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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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326-世界は黄金に支配される


 赤く染まった手。


 胸に穴を開け、目の前で倒れ伏す───動かなくなった悪友の亡骸。瞳を閉じて、満足そうに、笑みを浮かべて、二度目の終わりを迎えた馬鹿女郎。

 どうせ、また復活させるけど。

 数分ぐらいは、そのまま意識を失ってろと思いながら、僕は天を仰ぐ。


 マーブル模様の空に翳した手は、綺麗なぐらいに赤く、美しい。


「………」


 心臓を貫いた手の感触が、まだ、僕の手から離れない。ノワールの思惑通り、慣れない身内殺しに、身体が僅かに震えているのが、わかる。

 不快だが、まぁ、これは慣れればどうってことない。

 でもきっと、慣れた時が……人として、終わった時なんだろうけど。


 もう、鏡の世界からは脱出できる。自分を、この空間に押し込めていた力が、ふわりと消えたような感覚が、今、あったから。あったけれど。

 ……もう少しだけ、ここにいる。

 どうせ戻ったところで、取り込む予定だったリブラは、いないだろう。可能性、或いは願望を詰め込むのなら……メードがどうにかしてくれたりしないだろうか。

 そんなことを思いながら、ノワールの死体を眺める。

 一応、原形は留めてるけど……我ながら、酷い殺し方をしたと思う。


「はァ……」


 仰向けに倒れたノワールに、どの感情から来てるのかもわからない溜め息を吐いてから……形だけの治癒で、穴の空いた胸を修復して。

 その上に、毛布をかけてやる。

 起きた時に、寒いと嫌だろうから。んまぁ、この空間に暑いとか寒いとかの概念は、無いっぽいけど……そこは、気持ちの問題だ。


 腰掛けられる場所はないから、仕方なく、こいつの傍に渋々腰を下ろす。

 胡坐をかき、一息つく。

 ……ココアでも淹れるか。実はね、チョコレートポットとかいう磁器を持ってきててね。それに色々と材料ポイ、ついでに回復ポーションも放り込んで、混ぜ混ぜ。

 詳しいやり方は知らないから、我流で。

 死体の傍でやることじゃないだろうけど……まぁ、今はいいだろう。


「んっ……ふぅ…」


 ちょっと熱かった。


 フーフーと吐息で冷ましながら、決戦の趨勢をチラッと確認する。今のところ、幹部戦で優勢なのはこっち。もう将星が六人、将星級が一人倒れた。

 “双星銀河”は力を抜かれ。

 “溢水叛土”は小さくなり。

 “恋情乙女”はボコボコにされ。

 “聖印乙女”は気絶した。

 “天秤崩界”は……メードが連行中。

 “斬星儚魚”は僕が下した。

 そして、今。“魔幻廻鏡”なんて名前を賜わったバカも、僕が誅した。


 バカのせいで大陸惑星は大混乱っぽいけど、そこら辺はどうにかなるだろう。


 ……芸術家とか言うヤツ、何処にいるんだ?さっきから探知してるのに、影も形もないんだけど。ルイユたちから地球侵攻の報告を聴いたから、そっちにいるのかな?って思った割には、それっぽい報告はないし。

