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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
君と送るひと夏の思い出

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55-なにかを忘れているような…?


───前回のあらすじ〜!!

(ここで軽快な音楽)

 アリスメアーと時を同じくして、新旧魔法少女の4人も夏の醍醐味を、時期外れながらも海を満喫したい気持ちになった。クラゲや波などの懸念点から、海を泳ぐのは渋々諦め、砂浜で遊ぶことで海の匂いや波打つ音を間近で堪能することにした。

 配信をつけて、浜辺で水着タイプに変化した魔法少女の衣装をお披露目したり、ビーチバレーで2対2の勝負をして姉妹チームが圧勝蹂躙したり……

 お昼前から始めた配信は、リリーライトの存在もあってかなりの盛況を見せ。


 リリーライトが電話対応で席を外した、その時。


 突然、海面からサメ型の夢魔、シャーク・アクゥームが飛び出してきて、魔法少女たちを強襲。

 海水を巻き上げる夢魔との勝負は、終始優勢。

 ほぼ勝ち確だったのだが……


「フカヒレが!すごい抵抗を!!」

「こらっ、デイズッ!ヨダレしまいなさい!!」

「ちょ、漫才やってる場合じゃ……わっ!?」

「ぽふー!?」


 浄化技を放つ直前に、シャーク・アクゥームは反撃して大渦を発生させ……浄化の魔法発動で硬直するという隙を突かれた魔法少女たちと、応援していたぽふるんまでもを海の中に引きずり込んで……


 野生化したシャーク・アクゥームの最後の悪足掻きは、魔法少女たちを海の果てへ連れ去ってしまった。

 気絶した彼女たちを、その果てにある無人島まで。


 ……そうして、時は現在。アリスメアー所有の無人島に漂流した。


「よいっしょ、よいっしょ…」


───少女介抱中

 …Now Loading…


「うっ…」

「げほっ、ごほっ!」

「ぷはぁ!!ひぐっ、しっ、死ぬかと思っだぁ〜!あっ、チェルぢゃーッ!!!」

「来ないで」


 あれから。変な音が聴こえてキャンプ地の反対へ訪れたチェルシーに発見された魔法少女たちは、彼女の献身的で模範的な救命活動によって生還した。

 運が良かったのか、肺に入った海水自体は魔法で簡単に取り除くことができた様子。

 後は本人たちの魔力循環によって、救急車を呼ばずとも完全回復……


「ぽへぇ……けぷっ」


 ついでに気絶していたぽふるんも心肺蘇生させた。


 ギャン泣きで足にしがみつく親友をそのままに、猫娘は首をコテンと傾ける。


「ふぅ……で、なに…なんでここにいるの?」

「なにって……星ヶ峯のとこの海に行ったら、いきなり、サメさんに襲われたの」

「サメ……これ?」


 特になにも考えずに手助けをしたチェルシーは、親友が指差す先を見る。そこには、確かに砂浜に打ち上げられたサメ、もといシャーク・アクゥームがいた。

 白目を剥いたまま、ピクリとも震えずに動かない。

 ただ、アクゥームの性質上死んでいるとは言いきれないその瀕死体に、チェルシーは困惑顔。


「……チェルちゃん?」

「なにこれ…知らない……」

「えぇ……?」


 流石のチェルシーも、管轄外の見知らぬアクゥームには首を傾げる以外にできない。なにせ本当に知らないので。そもそも今日、アクゥームを用意するとも、配置するとも聞いていないのだが。

 最初は悩んだが、そういえばと野生化の話を思い出す。

 チェルシーはこのサメが、今の管轄にないアクゥームと判断すると同時に、機密情報として沈黙を選択した。まぁ言わずともいつかバレるだろうが。


「んっ、うぅ……」

「……あら、ここは…?」

「あ、起きた」

「え?」


 気絶から目覚めたエーテ、コメット、ぽふるんもすぐにチェルシーに助けてもらったお礼を言う。既にやさしいと共通の理解があったチェルシーとは、特に衝突せず感謝の言葉を伝えられる。


「ありがとう!」

「ありがとぽふー!」

「ふぅ、助かったわ……ねぇ、本当に知らない、ってのでいいのよね?」

「うん」

「そう。まぁあなたが言うならそうなんでしょうね……」

「……なにこの信頼感」

「え?だってチェルシーって私たちに嘘つかないじゃん。どっかのウサギと違って」

「うぅん…」


:栄誉賞あげたい

:やさしいせかい

:生還おめ

:……なんか忘れてるような


 ブラックアウトから救助活動まで見届けていた視聴者は微笑ましい感動を覚えるが、状況が状況。緊迫した状況は変わらず。打ち上げられた浜の景観から位置特定を試みる視聴者まで現れる。

 磯浜だけで判断するのは不可能だったのか、情報規制が完璧だったのか、特定班は解散したが。

 身体の掠り傷も魔法で治療した3人に、欠伸を噛み殺すチェルシーは一つ提案する。


「うん、取り敢えず……変装、して?」

「変装?」

「……私がこの格好でいることを察して。この私が、一人海遊びなんてしてると思う?」

「思わない」

「正直な…」


 3人は言われた通り変装。気分作りで持ってきてはいたハートや星型の色付きサングラス、オシャレなわら帽子、腰に巻き付けるパレオ、バレない程度の認識阻害を頭部にかけて誤魔化して……

