第21話:潜入、最底辺学園。あるいは「伝説の転校生」
……よし。完璧な計画だ。
(なんなの、あの豪華すぎる神殿生活は! 朝から晩まで女神様に囲まれて、一挙手一投足を『神託』だと言われて拝まれる……。
このままじゃストレスで僕の魂が消滅しちゃうよ!
だから僕は、主神アストライアに『ちょっと下界の様子を視察(=家出)してくる』とだけ告げて、この『落ちこぼれが集まる「Fランク」アステリア魔法学園』に、身分を隠して入学することにしたんだ!)
僕は今、変装のために市場で買った「度の強すぎる安物の眼鏡」をかけ、お古の制服に身を包んで、学園の正門の前に立っていた。
この眼鏡、視界がぐにゃぐにゃして気持ち悪いけど、これなら誰も僕を「世界皇帝ゼノン」だとは思うまい。
(ふふふ……。この学園は魔力測定で「F」を出した者しか入れない、いわば無能の聖域!
ここで「やっぱり僕は無能でした」という実績を積み上げれば、きっと神々も僕を放っておいてくれるはずだ!)
僕は鼻歌まじりに(※実際は緊張でヒクヒクしながら)、入学試験会場である訓練場へと向かった。
最初の試験は、定番の「魔力測定」だ。
「次、ゼノン・クライン(偽名)君」
試験官である鬼教官グレイが、鋭い目付きで僕を呼ぶ。
目の前には、魔力を注ぐと光り輝く「測定用の水晶」が置かれていた。
(よし、ここが勝負だ。魔力を一滴も出さないように、必死にこらえよう。
測定器が沈黙すれば、僕は晴れて『魔力ゼロの落ちこぼれ』として学園生活をスタートできる!)
僕は震える指先を、そっと水晶に触れさせた。
「魔力、出るな。出るなよ……!」と念じながら。
ところが。
僕が魔力を「出さないように抑え込んだ」エネルギーが、逆に水晶の内部で超高密度の「虚無」を形成してしまった。
パキィィィィィィン!!
水晶が光るどころか、その周囲の空間ごと真っ黒な闇に飲み込まれ、測定器が粉々に砕け散った。
「……え(※訳:あ、壊しちゃった。僕の触り方が悪かったのかな?)」
周囲の受験生が、そしてグレイ教官が、凍りついたように静まり返った。
「……なっ!? 測定器が、光ることすら許されず、存在を消されただと……!?」
グレイ教官が、ガタガタと震えながら僕の眼鏡(※実は真理を暴く聖遺物だった)を見つめた。
(……この男、何者だ?
今の動作……魔力を『出さなかった』のではない。
あまりに高次元な魔力を一瞬で『逆相殺』させ、測定器という概念そのものを否定したのか!?
しかも、あのみすぼらしい眼鏡……。あれはあえて視界を歪ませ、自らの『神の眼』を封印するための拘束具か……っ!)
(ひいいっ! 教官がすっごい怖い顔でこっち見てる!
やっぱり、備品を壊したから怒ってるんだ! 弁償だよ、絶対高額だよぉお!)
僕はパニックになり、慌てて壊れた測定器の残骸を「無かったこと」にしようと、手でパパッと掃いた。
その際、僕の指先から漏れた「浄化の魔力」が、砕け散った水晶を瞬時に再構築し、元の十倍の大きさと輝きを持つ「超弩級魔水晶」へと進化させてしまった。
「あ……(※訳:直った……?)」
「……バカな。破壊と創造を、まばたき一つで。
……そうか。この学園のレベルでは、彼を測ることすら失礼だったというのか……っ!」
グレイ教官はその場に直立不動で敬礼した。
「ゼノン・クライン君! 貴殿の……貴殿の『底知れぬ無力(という名の全能)』、しかと見届けた!
合格だ! 文句なしに、本学園史上……いや、全歴史上空前絶後の、特待生として迎えよう!!」
(……はい? 特待生?
一番下のクラスに入りたかったのに、なんで一番上の扱いになってるの!?
しかも教官、なんでそんなに嬉しそうに涙を流してるんだよぉおお!)
僕は絶望のあまり、視界の歪む眼鏡をクイッと直した。
その仕草が、周囲には「不敵な笑みを浮かべながら、学園のルールを書き換えた覇者の姿」にしか見えなかったのである。
「……はぁ。お腹痛い(※訳:今すぐ家に帰って寝たい)」
「——っ! 『この学園の腐敗(腹痛)を、私自らが治療してやろう』……!
なんという崇高な志だぁあああ!!」
僕の「お腹痛い」という悲痛な叫びは、またしても「学園改革の宣戦布告」として、全校生徒の魂に刻まれることになった。
第21話をお読みいただき、ありがとうございます。
蒼井テンマです。
「魔力を抑え込みすぎて測定器を消滅させる」
これぞ、ゼノン様の「無能になれない」呪いの第3章スタートです。
さて、特待生(という名の、全校生徒の監視対象)となってしまったゼノン様。
次回、学園で一番のいじめられっ子・シルフィを助けようとした動作が、
『伝説の極大魔法』を「ハエ叩き」のように扱っていると勘違いされ……!?
「ゼノン様、眼鏡をかけてもオーラが隠せてないね(笑)」と思った方は、
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皆さんの評価が、ゼノン様の「変装用眼鏡」の度数をさらに上げます!




