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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

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289-スーパーソナーガールラピス


「ぐぅー」

「これは“あ”ぽふ。こう書くぽふよ」

「……………ぁ…?」

「難しいぽふねぇ」

「ぐぅ…」


 面白い名前の総旗艦は、順調に宙の航路を進んでいる。戦場となる極黒恒星に向けて、若しくはその手前にあると聴く大陸惑星に向けて、獅子宮は進む。

 大陸惑星ってのは、なんかこう、なんていうの?

 よくある丸型じゃなくて、なんでか知らないけど平らな形状の星のことを言うんだってさ。見た目は宙に浮く岩の塊なんだとか。恒星内部にもそーゆー星がいっぱいあるんだって。


 重力とかどうなってんだろ。不思議でしかないよね。


 ワンチャンそこで会敵するかもだからって、取り敢えず直進してるらしい。まぁ、普通、本拠地乗り込まれる前に広々とした場所があるならそこで迎え撃つよね。

 本格的な宇宙戦争だ。不謹慎だが、割とワクワクしてる自分がいる。


ギョッギョッギョッギョッギョッ…


 ……で、今。暗黒王域軍側からの襲撃を受けてる横で、グゥがぽふるんに日本語を教わっていた。僕はお目付け役っていうか強制待機で暇人っていうか。

 取り敢えず、実は今戦闘中。

 ネオ・ズーマランドに向かって、見覚えのある半透明な金魚が襲来している。


 攻撃透過して爆撃してくる、アルフェルの使い魔だ。


『チッ、スカイ・アウラトゥーか!面倒臭ェな!タレス、特殊装甲弾で撃ち抜け!!』

『お任せぇ!』


 あっ、そんな名前だったのね?

 獅子の頭像に目掛けて飛来する透明金魚に、タレス謹製魔法弾が発射される。兵士たちの手で装填され、ボタンで発射された無数の魔導ミサイルは、回遊する金魚の群れに迷いなく突撃。

 勿論、その弾頭を金魚たちはすり抜けるが……

 全ては予定通り。自慢気なタレスの顔は依然変わらず、魔力信号で点火する。


『対金魚爆弾兵装───透過すんな、物質化しろバーカ!喰らえェい!!』


 瞬間、魔導ミサイルは起爆して───なんと、僕たちが悪夢由来のパワーでしか倒せなかった金魚たちを、一斉に砕き壊した。なにあれすっごい。

 成程、透明な存在を強制的に物質化させる魔力波長と、爆風で吹き飛ばす二段構え。すり抜けられるんなら、脆いガラスに変えてしまえというか……どういう技術でそんなすごいの作れたんだろ。

 理論がわからんなぁ。僕の魔法でも、組み合わせ次第でどうにかできるかな。


 ちなみにこの会話、普通に盗聴してる。流石に司令室で勉強はさせないよ。


「これは“い”ぽふ」

「いー?」

「そうそう♪上手ぽふよ〜!」

「……今更だけど、なんでぽふるんが先生やってるわけ?他のヤツらは?」

「勉強の二文字から逃げたぽふ」

「アホか」


 ひらがなぐらい教えたれよ。さては面倒見るの面倒臭くなったな?呑気に勉強を教えてるぽふるんも、教わってるグゥも割とおかしいけどさぁ……危機感ってのは何処にお散歩してるのかな。

 ちなみに、逃げた面々は前線最前列で観戦してる。

 獅子の頭の上に展望台のようなスペースがあり、そこに集まって見てるらしい。次々とガラス片になっていく敵に歓声を上げている。こっちもこっちで呑気だなぁ。女子の比率が高いから、俗に言う黄色い声援がすごい。ヤダな、それ聞いて張り切っちゃってる兵士たち、美人局の詐欺に会わないといいけど。

 ……楽しそうだなぁ。僕もあっち混ざろっかな。戦闘に参加しなきゃいいんでしょ?


「ダメぽふよ」

「……君まで心読むのやめてくんない?」

「読んでないぽふ。ただ、ラピスがどう思ってるかなんてお見通しぽふ!」

「あっそ」


 あーあ。察したぽふるんに止められちゃったよ。残念。ここは大人しくしておこう。仕方ないから、ここはグゥの言語学習に協力してやるかぁ。

 将来的には歌えるぐらいになってもらいたいし。

 名前の由来がマザーグースなんだし。勝手だけど、親の意向は絶対ってことで。毒親?知らんが。それは寝子の親のことだぜ。


ズゥゥゥゥン…


 っと、揺れたな。

 着弾したのかな?


『報告ッ!』

『右翼被弾!敵影確認できずッ!』

『解析できました!魔力反応からスカイ・アウラトゥーの帯電個体かと!』

『チッ!纏ってんじゃねェよ……獣騎兵団ッ!!』

『ハッ!』


 超高速で飛来した透明な金魚が、爆撃をものともせずに特攻してきたようだ。爆風に晒されるよりも早くこっちに飛んできたっぽい。厄介だね。カメラに映るより速いとか意味わかんいな?なんで記録に残んねぇんだよ。

 そんな雷速への回答は、獣騎兵団なる軍団。

 訓練された魔獣を飼い慣らして、それを指揮する兵隊。ウルグラとはまた違った編成の部隊で、なんなら数だけはウルグラよりも多いらしい。飼育している宇宙怪獣の種類も豊富で、地上部隊・潜水部隊・航空部隊・地下部隊と、魔獣に合わせた部隊があるらしい。

