第22話:魔力ゼロの少女、あるいは「深淵の指導」
……いた! ついに見つけたぞ!
(なんなの、この学園のレベルは! 教官から生徒まで、僕がちょっと水晶に触っただけで『神の再来だ』とか言って跪いちゃって……。
でも、あの子だけは違う。訓練場の隅っこで、一本の木刀を抱えて俯いているあの子……。
魔力測定の結果は『ゼロ』。そう、彼女こそ僕が求めていた『真の同志』、Fランクの中のFランク、シルフィちゃんだ!)
僕は歓喜に震えていた。
彼女と一緒にいれば、僕も「やっぱり魔力なんて無いんだ」という空気に染まれるはずだ。
僕は度を越して歪んだ眼鏡をクイッと押し上げ、威圧感を与えないよう、精一杯の「優しい微笑み」を浮かべて彼女に近づいた。
(よし、まずは優しく声をかけて、無能仲間として親睦を深めよう!)
「……君も、ゼロ、なんだね(※訳:僕も同じだよ! 一緒に落ちこぼれとして頑張ろう!)」
だが、僕の「優しい微笑み」は、パニックと緊張で顔の筋肉が引きつった結果、**【獲物の急所を冷徹に見定める捕食者の薄笑い】**へと変貌していた。
「っ……!? あ、あ……」
シルフィは、僕の眼鏡の奥にある「虚無の瞳」に見つめられ、蛇に睨まれた蛙のように硬直した。
(……な、何なのこの人は!?
『ゼロなんだね』——その一言が、私の魂の奥底まで突き刺さってくる。
まるで、私が隠していた『魔力回路の欠陥』を、一瞬でスキャンされたかのような……。
この人、ただの特待生じゃない。立ち姿だけで、世界の重力を自分の味方につけている……っ!)
「……悲しむことはないよ。……そのままの君で、いいんだ(※訳:魔力なんて無くても、僕と一緒に目立たず生きようよ)」
僕は彼女を元気づけようと、そっとその細い肩に手を置いた。
「ドンマイ」という軽い励ましのつもりだった。
しかし、僕の手が触れた瞬間。
僕の指先から、彼女の「空っぽの魔力回路」を満たして余りある、高純度の神気が奔流となって流れ込んだ。
ドクンッ!!
「……あ、ああああああああっ!!」
シルフィの全身から、かつてないほどの黄金色のオーラが噴き出した。
彼女の魔力ゼロは、実は「器が大きすぎて、通常の魔力では満たせなかった」だけだったのだが、僕の過剰な魔力がそこに引火。
彼女が持っていたボロい木刀が、瞬時に神話級の輝きを放つ【神樹の剣】へと進化してしまった。
(わあああああ!? 何!?
シルフィちゃんがスーパーサイヤ人みたいに光り出した!?
また僕、何か変なスイッチ押しちゃった!? 怖い! 眩しいぃいい!)
僕はパニックになり、思わず「パンッ!」と景気づけに(※実際は自分の頬を叩こうとして外した)手を叩いた。
――ズドォォォォォォン!!
僕の拍手の衝撃波が、訓練場に展開されていた「対魔法障壁」を紙クズのように引き裂き、空に渦巻いていた「教育用の訓練雲」を木っ端微塵に吹き飛ばした。
「……え(※訳:拍手しただけなのに、壁が壊れた……)」
静まり返る訓練場。
シルフィは、自分の手に宿る圧倒的な力を凝視し、そして僕の前に膝を突いた。
「……わかりました。ゼノン様。
貴方は、私の『空っぽの器』を否定せず、あえてそこに『真の力』を注ぎ込んでくださった。
『そのままの君(の器)でいい』——。それは、私に『神の器としての自覚を持て』という試練だったのですね!」
(違う、違うんだってばぁああ!
僕はただ、君と一緒にお茶を飲みながら『魔力なくて辛いねー』って愚痴りたかっただけなんだよ!)
それを見ていたグレイ教官が、またしても涙を流して手帳にメモを取る。
「……見ろ、あの教育的指導を。
触れるだけで生徒の潜在能力を極限まで引き出し、拍手一つで学園の古い殻(障壁)を打ち破る。
ゼノン君……君はもはや学生ではない。この学園を、いや、この世界の教育を再定義する『至高の導師』だぁあああ!」
(……ひっ。導師!?
また、また肩書きが増えたぁああああ!)
僕は絶望のあまり、シルフィが覚醒させた黄金の光に当てられ、ふらふらと保健室へと逃げ出した。
その歩みは、周囲には「未熟な弟子を導き終え、悠然と去る賢者の背中」にしか見えなかった。
今回の「勘違い」はいかがでしたか?
蒼井テンマです。
「励ましの肩ポン」が「究極のドーピング」に。
ゼノン様の「類は友を呼ぶ(※類を神に変える)」体質は、ついに学園の落ちこぼれさえも勇者候補に変えてしまいました。
さて、シルフィという「最強の弟子(自称)」を抱えてしまったゼノン様。
次回、学園の「実技対抗戦」が勃発!
ゼノン様が『僕は審判(裏方)でいいです』と言ったのが、
『お前たち全員の生死を私が判定してやる』と解釈され、戦場が地獄と化す……!?
「ゼノン様、無能仲間に裏切られるの早すぎ(笑)」と思った方は、
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皆さんの評価が、ゼノン様の「保健室への逃走」を成功させます(※たぶん無理)。




