79-サヨナラを告げた者たち
秘話を挟んだ理由、わかりましたね?
それにとって、支配者の言葉は絶対だった。
───“地球”へ向かえ。かの矮小な星の、ユメを守護する虫ケラ共を葬れ。
本物の隕石と混ぜるという、隠蔽工作を使った宇宙船。惑星に衝突すると共に侵略活動を、威力偵察をもって星の戦力を確認するのが、彼らの職務だった。
宇宙の果てにある小さな星相手に、過剰とも言えるその戦力。
余裕であると、最初は彼らはタカをくくっていた。
だが。
───なんだ、これは。
全て撃ち落とされた。母船だった小惑星は、光に飲まれ灰燼となった。次いで現れた無数の機械が、不協和音にもならない爆音を掻き鳴らして、全てを破壊した。
最初の一手で、仲間の八割の生命反応が消失した。
たった四人。貧相な二足歩行の雌個体に、一方的に己は破壊される。
あぁ、なんて。
自分は貧乏くじを引きすぎている───ザリガニ星人、最後の生き残りは、そう嘆いた。
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───さぁ〜始まりました!魔法少女と宇宙怪獣の、星の運命を左右する熾烈な戦いっ!この死闘の結果云々により僕たちアリスメアーの動き方も変わります!
魔法少女を価値は今と変わることはないけどね!
……なにあのセンスの欠けらもないザリガニは。鎧とか着ちゃって。文明人気取りですか?
対空兵器から生き延びたってことは……あんなんでも、強い部類に入ってるってわけで。正直、強さ指数には納得できないけど。たかがハサミでビルを斬れるだけの、まだ僕たちでもできることをされても、ねぇ。
……え?十分強者の枠だって?感覚麻痺してるかな?
腐蝕効果のある毒の唾とか、超高圧力をかけて両断する最強のハサミとか、ビルを飛び越えれる跳躍力とか、色々強みはあるけれど……果たして。
今の魔法少女を倒せるほど、強い敵であるのか否か。
答えは、否。
「ギギっ……ギリリィ…」
「はぁ、はぁ……まだ立つの…」
「さっさと、降参しなさいっ!!」
「いい加減に、しろぉ!!」
「しぶといねぇ。みんな頑張れー!」
「お姉ちゃんっ!」
「いやー、宇宙怪獣との戦い方、経験済みな私がやるよりみんなに経験させた方がいいじゃん。ほら、また来るよ。踏ん張って」
「ぅ〜!」
そこの頭脳筋もいい加減にした方がいい、かな。確かにオマエが出張ったら、そんなザリガニのなり損ないなんて瞬殺だろうけど。
経験値扱いすんなよ可哀想だろ。
ほら、言語理解できてないけど侮辱されてると勘づいたザリガニがプルプル震えてる。
やーいやーい。オマエの存在レベル上げ素材〜。
「キシエェェェ!!!」
全身ボロボロ、鎧甲冑も剥げたり欠けたりで損耗状態。これは負けだろうというのに、ザリガニはまだまだ暴れて止まらない。まるで、なにかに駆られるように……
あぁ、違うな。あれは、恐怖に駆られた者の目だ。
それがわかった瞬間、もう僕には哀れみしかなくって。可哀想だな、としか思えなくなる。
……読心魔法、と。えーっと、うわぁ。“星喰い”に惑星侵略されちゃった系元強者さんでしたか……もう守るべき家族も仲間もいないのに、一人働かされて可哀想。
これはもう、楽にしてあげた方がいい感じでは?
