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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
マギアガールズ銀河紀行 -悪夢星誕-

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264-月塔迷宮、中層 -前編-


「やったね!」

「ナイスぅ〜」

「お疲れ様ぽふっ!」

「やるではないか」

【ハットス!】


 上層守護者であったオーガスタスを退けて、一同は無事中層への挑戦権を獲得した。現れた階段を下って、襲撃や罠を警戒しながら進んでいき……

 辿り着いた先には、衝撃の光景が広がっていた。

 それこそ予想も想定もしていなかった、思っていたのと違うダンジョンが。


「…えっ?」


 動揺で硬直した一同の視線の先───そこには、かなりカラフルチックな空間が広がっていた。パステルカラーのパネルが壁、床、天井を埋め尽くし、風船やシャボン玉がふわふわと浮かんでいる。

 なんともファンシーな異空間。その上更に異物なのは、正面の壁に立てかけられた電子モニターと、その前にある白いテーブル……

 まるでクイズ番組のような設備が、そこにあった。


「は?」

「……どうやら、中層はアニメティ重視らしい。クイズにゲームが盛り沢山のようだな」

「作るの飽きちゃったの???」

「逆に凝ってると思うけど…」

「あー、ね」


 戦闘の次は頭脳を測る。戦いだけじゃ味気ないと唐突に思ったラピスが、どうせ使われることはないだろうけどと凝りに凝った結果がこの中層、バラエティエリアなのだ。

 階層ごとにジャンルも異なり、バラエティに富んでいるダンジョン。入場した時点でライトたちは挑戦者、もとい回答者としての地位が決定した状態。

 避けられない運命。回答者に選ばれたライト、エーテ、ついでにリデルが回答席に着席する。

 ぽふるんはガヤだ。


「何故私まで…」

「よーし、さっさと終わらせて起こそ。目的はラピちゃん目覚ましなんだから!」

「そうだね。正直、こんなことで時間潰すのはちょっと」

「状況が状況じゃなかったら楽しめたのに……なんでこう間が悪いぽふ?」

「さぁ?」


 3人が渋々席に着いたと同時に、天井がカパッと開いてモニターが降りてくる。

 そして、何処からかファンファーレが鳴り響く。


『───パンパカパーン!ハロハロ!マギマギクイズンのお時間デス!!』

「えっ」


 聴こえてきた声に覚えでもあったのか、ライトが驚きに目を見開く。硬直した彼女を他所に、クイズバラエティは早巻きで進んでいく。

 モニターに映る、頭頂部をクエスチョンマークにするという変な髪型の魔法少女が、ケラケラと笑って語る。

 その姿もまた、見覚えがあった。


『早速早速!問題は〜、五問!魔法少女に関連する問題を次々と出すゾイっ☆ちなみに、一問でも間違えたら即座に処刑だから、気を付けるゲスよ〜!』

「その変な語尾やめろッ!!ムズムズするっ!!」

『怒られちった〜、テヘッ☆』

「ゲロゲロゲロ…」

「お姉ちゃん!?」


 焦点の合ってない目でケラケラと笑う出題者は、かつて日本を舞台に踊り明かした一人のダンサー。クイズ好きの魔法少女と手を組んで、お喋りな怪人までもを巻き込んだクイズ大会を開いたとんでも魔法少女の一人。

