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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
悪夢の国のマッドハッター

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35-怪人たちの反省会


「うぐぅ……」

「存在アピールなんて考えるからだ。思いつきでやるな。そこの三銃士自慢の新兵器の話題が流れて、可哀想だとは思わないのか」

「旦那、その指摘がトドメになるんだぜ…」


 布団にくるまって、冷えピタを貼ってまで呻き苦しめるリデルを介抱しながらそう言えば、自主的に正座していたペローがショックで床に頭を打ち付けた。

 ごめんて。あと始末書書きたくない代わりに正座すんのやめな?別にいらんから……うち、そういう書類作業とは無縁の世界だってこと知ってるでしょ?

 頭下げるんならそこの猫が下げるべきでしょ。

 また戦闘中に寝やがって、人工知能に全部任せて最後に大爆発させたんだから。


「すぴぃー……すぴぃー……」


 ソファ占領して寝やがって。ATMくん、だっけ?なんでそんな名称なんだか……ちゃっかり回収した装置の心臓、修理とか改造とかしなくていいのかい?

 寝る優先なのは、もう……つっこまなくていいか。


 うーん、人工知能に全部任せて、自分は魔力供給だけに専念するのは悪くない案だとは思うんだけど……やっぱり大変だねぇ。怪人側に立つと、対魔法少女が如何に面倒か理解できるよいになる。

 かつての僕も、あのクソどもにそう思われて……うん、なんかムカついてきたな。


 復活怪人計画、絶対瑕疵入れて適当なのに仕上げてやるからな。


「それにしても……」


 たった一発魔法撃っただけでここまで弱るとは……大分弱体化してんね、こいつ。前回の僕に討伐されて数日後に復活、その時にしぶとく存在していた僕の魂も巻き添えで蘇生しちゃった上、支配下に押そうとしたら魔力の大半を僕に持っていかれた大間抜け。執念で力奪い取った僕にも否はあるけど、それはそれ、これはこれ。

 どちらにせよ今の弱々しい姿を見ると……なんだろう、すごい精々する。

 こいつよくよく僕にマウント取るけど、おかしいよね。

 勝ったのは僕だしぃ?実力的には負けてても、総合値で勝ってますしぃ?

 キルシュナイダー先輩に手ぶった斬られた時の幻肢痛でまた苦しんでしまえ。


「魔法一発でこれなら……当分は魔力補給に勤しんだ方が身体の為にもいい。吾輩、医者ではないので適当なことは言えないが……多分なんとかなるだろう」

「めっちゃ適当なこと言ってるじゃん。矛盾早くね?」

「気にしすぎると禿げますよ」

「禿げねぇーよ!?親の遺伝的にも!先祖代々の写真でもみんなフサフサだったもん!!」

「…必死すぎてダサい」

「チェルシー!?」


 大の男がもんなんて言うな。全っ然可愛くないから。


「……ところでなんスけど。あの湖、吹っ飛ばしたのってよくなかったんじゃ……」

「あんなもの魔法でどうにでもなる」

「そうなの?」

「私は存じ上げませんが……」

「気にせんで宜しい」


 リデルの思いつきで奈落になったあの湖。こいつの魔法攻撃は、魔法少女が勝った後に発動する自動修復の魔法を完全無視して残るから、アニメでよくあるなかったことにできないんだ。三銃士とかは好きに壊しても、魔法少女が勝ったら自動的に直るから問題ないんだけどね。

 僕も自動修復が働くよ。勝っても負けても、ね。

 でもリデルは違う。悪夢の根源、地球上のあらゆる夢の悪現象は全部この女王に繋がっている。元を辿れば“夢”の全てがリデルから始まって、リデルに終わるんだけど。

 そのサイクルが正しい形に戻ったのはつい二年前。

 今は徐々に回復傾向にある、って言った方が正しい……の、かな?


 とにかく、リデルには大人しくしてもらいたい。二度と思いつきで攻撃表示するな。


「粥の材料買ってきたぞ」

「ご苦労。そこに置いといてくれ」

「おう」


 おかえり。撤退早々、率先して買い出しに行ってくれたビルが帰ってきた。無事でなにより。種類豊富だから大分悩んだんじゃないの?と思って確認すれば。ビル、全種類買いやがってた。買いすぎぃ。

 後で適当なのに選んで、リデルに食べさせるとしよう。


 ……そういや、全然話変わるけど。今日の戦い、ほんと惜しいとこまで行ったなぁ。

 あの完全オリジナルアクゥームとかもよかったし。

 メードの奇襲も良き。ゾンビボディを活かして自爆とか首切りとかを凌いだ精神力も強くって、ちゃ〜んと鍛えた甲斐があったのを実感できた。

 最後の最後で……またあの妖精の妨害が入って、失敗に終わったのが痛いけど。


「……おい、さっき、魔法一発とか言っとったが……私、正確には二発だからな……」

「いや、誤差だろそれは。イキるな」

「むぅ……」


 それ、あの手のこと言ってる?いやー、それはどうだ?あの程度の魔法でそんな威張んなよ。ただ魔力で拡大した右手を顕現させただけだろ。そんな攻撃力ないし。ただの足場やんあれ。穂花ちゃん掴むの失敗で役目終えたし。