ってなわけで。
「ッ、いい加減に───ぇ?」
地上に飛び降りて、一閃。
満身創痍のザリガニの首を、軽く一捻り。仕込み杖で、ズパッと斬ってやった。
「ァ…」
首の断面から吹き上がる緑色の血液を浴びないように、細心の注意を払って作業を終える。うんうん、ずっと魂が張り付いてるから、そいつらとさっさと天に昇りな。
身体が頑丈すぎると、簡単に死ねないからねぇ……
宇宙規模でこういう被害者がいるのを見ると、ほんとに僕らの敵ってロクでもないんだな。
頑張んないとなぁ。
「な、なんで!」
「うん?あぁ、慈悲をもって殺してやった。それだけだ。そも、相手は侵略者……この地球を滅ぼそうとする、我ら全員の敵なんだぞ?何故生かす必要がある」
「ッ、だって……」
「……どうやら、魔法少女としての自覚が薄いようだな。やはり怪人の殺害程度は経験させておくべきだったか……いや、どちらにせよ、か」
「ナハトさん!!」
「はいはい」
すっごい非難轟々。君らあまちゃんすぎやしないかい?
「静観してるって言ってた癖に」
「あぁ、その通りだとも。だが、あまりにも哀れでな……慈悲の心でトドメを刺してやったんだ。故郷の死んだ魂もこれで喜ぶだろう」
「なにを…」
「詳細を話すつもりはない。面倒臭いからな……しかし、この程度か。やる気あるのか?オマエたち」
「喧嘩売ってるのかしら…!」
「事実だろう」
正直、もうちょい早めに終わると思ってたんだけど。
:死んじゃった
:容赦ねぇ…流石ナハトお姉様…
:信者引っ込んでろ
:うん?なんか音がする…
:!?
……そうこう言い合ってる間に、追加の虫ケラ共が漸くお出ましのようだね。
戦闘乱入防止の結界に阻まれる程度の木っ端共が。
「オオォォォ…」
「ガキンッ、ガキンッ!!」
「キシシシシシッ」
「リリリリ!」
二足歩行の異形たちと、普通に獣形態の、一目で地球の外から来たとわかる見た目の怪獣たちが現れる。どいつも見た目は違うから、全員違う星出身で、“星喰い”管理下の兵隊になってるってことが容易に見て取れる。
ふむ。好戦的な目だ。戦意喪失はしてないらしい。
武器を構え直した魔法少女たちが、そいつら有象無象に目線が移っている、その隙に。
一体の宇宙怪獣───ダイオウグソクムシの擬人化が、何故か僕の首を獲りに近付いてきた。
「ッ、ナハトさん!!」
「心配無用。はァ、自分が倒せる相手の方にいけば、まだ生存確率は上がるというのに……」
「シェアァァァ!!」
「しない」
団子虫パンチを片手で受け止めてやりながら、まだまだ終わらない魔法少女たちの戦いを眺める。はぁ〜。なんか数多くね?有象無象の癖に。
確かに八割は撃ち落としたけど、残り二割がすごい。
日本に優先的に落ちることはわかってたから、ここらのヤツ以外は全部撃ち落としたんだけど。うん、過剰すぎる戦力だと思います。はい。
威力偵察ってこんなんなの?
軍事に詳しい人、ポキに教えて。宇宙怪獣共が真夜中に降り注いで来た時の正式な対処法も。
そう内心でふざけながら、空いた片手でスマホを弄る僕であった。
「シェェェ!!」
「あっ、無視してごめん」
「ジェッ」
泣き別れ、乙。
꧁:✦✧✦:꧂
アクゥームとはまた勝手の違う、宇宙から来た異形との熾烈な戦い。慣れない環境でありながら、魔法少女たちの奮戦は凄まじく。
観戦している人々が、声を大にした全力応援を始める、そんな光景が世界中で見られる、真夜中の戦い。
皆の希望を背負った少女たちの防衛戦を、同じ位置からただ眺めるナハト。
興味の色がない、冷めた目付きで全てを睥睨している。
:こっちも不穏!
:なんか言ってよぉ…
:ユメ計画ってなんですかーっ!!
:宇宙怪獣について一言!
:お姉様ー!
