表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「頼むからクビにしてくれ!」と言いながら地獄の門を守っていたら、いつの間にか【三界の唯一神】として崇められていた件  作者: 蒼井テンマ
第1章【辺境編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/15

第1話:今日から俺は無職のはずだった

はじめまして。あるいは、いつも応援ありがとうございます。蒼井テンマです。


本作は「とにかく働きたくない、目立ちたくない」という、どこにでもいる(?)

小市民な主人公が、周囲の猛烈な勘違いによって、

不本意ながら世界の頂点へと押し上げられてしまう物語です。


「本人は泣きながら逃げているのに、周りは神と崇める」


そんな温度差を楽しんでいただければ幸いです。

もし「クスッときた」「ゼノンの胃腸が心配だ」と思ってくださったら、

ブックマークや評価などで応援していただけると、執筆の励みになります!


それでは、地獄の門番(自称・最弱)の物語をお楽しみください。

「……それで、本当に良いのだな? ゼノン・ギリアム二等兵」


 重厚な執務机の向こう側で、王国軍の人事総監が苦虫を噛み潰したような顔で僕を睨んでいた。

 その鋭い眼光に、僕の心臓はさっきからドラムセットを乱れ打ちにしている。


(ひっ、ひいいい……! なんでそんなに怒ってるの!?

 僕、何か悪いことした!? ただ『一番楽な職場に行きたい』って言っただけだよ!?)


 僕、ゼノン・ギリアムは、この日をもって王都守備隊をクビ……もとい、円満退職するはずだった。

 魔力測定では「計測不能(低すぎて測定器の針がピクリとも動かない)」という前代未聞の無能ぶりを晒し、訓練では常に最下位。

 僕にあるのは、「戦いたくない」「働きたくない」「平和に寝ていたい」という、小市民としての崇高な志だけだ。


「……はい。僕のような無能には、その……相応しい場所があると思いまして」


 実際は恐怖で声が裏返りそうだったのだが、極度の緊張で顔の筋肉が硬直した結果、僕の言葉は低く、冷徹な響きを持って室内に響いた。

 おまけに、ガクガク震える膝を隠そうと無理に背筋を伸ばした姿は、総監の目には「並々ならぬ覚悟を秘めた者の佇まい」に映ったらしい。


「ふん……。無能、か。自らの力をひけらかさず、あえて汚名を被ると。

 よかろう。貴殿の希望通り、辺境の『ナラクの門』への配属を許可する」


(やった……! 『ナラクの門』。名前はちょっと不吉だけど、誰も来ない廃墟の門番だって聞いてるぞ。

 あそこなら、一日中日向ぼっこしててもバレないはずだ!)


 僕は内心でガッツポーズを作りながら、総監に一礼して部屋を出た。

 その直後、総監が震える手で書類に「極秘」の判を押したことなど、知る由もなかった。


「……ナラクの門だと? 過去千年間、一度として封印が解かれたことのない、大陸最悪の魔境の入り口だぞ。

 そこへ一人で行くと、彼は……あの男は、笑って(※引きつり笑い)言ったのか。

 王国は、とんでもない怪物を飼っていたようだな……」


        †


 一週間後。

 僕は、絶望の淵に立たされていた。


「……話が……話が違うじゃないかぁああああ!」


 目の前に広がるのは、どす黒い雲が渦巻き、紫色の雷光が絶えず降り注ぐ地獄のような光景。

 巨大な石造りの門の向こう側からは、聞いたこともないような禍々しい咆哮が響いてくる。


(楽な職場!? 誰も来ない!?

 当たり前だよ! こんなところ、人間が来たら一瞬で塵になるよ!

 『ナラクの門』って、『地獄の入り口』って意味だったのかよぉお!)


 逃げ出したい。今すぐ王都に帰って、総監の靴を舐めてでも復職させてもらいたい。

 だが、僕の背後には、たまたま物資を運んできた補給部隊の兵士たちが、畏怖の眼差しでこちらを見つめていた。


「おい、見ろよ……。あのゼノン卿を」

「ああ、信じられん。あの瘴気の中に立って、欠伸あくびをしているぞ……」


(違うんだよ! 怖すぎて酸素が足りなくて、脳がバグって大きな欠伸が出ちゃっただけなんだよ!)


 その時だった。

 石造りの巨門が、ギィィィ……と嫌な音を立てて震え始めた。

 門の隙間から、ドロリとした漆黒の液体のような魔力が溢れ出し、一つの形を成していく。


 ――魔界の尖兵、グレーター・デーモン。

 一国を滅ぼしうる災害級の魔物が、現世への侵攻を開始したのだ。


「ギ、ギギ……ニンゲン、ミツケタ……。ココハ、ワレラガ……」


(ひ、ひいいいっ!? 出たぁああああ!

 死ぬ! 確実に死ぬ! せめて、せめて一矢報いないと……いや無理!

 あ、足元に落ちてるこの小石を投げて、隙を見て逃げよう!)


 僕はパニックになりながら、足元に転がっていた真っ黒な石を拾い上げた。

 それは実は、この地の瘴気を数百年吸い込み続けた、超高密度の魔石だったのだが、僕には「ちょっと重めの石」にしか見えなかった。


「あ、あっち行けぇえええ!」


 僕がヤケクソで投げつけたその小石は、僕自身の「無自覚に溢れ出ていた規格外の魔力」を導火線として、臨界点を突破した。


 ドォォォォォォン!!


 閃光。そして、鼓膜を突き破らんばかりの爆音。

 僕が投げた小石は、音速を超え、空間を削り取りながらグレーター・デーモンの眉間に直撃。

 それどころか、背後の雲をも吹き飛ばし、地平線の彼方まで続く巨大なクレーターを作り上げた。


「……え?」


 僕の目の前には、何も残っていなかった。

 さっきまでいた恐ろしい悪魔も、立ち込めていた瘴気も、ついでに門の一部も、綺麗さっぱり消し飛んでいた。


(……え? 今の、何?

 もしかして、石の中に爆薬でも詰まってた?

 それとも、あまりの恐怖に僕が幻覚を見てるの?)


 呆然と立ち尽くす僕の背後で、補給部隊の兵士たちが、バタバタと地面に膝を突く音が聞こえた。


「……神だ」

「魔法も使わず、ただの石礫で……上位悪魔を概念ごと消滅させた……」

「見ろ、あの立ち姿を。まるで『散歩の邪魔をするな』とでも言いたげな、あの傲岸不遜な背中を!」


(違う、違うんだ!

 腰が抜けて、一歩も動けないだけなんだよ!

 誰か助けて! 怖すぎて、もう涙も出ないんだよぉお!)


 こうして、隠居を夢見た僕の門番生活は。

 「人類史上最強の守護神」という、最大級の誤解と共に幕を開けたのである。


「……ふん。この程度か(※訳:もう無理、おうちに帰りたい)」


 僕の絶望に満ちた呟きは、兵士たちの手によって、翌日には王都中に「覇王の宣戦布告」として轟き渡ることになるのだが……。

 それはまた、別のお話。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

蒼井テンマです。


「一番楽な仕事を求めたら、一番ヤバい場所の神にされていた」

そんなゼノンの受難の日々、楽しんでいただけましたでしょうか?


もし「この情けない勘違い野郎の今後が気になる!」と思っていただけたら、

ぜひ【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】から評価をお願いします!


皆さんの評価が、ゼノンをさらに(不本意な方向に)追い詰める力になります。

次話、王都に広まる「ゼノン伝説」の爆走をお楽しみに!


当面の間は1日3話投稿予定です。

ブックマークしてお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