245-立ち塞がる“最強”という壁
支援イラストありがとうございます!
マギアガールズ秘話-⑤より
https://x.com/suijaku01/status/1979834366240154088?t=jEb_s52ltZwxjjUAGCFO8g&s=19
悲しみと希望を兼ね揃えた、二年前のラピちゃんです。
死にゆく先輩の蒼炎と雲間から差し込む光か、とてもいい描写を作っております。
マギアガールズ秘話-⑫より
https://x.com/suijaku01/status/1979834234731937842?t=jEb_s52ltZwxjjUAGCFO8g&s=19
雨に濡れた主人公と、彼女の同期の切ない会話シーン。
主人公と彼女はズッ友です。
今後とも拙作をよろしくお願いいたします。
では、本編どうぞ。
「ッ、将星?」
「……新任、って言ったわね。もしかして、ラピス先輩が最初に倒した将星のかしら」
「おっ、詳しいな。それ親父だぜ」
「「「───うちの先輩がお父上を殺してしまい、申し訳ございませんでした」」」
「えっ」
新将星エルナト・アルデバラン。復讐戦に巻き込まれたプラネット・ラグーンに降り立った大戦士は、開口一番に謝罪してきた新世代に流石に瞠目した。
大好きな義姉で尊敬する先輩で親友の母親である最強が問答無用で殺した将星。3人は会ったことがない相手が、親族がいるなら仲間として謝るのが筋である。
気分的な問題だ。やらなよりやる正義。
綺麗な90度の謝罪にさしものエルナトも動揺して、手を振って謝罪を拒む。
「いやいやそんな、別にいいって!負けたのが悪いし!!親父だって最強に負けて本望だろうよ!安心しろ、万が一違ってもうんって言わせてやるから!」
「でも…」
「でもも何もねェーよ!かァ〜、やり辛ェ〜!なんだこのいい子ちゃんたちは!!」
「なんかごめんなさい」
怒鳴るエルナトに再度謝ってから、気を取り直して。
「ったく。そのつまんねー優しさで潰れんじゃあねェぞ?つまんねぇからなァ…」
「ご指摘ありがとうございます!で、戦うの?」
「そりゃあな。メーデリアのヤツがこんなになったるたァ思いもいなしなかったが……世の摂理ってヤツだ。オレがとやかく言うことでもねェ。本人がそれを受け入れてんのなら、文句も言わねェ……それはそれとして、この戦い!オレも混ぜてもらうけどな!!」
「やっぱり戦闘狂!もうやだホント!!」
「血気盛んな人、多くな〜い?」
「ふん!別にいいじゃない。心置きなく闘えるんだから。別に困ることでもないわ」
「そうかな〜?」
エルナトの望みはただ一つ。この騒乱に乗じて、強者とかち合いたい。ただ、生憎と目の前にいる少女3人はまだ覚醒したての卵。幾つもの激戦を乗り越えてはいるが……ムーンラピスやリリーライトのような強さはない。
彼女たちに届く力はあるが、まだまだ。
それでも、宇宙全域で見れば上澄みも上澄み。新世代の3人はちゃんと強い。将星たちに引けを取らないぐらいの強者である。
対峙するエルナトは、一目で彼女たちの力を見抜く。
「ククッ、いいなァ。悪くない……八分咲きってとこか。ノワール曰く、一番若い世代の魔法少女だったか?それで合ってるか?オマエら」
「えぇ、合ってるわよ……ねぇ、先輩は元気?」
「頗る元気だぜ。死人にしてはよく喚く。最近なんか魔法多用して好き勝手してるぐらいだぜ」
「なんかごめんなさい」
「ハハッ」
不在のミロロノワールの安否を確認して、安堵してから戦闘態勢に入る。
意気揚々と、威勢よく。
魔戦斧を構え直して笑うエルナトに、3人の魔法少女は挑みかかった。
꧁:✦✧✦:꧂
「ハッ!」
「星魔法───ッ!!」
「たぁっ!!」
新世代の3人は強い。
ムーンラピスという(ある意味)魔法少女の厄介ファンに虐め抜かれて、リリーライトという最強の顧問に心身共に全てを鍛え抜かれた結果が今の彼女たちである。
魔法の威力、精度、速度は言うまでもなく。
戦闘術、格闘、戦術眼……その全てが高精度になるまで鍛え上げられている。
死染めの六花にも引けを取らず、13魔法の下位メンバーなら五体満足で渡り合える程度には強くなった。
……そんな新世代でさえ、将星エルナトを相手にはまだ届かない。
「オラァッ!!」
魔戦斧を一薙ぎ。たったそれだけの動作で、魔法攻撃の全てを切り裂き、跳ね除け、吹き飛ばす。
余波で発生した衝撃波が邪魔だと魔法少女を蹴散らす。
「ッ、やっぱり強い!」
「当たり前だろ。自慢するようで悪いが、オレは暗黒銀河最強最大の殲滅部隊を率いてたんだぜ?将星になれっつー打診も多かったし、勧誘もウザかったし、定期的に陛下が実力が落ちてないか確認しに来るしで……弱くなってる暇なんざなかったんでなァ!!」
「お疲れ様です!!でも、ここであなたは負けるんです!私たちに!!」
「ッ、ハハッ!言ってくれるじゃねェか!!」
自信満々に吼えたエーテが、エルナトの魔戦斧に夢杖を叩き付ける。無論、ただぶつけるだけでは終わらず。杖に込めた魔力を、夢想の力を叩き込む。
言ってしまえば、それはただの魔力放出。
魔法でもなんでもない技術が、爆光となってエルナトに襲いかかる。
だが。
「効かんッ!!」
触れるモノ皆全てを傷付ける爆光をその身に浴びても、エルナトの筋肉という名の鎧を痛めつけることは叶わず。表皮にすらダメージは入っておらず、彼女の肉体が如何に強靭なのかを思い知る。
それでも、エーテは諦めない。
硬いだけの強者など、何度も戦って、何度も倒してきた実績を彼女は持っている。例えそれが、お膳立てのような代物であったとしても。
その実力に、嘘偽りはなく。
コメット、デイズもまた、今まで以上の強者を前にして出し惜しみする思考を捨てる。笑顔で、勝つ気を隠さず、本気で武器を振るう。
「ハハッ、いいだろう!」
そのある種幼気な殺意に、エルナトは猛牛とは思えない獰猛な笑顔で応える。
勝気な魔法少女たちへ、魔法という力で返答を送る。
「真っ向勝負は、大好きだ!!