 名をガジェットダンサー。“諧謔”の魔法少女である。

 ピエロ風のコスチュームに身を包んだ彼女は、ラピスの記憶から再現されたアバター。お遊びの感覚で再現された画面奥の出題者である。


『それじゃー問題出すゾ〜☆出題方法は〜、これっ♪』


 ガジェットダンサーはニコニコと笑って、パチンと指を軽快に弾く。すると、モニターの下の石畳がパカンッ!と音を立てて開き……

 球体タイプのガシャポンマシーンが飛び出てきた。

 音を立てて現れた魔法のガシャポンには、色とりどりのカプセルが入っている。


『ガチャガチャの魔法ぅ〜♪この中にお題が入っててね!ボクちゃん様が回して出てきた中身が、回答者のみんなが回答するお題になるピョン!』

「へぇ、そういう……それじゃ、早くやってくれる?」

『急かすなぁ〜。でもいーよ!ガジェちゃんは公明正大な魔法少女だからネ☆』


 強めに急かされても邪険にせず、ガジェットダンサーは軽やかに魔法を行使。

 おもちゃの杖を振るって、ガシャポンを動かす。


『ガチャガチャ魔法ぅ───スタート☆』


 詠唱に伴い、ガシャポンマシーンの中身が乱回転して、掻き混ぜられて……

 取り出し口から一つ、水色のガシャポンが落ちてきた。

 落ちたガシャポンはるんるんと鳴りながら揺れ始め……パカッと開いて、お題が書かれた紙が出る。その内容を、ガジェットダンサーは滔々と読み上げる。


『おーっなるほどなるほど!当たりな問題かもネ!きっと答えられるよ〜!ってことで、第一問!ジャジャン!海の女戦士ことキラキラ魔法少女のキラーポパイエちゃんっ!あの水兵ちゃんの苦手な食べ物はなんでショウ!』

「待って知らない人出た」

「アメリカの子だね。水兵キャラで売ってた魔法少女で、私が魔法少女になる前に死んじゃった先輩だよ。カドック先輩が中指立てるぐらいいい性格してたよ」

「へぇ〜」

『あっ、回答は競い合ってもいーけど、点数は共有だから安心ちてね!間違えないようにちゃんと話し合おウ!』

「なんか楽そうだね」

「なんとかなりそう」

「うむ」


 問題はかなりプライベートに踏み込んだモノで、内実を知らなければ答えられないモノ。回答者に優しくない問題ではあるが、これぐらいから答えられるとリリーライトは安堵する。

