公開婚約破棄したくせに、2周目では泣きながら求婚してくる騎士様がうるさいです
「俺には運命の相手がいたんだ。君との婚約は破棄する」
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、攻略対象の騎士と婚約していた。
しかし、騎士レオンはヒロインのリリアに攻略されて婚約破棄イベントが起こった。
このイベントが酷い。
「レオン様を幼なじみだからって、婚約者にして縛り付けているなんて、ロザリー様は酷いです!」
「レオン様とリリアは、学園に入学してからずっと想いあっているのに、あなたがいるから遠慮してるのよ」
「これ以上、二人を苦しめるのはやめて! 貴方の事を好きになってくれる人は何処かにいるかもしれないわ」
ヒロインのリリアの取り巻きたちが、学園の食堂で私を責める。
なんだなんだと聴衆が集まってくる。
リリアとレオンは後ろで黙って見てる。
子供の頃に幼馴染だった、悪役令嬢の私、ロザリーと騎士のレオンは、私が積極的にアプローチして婚約した。
「私はレオンが好きだから婚約してあげても良いわよ」
「俺もロザリーの事は嫌いじゃないから、婚約してやってもいいぞ」
レオンだって乗り気で、嫌々婚約させられたわけじゃない。
なのに、私が一方的にレオンを縛りつけているみたいに責められてる。
前世ではヒロインの立場で見ていたけど、その時も悪役令嬢はそんなに悪くないなって印象だった。
普通にレオンが隠れて婚約破棄すればいいだけでは?
特にロザリーが縛り付けたり、婚約破棄に応じないようなセリフや描写もなかったし、レオンがハッキリしてないだけ。
まあ、周りを巻き込んで公衆の面前で悪役令嬢を断罪して、みんなから祝福されてイケメン騎士と結ばれるのは、ヒロイン側にいたら気持ちいいイベントだから、そんなに気にしてなかったけど……。
「俺には運命の相手のリリアがいたんだ。ロザリー、君と婚約は破棄する」
レオンが私との婚約破棄を宣言する。
おおー!ッと周りは大盛り上がり。
「私、ロザリー様って嫌いだったのよ。身分を鼻にかけてるし」
「私も私も、取り巻きなんてやってられないわよね」
私の取り巻き達も離れて行く。
ここから卒業まで、私は学園でずっと一人ぼっちで過ごした。
公開婚約破棄の件で、いつも誰かが私を遠巻きに笑っていた気がする。
レオンはもう私のことなんて視界に入ってないし。
公爵家の悪役令嬢として華やかな人生を送っていたのに、ヒロインに婚約者を取られて、転落。
私は惨めな一生を過ごす…………とはならなかった。
実はこの乙女ゲーにはヒロインだけが持ってる一度だけ使えるアイテムがある。
このアイテムが真エンドの為の鍵になっていて、ヒロインは記憶を持ったまま、時間を巻き戻せる。
子供の頃に時間を巻き戻したヒロインが、自分のせいで死んでしまった真ヒーローを死ななかった事にする。
そして、真ヒーローを加えた2周目の本当の学園生活が始まる——!
と言う感じの、熱くて切ない乙女ゲーなんです。
この乙女ゲームが大好きだったから転生したんだと思う。
出来るなら、ヒロインが良かったけど、騎士のレオンも好きなキャラだから、レオンの婚約者の悪役令嬢になれたのは結構嬉しかったのよね。
まさか、こんな惨めな感じになると思ってなかったから……。
でも、2週目があるなら、せいぜい頑張って下さい、レオン。
◆◇◆
「ロザリー、こちらは侯爵家のレオン様よ。騎士を目指してるんですって。仲良くしてあげてね」
お母様が、お隣の領地の男の子を連れてきて紹介する。
初めて会った時に、私、ロザリーとレオンはどっちも7歳だった。
「嫌です。こんな子とは遊びたくありません」
「俺だって女となんて遊ばない!」
最初の出会いから最悪だった。
前回は私がレオンに一目惚れして付きまとって仲良くなっていったんだけど、今回はそれはない。
「ロザリー、遊ぼうぜ」
『女となんて遊ばない』と言ったレオンが誘いに来る。
転生前と前世の1周目の記憶を持った、2周目の私がこんな子供の遊び出来るわけないでしょう! と思ったら、案外楽しい。
身体が子供だと遊びを求めてしまうみたい。
しかも、2周目なだけあって、私の方が全てにおいて強い!