「うるさいなこっちに寄るなコメント欄。おいぬいぐるみ近付けるな度胸あるな」
「いいから読むぽふー!いい加減全部吐くぽふっ!!」
「オッェー」
「違う!」
戦闘中の隙をついて配信魔法をナハトに向けるぽふるんだったが、お気に召されず軽々と跳ね除けられる。もう、その魔法に価値を見出さない。興味がない。力の持たない群衆の声など、聞くに絶えないと無視をする。
その正体を知らずとも、何処か嫌な気持ちになる妖精。
こんな姿、見たくないと。なんでそうなったのと、心の奥底から湧き上がる想い。
それがなんなのかわからぬまま。困惑するぽふるんは、ナハトに手を伸ばそうとして。
「あぁ、いや。丁度いいか。貰うよ」
「えっ?」
ナハトが伸ばした手が、ぽふるんを掠め……配信魔法の制御権を、奪った。
「あっ!?」
「悪いな。一時的に借りる」
「返してぽふ〜!!」
「ヤ」
そのままナハトは空高く飛び上がり、最初にいたビルの屋上へ降り立つ。傍には連れてきた配信のコメント欄……魔法式のタッチパネルを出現させ、ポチポチと操作する。
最高幹部のガチ恋距離にたじろぐ視聴者たちを余所に、ナハトは目的のモノを発見。
───凍結されていたアカウントたちを、復帰させる。
:!?
:くぁwせdrftgyふじこlp
:通知音がッッッ
眼下の魔法少女たちの戦いを、多勢に無勢なそれを一度眺めてから……対空兵器の下を潜って迫る、巨大怪鳥へと睨みを利かせる。
そのまま配信魔法を操作し、複数の配信画面を開いた。
困惑する視聴者、唖然とするぽふるん、魔法少女たちの反応を余所に。
「───さぁ出番だぞ、フレッシュゴーレムども!!」
異空間の穴が、空に開く。
今日は素敵な日だ。失われた仲間たちが帰ってくる日。死んでもこの世にしがみついた、ちょっぴりお馬鹿な亡霊たちの狂った饗宴。
たった六人の───否、七人の旧世代たちの、再演。
「そんな、まさか!?」
「ハハッ、どうしたライト。復活怪人を見たんだ。なら、この吾輩が。この僕が!この手を使わないなんて……本気で思ってたりしないよねぇ?」
「それはッ……倫理観、バグってるでしょ……!」
「それがどうした。使えるものは使う。二年前から、僕の信条が変わることはない」
目を見開いて驚く、幼馴染の悲痛な叫びなどには、最早耳を貸すこともなく……
日本の夜空に、蘇った戦乙女たちを解き放った。
───松風市・戸刀砂丘。
辺り一面無人の砂丘を、軍隊チックな装備に身を包んだアリ型の宇宙人たちが前進する。目指すは、外骨格の下に秘められた瞳に映る、ニンゲンの生活圏。
威力偵察と共に、観察のサンプルとして何人か攫うよう厳命された彼ら。
だが、その進行は。空から降り注ぐ銃弾によって、もう進まない。
「ハッハー!!何処に行く気だぁ?ありんこ共ッッ」
真っ黒な空を、一機の戦闘機が突き進む。
戦闘機の上に仁王立ちする彼女は、目深に被った軍帽が強風に攫われないよう軽く押さえ付けて、漆黒のマントを靡かせながら砂丘を睥睨する。
その背後には、無数の戦車砲が、宙に浮いている。
眼帯を左目につけ、胸元には詰め物を入れて。荒々しくボサつかせた金髪の持ち主を、世界は知っている。ただ、知らないのは。ツギハギが刻まれた、その頬だけで。
最強の戦車道が、砲口を地上に向ける。たった一手で、全てを蹂躙する。
「兵仗魔法<ディザスター・クラッション>ッ!!」
絶え間なく発射される鉄の雨。砂丘を突き進む蟻たちに逃げ場を与えず、一方的に、抵抗もさせず、瞬く間に全て肉塊に変えていく。
:配信が、復活して…
:俺は夢でも見てるのか?