 結果、各々のカラーで統一した見知らぬ女の子が磯浜に現れた。


:かわいい

:ちょっと似てる?って感じ

:バレなさそう

:バレるな

:願望やんけ

:好き


「こんなもん?」

「………………………まぁ、多分」

「納得いってなさそう!!」

「まぁ、そうなるわよね……カツラとか被った方が、まだ良かったかしら」

「うーん」


 一先ず変装できた3人は、人形のフリをするぽふるんをエーテが抱える形で姿を偽り、チェルシーチェックを得て変装を完了。

 経緯が経緯なのと、まぁバカンスだから大丈夫だろうと安易に判断したチェルシーは、3人を森へ誘導。普通ならアウト案件だが、多分大丈夫だろうと確信している。

 相手がチェルシーな為か特に疑わない魔法少女たちも、特に異論を挟まず移動……

 それでいいのか。


「……ここ」

「うわぁ、えっ、めっちゃ綺麗……」

「なによここ……はぁ?」

「おー、うちのビーチと同じくらいすごい!」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「……え、なに?なんでガン見?」

「シャラップフォーエバー」

「ぶえっ」


 金持ち特有の庶民とズレた思考の持ち主の頬を掴んで、変顔にさせてからチェルシーは魔法少女たちを悪夢所有のビーチに案内する。

 閑静ながらも賑やかさと楽しさが伝わってくる、そんな砂浜に。


「おい、猫。どこをほっつき歩いて……あん?なんだその奇天烈なヤツらは」

「あんたに言われたかなっ、むぐっ!?」

「ご、ごめんなさい!遭難しちゃって……えっと、ここの反対側のとこに漂流しちゃった一般人です!」

「以下同文!」

「見つけた」


 無数のクラゲを両手持ちする不審者、もといビルがまず気付いて声をかけるが、謎に増えた少女三人組には流石に首を傾げる様子。

 認識誤認はしっかり働いているのか、敵であるとまではバレていない。怪しまれてはいるが。

 そのまま「災難だったな」と声を残して、ビルは集めたクラゲをポリバケツに放り込む。


 その行動に一同は奇異の目線を送るのを止められない。


「……察するに、あなた達もバカンス中?」

「うん。帽子屋さんが、なんか、お小遣い?とかなんかで貰った……無人島で、遊んでるの」

「へー、お、お小遣い……待って無人島?」

「ツッコミどころが多いわね……ここ、島なのね…」

「ほへ〜」


:お小遣いで島!?

:ララブの石油王でもおるんか

:パパ活ですか

:ママ活かもしれん

:なにそれ


 場所の説明の傍ら、配信魔法のモニターも邪魔だと今更気付いて透明化、外部には見えないように遅れて細工。

 幸い、ビルには見られずに済んだらしい。

 一同が安堵の息を吐いてすぐ、ログハウスのコテージの扉が開く。


「ガキが増えたってぇ!?無理だよお世話とか!こちとら女王サマと駄メイドと居眠りネコの介護で帽子屋の旦那が労基に駆け込む寸前なのに!!」

「そう思うなら手伝ってやれよ。あと殺されても知らねェからな」


 バーベキューの食材をトレーに乗せて持ったペローが、白目を剥いた怒り顔で登場。本当に増えている、見知らぬような見知っているような気配の3人に、心底面倒臭いと隠さない顔をして……自分がアリスメアーの三銃士であることを相手がわかっているのを表情から看破して、己から自主的に距離を取られるように言葉を荒らげる。

 悪人と慣れ合わせるのは、色々と良くないだろうから。

 そういった悪い配慮はできるペローだが……その思惑がまず上手くいくわけもなく。


 偽りの自己紹介をしてから、エーテは一歩前へ。


「お世話になります───ベローさん!」

「おいこらなんで間違えた!?定番なの?往年のネタなのそれって!!だいぶ傷付くんだぞ名前間違えられんの!!小学生のいじめの発端になるようなデリケートな話題なんだぞわかってんのか!!」

「すごい必死じゃん。なんかごめんね」

「憐れむんじゃぁねぇッ!!」

「ごめんウケる」

「ダメだよ笑っちゃ」

「ギャグね」


 ファーストコンタクトは完璧だ。

 三銃士全員と遭遇した魔法少女たちは、これはもしやと気合いを入れる。自分たちの行動、発言次第で、これから戦闘が起きかねないから。

 だいぶ今更かもしれないが……アリスメアーの巣窟からちゃんと生還する為に。

 いい感じに時間を潰して、回復待ちの魔力が戻ったら、すぐに逃げ出せるように。


 潜伏か潜入か。後者を選んだ3人とネコ娘は、恐る恐る視線を下に向けて、砂浜にいる2人を見る。


「うぅん……見知らぬ御仁。申し訳ございません、どうか私めを助けてくださいませんか」

「なんで砂のお城」

「おっぱい盛られてる……」

「乳首に塔建ってない?」

「やめてください」


 首から下を砂に埋め、胴体の上に砂のお城を築城されたメードが、半泣きで訴えるが、勿論のこと4人は無視……卑猥な位置に建つ城から目を逸らして、次に。

 丁寧に城に形成して、砂遊びをしていた……猫のように瞳孔を鋭くさせて、ガン見する幼女と向き合う。

 無言でジッと見られて、思わず冷や汗が流れてくる。


「……」

「……」

「……」


 数秒か、数分か……見つめ合い。先に言葉を発したのはロリ体型になった女王、リデル。


「だれだオマエら」


 全員コケた。


一方その頃。

???「……あれ、だれもいない。え?」

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― 新着の感想 ―
リデルは「オマエは気づけよ」とか言われるやつ(気付かれたら困るけど) ボケが渋滞してる……! 助けてママッドハッター!
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