316-神なき乙女の恋聖戦
神とはなんだ。
どんな形をしていて、どんな声を持っていて……どんな奇跡を起こしてくれるのか。
信仰していた。
崇拝していた。
求められるがまま、それが正しいのだと教わって、ただ愚直に信じ続けた。
だが。
───神の救いは、“彼女たち”には降りて来なかった。
信じていたのに。
悪徳は肯定され、善意は否定され、捻じ曲げられ、まず見られることもなく。
聖女だった彼女の祈りは、届かなかった。誰も死なず、平和な未来など終ぞ訪れなかった。
後輩は死に、悪夢となり。
もう一人の後輩は、未だ、戦乱の世界にその身を投じ、辛うじて生きているが。
たくさんの仲間が死んだ。
たくさんの守るべき民か死んだ。
信仰心は、届かなかったのか───自分を含め、多くの命が散っていった。
もう一人の聖女とその姉妹は、信仰そのものが穢れて、間違いであることを知らなかった。
利用され、使い潰され、壊されかけて。
信仰のしの字もない、権力と名誉に取り憑かれ、支配に傾倒した背信者たちの行いに、神の名を穢され……異邦の戦士たちが来るまで、ずっと苦しみ続けた。
その間、神罰は一度たりとも落ちなかった。
信仰に裏切られ、神の存在を疑い───それでも、未だ神を信じる誰かの為に、その手を捨てなかった。やさしき心の持ち主たち。
「勝つのは、私たちです!」
───天掌魔法<ヴィルゴスシエラ>
古くから伝わる聖柱を大きく振り回すのは、将星が一座スピカ・ウィル・ゴー。“恋情乙女”の名を冠する彼女は、敬愛する皇帝に勝利を捧げんと躍り出る。
“空”を折り、敵対する魔法少女を今度こそ打倒せんと。
「ねぇね、がんばって!……あっ、ちょっ!こっちに攻撃飛ばすのやめてっ!?」
「バカ言ってんじゃないわよ!」
───祈聖魔法<オラクルライト>
───死告魔法<アズライール>
そんな姉の背を、次女ポリマと三女デミアがサポート。ステリアル星教会の聖座たるポリマの、神がかりな祝福がスピカを強化、傷を常時癒すと同時に魔法実力を底上げ、常に全開の覚醒状態を維持させる。
その代償として、相手から高頻度で狙われるが……
“死天使”デミアが、両目から血を流しながら重力攻撃を殺して対処する。
「魔法を殺すぅ?意味わっかんな〜……そーゆー分析は、専門家たちに任せたいけど。いないから、仕方ないよね。強引に行くね」
空間攻撃、祈りのバフ、死のお告げ。その全てを一人で対処するのは、魔法少女の第三位。“力天使”の魔法少女、エスト・ブランジェ。
それも、ドリームスタイルに覚醒した姿で戦っている。
三対六翼の純白の羽を広げて、無数の十字架が刺さった黄金のヘイローを頭に戴くブランジェ。元から顔の半分を隠していたヴェールを翻して、聖騎士であり天使であり、魔法少女でもある戦乙女が飛ぶ。
一番厄介なのは誰かは決められない。
スピカの“空”は重力で突破できるとはいえ、その規模が広がればまた話は変わってくる。ポリマの支援でより破りづらくなっているのも事実。加えて、デミアの死を告げる魔眼も厄介。発動されれば視線が強制的にそちらへ向かい逸らすこともできず、こちらが血反吐を吐く始末。幸い、ブランジェは不死である為効果は今ひとつだが……油断はできない。
「天掌魔法ッ!」
「重力魔法!」
「祈聖魔法───ッ!」
「死告魔法…!」
天使たちの魔法が吹き荒び、聖堂を崩しながら、4人は大立ち回りを演じる。一番激しいのはブランジェとスピカだが、置いてかれまいとついていくスピカと、デミアから放たれる牽制もいい感じにブランジェに刺さっていた。
スピカなら聖槍。
デミアなら魔銃。
どちらも星教会が管理する武装であり、許可が無ければ持ち出しも許されない。まぁ、許可を出すのはここにいる聖座なのだが。
「ったぁ!」
「っと!うーん、弱いんだからすっこんでればいいのに。死んじゃうよ?」