「……」
剣で負けたレオンが悔しそうにしている。
前回なら、私が負けてばっかりで、『なんでも出来るレオン大好き、婚約して』となっている所だろう。
「女なんかに負けるなんて、ダメね、レオンは」
私が笑うとレオンはますます悔しそうにする。
それでも遊べる友達が近くにいない私たちはずっと一緒に遊んで成長していった
常に私が強かったのは、本当に小さな頃だけで、身体を動かす事はレオンの方が強くなっていった。
勉強も実は2周目だから私が勝てているだけで、レオンは頭も良かった。
13歳になると、レオンは騎士見習いとして修行に出される。
15歳で学園に入学するまでの間、私とも離れ離れだ。
1周目の私は、レオンと婚約していたし、離れるのが辛くて泣いたんだった。
2周目の私は、レオンと婚約もしてないし、一緒に遊ぶ事はあっても近所の子としてだから、泣くほどの悲しみはない。
レオンが別れの挨拶に来ても、「じゃあ」と言って手を振っただけだった。
「待ってくれ、ロザリー」
レオンが真剣な表情で私を見つめると、跪いた。
「俺と、18歳になったら結婚してください」
私に向かってレオンが言う。
え!? レオンから婚約して欲しいなんて……!
でも、
「嫌よ。15歳で学園に行ったら素敵な人がたくさんいるのに、田舎で幼なじみとの結婚なんて決めたくないわ」
レオンはがっかりして背中を丸めて帰って行った。
後姿で、なんだか腕で涙を拭くような仕草をしていた気がする。
1周目の婚約破棄の記憶が少しだけスッキリした。
もっと引っ張って復讐したかったけど、レオンの事はこれで終わらせて良いかな。
学園で本当に素敵な人を探したいし。
私は自分磨きに専念する事にした。
悪役令嬢と外見磨きは相性がすごく良かったみたいで、自分でも驚くほど綺麗になっていった。
休暇で帰ってくるたびにレオンが私の姿に驚いて、赤くなった。
帰りにはまたプロポーズして帰っていく。
学園に入学する前に最後に会った時のレオンはいつもと違っていた。
「ロザリー、俺には君だけだ。学園で他の男に君を渡したくない。俺と結婚してくれ」
レオンに抱きしめられて身動きとれない。
「嫌、やめて!」
強く言って、やっと離れたレオン。
「俺は君にそんなに嫌われる事をしたのか…… ?
傷ついた顔を向けてる。
1周目の事を、忘れてるなんて、ずるい。
「……嫌いじゃないわよ。他に好きな人が出来るかもしないでしょう」
言ってから、まずいと思った。
レオンは私に嫌われてないと知ってニコニコしている。
「俺が一番、ロザリーに相応しいって学園で証明する」
そう言って帰って行った。
1周目であっさり裏切った男の言葉なんて信用してないけど。
証明してくれるなら、レオンと結婚しても良いわね。
そんなに甘い基準であなたを見ていないけど。
◆◇◆
学園に入学すると1周目とは違っていた。
真ヒーローのエドワード王太子が同学年にいるからだ。
1周目では騎士のレオンや攻略対象も人気があったけど、王太子がいるなら、学園の人気は圧倒的に王太子だ。
そして、私はこの乙女ゲームの悪役令嬢。
婚約者がいながら王太子にちょっかいを出してヒロインの邪魔をする嫌な女なのだ。
しかし、今回は婚約者もいないし、悪役令嬢になる気はないの。
王太子よりも、1周目の時に目をつけていた、モブの有力な子たちと仲良くなりた……。
レオンがモブの男の子たちと話している。
私の方をチラッとレオンが見ると、モブたちが驚いてすくみ上がっている。
一体何を言ったの?
