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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

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303/307

287-代償を被った者

素敵な支援イラストを頂きました。

誠にありがとうございます!


17-『13+1』のスタートラインより

https://x.com/suijaku01/status/1995068987169013971?s=19


エーテ、ライト、ぽふるんに、魔法講座をしている過去のラピスとのことです。ラピスが使ってる魔法陣はだいたいこんな複雑なので、すごいぴったりなのを描いて頂けて、作者冥利に突きます。


Side:逆夢 -崖っぷち夢生-より

https://x.com/suijaku01/status/1995069524488724579?s=19


ペローがペローになる前に見た過去ラピです。こんなのに助けられたら恋しちゃいそうな顔面してますね。くそっ、顔がいい…


 動き出した世界の刻───ムーンラピスによる時止め。その効力は、将星リブラの渾身によって破られた。

 時間停止の対抗手段、その第一段階。

 試験的なモノと呼べばいいのか、完成には至っていない即席の魔術で、リブラは成し遂げた。


 チクタクと、動き出した時計の針が静寂に響く。


「ッ、ハァ、ハァ…ハァ……」


 時間停止に抗った代償なのか、リブラは床に膝を着いて荒く息を吐く。色付いた世界、活気を取り戻した世界で、彼女だけが苦しんでいた。

 即席の魔術で時間魔法を破ってみせた。

 皇帝からの期待に応える為に、ラピスの鼻を明かす為に成し遂げてみせた。

 その偉業を、ラピスとニフラクトゥは素直に褒め称えて拍手する。


「それでこそだ」

「やるじゃん?」

「これが我の秘書だ。羨ましかろう」

「うちの駄目メイドと交換しよ?」

「ダメだ。やらん」

「ちぇっ」


 自分よりも年季があり、魔法の研鑽においては匹敵する存在とは初めて出会った為か、いつになく興奮した様子で詰め寄るラピス。ダメだぞ、と牽制するニフラクトゥも、二代目左腕が褒められて鼻高々だ。

 ……そんな嬉しい状況にも気付けないぐらい、リブラは疲労困憊に陥っていたが。漸くヤバそう?と遅れて察したニフラクトゥが背中を撫でて、ラピスが水を飲ませてやるなどした。


「ゲホッ……介抱、ありがとうございました。軽い負荷で助かりましたね…」

「魔法によっちゃ吐くもんね。なんなら出血するし」

「あなたでもあるんですね」

「魂の拡張なんて馬鹿みたいなことして無事で済むわけがないじゃん?」

「あー…」


 確かに最初の方は倦怠感で吐きそうになっていたが……そうなりながらもアクゥームを丁寧に嬲り殺していた女に説得力はない。

 立ち直ったリブラからさもありなんと半目で理解されたラピスは、解せぬといった顔をしながら歩き出す。

 その歩みは、皇帝の傍。

 呑気に床で寝てるミロロノワール。大魔術による光景を見逃した阿呆を、ラピスは冷たく見下ろす。意図を察したリブラも冷たく見下ろす。察したニフラクトゥは、「あっこれ関わっちゃいかんヤツ…」と、アルフェル主催女心を理解しようの会で学んだ教訓を活かし、身を引いた。

 瞬間、ラピスの足が同期の腹を穿つ。


「ふっぎゅぅ!?」

「なーに呑気に寝てやがってんだテメェ。誰の語り口調が子守唄だってか?あ゛???」

「そこは真面目にやるところでしょうに」

「がふっ!?」


 追加でリブラの足蹴りが側頭部に決まり、ラピスの足で動けないノワールはノックアウト。わけもわからぬまま、もう一度意識をブラックアウトさせた。

 そんな耐久の無さに2人ははァ、と溜息。

 そのまま顔を見合わせて、「こいつが将星でいいの?」「実力はあるので…?」と、初めて会ったのにも関わらずアイコンタクトを成功させた。

 選んだのはニフラクトゥだ。全部あいつが悪い。

 流石にリブラがそこまでの糾弾をすることはないが……内心はお察しである。


 泡を吹いて死んだ新米将星を横目に、ラピスは今度こそ帰ると宣言する。


「次こそ、戦場で」

「あぁ、期待しているぞ、我が好敵手よ」

「なった覚えはないんだけど…」

「なら、なってくれ」

「押しが強いな」


 ワームホールを開け放つラピスは、ニフラクトゥからの好印象をどうぐちゃぐちゃにすべきか考えながら、虚空に足をかける。


 最後に振り返って、失神した裏切り者を眺めてから。


「バイバイ」


 流し見てから、言葉少なく、ラピスは虚空の向こうへと消えていった。


 蒼い魔力の残滓だけが、大広間に残ってゆらゆら漂う。


 その残滓を指で弄び……歓談を終えたニフラクトゥは、満足したように笑う。実に有意義な時間だった。少しでもムーンラピスのことを知りたくて、お互いに刃を交えない会話というモノをしたくて。

 突発的で、急務の拵えだったが……十分だろう。

 いい加減に起こすかとノワールをつついているリブラを他所に、ニフラクトゥは感傷に浸る。


 そうして、大広間に静寂が戻る───わけではなく。


 ドタドタと、忙しなくこちらへ駆け寄ってくる足音が、ニフラクトゥの耳に届く。


 音の持ち主は、何一つ躊躇わずに大広間の扉へ……


「曲者の気配ッ!!」


 ドロップキックをかました。


 蹴り飛ばされた両扉が中央のテーブルを吹き飛ばして、大広間は瞬く間に大惨事に。超特急で駆け込んできた不敬割増侵入者は、手に持っていた日本刀をブンブン振って、もういない侵入者を探す。