「だいじょーぶっ!わたし、運いーから!」
「ふぅん?」
ブランジェの頬を掠めた聖槍の刺突。正確には、聖槍を突つくという動作で、遠くにいる対象をチクチクと刺せる遠距離攻撃対応型の聖槍の刺突だ。結果の押し付け、とはまた違い、軌道上の対象に矛先が伸びて当たっているが、見えていないだけ、触れられないだけ、と言った方がより正確である。
戦い慣れていないスピカでも、近くに寄らずその場からブランジェを攻撃できる。とはいえ、ブランジェの素肌が硬すぎて、虫刺され程度の傷しかつかないのだが。
それでも鬱陶しいことに変わりなく。
聖槍カメナーエ。白色の槍で、姉妹にバフかけを行うと共にチクチク攻撃する。
「動くな!って言うんでしょ?」
「どこ情報かなー!?」
勿論ブランジェは重力球を飛ばすなりして攻撃するが、それを遮るのがデミアの仕事。ハンドガンの形をしたその魔銃は、障壁貫通の効果を持つ魔力弾丸を撃つ魔導具だ。弾丸要らず、本人の魔力で弾丸を補充する。
勿論、ブランジェ相手には弱いが……
嫌がらせの牽制にはなる。チクチクと、そして死の瞳で足止めはできる。
「んんん〜、厄介だなぁ。さっきよりもキレがいいし……うーん、ドリームスタイルになったら楽になると思ってたのになぁ。足手まといが増えたと思ったのに、ねぇ?」
「すいませんね。大事な妹たちの前で、無様に負けるのは許容できませんからっ!」
「お姉ちゃんだなぁ」
奮起するスピカの“空”と聖柱を、ブランジェは天守りの盾で容易く防ぎ切る。先程まで精細を欠いていたスピカの動きは断然違い、ポリマの祈聖のバフもあってより速く、より強くなってブランジェに攻撃していく。
聖柱も何処か重く感じ、防げば足が地面に沈む。
防御中は死の弾丸を食らわされ、ブランジェは舌打ちをするしかない。
「頑張るなぁ、ほんとっ!」
───重力魔法<ヘブンズ・グラビティドーム>
超強力な重力が聖堂内部に発生して、立ち向かっていた三姉妹を上から押し潰す。容赦などしない。敵は敵。その脅威度を、そして誇りを認めて攻撃する。
凄まじい重力圧に、天使たちは抗えない。
「うぐっ…」
「ひぎゃぁっ!?」
「っ、うっ…」
「ほらほら、このままだと潰れちゃうよぉ〜?」
「ぐっ、うっ……こんな、もので……私を止められると、思っているのなら!大間違い、ですっ!」
「お?」
悲鳴を上げる三姉妹。一番ダメージを感じているのは、荒事に向かない性格のポリマ。デミアはまだ、拷問された経験があるからか、痛みに慣れている様子。
だが、それでも限界は来るもの……
同じく苦悶の声で呻いていたスピカは、これ以上は妹が耐えられないと、震える身体に鞭を打って、ブランジェの容赦ない刺突攻撃を“空”で防ぎながら、その“空”で上空をひっぺ返す。上から重力が落ちているのなら、その部分を切り取ればいいだけのこと。
その目論見は当たり、覆い被さっていた重力場は“空”に破られる。
「ね、ねぇね!」
「ぐっ……ありがとう」
「わーお。まさか本当に……んもう、すっごい楽しませてくれるじゃん!」
「ふん!」
妹たちかはの感謝も程々に、スピカはブランジェに向け再度突進。苛立ちを形にするかのように、聖柱をその身に振り落とす。
ブランジェは不壊の重撃を天砕きの槍で跳ね除ける。
「くっ!」
「硬さに自信はあるよ?」
「力、の間違いでしょう!」
「アハ、バレた?」
───重力魔法<ヘブンズ・トランペッター>
───天掌魔法<ヴィルゴス・ゴーン>
重力砲と空間破壊砲、二つの砲撃が激突する。凄まじい衝撃音が響き渡り、戦士たちの耳を劈く。空間が揺れて、グラグラと建物が音を立てる。
妹たちが吹き飛ぶのを横目に、スピカは力を上げる。
この戦いは、早期決着すべき戦いだ。重力使い程危険な魔法使いはいない。魔法少女の中でも最上位にいる敵を、この場から外に出すわけにはいけない。