「ロザリーは俺よりずっと強いって言ったんだ」
「そ、それは、ずっと小さい頃の事でしょう!」
13歳で騎士見習いになったレオンは、15歳になるまでの2年間で勲章をいくつも貰って、国一番の騎士と名高い。
それより強いって……。
「俺が絶対服従の女だから気をつけろとも言った」
「どーゆー意味なのよそれ!?」
「ロザリー様、国一の騎士様を手懐けるなんて凄いわ」
「公爵家令嬢なのに努力を怠らず、誰よりもお美しいし、尊敬します」
1周目で私を見捨て取り巻きたちがやってくる。
レオンの言葉がキッカケで、私はまた悪役令嬢の立ち位置にいるみたい……。
「ロザリー、今日も綺麗だね」
エドワード王太子が話しかけてくる。
悪役令嬢になってしまって自動的にゲーム進行の為のイベントに巻き込まれてるんだ。
ヒロインが王太子の攻略をしていないと自動的に悪役令嬢との仲が深まって、最終的に結ばれてしまう。
悪役令嬢を辞めていた入学式でのイベントはスキップ出来ていたのに、悪役令嬢復帰でイベントに逆らおうとしても身体が勝手に動く。
「エドワード様、今日はお弁当を作って来ましたの。一緒に食べましょう」
今朝は眠かったのにこのイベントの為に、無理矢理起こされて身体が勝手にお弁当を作っていた。
「ロザリー、なんで王太子と……」
レオンが私を悲しそうに見てる。
いや、あなたが私を悪役令嬢に復帰させたせいなんだけど……!
「レオンにもお弁当あげるわ」
途端にレオンの目が輝いた。
べ、別にレオンの為に作ったんじゃなくて、イベントに強制されるのは嫌だから、逆らってみただけなんだから!
「か、勘違いしないでよね! 仕方なくよ」
「わかった」
って、私を見つめる瞳がキラキラで、完全に勘違いしてる!
学園内の庭園のテーブルと椅子に座ってエドワードとお弁当を食べる。
「エドワード様、お口の周りにお弁当がついていますわ」
私はエドワード様の口に指を当ててお弁当を取ると自分の口の中に入れて食べた。
な、何やってるの私は!?
イベントの強制力で私の行動が大胆になってる!
これをヒロインが目撃して嫉妬するイベントなんだけど……見回すとヒロインは知的な攻略対象と一緒にいた。
え? 真ルートでそっち攻略するつもりなの?
ヒロインが来ないんじゃ、私がこのまま王太子ルートなんだけど……。
王太子を見るとニコニコと私を見ている。
ドキッとして、赤くなってしまう。
王太子はカッコいいし、相手として不満があるわけじゃ……。
モブルートがなくなったし王太子でいいかな……。
「グスン」
涙を飲む音が聞こえた。
何故か私とエドワード王太子と同じテーブルに座っているレオンが泣いていた。
「ロザリー、なんで王太子とそんなに仲がいいんだ」
「私にはレオンがここにいるほうが不思議なんだけど?」
私が悪役令嬢に復帰してゲームのイベントを強制されるようになったのとは別に、レオンは私の婚約者というゲームの役割を降りて、自由に動けるようになっている。
「あ、ロザリーにも、お弁当!」
そう言ってレオンは私に手を伸ばすと、顔を抑えて口で私の口の周りをペロっと舐めた。
「な、な、な……!」
私が何も言えずにいると、レオンは泣いていたのが嘘みたいに、満足そうに笑った。
「こっちにもついているよ、ロザリー」
と、エドワードも私の口の周りをペロっと舐めた。
え!? えええええ!!
ゲームのイベントにない行動を……というか、私、そんな口の周りベタベタだったの!?
恥ずかしい……。
◆◇◆
お弁当イベントの終わりに、レオンが毎日お弁当を作ってくれと言う。
「ふざけるな!」といいたかったけど、エドワード王太子にも頼まれてしまったので、毎朝5時起きで、お弁当を作る。
私って悪役令嬢だったのでは?
いつもの日課になった庭園でのエドワードとのお弁当タイム。
何故か泣いているレオンもいた。
「エドワード様のついでに作ったわよ」
毎回そう言ってレオンの分のお弁当を渡すのが気に入らないらしい。
だって、レオンの為に作ってるなんて言ったら調子に乗るでしょう!
「あ、俺の好きな唐揚げが入ってる!」
レオンはもう、それだけで嬉しそう笑ってるし。
朝から唐揚げを作るのがどれだけ大変か分かってるの?
