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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
君と送るひと夏の思い出

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56-マネーisパワーinサマー


「ぼっちなう」

「あれ、子供たちといたんちゃうの」

「置いてかれちゃった……配信どーぞ」

「……なんでうちの島にいんの?」

「運命、かな…」


 はい、どーも。無人島貰ったら、周辺海域に野生化したアクゥームが多くてびっくりした僕だよ。今、がんばって退治しまくって、快適なバカンスを作っているとこ。

 そんで、今。


 あんまりにも数が多い海産物アクゥーム狩りに、どうせ暇だろうと穂希を電話で呼んだら、なんか配信やってると一回拒否られて。そっかぁと納得してたら、数分経った後再度電話で呼ばれて。

 ホタテ・アクゥームの解体に勤しんでいた僕は、電話をガチャ切り。

 でもしつこく鳴り止まないもんだから、なんだなんだと通話ボタンを押せば。


 意気消沈した穂希の声が聞こえてきた。


 うん、なんであの子たちはピンポイントで襲われてて、運良くうちのプライベートビーチに漂流できてんの?なにその運命力。魔法少女って怖い。

 しかもそのシャーク・アクゥーム、一番面倒いヤツだと思うの気の所為?海流操作とか日本に持ち込ませんな。

 ……野生化したアクゥーム駆除の道すがら、一旦島まで戻った方が良さそう。


「前言撤回してい?私も狩り混ざる」

「そのまま島行くってか?はァ……まぁいいけど。うちのクソガキに喧嘩売らないでね」

「いーよ。なんか事情あるんでしょ?プライベートでまで襲いには行かないよ。私、やさしいからね」

「斬ってから考えようとするバカに似合わぬ発言だな」

「酷い言い様。私泣いちゃう」

「泣いてろ」

「うぇーん」


 クルーザーの船頭で、あのバカが飛んでくるのを待つ。位置情報的に、魔法少女の力なら飛んですぐの距離。まぁ気長に待つとしよう。

 そう思って大海原を眺めていると、船尾の方から誰かが歩いてくる気配を掴んだ。

 なにしに来たんだろ。


「片割れを呼んだのかい、私のブルームーン……うっぷ、すまない、まだ無理そうだ」

「オマエのじゃないけど、まぁ、そうだよ」


 顎髭を蓄えたダンディな英国紳士。金髪を横撫でにしたその男は、このクルーザーの持ち主であり、例の無人島をお小遣い感覚で僕に渡してきた、世界有数の資産家。

 魔法少女に救われた海外の富豪たちが集まって作られた財閥連合を取り仕切る、云わば裏社会のドン。

 オリヴァー・トラウト。僕の自称スポンサーを名乗る、ただの変人だ。


「船揺れには耐性があると思っていたんだが……流石に、夢魔狩りの衝撃までは無理だったね……オェッ」

「無理すんなら寝てなよ。プライドとか捨てとけ」

「いや、これは君のスポンサーとしての意地。これ以上の無様を晒すわけには……オロロロロ…」

「手遅れだよ」


 いい歳したおっさんが、必死に嘔吐我慢してるの、絵面おもしろいな。


 国際財閥連合O.D.C.───魔法少女の手で【悪夢】から助けられた富豪たちが手を組み、恩を返す為に資金援助といった経済的支援を行う、新しく結成された組織。

 大元は日本国外で猛威を振るっていた財閥とその傘下が改心して自主解体、からの再建で始まったのだが……

 残っていた魔法少女も全滅して、それでも世界が平和になってからは、過去から現代まで連綿と紡がれた戦乙女の歴史を掻き集め、精査し、データとして纏めて公表する。現在、数多くの一般人が魔法少女についてを詳しく知れているのは、彼らの情報収集と開示があったから。

 昨今は新たな魔法少女の出現、そして、彼らがある意味崇拝していた伝説の片割れの復活によって、今まで以上に彼らは沸いていた。


 そんな喝采時期に、僕はマッドハッターとしてこの男にアポイントを取り、接触した。


───ご機嫌よう、帽子屋殿。

───この私になんの御用で?


───単刀直入に言う。二年前の“島くれる”って話、まだ有効だったりする?

───え?


 面倒臭い社交辞令とかは無視して、あっさり正体暴露をオリヴァーにしてやった僕。外部に漏らす心配はないなと踏んでの行動だったが、些か軽率だったか。

 ともかく、偽装を解いて、生前の……ちょっとツギハギボディになってる素顔を見せたら、こいつは。

 茫然と涙を流して、硬直しやがったの。ウケるよね。


───いっ、生ぎて……Really?嘘だろ、そんな。あぁ、なんてことだ。愛しの、私のブルームーン……!!