だからこそ、スピカは使命感をもって挑む。
皇帝の為に、暗黒王域の為に。ここで、この魔法少女を討たんと。
「ハァァァァァァァァ───ッ!!」
叩く。穿つ。抉る。蹴る。折る。割る。壊す。破る。
徹底的に、集中的に、積極的に、エスト・ブランジェの躯体を破壊せんと。己も吐血し、身体をガタつかせ、妹の支援で足を止めずに行動に移し続ける。
その執念は、皇帝への愛が成す賜物か。
ポリマがいなければできない。彼女の祈りが、スピカを後押しする。その前進を止められる者はこの世にいない。将星としてだけでなく、二人の姉として、スピカは負けるわけにはいかなくなった。
……だが、ブランジェもただではやられない。ドリームスタイルとなったことで、彼女の魔法出力だけではなく、耐久力も馬鹿にならない程跳ね上がっているのだから。
笑みを絶やさず、彼女は踊る。
純白の羽を羽ばたかせ、ヘイローを輝かせ、天使サマは宙を舞う。
「楽しいね!」
「愉しいね!」
「素敵だね!」
「綺麗だね!」
「でも、でも、でも───戦いには、必ず終わりがある。永遠に終わらない戦いなんて、そんなの、もう、戦いじゃないんだから!」
夢心地に浸りながら。踊るように、歌を唄うように……エスト・ブランジェは全ての攻撃を捌く。傷つきながらも表情を歪めることはなく、ただ、笑顔のまま。
戦いは好きだ。
ただし、いつまでたっても終わらない戦いなど、彼女は決して認めない。
何事にも、終わりはあるべきだ。
その終わりに、少しでも“救済”があるのなら……それは最も尊ぶべきモノである。
悲劇塗れのこの世界。ならば、悲劇は少ない方がいい。
自分が生み出すのは、殺戮だけにあらず。欠片ほどある信仰心に従って、そして、この家族思いな可愛い三姉妹を思って。
そして、それ以上に───“苦”に満ちた顔よりも、まだ笑顔の方がいい。
「そろそろ終わりにしよっか!でも、それはそれとして!そんな辛そうな顔しないでさ……笑顔で戦おう!これは、私たち天使の、信念のぶつけ合い!余計なモノはぜーんぶ削ぎ落としちゃって……4人で、最後まで!!」
「本気でぶつかろっ!私と!最後まで、楽しもっ!!」
───重力魔法<ヘブンコール・コンプレッション>
聖堂内の重力を手の中に圧縮して、周囲を無重力空間に作り替えながら。戦意に満ちた笑みをもって、彼女たちもこっちにおいでと誘う。
苦い顔も、苦しむ顔も、彼女は赦さない。
笑顔を忘れるな。どんなに辛くても、誰かの為に戦うのであれば、笑顔であれ。笑顔の始源である、攻撃的なモノでもいいから。
笑って勝とう。
笑って負けよう。
そっちの方が、まだ───どんな終わりであろうとも、救いがある。
無重力故にふわりと浮かび上がって言うブランジェに、スピカたちも浮遊しながら思う。
確かに、魔法少女は笑顔の持ち主が多い。
どんな逆境にいようとも、笑顔を忘れず、諦めない心で苦境を乗り越え、絶望を切り抜ける。例え死んでしまおうと、後悔しない生き方をしている。
決して、染まろうとは思わないが。
……確かに、偽りでも笑顔を取り繕って、心を弾ませ、勝ちに行った方が。
気持ちがいい。
「……仕方ありませんね。乗ってあげましょう。その上であなたをぶちのめしてあげます」
「い、痛いのは嫌だけど〜……いーよ、ニコニコね!!」
「乗せられてる気しかしないのだけど……はァ、いいわ。乗ってあげる」
形だけの笑顔、とまでは言わないが。指で笑顔を作ったブランジェに、苦笑いを浮かべ合いながら。
覚悟を決めて、笑みを作る。
好戦的に。見ていられる笑顔になっているか。不細工になってはいないか。そんな不安を他所に、戦意を高まらせ終わったスピカは、聖柱から手を引き抜き、乱雑に床へと放り投げる。