「レオン! エドワード様のために作ったんだから、勘違いしないでよね!」
「ロザリー、俺唐揚げ苦手なんだ」
エドワード様が悲しそうに唐揚げを見る。
「じゃあ、俺が貰う」
レオンが唐揚げを食べた。
……。
今日は学園の剣技大会の日だ。
優勝者には学園一の令嬢——つまり、私から頬へのキスが贈られる。
でも、実は強制イベントで、私が優勝したエドワードの唇にキスして、ヒロインからのヘイトを稼ぐ為のものだ。
しかし、ヒロインは、早々に敗退した知的な攻略対象とイチャイチャしてこっちを見ていない。
見られていないのに、私はゲームの強制力でエドワードにキスしてしまうんだろう。
エドワードが相手で不満はないけど、強制されてるキスするなんて……。
生まれて初めて……1周目だってしてないのに……。
「メソメソ」
私が悩んでいると後ろで泣く声が聞こえた。
またお前か、レオン。
レオンは国一番の騎士だから、剣技大会に参加したら優勝するに決まってる。
だから、参加資格なしで、何故か私の後ろにいる。
「ロザリーのファーストキスが……メソメソ」
「ほっぺにキスするだけよ!」
多分、唇にキスすることになるけど。
「じゃあ、俺のほっぺにキスして」
「嫌よ。何がじゃあよ」
そうこうしているうちにエドワードが優勝した
私を見て、エドワードがウィンクする
顔が真っ赤に染まって、ドキドキが止まらない。
メソメソ。
このままじゃ絶対にエドワードの唇にキスしてしまう。
「ちょっと立ちなさい、レオン」
メソメソしてるレオンを立たせる。
レオンはエドワードより背が高いけど大体同じ。
ほっぺに狙いを定めてキスする。
よし! これで感覚が分かった。
ゲームの強制力なんかに負けずに、エドワードのほっぺにキスするわ!
真っ赤になってるレオンを置いて、優勝者の表彰台のエドワードに向かって歩き出す。
みんなが注目する中私はエドワードのほっぺを目指して顔を動かすけど、エドワードの顔が動いて、私の唇に先にエドワードの唇が……!
もう、軌道修正は無理!
覚悟を決め目をつぶったら、エドワードの顔があるべき場所を通りすぎて、エドワードの胸に私の顔があたった。
何があったのかと見上げると、エドワードが別の人と唇を重ねるキスをしていた。
——レオンとエドワードがキスしてる。
二人の唇が離れると、エドワードが唖然としている。
「国一番の俺とのキスの方が価値がある!」
レオンが言うけど、理屈が通っているようで……いや、通ってない!
全くの意味不明!
「何をするんだ君は」
エドワードが冷静に突っ込む。
「わああああああ!」
「きゃあああああ!」
何を言っても観客の収集がつかなかった。
「王太子と騎士が毎日一緒にお弁当を食べているのを見ますわ」
「ええ! お二人ってそう言う仲でしたの!?」
令嬢たちが大興奮である。
お弁当を作っている人物の事など誰も気にしてない。
パチパチ
「おめでとうございます、エドワード様、レオン」
私は無の境地で二人を祝福した。
私は剣術大会の後でレオンに人気のない場所に連れて来られた。
ヒロインが一人で歩いているのが見えた。
「ロザリーとエドワードのキスが阻止できて良かった」
自分はエドワードとキスしておいて、レオンがホッとしている。
「男同士はノーカウントだから、これが、俺とロザリーとの最初のキス……」
レオン唇が私に近づいてくる。
私は手で防ぐ。
「ノーカウントのわけがありません。男同士でキスした唇を私に近でけないで」
◆◇◆
俺はレオン、国一番の騎士だ。
愛するロザリーから毎日のお弁当を作っもらう事に成功した。
エドワード王太子の分も一緒にだが。
「きゃー! またエドワード王太子と騎士レオン様が一緒にお弁当を食べているわ!」
何故か周りの令嬢がうるさい。
「……すまない、ロザリー。もう君のお弁当は食べられない」
「エドワード、どうしてだ? ロザリーの弁当はこんなに美味いのに!」
「味の問題じゃないんだ、レオン!」
「じゃあ、なんの問題だ」
「……愛かな……。俺には、ロザリーへの愛だけで、この状況は耐えられない」
そう言うとエドワードは俺たちと一緒のテーブルから立ち上がる。
「さよなら、ロザリー、愛していた……待て!」
カッコつけて、エドワードが去って行こうとして、立ち止まる。
「何故、君がここにいる、レオン!? 君がここからいなくなれば、周りの令嬢たちは静かになるにではないか!?」
やっと気づいたか?