 うーん、何処に隠れ潜んでるんだが……

 薄らとした気配を辿るに、この暗黒銀河にいるのは確かなんだけど。


 ふんっ……まぁいい。僕が次動くのは、ライオン丸と、アリエスが動いてからだ。


 それまで、ちょっと。


「ったく、さ……拗れたヤツの面倒は、ほーちゃんで満腹なんだよ」








꧁:✦✧✦:꧂








───同時刻。

 “星喰い”ニフラクトゥと、“輝星王獣”レオード率いる、各陣営の“王”たちの戦い。玉座の間を舞台にした決戦は、大方の予想通り、とでも言うべきなのか。

 終始ニフラクトゥが優位に立ち、その星の暴性をもって叛逆者を圧倒する。


「まだ折れぬか、レオード」

「当たりめぇだろう、がッ!テメェが、死んで、死んで、死にまくっても!俺は死なねェ。何度でも、テメェの玉を取るだけだッ!」

「よく喋る」


 不屈の闘志は、未だ折れず。

 血を吐き、傷だらけのレオードだが……尚も懲りずに、ニフラクトゥの命を狙う。暗黒星雲を手繰り寄せ、防御や攻撃に転ずる蛇の攻撃には、黄金をもって対処する。

 黄金の鎌で、拳で、蹴りで、時には牙で。

 一切小休憩を挟まず、レオードは攻撃を重ねる。防御は最小限、回避優先でニフラクトゥの攻撃を捌き、不注意に気を付けて攻撃を浴びせる。

 そのどれもが、軽々と防がれてしまうが……

 一発でも当たれば、高速黄金化で血肉が変わり、強引に砕け散る。つまりは即死。当たれば確殺……そんな攻撃を持っているのにも関わらず、皇帝には届かない。

 あれから既に、何分も経過しているが……

 レオードがニフラクトゥを殺せたのは、たったの二回。その内の一回は、コルボーの腐蝕攻撃を誘導した心臓貫通である為、手柄は彼女のモノだが。

 それでも、命の残機は31,191。

 途方もない数の命の壁が、悠然と、蛇の形でレオードに立ち塞がる。


「いっつぅ……うぐっ…」

「ハァ、ハァ…ハァ…」


 従僕であるフェリスとコルボーも、負けじとその攻防に食らいつくが……

 やはり、力不足で。

 幸運を齎すフェリスは、両足を消し飛ばされ、地べたを這うことしかできず。死を運ぶコルボーは、両翼を腕ごと捥がれて、腕のない状態で倒れていた。

 どちらも重傷。治癒ポーションでも、流石に欠損までは治せない。治すには、より高度な魔法を使うかしかなく。今この場に、それができる芸当の持ち主は、いない。

 たからこそ、2人は見ていることしかできない。

 主君の奮闘を。

 泥臭い、黄金色の死闘を───“淵星”の闇に押される、王の後ろ姿を。


「らァッ!!」

「温い」

「ッ、がはッ!?ぐっ、シィッ!!」

「……耐え忍ぶか。諦めの悪さ、用心深さ、執念深さは、確かに、オマエの美徳だな」

「るっせぇ、よ!」


 ニフラクトゥの攻撃は、一つ一つが凄まじい。まさに、天変地異が意思を持ったかのような、災害級の攻撃の数々が、一個人に降り注ぐ。

 その全てを捌くのは、誰であろうと至難の業。

 傷が増えていくのはレオードばかり。ニフラクトゥは、死んだら身体の傷が更新され、死ぬ前の健康体に戻る為、未だ綺麗なまま。


 現状、唯一の怪我は……黄金の鎌に切り落とされ、金に染まった右腕のみ。片手を斬っただけで、本来は全身まで黄金に染まるモノなのだが。

 ニフラクトゥは、染まらない。

 致命傷箇所以外は、ニフラクトゥの魔力防御・耐性を、少しでも凌駕する魔力量で攻撃しなければ、そこから伝播することもない。それ故にレオードの魔力消費は著しく、限界は目に見えた先にある。

 それでも食いつくのは、王手もまた目の前にあるから。

 “星喰い”を足止めできる、現状唯一の勝利手段。封印の勝利は、それを使えばできる。

 完全な黄金像にさえすれば。


「ふっ」


───淵星魔法“(ゼウス)”<コズミックストーム>


 足掻く獅子の首根っこを掴んで、ニフラクトゥは魔法を行使。その身に纏う暗黒星雲を大きく振り払い……濁った虹色の宇宙嵐を発生させる。

 その嵐に、藻掻くレオードを突っ込む。


「テメッ」

「頑張れ」

「ふざけッ、ガッ───!?」

「逃がしはせんよ」


 身体を引き裂く星嵐は、レオードの背中をズタズタに、魔力までもを破壊していく。身体は焼かれ、凄まじい激痛が襲いかかる。放射線も凄まじく、外部被曝で細胞が壊れ肉体が悲鳴を上げる。

