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「頼むからクビにしてくれ!」と言いながら地獄の門を守っていたら、いつの間にか【三界の唯一神】として崇められていた件  作者: 蒼井テンマ
第1章【辺境編】

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第2話:聖騎士、来襲。あるいは「深淵」との邂逅

あの日、石を投げて地獄の門を半壊させてから三日。

 僕、ゼノン・ギリアムの生活は一変……しなかった。

 相変わらず『ナラクの門』の番人として、不気味な紫色の空を眺めながら、支給品の硬いパンを齧る日々だ。


(……おかしい。あんな大爆発を起こしたんだ。普通なら軍法会議ものか、少なくとも『危ないから帰れ』って言われるはずなのに)


 なのに、やってくる補給部隊の連中は、僕と目が合うなり「ヒィッ!」と悲鳴を上げて地面に伏せ、物資を投げ出すように置いて逃げ帰っていく。

 おかげで、僕の足元には高級な干し肉や、頼んでもいない最高級の紅茶が山積みだ。


「……はぁ。毒でも入ってるのかな、これ(※訳:美味しそうだけど怖いな)」


 僕が深いため息をついた、その時だった。

 地平線の彼方から、一筋の閃光がこちらへ向かって突き進んでくるのが見えた。

 それは凄まじい速度で距離を詰め、僕の目の前で急停止する。


 舞い上がる土煙の中から現れたのは、白銀の鎧に身を包んだ、眩いばかりの美少女だった。

 腰には国宝級と思われる聖剣を帯び、その瞳には「正義」と「情熱」がこれでもかと詰め込まれている。


(う、わ……。めちゃくちゃ強そうな騎士様だ。

 あ、わかったぞ。あんな爆発を起こした僕を、不審者として捕まえに来たんだ! 終わった、僕のニート生活が始まる前に終わった!)


「貴殿が、ゼノン・ギリアム卿か」


 彼女の声は、鈴を転がすような美しさの中に、鋼のような鋭さを持っていた。


(ひいいっ! 名前呼ばれた! 逃げなきゃ……でも、この人の前で背中を見せたら一瞬で斬られる!)


 僕は恐怖のあまり、持っていたスプーンを握りしめたまま、彫像のように固まった。

 逃げ道を探そうと、右に左にと視線を彷徨わせるが、それが彼女には「隙のない観察」に見えたらしい。


「……素晴らしい。私の接近を察知しながら、微動だにせず、食事スプーンを優先するその余裕。

 私は王国聖騎士団長、クラリス・ヴァン・ブレイブ。貴殿の『神業』を聞き、不遜ながらその実力を確かめに参った!」


(確かめる!? 殺されるってこと!?

 待って、今僕の手にあるのは武器じゃなくてスプーンなんだよ!

 銀メッキの、百円均一レベルのスプーンなんだよ!)


 僕は必死に「戦う意思はありません」と伝えようとして、プルプルと震える手でスプーンを彼女に突き出した。


「……え、い(※訳:これあげるから、帰ってください! お願い!)」


 恐怖で声が消え入り、ただの吐息のような呟きになった。

 だが、クラリスの目には、それが「究極の挑発」に映った。


「なっ……!? 『スプーン一本で十分だ』と……!?

 剣を抜く価値すらなし。私を、赤子扱いか……!」


 彼女の顔が屈辱と興奮で赤く染まる。

 クラリスは猛然と聖剣を抜き放ち、目にも止まらぬ速さで踏み込んできた。


「はぁああああっ!」


(うわぁああああ! 来たぁあああ!

 死ぬ死ぬ死ぬ! せめて、せめて顔だけは守らないと!)


 僕は目を瞑り、スプーンを持った手をめちゃくちゃに振り回した。

 本人的には、顔の前に来たアブを追い払う程度の、無様な足掻きだったのだが。


 ――ガギィィィィィィィン!!


 鼓膜を震わせる金属音。

 恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景があった。


 クラリスが渾身の力で振り下ろした聖剣を、僕のスプーンが——いや、スプーンから漏れ出た「僕の魔力の塊」が、完璧に受け止めていたのだ。

 しかも、衝撃で聖剣の刃にはヒビが入っている。


「……嘘、だろ?」


(僕のスプーンが、聖剣を壊した……!?

 やっぱりこれ、呪いのアイテムだったの!? 怖い! 捨てたい!)


 あまりの恐怖に、僕はスプーンを地面に投げ捨てた。

 その瞬間、スプーンに残っていた余剰魔力が地面に伝わり、クラリスの足元の地面が半径十メートルにわたって陥没した。


「くっ、あ……っ!」


 クラリスは膝を突き、折れかけた剣を支えにして、戦慄の表情で僕を見上げた。


「……なんという、底知れぬ魔力。

 武器を捨てたのではない……。スプーンに込めた一撃すら、私には『重すぎた』ということか。

 ……完敗だ。これほどの実力差、生まれて初めて経験した」


(いや、違うんだって! 手が滑っただけなんだよ!

 というか騎士様、なんでそんなに感動した目で僕を見てるの!?)


「ゼノン卿……いや、ゼノン師匠!

 どうか、未熟な私にその『無手』の極意を教えていただきたい!」


「……あ、あー。あー……(※訳:いやです、帰ってください、本当に)」


「……! そうか、言葉など不要。背中で語れ、ということですね。

 わかりました。私は貴殿が認めてくれるまで、この門で共に修行させていただきます!」


(えええええええええ!?

 一緒に住むの!? 嫌だよ! 監視されてるみたいで落ち着かないよぉお!)


 こうして、僕の静かな隠居生活の夢は。

 王国最強の美少女騎士という、最大級の「お荷物」を抱え込むことで、また一歩遠のいたのであった。


「……ふん。勝手にしろ(※訳:もうどうにでもなれ……)」


「はっ! ありがたき幸せ!!」


 彼女の清々しい返答が、地獄の門に虚しく響き渡った。

この物語を「面白い!」と思っていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】と【評価(☆☆☆☆☆)】をお願いします。


ゼノンのスプーンが次は何を破壊するのか……。

そして、クラリスの「弟子入り生活」が引き起こすさらなる誤解とは。

次回の更新をお楽しみに!

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