魔力はまだある。だが、それはポリマの支援ありき……ポリマの魔力が絶えてしまえば、本末転倒。ならば、その誘いに乗って、終わりへと突き進むべし。
その終わりは、勝利。
ウィル・ゴー姉妹の勝利をもって、この戦いに終止符を打つ。
「ここが正念場です。行きましょう」
「うんっ!3人で力を合わせて、勝とっ!!」
「……こういう共同作業は何気に始めてね。始めてぐらい成功させて欲しいのだけど」
「んもう!デミちゃんってば悲観的なこと言わない!」
「えぇ、そうです。成功は絶対です。私たちの勝利こそ、戦局を大きく変えるのです。戦闘狂の変態をぶちのめして陛下に勝利を捧げます」
「……そうね」
「待って!?今変態って言った!?ちょっ、すっっっごい心外なんだけどッ!?」
「黙りなさい」
会話を挟んで、茶々を入れてから───三姉妹は、その手を重ね合わせる。
三つの力を。魔力を束ねて、トドメの一撃とする。
「“恋、掴め”!」
「“恋、祈れ”!」
「“恋、狂え”!」
スピカの天に届く力。
ポリマの天に祈る力。
デミアの天に背く力。
ステリアル星教会の三本柱。星空に座す戦乙女たちの、始めての共同作業。
相手は“力天使”の魔法少女。故に、不足無し。
束ねられた手のひらを、上へと持ち上げて。手のひらを基点に発生した、神聖な気配のする特大光球に、三姉妹は勝気な笑顔を向ける。
特大光球は、独りでに手のひらから離れ、空中へ。
無重力空間なのが契機となったのか、浮かび上がる光は三姉妹の制御下にあるまま、周囲の空間を歪め始める。
相手が重力を奪っているというのなら。こちらは空間を奪ってやろうと。天掌で“空”に干渉し、祈聖の清浄である輝きを、死告をもって暴力的な輝きに束ねていく。
空間と光球が融合する。
特大光球の存在は、この世界にあってはならないモノ。空間は剥ぎ取られ、真っ黒な“虚無”が大聖堂のあちこちに発生する。
「っ、うっ…」
「かはっ、ぐっ…」
「───耐えなさい。何がなんでも、勝って。いいとこ、見せますよ!!」
「う、んっ!」
「えぇ…!」
その分彼女たちの身も削られるが……悲鳴を噛み殺し、悲壮感のない、覚悟を決めた顔を維持して。絶対に勝つと意気込んで、魔力を注ぐ。
何故ならば、この光球は彼女たちの力そのもの。
意もしない神の光ではなく───ウィル・ゴー三姉妹の輝きである。打ち破られるなど、許されない。赦しては、ならない。
「わ〜お」
特大光球の輝きに、対峙するブランジェは目を細める。
光球からは殺意が感じられない。勝つという祈りのみがこれでもかと込められている。その純粋な祈りは、絶対に屈折しない。へし折れることも、ない。
ブランジェは危機感を抱く。
ここまで脅威を感じるのは彼女自身久しぶりで。少し、本気にさせすぎたかな?と、後悔ではなく、心から笑みを零しながら。
周囲から奪い、手の中に圧縮した重力に、更なる圧力をかける。
重力球を造るのは得意も得意だ。その派生として、宙の穴であるブラックホールを作ることも、重力魔法を極めたブランジェにとっては朝飯前。
工程は、その二つと何ら変わらない。
ただの延長線にある技。されど、その威力は凄まじく、彼女自身でさえ使用を自粛していた……超高威力の世界を滅ぼす魔法である。
だが、目の前の特大光球と対消滅させれば……世界への後遺症はない。
「それじゃあ……」
手のひらを宙に掲げて、作り上げた暗黒球体を見せる。空間を巻き取り、全てを虚無へ呑み込むブラックホールの形をした、虚空の砲門。
星を吹き飛ばせる、最強の重力砲。
ブランジェは、その名も無き魔法に一つの名をつけた。後輩たちのそれを見て、自分のこれもそうではないかと、ワンチャンに賭けて。
この勝負の勝敗……それは、この魔法を放ったことで、立っていた方が勝ちであるということ。先に倒れた方の、負けである。
それを悟り合いながら……両チームは、同時に。
「行こっかぁ!
