいな」

「わかりました。絶対にリサよりも上手くやって見せます」

「さすがだな。マキナ俺が見込んだだけはある。それではな」

 マキナは意気揚々と去っていった。これからのマキナのことを思うと可哀想な気がしたが、国のために少々の犠牲は付き物だとアレスは涙を堪えた。


次の日の五時頃、アレスとマキナは二百度の熱々に沸騰したお湯を用意して廊下の物陰からジェラルド様が通りかかるのを待ち構えていた。五時ジャスト、情報通り部屋からジェラルド様が部屋から出てきた。

「マキナ。今だ。行け」

「たいへんー。足を滑らせてお湯がー」

 マキナはドジっ娘メイドっぷりを見せてわざとらしく足を絡ませ、熱々に沸騰した鉄鍋のお湯を思い切りジェラルド様にぶちまけた。

「うおおおおおおお! あちあちあちあち」

さすがのジェラルド様も熱湯の熱さに耐えられず、後ろのジップを下ろして着ぐるみを脱ぎだした。中から何者かが現れた。

「あちあちあち。なんてことするんですか。マキナさん」

「だだだだ……誰だ。お前」

「あ……ああ。ガストン様ではないですか」

「ガストン様? ああ王子か」

着ぐるみの中の人は留学中のガストン王子だった。ジェラルド国王の疑惑を晴らしてやろうと思ってはいたのだが実際暴いてしまうとどうしたらいいのか分からなくなった。世の中には知らなくてもいいこともある。そういうものだ。

「何をされておるのですか? なんと!」

オットーがいた。今まで見たことのない驚愕した顔をしていた。

「早くガストン王子、着用してください」

「オットーさん。熱いってちょっと待ってください」

 オットーは嫌がるガストン王子に無理やり着ぐるみを着せた。

「我慢してください」

「おい。オットーさん。これはどういうことだ」

ガストン王子は着ぐるみを着ると、完全なジェラルド国王に変身した。いったいどういう仕組になっているのだろうか。そのままオットーはジェラルド国王(偽物)を部屋に押し込むと神妙な顔をしてこちらにやってきた。

「見てしまいましたね」

アレスに向けて構えるオットー。今まで隠していたのか殺気を纏っていた。オットーは上着を脱ぎ捨てるとじわりじわりとこちらに近づいてきた。

「残念ですよ。アレス、あなたは馬鹿だ。馬鹿だとは思っていましたがここまでとは思いませんでしたよ」

「ぐ……」

 教官時代は一度も勝つことができなかったオットーだが、果たしてアレスはこのピンチを乗りきれるだろうか。


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