:閣下…
「二年ッ!二年だ!!このオレ様がッ、どれだけこの日を待ち望んだことか……さぁ、さぁ!戦争だ!戦争するぞ!宇宙人との、大・戦・争ッ!!!」
“戦車”の魔法少女 カドックバンカー
───再出撃
───群穀市・草鹿辺温泉。
「グオオオオオォォ───ッ!!」
湯気立ち上る温泉街、その熱泉の中から首を持ち上げる巨大な海獣。クジラのような、ヘビのような……あまりに大きな宙の海獣が、熱湯を掻き分けながら街を襲う。
可動域の広いその大きな口で、全てを飲み込む。
その寸前に。
「───ダメだよ☆悪い子は、めっ!だよ」
天使が舞い降りる。
真っ白な羽を大きく広げ、神聖なるヴェールをプラチナブロンドの髪に乗せ、夜風に靡かせる……白亜の美しき、地上に舞い降りた最強の天使様。
右手に槍を、左手に盾を。
彼女は神に祈らない。彼女は祈られる側だから。
この世に顕現した、最後の天使。世界を救う、星の力を支配する戦乙女。
一部が曇った天使の輪を輝かせ、天使は祝福する。
「重力魔法<エンジェル・キッス>」
槍の矛先から放たれた、万物を平伏せさせる神の力が、宇宙海獣を磨り潰した。
:あーっ!!
:あっ、あぁ……
:うそ
「アハハッ、んもう。ビビらせちゃって……宇宙怪獣も、意外と大したことないんだね」
“力天使”の魔法少女 エスト・ブランジェ
───再臨
───浪速市・万博跡地。
悪夢災害によって中止され、そのまま再開されることもないまま、放置された祭り会場。アクゥームの被害で未だ決壊しているそこに、宇宙怪獣たちは降り立つ。
まるで岩山のような、その巨体。
銀河では、生きた隕石とも呼ばれる宇宙のゴーレムが、巨大な拳を街に向け。
「───ごめんなさーい!そこ通りまーす!!」
汽笛を鳴らす、宇宙を駆ける機関車に振り上げた右拳を破壊された。
運転席から身を乗り出す、小柄な車掌。電車のマークが描かれた、大きな旗をブンブンと振り続け、自身の存在を外敵にアピールする。
緑色の髪をポニーテールにした、魔法の運転手。
夜空の上を駆ける列車は、何者にも縛られず、何者にも阻まれない。
「列車魔法!<グラリエイト・ロコモーティブ>!!」
機関車の先頭部分がミサイルの形に変化して、そのままゴーレムを轢き逃げして……生きた隕石を、文字通り木端微塵に破壊する。
:撮り鉄歓喜
:マジですか!?マジなんですか!?
:シュポポポポ!!
「行っくよー!出発進行〜っ!なのです!!」
“汽笛”の魔法少女 ゴーゴーピッド
───運転再開
───西都府・夢門天満宮。
古き良き歴史の残る史跡。世界的にも有名な枯山水に、歪な樹木が生えていた。天まで届く枯葉の山が、歪な形に折れ曲がる枝や幹の上に乗っていて。
大樹に空いた洞が、恐怖を誘う顔を作っていた。
暗黒銀河に生息する、自我を持った枯れ木。その中でも千年を生きた老樹が、地球から生命力を吸い取って───星を枯らす。
だが、かの“呪い”が。それを許すわけもなく。
「許されない。それは赦されないよ。たかが木の分際で、この星を喰らおうなんて」
深紅の呪術師が根元に座り、紅葉を仰ぐ。
紅い襤褸を纏う彼女は、頭からも垂れる赤黒い布切れと赤い髪の隙間から、忌々しい空を睨んでいた。呪いたい、この世の全てを蝕みたい。
悪夢ではなく、人へ矛先が向く復讐心からは、死んでもなかなか解放されず。
蘇った女怪は、呪いをもって悪夢を殺す。
その呪詛は宇宙怪獣にも適応され……故郷に仇なす敵を葬り去る。
「歪魔法<イグニ>」
呪いの業火が、枯樹に火をつけ、全てを焼き尽くす……轟々と、悲鳴を上げる隙もなく。星に根付いた魂の髄まで焼却した。
:みぎゃッ
:マジなの?信じていいの?