───真・重力魔法ッ!!<エストプラネット・ヘブンズホール>ッ!!」
「決めます!」
「いっくよぉー!」
「勝つわよッ!」
「「「───“恋、叫べ”ッッッ!!<ヴィルゴスライト・マラク・アル=マウト>ッ!!」」」
帝都程度なら簡単に消滅できる重力砲と、同じく帝都を魔城ごと飲み込める空間破壊光球が、同時のタイミングで放たれる。
一直線に突き進む破壊光線と、同じく突き進む光球。
二つの力の塊は、ちょうど、彼女たちの中間地点で衝突する。
光線と光球は拮抗───その出力は、どちらも同等。
どちらかが逸れるだけでも、極黒恒星は消滅するだろう破壊の力。只人が発動してはいけない超規模の大魔法が、一歩も引かずに激突し、綱引きのようにせめぎ合う。
相手を超えるには、魔法を上回る魔力を送るしかない。
だからこそ、ブランジェは、スピカたちは、己の魔力を全て注ぐ。
「絶ッッッ対に!!」
「負け、ません!!」
年長者二人が、声を張り上げ───魔法少女の、将星の意地、底力で踏ん張る。
魔力回路が悲鳴を上げて、身体が軋む。
鮮血を吐き、全身が沸騰するかのような、酷使しすぎた代償をその身に食らう。だが、妹たちも含めて、誰も手を抜くことはなく。
「へーかに、褒めてもらうんだぁぁぁ!!」
不純な動機も。
「負けなんて、クソ喰らえなのよっ…!!」
殺意にも似た反骨心も。
「あなたに、勝ちますッ!!」
そして、その力に憧憬を、敬意をもって───敬愛する王の敵を討ち倒さんと。
心血を注ぎ、魔法出力を上げる。
「アハッ!アハハ!!いいっ!いいね!これだよこれ!!思いと思いのぶつかり合い!あなたたちの思い、私は絶対忘れない!!全部背負った上で───勝つッッッ!!」
「だって私は!!」
───魔法少女、“エスト・ブランジェ”なのだから!!
祈りを込めて。
決意を込めて。
想いを込めて。
将星たちの輝きを上回らんと、力任せの天使は、世界を蹂躙する。
「「───ッ!!」」
やがて、全員の視界が、あまりにも眩い光に呑まれる。白と黒、悍ましくも美しい輝きが、4人の瞳に忘れるなと訴えるかの如く、力強く焼き付いて。
聖堂が消滅する。
街並が吹き飛ぶ。
輝きが、滅ぶ。
───更地になった聖堂跡地。かつて、数多くの信仰が集まった、その場所には。
ここまでやっても壊れない、十四聖柱を残して。
「きゅぅ…」
「ごほっ、かはっ…」
「うっ、ぐっ…」
息も絶え絶え。身体もボロボロ。四人共に五体満足で、奇跡的に生還した上で。倒れ伏す敗者を、揺らぎもせずに立ち続ける勝者が、見下ろす。
勝者となったのは。
「私の、勝ち……だね」
その名も、エスト・ブランジェ───見下ろす先には、這いつくばって過呼吸になったスピカと、意識を飛ばしたポリマ、仰向けに倒れて血を吐くデミアがいた。
両者共に、完全な魔力切れ。
ブランジェも、テコ入れなしではもう動けそうにない。それぐらい、逼迫した拮抗だった。3人の力で、力天使は負けかけたが……結果は、ご覧の通り。彼女の勝ちだ。
死にかけの天使たちは、それでも。全員が生き残り……勝敗は決した。
「……あぁ……申し訳、ございません。陛下……雪辱は、果たせませんでした……」
力無く、天を仰ぐ。
───帝都ステリアル聖ポリマ大聖堂の戦い。また一つ、魔法少女が勝利を重ね。
夢星同盟の躍進は、止まらない。
真・重力魔法
───地球で使うには危険すぎると封印された、異空間や地球外でのみ使用を限定した“力天使”の最終奥義。ただ、その本質は既存の真・〜とは異なり、浄化の力を有していない。浄化の力を大いに含んだ最終奥義。それが、“真”の本質である。故に、“力天使”のそれは、似て非なる力ではあるが、威力的には同質であると定義された。
普通、死亡した魔法少女は成長ができず、更なる覚醒は望めないのだが……彼女の魔法は、生前にできたモノ。
未だその名が定義されるよりも前に。“真”の名を冠するようになったのは、彼女の死後。復活し、魔城の研究室で身体の調整をしていた時、その存在を知って……
ワンチャン、自分の魔法もそうではないかと定義した。
ただ、それだけの最高火力魔法。
ちなみに、威力は真・極光、真・月魄、真・夢想を軽く凌駕する破壊力を持つ。
封印指定出禁技。
次回からはラピス視点です。




