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「頼むからクビにしてくれ!」と言いながら地獄の門を守っていたら、いつの間にか【三界の唯一神】として崇められていた件  作者: 蒼井テンマ
第1章【辺境編】

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第3話:掃除、あるいは「世界の再構築」

弟子ができた。

 ……と言えば聞こえはいいが、実態は「超高性能な監視カメラ」が横に張り付いているようなものだ。


(……気まずい。気まずすぎるよぉおおお!)


 ナラクの門の前。僕が昨日投げ捨てたスプーン(呪いのアイテム疑惑)が作ったクレーターの縁で、聖騎士クラリスが正座して僕を見つめている。

 その目はキラキラを通り越して、もはや「神の啓示」を待つ信徒のそれだ。


「師匠。本日の御講話、あるいは御修行は何を?」


(修行なんてないよ! 僕はただ、昨日壊しちゃった門の周りを片付けて、少しでも『普通っぽさ』を取り戻したいだけなんだよ!)


 放置しておくと、また「スプーン一本で世界を滅ぼす男」とか変な噂を流されかねない。

 僕はそこら辺に落ちていた、折れた木の枝を拾い上げた。これで散らばった石ころを掃いて、掃除でもしようと思ったのだ。


「……これだ(※訳:暇だから掃除するよ。君も手伝わないなら向こうに行ってて)」


 僕は無言で、木の枝を地面に滑らせた。

 ところが。


「っ……!? な、なんという……!!」


 クラリスが弾かれたように立ち上がった。

 彼女の目には、僕が適当に枝を動かす軌跡が、**【大気中の魔素を整流し、因果の歪みを補正する神聖な儀式】**に見えているらしい。


「枝の一振りが、空間のちりだけでなく、残留した瘴気すらも『浄化』していく……。

 ただの掃除に見えて、その実は世界の理を再構築する演舞。

 しかも、あえて折れた枝を使うことで、自身の強大な魔力を抑制し、大地を傷つけぬよう配慮されている……。なんという慈悲、なんという精密な制御だ!」


(違うよ! ほうきがないから枝を使ってるだけだよ!

 あと、さっきから枝が引っかかって掃除しにくいんだよ!)


 僕はイライラして、少し強めに枝を振り抜いた。

 シュバッ、と空気を切る音が響く。


 その瞬間、僕の「無自覚な魔力」が枝の先端に集中し、前方数キロメートルにわたって漂っていた薄暗い雲を、一気に真っ二つに割り開いた。

 雲の切れ間から、さんさんと降り注ぐ黄金色の太陽光。


「あ……(※訳:あ、眩しい)」


「こ、これは……『天を掃いた』のですか!?

 淀んだ空を嫌い、太陽を呼び戻した……。師匠、あなたは門番どころか、この地の天候すらも支配下においているというのですか……っ!」


(違う! 偶然だよ! たまたま雲が切れるタイミングだっただけだよぉお!)


 クラリスはガタガタと震えながら、その場に跪いた。

 もはや感動を通り越して、恐怖すら感じているようだ。


 そんな時だった。

 ナラクの門の奥、まだ瓦礫が残る影の中から、一つの影が揺らめいた。


「……見ツケタゾ。我が同胞を屠った人間め……」


 現れたのは、昨日のグレーター・デーモンよりも遥かに上位の存在——魔王軍四天王の一人、リルの眷属である「影の暗殺者」だった。

 彼は完全に気配を消し、僕の死角からその毒刃を突き出そうとしていた。


(ひ、ひいぃっ!? 誰!? 怖い! 真っ黒な人がこっち見てる!)


 パニックになった僕は、手に持っていた枝を、条件反射で影の方へ突き出した。

 「こっちに来るな!」という、ただの拒絶のポーズだ。


「は、入るな……っ(※訳:怖いから近寄らないで!)」


 しかし、その「突き」は、僕の恐怖に呼応して物理法則を無視した。

 枝の先から放たれた衝撃波は、音の壁を突き破り、影の暗殺者が展開していた「不可視の結界」をガラス細工のように粉砕。

 そのまま暗殺者の胸を貫き……いや、貫くどころか、彼の存在そのものを「概念」ごと消し飛ばした。


「ギ、ギャアアア……ッ!? バ、バカナ……ただの、枝デ……ッ!」


 暗殺者は断末魔を上げる暇もなく、塵となって消えた。

 後に残ったのは、僕が呆然と突き出したままの、先が少し欠けた木の枝だけだ。


「……し、師匠」


 クラリスの声が、背後から聞こえる。


「今の……見えませんでした。

 殺意すら抱かず、呼吸をするように『影の深淵』を穿つ……。

 『入るな』——その一言は、魔族に対する絶対的な禁令タブー

 この門から先は、あなたの許しなくば、神ですら立ち入ることは叶わない……。そういう意味ですね?」


(違う! 僕はただ、不法侵入者に『入らないで』って言っただけだよ!

 あと、この枝、折れちゃったんだけど! 掃除の続きどうするの!?)


 僕は絶望のあまり、折れた枝をポイッと捨てた。

 その枝が地面に刺さった瞬間、そこから凄まじい生命力が溢れ出し、一瞬にして周囲に「世界樹の芽」のような巨大な植物が芽吹き、美しい花園を作り上げたのは……もう、見ないふりをした。


「……ふぅ。お茶にしよう(※訳:現実逃避したい。もう寝たい)」


「はっ! 宇宙の真理を練り込んだ至高の茶ですね! すぐに準備いたします!」


(ただのティーバッグだよぉおおおお!)


 こうして、僕の「掃除」は、伝説の「聖域化」として歴史に刻まれることになった。

 王都ではすでに、『辺境に、一振りで天を割り、一言で魔を滅ぼす隠者が現れた』という噂が、尾ひれを付けて爆走しているとも知らずに。

今回の「勘違い」はいかがでしたか?

ただの枝が世界を救ってしまうゼノンの不憫さに、クスッとしていただけたら嬉しいです。


物語はここからさらに加速します!

次話、ついに魔王軍四天王本人が、ゼノンの「お茶」の香りに誘われて(?)襲来!?


続きが気になる方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いします!

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