 なんなのこいつ。演出なんかで魔法二つ使いやがって。弱体化してからネットに被れて、そーゆーのにくだらねぇ意識割きやがって。


 ……結局あの魔法、僕の魔力で維持してたの忘れてんなこいつ。追加で罪が増えるのどうなの?いい加減にしろよこんちくしょう。


「メード、首と左腕を出したまえ。手当てをしよう」

「……?必要ありますか?」

「治癒魔法だけでも十分ではあるが、魔力を繋ぎ合わせて接合部を強化しよう。細胞同士の癒着が早まる。専門性は後回しだ。今後でいきなり腕が取れる、首が千切れるだのされては困るからな」

「わかりました」


 素直に従うメードの頭を撫でてやりながら、容赦のないブルーコメットと慈悲のないほまるんの魔法で破壊された身体の部位を再修復。戦闘中に治療はしてたけど、あんま信頼できないからねそれ。土壇場のだし。

 安全で静かに作業できる環境で治した方がいいんだよ。

 実体験も踏まえての説明と共に、メードの身体に触れて魔力を流す。


 うーん、やっぱ雑だなぁ。見てよかった。


「っ、くっ……」


 喘ぐな。これ医療作業だから。顔も歪めるな……そんな痛かったりくすぐったかったりする?オマエゾンビだから痛くも痒くもないだろ。いやならパパっと終わらせるぞ。

 細胞とか血管とか神経とか、一回千切れたのをもう一回魔力で繋ぎ合わせて、なんかこう、いい感じにする。万能なんだよ魔力って。これ本当に身体に害がないのか不安になってくる。

 乱用してる身で言うもんじゃないけど。やっぱ魔力って不思議だなぁで終わる。


「……終わりだ」

「……ありがとう、ございます」


 首をコキコキ腕をぐるぐる、身体の不調を確かめる姿を横目に眺めながら、アリスメアーのメンバー全員が集まる医療室をちょっと片付ける。布団と消毒液ぐらいしかない環境だけど、まだなんとかなるか。

 増やしても管理できないし。怪我しても魔法あるし……最悪表の病院で安静してもらうってことで。

 ぶっちゃけメスとか武器にしかならん。切れ味いいのが悪い。


「さて……今後の話をしようか」


 そろそろ魔法少女の話でも、どうかな。大事だからね。


「我々は、暫し盲目的になっていた。リリーエーテ捕獲に意識を割きすぎた結果、それ以外の要因……他の魔法少女や妖精たちを蔑ろにして、失敗に繋がっている。もし仮に狙うのであれば、周りから崩すしかないが……現状、まだ悪夢の種に縋るほど魔力に困っていないのも、また事実。ここは一旦目標を切り替えて、元の主題……“魔法少女”の根絶に向けて動こうと思う」

「……それって、結局のところ……」

「まぁ、意識的な話だ。リリーエーテの捕獲は、奴を守る要因全てが倒れ、月がまわってきたら、だな」

「確かに、捕まえた後から救出に動かれても困るしな……こいつは言われた通りにした方が良さそうだ」

「……了解…はふ……」

「かしこまりました」


 リリーエーテを狙いすぎて、それ以外が疎かになっちゃ本末転倒だもん。組織運営をしている身として、ここまで失策が続いているなら、一旦方針を変えるしかない。

 重要視していることに代わりはないが……今はまだ。

 取り敢えず、今の魔法少女をぶん殴って黙らせて、もう動けないなって判断できた時に持って帰ればいい。死体になられると困るから、生きたままでいてもらうし……他のメンツも死なれるの困るし。死体処理とか世間の醜聞とか戦力の減少とか、色々と悩みどこが多いからさ。

 魔法少女には程々に痛めつけられてもらって、そのまま僕らの糧になってくれ。


「夢想魔法……だったっけか?あれどうにかならないの?調整した割には殺意高い気がするんスけど。あん時の布が無けりゃ死んでたよオレ」

「チェルシーの夢幻で対処はできるが、それ以外はな」

「……そういえばペロー。貸し出したあの布はどうした。手持ちにないようだが」


 ゴナー・ホワイト。魔法少女時代、この僕に取り憑いて悪さしようと画策した、白い布みたいな幽霊怪人。なんかあっさり殺られて生きたまま解剖されて、いいように利用されて終わった怪人だけど……うん、雑魚かった。

 なんでこう、僕に勝てると思い込んでる奴らは弱いのが多いんだか。

 布を操るっていう性質は汎用魔法に組み込めそうだから解析したけど、使い道あるの5枚ぐらいしかなかったし。

 “ひらひらのお誘い”ってのは、所謂攻撃を逸らす布。

 そいつを再現したのをペローに渡したのが、先の戦闘で使われたのだけど。


「えっ、あー……はい」

「失くしたのか」

「スぅー……やぁ、ちょっとここでは言いづらいんで……ちょっと耳貸してください」

「ないが」

「出して」


 仕方なく帽子頭、ハット・アクゥーム越しに耳を傾けてやれば、近付いたペローからこしょこしょと呟かれる。

 いい声してんなオマエ。流石はホスト。離れてほしい。


「あの……女王サマの魔法から逃げる時に、落っことしたみたいで……」

「……消し炭になったわけか」

「恐らく」

「許そう」

「あざす」


 それは責められないわ。寝込んでるガキンチョが悪いんだもん。


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