───断じてオマエのになった覚えはないけど。

───Oh…

───その、えっと、まぁ……お久。会って早々だけど、お小遣いもらいに来た。


 昔のように遠慮ZEROで接すれば、もう泣くわ泣くわの大号泣。慰めるのに苦労した。つーか、いい歳してる上に海千山千の男がそんな泣く?普通。そこまで嬉しいの?

 そう思えば、ちょっとは嬉しくなるけど……こっちまで移動して泣きついてくるのは嫌だった。


 今もまだ涙ぐんでんだよ?本人は隠してるつもりらしいけど。


───フ゛ァンでずッ!

───知ってる。


 ちなみに過激派ファンらしい。会う度に日本円の万札を手に握らせてくるの、正直怖かった。今でも怖い。

 ちゃんと使えるように換金してるのも配慮よすぎて。


 そんな都合のいい金づる、ゲホッゲホッ、スポンサーともう一度、個人的に仲良くなり直したのが今回の顛末だ。使えるもんは使う。あと、お金持ちの暴走ほど怖いものはないから、静止の意味合いも込めて会いに行った。

 暴走して新興宗教作るのはやめて欲しいもん。ヤバめの元教団幹部が所属してる分、現実味があってやだ。

 ……祈祷で蒼月の復活を祈るぐらいのバカしてたから、大丈夫だったかもしれないけど。


「ふぅ、はぁ……それで?狩りは順調なのかい?私には、全然減ってるようには見えないけど」

「これでもね。あと何匹いるのかは知らない」

「ガラクタも同然の遺産か。クッ、現代兵器が通じるなら水爆を起こして、君の邪魔などさせなかったのに」

「一々過激なんだよ。その心遣いだけでも十分。オマエはクルーザー動かしてるだけでいいよ」

「でもなぁ」


 頼んでないのにクルーザー用意してくれただけでも十分ありがたいのに。なんで納得しないのか……なに、推しに魅力アピールして俺だけを見て欲しい?キッショ死ね。

 奥さんに浮気相手を見る目で見られるの嫌なんだけど。二年前に誤解は解いたけど、今の僕、ナハト・セレナーデなんですけど。

 困ったな。


「───おーい!やっと見っけた!」

「うん?」

「おや?」


 そうこうしているうちに、リリーライトに変身していた穂希が飛んできた。わーすごい。低空飛行で来たからか、海に白い線ができてる。ジェット機かよオマエ。

 勢いを止めてぴょんとクルーザーに飛び乗った穂希は、僕を見てから隣にいるオリヴァーを見た。

 そして、大きく目を見開く。


「あれっ、おじさんじゃん。元気ー?」

「おぉ!サンシャインじゃないか!!あぁ、また君たちを二人を揃って見れるだなんて……前世の私はどれだけ徳を積んだんだ!!」

「マフィア商売してたのがなんな言っとる」

「改心したから許してるけど、そこんとこわかっててこれ言ってるのかな」


 全くだよ。

 ……あぁ、ちなみに。穂希との関係は、今まで通りでもいいことになった。プライベートだけの話だけど。本当はちゃんと敵対するつもりだったんだけど、東屋で会った後駄々こねられて、さ。

 今のアリスメアーとなら、馴れ合いも別にいいよねとか言われちゃって……

 チェルシーの前例があるから、なんも言えなくて。

 プライベートでならいいかって話になって、今みたいに馴れ馴れしく生きている。


 今日のいらないアクゥーム狩りも、久々に競い合うのもいいーなって思ってだし。

 ちなみにリデルには言ってない。


「お金で解決好きだね」

「マネーisパワーは最強なんだよ。貧民だってお金あれば発言権を持てるんだから」

「……ふふっ、貧困層から登り詰めたこの私を、そんなに褒めてくれるとは。やはり私たちは相思相愛だな!!」

「「いや全然」」

「泣いていいかな……」

「いいことあるって」

「どんまい」


 やり方はあれだったけど、頂点にまで登り詰めた努力は流石に認めるよ。国際財閥連合を取り仕切るのを許されるぐらいだし。結成宣言したのこいつだけど。

 さて、懐かしさで駄弁るのはここまで。ここからは夢魔狩りしながら、無人島を目指そっか。

 太平洋の赤道付近だけど、魔法処置したクルーザーならすぐに着く。


「護衛連れて来なくてよかったの?」

「そりゃあね。君の生存を知る人間は少ない方がいい……幾ら信用できる相手とは言え、それは私の主観。君の視点ではそこはわからないだろう?」

「単純に独り占めしたいだけでしょ」

「そそそそんなわけない。私は平等で公平な人間だ」

「写真撮る?ツーショットとスリーショットで」

「是非」

「おい」


 やっぱ独占欲強いよね。いや額縁持ち歩いてんの?現像まだ無理だよ。バカか?

 ちなみにこの後、四回ぐらい海に吐瀉物が撒かれた。

 お魚さんごめんね。

 酔い止めを忘れた金だけ男は、こっちで処分しとくから安心してください。

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