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「頼むからクビにしてくれ!」と言いながら地獄の門を守っていたら、いつの間にか【三界の唯一神】として崇められていた件  作者: 蒼井テンマ
第2章【王都編】

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第15話:魔界のメイド、あるいは「神の聖域」

……人手が足りない。


(なんなの、この広すぎる宮殿は!

 世界統一とか始祖降臨とか騒がれたせいで、毎日掃除するだけでも重労働だよ。

 クラリスさんは『修行』とか言って剣を振ってるし、リルさんは影の中でニヤニヤしてるだけだし……。

 あ、でも今日から新しいメイドさんが入るんだっけ。今度こそ『普通』の人が来てくれるといいな……)


 そんな僕の淡い期待をよそに、新しく採用されたメイド——イヴは、宮殿の廊下を静かに歩いていた。

 その正体は、魔界を統べる絶対者、魔王イヴリスその人である。


(……この男か。我が四天王を屈服させ、ガゼル帝国を指先一つで従えたという怪物は。

 見たところ、ただの覇気のない人間にしか見えぬが……。

 ふん、油断を誘う罠か。ならば私が直接、その『深淵』を暴いてやろう)


 イヴは、手にした雑巾に魔界最古の呪い【万物を腐らせる虚無】を極秘裏に付与していた。

 これで床を拭けば、触れた瞬間に魂ごと消滅する死のトラップが完成する。


 一方、僕は廊下の向こうからやってくる彼女を見て、緊張で心臓が飛び出しそうになっていた。


(うわ、新しいメイドさんだ! すっごい美人だけど、なんか目が怖い!

 もしかして、僕の掃除の仕方が甘いって怒られるのかな?

 怖い……。先に『僕も手伝います!』ってアピールして、機嫌を取っておこう!)


 僕は慌てて、近くにあったバケツの水を床にぶちまけた。

 「僕が先に濡らしておきました!」という、必死のゴマすりだ。

 だが、パニックで勢いがつきすぎた僕の魔力が、水流に「高密度の浄化」を宿らせてしまった。


 ――バシャァァァァァァッ!!


 イヴが仕掛けた「死の呪い」の床に、僕の「聖なる水」が直撃した。

 一瞬、宮殿全体が白光に包まれ、イヴが数百年かけて練り上げた呪いの術式が、まるで春の雪のように跡形もなく消滅した。


「……え(※訳:あ、水かけすぎちゃった。床、水浸しだ。怒られる!)」


 僕は絶望して、咄嗟に持っていた雑巾で床を激しくこすり始めた。

 「今すぐ拭きますから!」という、謝罪の高速ワイピングだ。

 しかし、その摩擦はゼノンの魔力によって「次元の摩擦」へと変換され、床の大理石を鏡面どころか『時空の特異点』が見えるほどに磨き上げてしまった。


「な、……っ!?」


 イヴは、その場に棒立ちになった。


(……バカな。私が用意した究極の呪いを、ただの『打ち水』で中和したというのか!?

 しかも、あのアホのように高速で雑巾を動かす動作……。

 あれはただの掃除ではない。空間に刻まれた『負の因果』を物理的に消去しているのか!

 この男、掃除をしながら……世界を再定義しているのか!?)


 僕は必死に床を磨きながら、チラリとイヴの顔を伺った。

 彼女はわななき、冷や汗を流している。


(ひいいっ! やっぱり怒ってる!

 『仕事を取るな』って思われてるんだ!

 そうだ、せめて……せめてこの『一番高い紅茶』を淹れて、許してもらおう!)


 僕は棚から、国王が持ってきた「王家秘伝の茶葉(※実はただの雑草にしか見えなかったので、放置していたもの)」を取り出し、震える手でお湯を注いだ。

 あまりの恐怖に、お湯の温度が僕の魔圧で数万度に達し、核融合一歩手前のエネルギーがカップの中に閉じ込められた。


「あ、あー……(※訳:どうぞ、これ飲んで落ち着いてください)」


 差し出されたカップを見て、イヴの魂は限界を迎えた。

 その茶の中に渦巻くのは、宇宙の誕生を彷彿とさせるほどの原始の光。

 一口飲めば、魔王としてのアイデンティティすら書き換えられかねない「神の飲料」だった。


「……こ、これを、私に?(=正体を見抜いた上で、毒殺……いや、慈悲を与えると?)」


「……うん(※訳:早く飲んで、許して……)」


 イヴは覚悟を決め、その光の液体を口にした。

 次の瞬間、彼女の脳内に「全宇宙の平和」と「ゼノンの情けな……もとい、慈悲深さ」がダイレクトアタックした。


「……あ、ああああああ……っ!!」


(わあああああ!? メイドさんが光り輝きながら倒れたぁあああ!

 お湯が熱すぎた!? それとも味が不味すぎた!? ごめんなさい、ごめんなさいぃい!)


 僕はパニックになり、彼女の背中をバシバシと叩いた。

 「しっかりして!」という激励だが、その一撃は魔王の背中にあった「人間界侵攻用の封印紋」を木っ端微塵に粉砕した。


「……はぁ、はぁ……。

 ……完敗だ。正体を見破られた上、私の中に眠る『闘争の本能』まで浄化されるとは。

 ゼノン……貴様は、一体どこまで先を読んでいるのだ……」


 イヴは床に跪き、メイド服のまま深く頭を下げた。


「……我が名はイヴ。貴方の『忠実なメイド』として……生涯、この宮殿を磨くことを誓おう」


「……あ、あー。あー……(※訳:え、掃除してくれるの? 良かったー……)」


 こうして、魔界の支配者たる魔王は。

 ゼノンの「怖がりによる過剰接待」を受け、世界で最も有能で、かつ最もゼノンを恐れる「筆頭メイド」へとジョブチェンジしたのである。

第15話をお読みいただき、ありがとうございます。

蒼井テンマです。


「呪いの床」を「聖域」に。

「殺意の潜入」を「メイドへの再就職」に。

ゼノン様の無自覚な浄化(※ただのパニック)は、ついに魔王の魂までも真っ白に洗ってしまいました。


さて、魔王すらもメイドにしてしまったゼノン様。

次回、そんな平和な(?)宮殿に、ついに「自称・真の勇者」が乗り込んでくる!?

『魔王をメイドにするなど不当な拘束だ!』と叫ぶ勇者に、

ゼノンが放った「生暖かい目」が、勇者のトラウマを呼び起こして……!?


「魔王様、掃除の才能に目覚めちゃったね(笑)」と思った方は、

ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いします!

皆さんの評価が、ゼノンの宮殿をさらにピカピカ(※物理的な発光)にします!

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