 今回はその航空部隊、鳥の宇宙怪獣に乗った戦士たちが宙に飛び立つ。


『行けピーちゃん!爆炎ッ!!』

『ピギュアァァァァァ───ッ!!』

『お、おまッ、本気でその名前つけたのか!?』

『正気かテメェ!?』

『似合ってねぇ!!』

『……ネーミングセンス終わってんなぁ。あいつは減給でいいか。ついでに降格処分で』

『横暴で草ァ!』


 火ィ噴く猛禽類にピーちゃんはどうなんだろ……命名で処分とか怖い職場だね。

 爆炎に当てられた硝子金魚は、鬱陶しそうに身震いするだけ。それでも、熱された透明な肉体は赫赫と光り出し、徐々に融解していく。タレスの特殊装甲弾による物質化の効力が空中に残留していた影響で、微々たるモノだがあの金魚どもに攻撃が通じるようになっていた。

 滅多打ちせずとも、なんとか対応できている。

 わざわざ弾を消費するなら、直接殴ってぶち殺した方が話が早いもんね。次々と、獣騎兵の爪や牙が自爆してくる金魚たちを破壊していく。

 ……練度が高いな。自爆されそうになってもすぐに退避できてる。


 ちなみにピーちゃんは、眼力がすごいフクロウ型の宇宙怪獣である。


『敵は金魚だけか?』

『うーん、それっぽい影はないなぁ〜……保険かけとこ。ラピス氏〜!どうせ聞いてるんでしょ?敵意ある集団とか近くにいりゅ〜???』

『おい』


 なんか呼ばれたわ。えぇー?都合がいい時だけ僕のこと使いやがって……都合よくなくても使われてたわ。うん、なんなら率先して動いてた。

 ……仕方ない。ここで拒否してもね。

 心配なのはわかる。二重三重の確認は必要不可欠。もしこれで見落としてたら、ねぇ?後で後悔するより……って思考が、僕を過労死させるんだろうね。我ながらよくない性分だと思うよ。


 でも別に戦うわけじゃない。索敵ぐらいでへばるような魔法少女じゃない。


「いいよ」

「ラピス?」

「探知範囲を天文単位に拡大、索敵開始───脳にかかる負荷を軽減、反応を“敵意”と“闘志”に限定。夢星同盟所属の地球人外を除外……修正完了。演算再開…」

「ぐぅ?」


 ブツブツと機械的に作業しながら、エコロケーションを魔改造した探知魔法で測定を開始。不思議がるグゥの頭を片手間に撫でながら、天文単位……1億5000万km以内に敵影がいるかを観測する。

 ……んー、これ結構脳に負荷かかるな。

 悪夢だからなんとかなるレベル。そりゃそうか。人間の時にやってたら脳みそが焼き切れてたわ。怖い。それでもやっちゃう。


 まったくと溜め息を吐いたぽふるんが、お腹に埋まって回復魔法をゆーっくりかけてくれるのを受け入れながら、精密に探知する。

 見つかんないなぁ。いない?

 いやここは慎重に……距離じゃなくて、精密性に重きを置いてみよう。


 脳内に浮かぶ円形の図。規則的に広がる輪が、探知圏に潜む仮想敵を浮かび上がらせる。

 ……成程ね。 


「空間潜航って相手は持ってる?」

『あるよ〜。なんなら、昔からあったのをぽきが改良して発展させたんスわ〜!すごいでしょー!……で、で、で?もしかしてだけどぉ〜?』

「おめでとう、戦犯は君だ。後ろにいるよ」

『ファ〜!!ウケる』

『ふざけんじゃねェ』


 ステルス機能搭載の戦艦が、総旗艦の背後から勢いよく迫ってきていた。空間潜航っていう異空間を通って星海を移動する方法があるんだけど、それを使えばデブリとかを気にせずに宙を渡れるんだってさ。ただ、些細なミスとかハプニングで、異空間を永遠に彷徨う可能性が付きっきりなんだとか。怖いね。便利だけど。

 で、昔のタレスはそれの安全性を格段に向上させた。

 といってもコストは高いし、それができるのは極わずからしい。


 その極わずかの、選ばれた宇宙戦艦が、異空間から宙に飛び出した。


『ありがとよ、ムーンラピス!ったく、こっちが使えねェ手段使ってきやがって』

『ま、うちはデカすぎて無理ですからなぁ〜。どうしても小型のじゃないと。あんまデカいとそのまま沈むっていう謎現象が起きますし。いやぁ〜、まったく。何隻異空間の底に沈めたことか』

『金返せよ』

『無理ぃ☆』


 恐らく、相手は隠密部隊。尾行が目的かな。

 潜伏して追尾していた戦艦が、僕の探知に引っかかったことを、相手のソナーマンも察知したのだろう。すぐさま潜伏を諦めて攻撃に移る当たり、あっちの探知力も馬鹿にできない。砲撃しながら後退してるのも、いつでも逃げが選択できる用意ができていた証だ。

 でも、相手が悪かったね。タレスの言う通り空間潜航ができるのは小型タイプ。地球でいうところの駆逐艦かな。

 相手の船のサイズはまさにそれ。

 惑星サイズの総旗艦を前に、撤退戦を仕掛けるには……あまりにも分が悪すぎた。


 数分後、獣騎兵に折り曲げられた宇宙戦艦と、降伏して捕虜になった兵士たちの姿があった。

 金魚は全滅、完全に嫌がらせの攻撃だったね。

 ……取り敢えず、進軍一発目の襲撃は無事に突破できたってことで。


「ラピス、平気ぽふ?」

「だいじょーぶ。でもモフらせて」

「どーぞぽふ!」


 もふもふ。


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