マジのマジック
扉を開けた瞬間空気が変わった。
賑やかな雰囲気から、おしゃれな雰囲気へ
そんな雰囲気をぶち壊して塾長は
「おれは今日は一銭たりと奢らないぞ。自分の代金はちゃんと払ってね」
ん?
金欠なのか?じゃあなんでわざわざこんなところに
マジックは前から気になっていたが、それ以前にここの雰囲気が気に入った。
「お?桃はともかく、雪がマジックに興味あるとは、意外だな。」
「まぁ少し気になりまして」
酒類も多く揃っている。バーのような場所や、小さなステージのある部屋など、とても広く綺麗だった。
「どこ見ます?初めてなのでオススメありますか?」
当然私も初めてなので、塾長に目をやった。
そんな気がしてたが、塾長は私に目をやった。
責任の放棄
…初めてなの?!
するとかなり奇跡的だ。
「ここはジェントルメンなあなたが案内してください。」
……
「…ここはジェントルメンなあなたが案内してください」
塾長、責任の放棄。
私は、私はジェントルメンではない。
「なんで入ったんですか?」
桃が心無い一言で刺す。
「なんだっていいだろう。そういう年頃なんだよ」
よくわからない言語だ。
今日、塾長の脳の回転が終わっている日かも知れない。
3人でふらふら歩いていると、
「……あっ」
「……あっ」
「……あっ」
え?
3人同時にハモったことより、目の前の特大ステージの景色に驚いた。
なんとそこにいるのは、同級生。
パルト・レイラ、といったか。
天学のBランク一位の成績だ。
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彼女は天学で有名だ。
もちろんBランク一位だからというのもあるが、それ以外に…
「お客さん。こんにちわー
みなさん、今日こそは私のマジックのネタを見破ろうと頑張ってますねー。
今度こそ見破ってみて下さーい。」
この舐め切ったセリフから、早速マジックショーが始まった。
「ではここにご注目」
と手を強調する。もちろん俺は手を見ない。
さっきの舐め切ったセリフのせいで、マジックの種探しにやっきになったからだ。
手をかざし、指パッチンをした。次の瞬間。
「!…おもしろい」
なんと他からトランプが出現した。
驚くところはそこではない。
マジックとは、魔隠のスキルによって魔力を隠し、まるで魔法ではない力を使っているように見せる芸だ。
私は数々の敵と戦ってきた。敵の魔力の機動も、思考も読み解くスキルには自信があったのに、
彼女のマジックの種が全く見えない。
「すごいですね…まったくみえませんでした!!」
「…塾長が驚くとは、珍しいですね。確かに私にも全く魔力を感じられませんでした。一体どんな魔法を…」
彼女はマイクを持ち、
「なんの魔法を使ったでしょう?わかる人ーー
うーん。いませんね?全くもう少し観察眼を鍛えて下さーい。」
と、性格が悪いとしか言いようのないことを言った。
よくいうなー
「おっ、はいそこのあなた。お名前は、」
「塾長だよ」
「宣伝ですかー?ご退出ねがいまー」
「魔法使ってないんでしょ。性格悪いね!」
見たところアレは絶対に魔法を使っていなかった。
本当によくいうよ。いい性格の悪さだ。
動揺すると思った。こんな客予想してないだろうから。「さあ、どうでしょう」とか「なぜそう思うんでしょうか?」みたいなのが返ってくると思ったんだが。
しかし返ってきたのは予想外のセリフだった。
…勘違いしないで欲しいんだが、ここでの予想外とは。
「そうですよ」と認めるものではなく、
「ははっ。お客さん馬鹿ですねー
学生の時、創造力が豊かだって言われませんでした?
それ、大人になったらもう恥ずかしい人ですよー」
煽りだった。そこには、一片の動揺も見れない。
すると
周りの人たちも私を見てクスクスと笑っている。
wwいやあ。ほんとに、
「性格が悪いなぁw」
つい笑ってしまった。ここまでくると。
彼女が有名な理由。それは
独特の雰囲気と、その圧倒的な余裕感。
そして、
その性格の悪さだ。彼女の性格の悪さについての噂は、俺ですら聞いたことがある。
それにしても天才的な発想だ。魔法を使わないマジックとは。彼女も天才と言われるに相応しいんだろう。
まぁ、マジックショーは始まったばかりだ。ここからどんな展開になるのか。楽しみになった。
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「塾長?大丈夫ですか?ついに頭おかしなっちゃいました?今日、塾長の頭の回転が終わっている日だと思ってたんですが、まさかここまでとは。」
雪が、ボロクソに言ってくる。
「……レイラの影響受けてない?!?!」
「!?」
「自分で驚いてる…」
桃の言うとおり、自分で自分の影響のされやすさに驚いている。
たしかに、雪は俺の口調に影響を受けているんだが、
「冗談はともかく、魔法、本当に使ってなかったんです
か?」
当然の疑問を投げる雪。
「あぁ確実に使っていなかった。俺の全力をとしても、片鱗すら見えなかったからな、」
「塾長の力で見えないレベルの魔法を貼っているとかあるかもしれませんよ。」
桃がまた心無いことを言う
「全く、俺を舐めすぎじゃないか?そんなことは今までなかった。竜と戦ったときも、白影と戦った時も…あっ」
ついつい口を滑らせた。
「えっ!?!塾長びゃく」
「ストップ桃。それは後でじっくり聞きましょう。」
ナイス。雪。
おっ。
話しているとそろそろ時間になった。塾に戻って教科の整理とかしないと。
「じゃあ先に帰りますよ。さようなら。」
雪が代金を出して返って行った。
……うーん少し高いな。金欠の俺には厳しいかも。
悩んでいると。
「………あっ
……あのー。」
桃はこう見えても元気なだけではなく、真面目だ。だから俺も心配などしていなかった。しかし、返ってきたのは予想外のセリフだった。
…勘違いしないで欲しいんだが、ここでの予想外とは。
「まだここにいたくて…追加で回ってくれませんか?」といった可愛らしいものではなく。
今の俺にとって最悪なセリフだ。
「お財布。忘れてきました。」
これからも頑張ります