:ああああああああ
「さぁて。あの天才様が暴走してるのは、ほっといて……いつも通り。私は私の、私なりのやり方で。呪って祓って死に急ごうじゃないの」
“虚雫”の魔法少女 マレディフルーフ
───災来
───星ヶ峯・星見公園。
小高い丘の上、小さな天文台がある記念公園。日本でも有数の星空が見えるその地に、眩い光の塊が舞い降りる。激しく明滅する光の化身は、地球で活動する為に超高圧縮された生きる恒星。
恒星そのものが自我を持った存在は、己の軌跡になにも残さない。
万物を飲み込む光が、公園を虚無へ消す。
「あのさぁ〜、自殺志願者ばっかなわけ?なんでこぞって地球に来るかなぁ。勝てるわけないのに……それも含めた偵察ってわけぇ?」
宙に浮かぶ鏡に腰掛けた、少女が嗤う。
紫色のドレスを纏うお嬢様。鏡をモチーフとした飾りを衣装全体に散りばめて、自分の役目を、これでもかと強く主張している、鏡を繋げる魔法使い。
その他人に全てを押し付ける悪辣さは相変わらず。
ツギハギが這う可憐な顔は、宇宙からの来訪者を心から馬鹿にした笑みで、今日も歪んでいた。
そう、彼女は。
かの最強たちと同じ時期に魔法少女になった、数少ない同期の一人。
「鏡魔法<ミラードジャマード・アブソープション>」
攻撃態勢に移った光を、彼女が座る鏡は写して。一切の猶予も与えず、鏡の中に吸収してしまう。逃げ場はなく、容赦なく吸い込まれた光の化身は、鏡の中で霧散する。
鏡の中で強制反射させられ、自滅して、消滅したのだ。
:わぁ、わぁ……
:わからせたい、この笑顔
:貢がせろ…
「相性最悪じゃ〜んw光ってる程度の分際で、この私様に勝てると思ってるとか、バッカじゃないの〜w?」
“廻廊”の魔法少女 ミロロノワール
───再映
───首都燈京・上空。
日本の中枢が集まる都市の上、優雅に空を泳ぐは白魚を彷彿とさせる無数の怪魚。回遊するそれらは、地上に潜むニンゲンたちを喰らわんと、今か今かと目を光らせる。
肉食の宇宙怪獣たちに、人々は手も足も出ず。
遂に犠牲者が出る……そんな危機的状況に。高空から、歓声の混じる賑やかな音が響く。
空に浮かぶ半球体巨大設備───その特設ステージに、彼女はいた。
「みんなー!!あたしの復帰ライブに来てくれて、どうもありがとうー!!!」
:マーチ!
:マーチ!
:プリズ!
:プリズ!
100を超える配信画面が、手を振る彼女のみを映す。
アイドル衣装で全身を着飾った彼女は、ツインテールに結んだピンク色の髪を大きく弾ませ、大胆にもスカートを翻して、画面の奥の観客を以前のように魅了する。
その輝きは、死した今も失われず。
世界が認めたその歌声が、生歌が、二年以上の時を経てファンの耳を震わせる。
悲劇も、苦痛も、絶望も。
彼女の歌の前では。一切合切、ただのいらない壁でしかないのだから。
「歌魔法───<ルナティック・ドリームツアー>!!」
万物を浄化する音の旋律が、空気を伝って首都全域へと拡がって……彼女の音に魅了された怪魚の群れに、自らの意思で方向感覚を狂わさせ、浮遊を解かせ。
地上へ真っ逆さま。
:あ゛ーっ!!!
:フ゛ァ゛ン゛でずっ!!!
:泣く
「王国民のみんな〜!死んでも笑顔で、いっくよー!!」
“王国”の魔法少女 マーチプリズ
───復帰
かつて世界にその名を轟かせた、6人の魔法少女───彼女たちの復活は、今を生きる全ての人々の度肝を抜き。ありえない光景だとわかっていながら、感動する。
泣いて、笑って、打ち震えて。
そして───この奇跡を成し遂げた、諸悪の根源、正に元凶へと意識が集まる。
焼け落ちた怪鳥たちを足蹴に、笑う帽子屋に。
「ここからは、ずっと僕のターン」
ギョロ目のシルクハットの陰に隠れた、蒼い瞳が妖しく輝いた。
次回、運命の時




