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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

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274-帰ってきたズーマランド

新章です


 夢星同盟本拠地、獅子宮───元・将星レオード率いる暗黒王域への反乱軍。革命を起こして、世界をその手に。各々の思惑が交差して、地球人と手を組んだ異星人。

 獅子を象る惑星に、魔法少女たちは帰還した。

 彼女たちの旅路は既に周知されている。宇宙のあらゆる情報媒体で伝わった彼女たちの旅路、活躍は、血気盛んなズーマー星人たちを沸かしに沸かした。

 予定通り、計画通り。

 彼女たちが各地で暴れ回ったお陰で、同盟本部は順調にことを進められた。その間に、魔法少女たちは将星を一人落とし、潜伏していた将星の存在まで公にした。

 惑星を三つも滅ぼす快進撃、負け知らずの強者たち。

 一番厄介な大艦隊を沈め、同盟軍の進軍を妨げる最大の障害を取り払った。魔法少女を、そして【悪夢】を率いるリーダーは、更なる高みへと行き着いた。

 事実という活躍に、戦士たちは心を踊らせた。

 歓声をあげて、彼女たちの帰還を喜ぶ。訓練場に巨大な魔法陣が現れた時は緊張が走ったが、見覚えのある人間が現れたことで、警戒は驚愕に、そして歓声に変わった。

 お祭り騒ぎに包まれた獅子宮の城を、渦中の魔法少女は迎えに導かれたまま歩く。


「聴きましたよー、すんごい快進撃!レオードさんが毎回爆笑してましたよ!」

「見せもんじゃないんだけどなぁ」

「そう言わずに。センセーショナルな話題なんですから。うちのリュカくんも目ェキラキラさせてたし」

「ちょっ、言わないでくださいッスよ!」

「アハハ」


 ウルグラ隊の隊長、フェリスとリュカリュオンに城内を案内されながら、魔法少女たちはレオードいるの場所へと向かう。久しぶりに会った山猫と赤狼からの褒め言葉に、若い世代の魔法少女たちは照れてしまう。無論、ラピスは無表情で知らんぷりだが。

 ズーマー星人の戦士たちは、すれ違う度に片手を挙げて賞賛してくる。暑苦しい異星人たち、男女の性別関係なく褒めてくる彼らを余所に、城内を進んでいく。

 無骨な城内は活気に満ち溢れており、とてもうるさい。

 それだけ歓迎されているのだ。魔法少女たちは、獣人の闘争心を偉く刺激したようだ。そんな事実を軽く受け止めながら、一同は到着する。


「お連れしましたぁ〜」

「───よう、無事で何より。ククッ、随分とまぁ派手に暴れたようだなァ」

「まぁね」


 案内された場所は、城の地下にある兵器庫。今回の為に用意された兵器の点検作業、解体、再構築、使い方などの陣頭指揮を執っていたレオードが手を挙げて迎え入れる。

 たくさんの兵器群や整備兵にも歓迎されながら、代表のラピスが先頭に立つ。

 他の面々は、兵器庫の光景に興味津々。

 感嘆とした声を上げる一同を無視して、ライトを連れてレオードと話す。


「首尾は?」

「ほとんど終わったぜ。もう少し時間が欲しいとこだが、出航自体はいつでもできる。まぁ、お前らが早すぎたってことで一つ。それに、お前も休む期間が必要なんだろう?アリエスから聴いたぜ」

「……そうだね。特に、僕は。ここで暴走して悪夢化は、望んじゃいない結末だし」

「おー、怖ぇ怖ぇ。是非休んでくれ」

「うん」


 本当は戦場こと極黒恒星を目指して出発している頃合いなのだが、植民地での反乱への対処、暗黒王域軍の密偵が仕掛けた遅延行為、資材不足など……細々とした面倒事が

大挙して襲ってきたのだ。予定より大幅に遅れた。

 加えて、魔法少女たちの快進撃。それがあまりにも早く進みすぎた。そして、あまりに苛烈で、痛みすぎた。

 このままでは、満身創痍の状態で戦場入りするところであったのだ。これはいかんと予定を変更して、夢星同盟は獅子宮にもう一度集合することになったわけだが。

 過労死()で人間を辞めることになったと聞いた時には、流石のレオードも目が点になったが。それだけ目の前の女が抱え込みやすい気質であり、止めようにも止められない存在なのだろうと理解する。

 ……諸々を溜め込んだ状態で鏖殺が可能なのは、素直に言って頭おかしいが。

 そんな本音を飲み込んで、レオードは対話を続ける。

 魔法少女たちがいない間に起きた出来事を纏めた資料を召喚して、紙の束を手渡す。いつ帰ってきてもいいように纏めておいたのだ。

 パラパラと速読するラピスは、初っ端から物騒な内容で顔を顰めた。


「処刑部隊?」

「あぁ、俺ら叛逆者を殺しに来てな……今回は小隊ばっか来やがって話にならなかったがな。大隊長のクソ真面目が来てたら重傷は避けられなかったろうな」

「そんなに?人選ミスじゃん。強いの寄越せばいーのに」

「そうそうトップが出ていいもんじゃねェだろ」

「……でも、将星クラスじゃないと私たちの相手にはもうならないと思うよ?」

「ハッ、そうかよ」


 黄金像にして隊員全員送り返してやったと笑う獅子は、そりゃそうだろと腹を抱える。処刑部隊は強大だ。かつて栄華を窮めた将星カンセール率いるプレセルペ蟹紅艦隊、暗黒王域軍最大派閥である第七師団、将星エルナト率いる最強の殲滅部隊、レオードが指揮するウルグラ隊、または獣騎兵団、タレスが統括する機械獣の軍勢……それに並ぶ武力を誇るのが処刑部隊、否、処刑大隊なのである。