 なにせ、先輩であるカドックバンカーからこれでもかと嫌味付きで語られたことがあるので。

 故人を悼むのではなく貶す辺り、魔法少女たちの関係性が伺える。


「で、なんなのだ」

「苦手な食べ物だから……はい回答!」

『ドゾドゾ〜』

「ほうれん草」

『───んんぅ〜、正解ッ!!!キラーポパイエちゃんはなんと!ほうれん草さんが苦手なのデスっ!』

「おぉ〜」


 ちなみに、“ポパイ”とほうれん草は密接な関係にある。ネイティブスピーカーの間で呼ばれる俗称なのだとか……特に関係ない話だが。

 そんな風に、魔法少女の好物で始まったクイズ。

 残り四問、2人(一人は戦力外通告済み)で魔法少女の問題を解いていく。


『問題、ジャンジャカ行くゾ〜?デデドンっ!!第二問、魔法少女ヘビー級チャンピオンに君臨した、体術一辺倒で世界の頂点に立った魔法少女はダレ!?」

「わかった!ヴァリマストロンガーっ!!」

『正解っ☆』


『第三問は〜、これっ!ジャッカジャジャーン!魔法少女でありながら犯罪行為を行ったとして捕まったのは、一体何処のドイツでショー!選択肢から選んでネ』

「あー、えっと……待ってラピちゃん並んでるのウケる。でもこれは六番だ!」

『ピンポーン!』


『ダダダ第四問っ!魔法少女X新聞でバカ売れした記事はどの紙面でショウ力ッ!こいつも選択しデンネ』

「えっ、ごめん読んだことないから全然わかんない」

「私なんてもっとわかんないよ!?」

「それを言うなら私も…」

「……あっ!これぼく知ってるぽふ!答えは三番、スイス奪還作戦成功の号外ぽふっ!」

「えっ、信じるよ?はい三番!」

『んん〜、正解☆』

「ナイスぽふるん!!」

「やった〜!」


 メジャーなモノからマイナーなモノまで、回答者を絶対ふるいにかけるという意志を感じる問題が出題されるが、ライトたちは協力して答えていく。

 元々、このクイズ形式は魔法少女を知らない宇宙人への対策である。何も知らない為、当てずっぽうか運の良さで勝負するしかない。そして、誤答すれば即死である。

 そんな処刑問題を四問クリアして……残り最後の問題が立ちはだかる。


『おーっと、全問正解!?スゴいねキミたち!マギマギの才能があるかもネー!それじゃ、最後の問題行くよぉ〜!第五問、一体なにカニャ〜!?』

「絶対簡単な問題じゃないよなぁ……覚悟しとこ」

「嫌な予感プンプンする…」

『勘が鋭いンネ!いーこいーこ!そっれじゃ、死刑確定☆災難感マギマギクイズンと行こうか───第五問!ベベンべべベン!ドン!!』

「は?」


 確実に殺すという殺意を感じる出題に、ライトが怪訝な目を向けた、その時。

 魔法少女を殺す問題が出題された。


『Die五モォン───この空間の主、魔法少女大図鑑とも謳われる“蒼月”のムーンラピス。彼女が有する魔法少女の魔法の総数は、一体どれくらいあるのか。

 正確な数で答えよ』


「なっ…」

「はぁ?」


 先程までのおちゃらけた雰囲気がない、冷たさしかない声色のガジェットダンサー。彼女が出題した最後の問に、一同は沈黙するしかない。

 なにせ、総数を把握なんてできていないから。

 ムーンラピスがどれだけの魔法少女を知っていて、その魔法を扱えるのかも。配信魔法によって存在を知覚できている魔法少女、過去視の魔法で把握できた魔法少女のみをラピスは知っているが……それがどれだけなのかは、誰も知らない。


 正確な数を答えよ───なんて、無理難題にも程がある問題であった。


「魔法少女の数は凡そ200前後、でもラピちゃんが全ての魔法少女を把握しているとは限らない……古い世代とか、最初の方の魔法少女なんかは歴史にも残ってない人だっているから、それが把握漏れしてる可能性も加味して……」

「うっ、うぅ?いや、えぇ?やっ、私も約200ってのしか知らないんだけど……0〜9で賭けるしかない?」

「博打すぎだよ。でも、どうしよ……全然わかんない」

「ご、ごめんなさいぽふ〜!これ、ぼくじゃ力になれないタイプの問題ぽふ…」

「そう落ち込まないで」

「……うぅむ」


 あの国際財閥連合の調査もあって、現在確認できている魔法少女の数は200人。それも“約”がついた凡その数値で正確ではなく、最近加入した新世代の3人を含めば、また数が変わってくる。

 そして、肝心なのは……その魔法少女の魔法を、蒼月が保有しているのか否か。

 200人全員の魔法を、ラピスが習得しているのか。

 もしかしたら、手に入れずに放置している可能性だってある。


「うぐぐ……ちょ、リデル!さっきから何も答えてないんだから、ここでこう、いい感じに貢献してよ!」

「無茶を言うな。私だって知らんことは知らんぞ…」

「っ、それはそうだけど……んー!万能な癖に変なとこでヘマするタイプだから、ラピちゃんのそーゆーとこが全然読めないっ!もう勘で行っちゃおっかな!?」

「血迷わないで!?」


 知恵熱を出した上に目をグルグルさせたライトが、回答ボタンを叩き押そうとするのをエーテが止める。あまりに見慣れたその光景を横目に、リデルは顎に手を添える。

 考えて、考え抜いて……

 ふと、エーテの頭に居座っているハット・アクゥームの存在に気付いた。


「あっ」

「なに!?」

「……ハット・アクゥーム、ちとこっち来い」

【ハッツ】


 ムーンラピスの悪夢の具現。意思の代弁者。その存在を思い出したリデルは、ハット・アクゥームを近寄らせて、その帽子頭を自分の頭部に被せた。

 そのままゆっくりと魔力を同調させて、自分と同じ色の魔力と繋ぎ合わせる。

 ラピスの魔力から、情報を読み取る。

 身体を半分こしている状態だからこそ、リデルは内容を読み取れて……


「……成程」


 目を見開いたリデルが、固唾を飲んで見守る魔法少女を無視して、一瞥することもなく───回答ボタンを、勢いよく叩き押した。


『どうぞ』

「答えは181───凡そ200という数値は、かつての私が従えていたアリスメアーの構成員が魔法少女に化けた……ニセモノを含めた数(・・・・・・・・・)だ」

「……えっ、は?」

「ニセモノ…?」

「あと人間に変装した妖精だな。魔法少女ではないから、カウントしない」

「ぽふ!?」


 衝撃の事実を曝露しながら、ラピスが調べた魔法少女の総数を告げるリデル。記憶を読み取って、ムーンラピスが魔法少女全員分の魔法、181の魔法を使用できることは、言うまでもない当たり前である。