 轟音を立てて渦巻く嵐から、レオードは逃げられない。

 それでも、悲鳴を上げることはなく。歯を食いしばって痛みに耐える。


「ぐっ、野郎ォ…!」


 凄まじい痛みだ。

 常人では耐えられない。

 だが、レオードにとって……その激痛は、決して耐えれないモノではない。


 全身が攪拌されるような痛みに苛まれる中、レオードが想起するのは……数日前のこと。

 ラピスとライトとの、鍛錬の記憶。


 そこで彼は、次々と襲いかかる殺意の波動に、致死量の大技を喰らいまくった。歴戦の将星でもあっさり死ねる、圧倒的な暴力の数々。

 悪夢を滅ぼさんとする戦乙女たちの、底力。

 何度も殺され、何度も生き返り。徹底的に力の底上げを強制された、あの日。


「こんなもん……こんな、ものォ!!」


 共に殺されまくった元・将星の中で、レオードは、最も生き残った回数が多かった。

 他の二人が塵になった横で、耐え忍んだ。

 彼の力は、黄金による支配力や、破壊力だけではない。不屈の闘志から成る、耐久力。死の瀬戸際で、落ちまいと足掻き続け、生存する。

 それがレオードだ。

 死にかけだろうと、抗い、そして、勝利までの一手を、この手にする。


「黄、金ッ!魔法───ッ!!」


 声を張り上げ。

 怒号を飛ばし。

 ボロボロの魔力回路を、無理矢理隆起させて。黄金を、発露させる。


 目の前にあるのは、高く遠く、遥か天上にある最頂点。遥か高みには手が届かない。一息では勝てない相手。絶対強者の前では、ただの強者は無力に等しい。

 だが、一息で相手に挑む必要はない。

 一歩一歩愚直に踏破すればいい。着実に、目の前にある一歩分の高さを、どうにかこうにか乗り越える。それで、王獅子はここまで登り詰めた。

 後は、手を伸ばすだけ。

 手を伸ばせるだけの高さまで、レオードは、百年かけて辿り着いた。


 星嵐に侵されながら、レオードは、味方を巻き込んでも構わないと言わんばかりの勢いで。

 魔法を、解き放つ。


「勝ちの線は見えてんだよ───最大出力ッ!<ミダス・エル・ドラード>ッ!!」

「それは無駄だと……ほう?」


 現時点で、玉座の間は黄金に染まっている。レオードが黄金の魔法を解かない限り、永遠に。だが、そこに上乗せするように同じ魔法を発動する。

 黄金郷を創り出す魔法。永遠に続く、黄金の世界。

 絶対支配の法が、視界を埋め尽くす光が、瞬く間に嵐を固形化させ、黄金化させて。レオードを掴んだままだったニフラクトゥは、咄嗟にその手を離すが……

 それよりも速く、レオードが牙を剥く。

 濃厚な殺意を滲ませた王獅子の四牙が、ニフラクトゥの首に噛み付く。


「ぐっ…」

「ククッ、首元がお留守なんだよ……さァ、もういっちょ黄金になろうぜ?」

「レオード、貴様ッ」


 黄金は肉体の芯まで届く。

 それ故に、牙を突き立てようと関係がない。だが、よりニフラクトゥの内側へと黄金は浸透する。皮膚の下、骨に守られた、血肉の奥の奥。

 闇色に輝く、深淵の星───ニフラクトゥの魂まで。

 肉体を黄金にするだけでは止められない。

 ならば、しっかり魂まで黄金に。生憎、レオードの目で魂を視認することはできない。できやしないが……裏技はある。


「見つけたぜ」


 金の瞳を、蒼く光らせ───魔法によって、その“魂”を捉える。幾つもの“命”を内蔵し、大きく膨れ上がった……ニフラクトゥの根源を。

 ラピスから借りた、【観測魔法】という魔眼の魔法。

 魂を観測することで、正確に、一切の誤差なく、怨敵の魂を掴んで。


 輝星が、照らす。


───黄金魔法<ミダス・エル・ドラード>


 王獅子を起点に、世界は黄金に染まって───魔城を、帝都を、主星を。


 今度こそ───黄金が、世界を支配する。


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― 新着の感想 ―
説明から見ると、「夢羊」は「獅子」の脱出装置でしょう。そして、彼女たちを脅かす敵はいません。なぜなら、「将星」レベルだけが彼女たちに対抗できるからです。しかもその段階の強者は交戦中か、すでに敗北してい…
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