 アリエスとレオードによって小隊長が二人程没したが、その程度は大した損害にならない。それぐらいの数の隊を処刑大隊は抱えている。処刑と銘打ってるものの、実際は暗殺と諜報を第一産業にしている部隊でもあるので。

 探知結界も反応しない潜伏術と、味方に化けた暗殺術で何人か死んだが、最終的にはレオードの黄金によって儚い命を散らしたようだ。


「そういや、といってもお前らには関係のねェ話だが……俺ら叛逆組の地位は剥奪されたんだ。知ってたか?」

「えっ、将星の?やっと?」

「……話を聞いた辺り、死んだら剥奪って聞いてたけど。違くなったの?」

「そうだな」


 そして、レオードたちの将星の地位が漸く剥奪された。今の彼らは元・将星の叛逆者である。レオード、タレス、カリプス、アリエスの席が空いたのだ。

 理由としては、いつまでも裏切り者を地位につけるのはどうなのか、というド正論が評議会で上がり、訴えられたニフラクトゥは仕方ないなぁと除名を許可したのだ。

 空いた四つの星座……追加で引退したカンセールを含む五つの席に誰が座るのかは、レオードは既に予測済みだ。追加で用意した資料を手渡して、ほぼ確実とわかっている情報を並べる。


「最大候補としては、殲滅んとこの牛女を除くと、さっき話題に上がった処刑大隊のカメレオン、第七師団のトカゲモドキ、ゲメル・マーラー星律芸術団の画家、クジラ森の王国の国王、デネブ攻撃航空連隊の気取り野郎だな」

「よくわかんないんだけど」

「……芸術家と、国王?」

「ゲメル・マーラーは戦う芸術家ってヤツだ。インドア系武闘派集団だと思え。クジラは併合されたばっかの星で、そこの国王が意外とやんだよ」

「ふーん…」


 続々と名が挙げられる強者たちを、ラピスは冷めた顔で確認する。今更増えたところで、ラピスからすれば適当な数合わせにしか思えない。強者に相応しい立場を与える、ということには納得するが。

 将星という立場はそういった意味合いもあるのだろう。

 将星になれば統括する星や故郷が“宮”に昇華し、自治を認められる特権もある。その特権を手にする為に、将星を目指すモノもいるらしい。レオードとタレスは自治権獲得の為、カリプスとアリエスは勧誘される形で将星になった違いがある。


 新しく敵になりそうな異星人の写真とデータを読んで、ラピスは思考の半分で対策を講じながらレオードの会話を続ける。


「一番厄介なのは?」

「あー、第七師団のダラコイルだな。龍魔法っつー、龍になれる魔法の使い手でよ。バカデケェドラゴンに変身して攻撃するんだ。んまぁ気性が荒れェせいで評価は低いが。デネブんとこの隊長も厄介だぜ。宇宙飛行で星を爆撃する部隊のトップで、爆弾使いとしては超一流だ」

「成程。画家とクジラ、あと処刑人は?」

「総じて面倒い。画家の方は、アレだ。お前らんところの魔法少女の……ミリスイリエだったか?そいつの色魔法の使い方と似てたな」

「うわぁ、メンド……あとイリスミリエね。逆」

「っと、悪ぃな」


 短期間で入れ替わる勢力図に辟易としながら、資料から目を離す。兵器庫と言うだけあって、見たことのない宇宙由来の兵器、戦艦などが多数拝見できる。

 そのどれもがラピスの興味を刺激することはないが……雑兵を蹴散らすには十分だろうと評価はした。

 ちなみに、ここにあるのは極一部である。

 対“星喰い”兵器はより機密性の高い最深部にあり、まだお披露目の時ではない。


 整備士のタレスもまだ到着していない故、ラピスたちが見るのはまだ先だ。


「っと、長いこと話しちまったな……部屋は前と一緒だ。清掃も終わった頃合いだろう。さっさと寝てろ。なんなら個室も用意しといたぜ。そこ行ってろ」

「待遇いいねぇ。それじゃ、お言葉に甘えて」

「わーい!私の個室は?」

「ねェ」

「なんでぇ!?」

「草」


 一番寝かせないといけない危険人物を優先するのは当然であろう。過労蓄積でシステム起動は困る。万が一ここで暴走されてはたまったもんじゃない。

 悪夢覚醒によってリセットしたとはいえ、だ。

 それがわかっているからこそ、ライトもそれ以上強くは言わないが。それはそれとして同衾するし、夢の世界には一緒に行くが。


 アリエス枕と湯たんぽリデルも必須だ。ラピスも逃がすつもりはない。


 この後、みんなで用意された部屋でめちゃくちゃ寝た。


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― 新着の感想 ―
「過労死()で人間を辞めることになったと聞いた時には、流石のレオードも目が点になったが。それだけ目の前の女が抱え込みやすい気質であり、止めようにも止められない存在なのだろうと理解する。」 まず「ムイ…
過労死で人間をやめるなんて……真面目に受け止められないけど、笑いもできない理由だな。いや、ライオン丸的なタイプが多すぎるのも関係しているだろうか。このままでは良くないと分かっていても、本人の前では口に…
「将星」が五人追加されたとはいえ、「蒼月」(悪夢)側が持っている戦力(「タレス」がもたらした宝物が全盛期の力を取り戻すかもしれない「女王」)、(宇宙産の悪夢と「蒼月」の体内に住む「マッドハッター」)を…
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