 だが当然その相手はいない。

 いるのは、目を見開いて硬直したリブラと、失神状態のノワール、いつもの無表情でよっと軽く手を挙げる皇帝の3人だけだ。


「陛下ッ!賊は!?」

「よくいるのがわかったな、ヴォービス。賊ではなく賓客ならいたが、たった今帰ったぞ」

「なんと!?では斬れないのてすか!?」

「そうだぞ」

「そんな…」


 ガクッと項垂れる小柄な女衛兵───魔星親衛隊総隊長ヴォービス・トレーミーは、血を啜れなかったヤバそうな刀に謝りながら、刀身を鞘に収める。

 ちなむと彼女はアルフェルの孫娘だ。

 魔星親衛隊とは、ニフラクトゥの身辺警護及び極黒恒星内部にある、“主星”と“伴星”を守る武装組織である。ここでいう主星とは帝都オルペントを置く恒星中心の惑星都市を指し、伴星とはその周りにある星々のことをいう。要は、極黒恒星の内部という不思議空間に浮かぶ星々もまとめて守っている組織である。


 ヴォービスはその総隊長。若き天才剣士であり、何事においても猪突猛進な困ったちゃんである。

 ついでに言うと辻斬り見習いだ。


「あの、ヴォー?普通に弁償してくださいね」

「? 何故でございまするか。セッシャまだ、なーんにも斬ってない故、無罪放免オールオーケーでござる」

「蹴ってるんですよッ」


 斬ってなければセーフという思考を強く糾弾され、その整った顔をしわくちゃに歪めるヴォービス。残当である。あまりにも困ったちゃんな懐刀を、ニフラクトゥは静かに肩を竦めるだけで放置した。

 構って斬られても面倒なので。

 それに、今は───異常値の魔力反応に気付いたのと、騒音を聞き立てた一団が、事態鎮静と銘打ってこの場所に乗り込んで来るのを対処しなければならない。

 聴いても止まらないことはわかりきっている為、当然の如く武力行使である。


「青いのの気配ッ!殺すッッ」

「ひと狩り来たぜェ〜、獲物は何処だ!?」

「月の乙女はここかな?」

「便乗じゃ」

「同じく」


 双星、魔牛、芸術家、天魚、処刑人が壁をぶち抜いて、一直線に駆け抜けて来た。壁という壁を突き破って大胆なショートカットをしたのは、勿論エルナトである。

 唆したのはアルフェルだが。

 ムーンラピスの気配を感じ取って急行したカストルと、究極の美を求めるラカイユ、処刑する罪人がいないせいで暇を持て余していたレイ……不純な動機の持ち主がかなり多いが、それは兎も角。


 時間魔法による世界停止に気付き、その発端が誰なのか瞬時に理解できたのは褒めるべき箇所だ。

 だが、そうだとしても。


「───遅い」


 呆れ顔のニフラクトゥが、気分を害された恨みパンチを食らわすのは当然の帰結である。


 尚、魔城は更に崩壊した模様。








꧁:✦✧✦:꧂








 同時刻、総旗艦ネオ・ズーマランドにて。


「───あっ、おかえりなさ〜い」


 ワームホールを繋げ、虚空から降りてきたラピス。空間移動で帰ってきた彼女を出迎えたのは、彼女の優秀な部下である三銃士、ペロー。

 時間の止まった世界で、存在規模関係なく動ける唯一の魔法使い。そんな彼は、偶然主が降り立った場所におり、運良く出迎えることができた。

 ラピスもラピスで軽く手を挙げるだけで応えて、星海を征く舟に乗り込む。


「いない間、なにかあった?」

「なーんにないッスよ〜。あっ、時間停止解除には何人か気付いたぐらいで、特には。オレんとこに聞きに来るのがいーっぱいいましたよ」

「そう。そいつは大変だったね……あっ」

「え?」


 時間停止解除。その言葉を聴き、ラピスは今更気付いた顔でペローの顔を見る。

 冷や汗が、タラりと垂れた。


「……な、なんスかその、不穏なあっ、は」


 申し訳なさそうな顔のラピスに、なにがあったのと顔を青ざめさせてしまうペロー。何故だが、先程ビルに落書きの件がバレた時以上の恐怖を感じてしまう。

 ちなみに今、彼の頭にはタンコブができている。


 疑問符を浮かべるペローに、ラピスは目を逸らしながら申告する。


「ごめん、ペロー……その、ワンチャン時間停止しても、即解除される可能性できちゃった……ごめん」

「なんでッスかぁ!?」


 解析されてしまったからである。


 確かに、ペローも時間停止解除がラピスによるモノではないことには気付いていた。明確に彼女とは違う魔力が、微弱ではあるものの世界全体に広がったのだ。獅子宮にもそれは伝わり、すわ攻撃かと警戒したものだが……

 まさかの即席。まさかの危機。


 たったの七秒間とはいえ、強みの一つが消失した。

 唐突な縛りプレイの発生に、度肝を抜かれた哀れな兎の悲鳴が響き渡った。


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― 新着の感想 ―
ベロー、、哀れな、、、、、あ、ごめんペロー、合掌
まるで「皇帝」陣営の中の「処刑大隊隊長」「魔牛」「親衛隊隊長」「芸術家」のように、その世界で「傀儡師」以外の四人の即視感を見た どうしてですか(笑 同時に、タイトルのように代償を払う「ウサギ」と強制…
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