「俺はロザリーを愛しているんだ、王太子を置いて、ここから去るわけにはいかない」
王太子は驚愕している。
「ロザリーとここで愛を育んでいたのは俺だ、レオン」
「ロザリーと俺は幼馴染だ、もっと前から愛を育んでいる。ここで王太子と愛を育んでいたのは俺だろ? キスまでした!」
「きゃー」と俺たちのやり取りに聞き耳を立てていた令嬢たちから声漏れた。
「や、やめろ、レイン」
エドワードはこれだけでダメージを受けている。
「どっちがこの場所のいていいのか、ロザリーに決めて貰おう」
ズキッ、胸が痛む。
エドワードをいたたまれないままにしておければ俺に勝ち目があったのに……!
「……それはダメだ……ロザリーが選ぶなら、きっとエドワード、君だ。俺は『男同士でキスした唇を私に近でけないで』って言われたから……って、それはエドワードも同じか」
「蒸し返すなよ!」
◆◇◆
「ロザリー、俺とレオンどっちを取る」
エドワードが真剣な面持ちで私を見つめている。
レオンも勝たずを飲んで私bの動向を見守る。
無の境地で二人のやり取りを見ていた私は、二人の真剣さに正気に戻った。
しかし、無の境地でボーっと見ている限りは、こんなシリアスな顔になるやり取りしてなかったと思う。
でも、聞かれてるし答えるか。
「当然、エドワードです」
エドワードは花が咲いたような笑顔で喜ぶ。
レオンは顔を歪めて今にも泣きそう。
「いやー! 二人を引き裂かないでー!」と令嬢たちが叫ぶ。
1周目での公開婚約破棄はこんな物じゃなかったわ。
レオンは黙って立ち上がり、私に背を向けて去っていく。
グスン
腕で涙を拭って……。
私はレオンの腕を掴んでいた。
レオンが驚いて私を見た。
「レオン、あなた、そんなに泣き虫じゃなかっだはず。なんで泣いてるの……?」
1周目でレオンが泣いているところなんて
見た事なかった。
なのに、2周目では泣いてる。
「……俺は、君と婚約していた筈なんだ……。夢の中で、君と婚約していたのに、大勢の前に引き摺り出されて、心にもない事を言って婚約破棄させられた。そして、俺は俺じゃなくなって君に近づけなかった」
それって……1周目の……。
「自分の意思と関係なく動く身体が怖くて、勝てなかった事が悔しくて。君が俺から離れていくと、後悔で胸がいっぱいになるんだ!」
レオンは、忘れてない……!
1周目の婚約破棄も自分の意思じゃなくて、後悔して、やり直そうとしていたんだ。
『国一番の俺とのキスの方が価値がある!』
そして、ゲームの強制力に勝った——!
エドワードとレオンのキス——あれが、ゲームの終わりだったんだ!
私はヒロインが今日は知的な攻略対象と一緒じゃなかった事を思い出す。
私が目をつけていた有力モブと一緒にいた。
ヒロインも、ゲームシステムから自由になったんだ。
にしても、すぐに有力モブに行くとは……何者!?
「ロザリー……君は、やっぱりレオンを選ぶのか」
エドワードが寂しそうに笑った。
私、エドワードを選ぶって言ったばかりなのに……。
レオンの腕を掴んだ私の手が離れない。
レオンも驚いて私を見てる。
「気が変わったらいつでも俺のところに来て」
エドワードが私の唇にキスして去っていく。
「いやー! なにあの女ー!」令嬢たちがうるさい。
「あのヤロー! 俺のファーストキスだけじゃなく、ロザリーのにまで!」
レオンは錯乱している。
でも、ちゃんと私に向き合うと真剣な表情になる。
「ロザリー、今度こそ、俺と結婚してくれ」
「はい、レオン」
令嬢たちが叫び声を上げる中で、レオンが私にキスをした。
「きゃー! エドワード様との間接キスよ」と盛り上がってる。
いや、私はなんなの?
長い長いキスの後で、レオンの唇が離れると、私の顔に雫が落ちた。
レオンが泣いていた。
「なんで、泣いてるの……?」
「し、幸せすぎて……」
「ぷっ、なんでよ!」
真っ赤になってるレオンに釣られて私も赤くなる。
泣くのが癖になったレオンだけど、私と一緒にずっと笑っていようね。