 ……そのニセモノや妖精の魔法もラピスは使えるが。

 自信満々に答えたリデルに、ガジェットダンサーは暫く沈黙を貫いて……


『───パンパカパーン!!大ッ正解ッ!!そう、答えはその通り!“181”でしたぁ〜!!おめでとう!おめでとうございまス!!』

「ふっ…」

「な、ナイス!マジか!?」

「おぉ〜!?すごいっ!すごいよ!?」

「おめでとうぽふ〜っ!!よくわかったぽふね!?くっ、ラピスの相棒はぼくなのにっ…」

「元だろ元。残念だったな」

「うぎゅぅ」


 正解のファンファーレが鳴り響く中、勝ち誇った笑みでリデルは腕を組んだ。

 ハット・アクゥーム有りきとは言え、完全勝利である。

 ……ちなみに、魔加合一の総数は“434”である。妖精や怪人の魔法、汎用魔法を含めた数だ。181人も魔法少女がいることに驚きである。

 比率は怪人の方が多いが。

 妖精は複数人の魔法少女と契約できる為、そこまで数は多くない。王家の血筋は10人単位で契約していたぐらいであるからして。

 

『ヤーヤー、答えられちゃいましたネ〜、あー残念っ☆』


 回答者を処刑できなかったことを嘆き悲しむ出題者は、負けた負けたと口遊みながら画面の中で回る。ガジェットダンサーは悲しげに、それでいて楽しそうに笑う。

 くるくるくるりと回った彼女は、これ見よがしに端末を取り出して、ボタンをなぞる。

 そのボタンに書かれている文字は───処刑の二文字。

 すごく嫌な予感がしたライトが、2人を抱えてその場を飛び立とうとするが……

 時既に遅く。


「おいこらァ!!」

『処刑しないと言ったな───アレはウソだッ!アハハ!特別サービスですよォ!!このままボッシュート!特別なサヨナラルートにご案内致しまSHOW!』

「やると思ってたけど!!本当にやるバカがいるかッ!!ちょっ、なんか重い!!」

「お姉ちゃん、首!首が苦しっ!」

『アハハ〜w』


 最低外道がケラケラと嗤って、ボタンをポチリと押す。そうすれば、ライトたちがいた回答席ごと……部屋全体の床が唐突に消滅して。

 真っ暗闇の底に、急降下。

 飛ぶことも許されない概念攻撃に、為す術もなく一同は落ちていく。


「うわーっ!?」

「ぽふーっ!?」

「ふっ、ふざけるなよー!!」

「性格悪いな、魔法少女…」

『アッハッハッハッハッ!アーッ、楽しかった!んじゃ、特別出血大サービス、中層守護者さん(・・・・・・・)と殺し合って、是非負けてくださいねェ〜!あはっ☆』

「えっ?」


 最後の最後に、とんでもない爆弾発言を言い残して……笑ってお別れの手を振るガジェットダンサーを映していたモニターが、プツリと切れた。

 唐突なことで理解が追いつかず。

 ライトはぽかんと呆れ顔を晒しながら───中層全てをぶち抜いた、ボス部屋までの自由落下を強要させられるのだった。


 尚、着地が失敗すれば床のシミである。性格が悪い。


434ってのは多分です

間違えてたらすいません

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― 新着の感想 ―
「迷宮に侵入」「四人小隊」「姫を目覚めさせる」 標準的な姫童話 あのお姫様を目覚めさせる王子役は誰が演じるのか(笑
>そのボタンに書かれている文字は───処刑の二文字。 そして、ああ、クイズゲームとは言うものの、最後のこのコーナー…… 魔法少女ノ悪夢裁判……好評配信中?
とにかく、クィズにゲムで攻略を現場で調べるのは禁技だろう、ハット・アクゥームを使った不正行為の勇者小隊……戦闘力過剰な彼女たちにとってはボス部屋に直行するのは本当に奨励事件ではないだろうか。 また、こ…
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