───だから、簡単に潰れてくれるんじゃないぞ?エェ?魔法少女ォッ!!」
“ 闘神魔法 ”
その文字が呟かれた瞬間。一瞬、世界から音が消えた。まるで、天災が起こる前触れのような静けさが戦場全体を支配する。重苦しい圧が、新世代に重く伸し掛る。
悲鳴を上げたいのを押し殺して、立ち昇る闘気に3人は警戒を示して…
瞬間。
───轟ッ!!!!!
「っ…は?」
とんでもない爆風に吹き飛ばされた。
一瞬、魔法少女たちは意識を失って───身体を瓦礫に打ち付けた痛みで、目を覚ます。茫然とした思考をすぐに立ち直して、警戒態勢を取り直して。
辺りを見回せば。
そこには、何も無かった。
地平線の先まで、綺麗な更地になって───瓦礫の山が壁を作っていた。スライム塗れになっていた温泉街の景色など何処にもなく。
視界に映る全てが吹き飛んで、消し飛んでいて。
とてつもない熱気を立ち昇らせる、円形のフィールドが形成されていた。
その中心に───紅い闘気を纏った“怪物”がいた。
「なっ…」
「……悪いな。これ、加減が効かねぇんだわ。使うだけで戦場が干上がっちまう」
魔法発動で大地を捲り、温泉を蒸発させたエルナトは、戦斧を担いで腰を低く落とす。重苦しい圧を全身に浴びた魔法少女たちは、すぐに動揺を収めて迎撃態勢に入る。
沸々と粟立つ肌。チリチリと肌を刺すのは、闘気。
何が来てもいいように、警戒心を顕にしながらも冷静に見据えていた魔法少女たち。
そんな彼女たちの警戒を無碍にするように。
エルナトが、一歩踏み出して───瞬間、大地が轟音を奏でて捲れ上がった。
「ッ!」
咄嗟に前にいたデイズが盾を構築して、仲間たちと己の身を守る。その判断は正しく、咄嗟の判断で繰り出された花魔法の盾に、軽鎧に身を包んだ肘が激突する。
強いて体系的に言うのであれば、それはエルボー。
ただ肘を突き出した突進は、3人の目では捉えきれない速度で盾に突き刺さった。
ただ、その反動は凄まじく。
盾を粉砕すると共に、守られていた魔法少女たちを諸共吹き飛ばした。
「きゃぁ!?」
「くっ、強い……!」
「ごめんデイズ!」
目を回したデイズを介抱する暇もなく、2人は敵の方へ駆ける。何故ならば、エルナトが無言のまま、大きく拳を振りかぶって……地面に突き刺そうとしているから。
何かが不味いと直感して、コメットが星槍を彼女の頭に突き刺す、が。
ガキンッ!!
「なっ!?」
「悪いな、頑丈で───闘神魔法<ウォーゴットアーツ・ネッカルハンマー>!!」
だが、その額すら槍では砕けぬ程硬く。
止める間もなく、エルナトの強拳が地面に突き刺さり、轟音を奏でて。
地響きを起こす。
「大噴火だ!」
その拳の威力は、地中を貫いて───小惑星の中心核を刺激して。グツグツと煮え滾るマグマを、惑星のあちこちから噴き出させた。
星一つを破壊する小技。強制的に活動させて、星の死を速める厄災の如き一撃。
地面から噴き出したマグマは、呼び出したエルナトにも容赦なく降り注ぐが……
彼女は、星の血液を浴びても動じない。
それどころか、大胆に手で掬って……ズルルッと大きな音を立てて嚥下した。
「えっ、は!?」
「───あぁ〜、ちょうどいい湯加減だな。喉を潤すにはこんぐらいがいい」
「もう意味がわかんないわよ!!」
「ハハッ、戦場を自分好みに作り替えるのは、鉄索も鉄索だろう?」
マグマを飲んで体力回復できる驚異的存在。それがこのエルナトという女である。生きた惑星の上であれば、永遠無限に戦闘することが可能であり。
地球に降り立てば、最後。地球の熱源を奪い尽くすまで魔法少女と戦い続ける未来がありありと見える、戦闘狂。
今この瞬間、プラネット・ラグーンの破滅が決定した。
エルナトの戦場になった以上、その惑星が死ぬのは最早当たり前。
かつて彼女が率いた殲滅部隊とは、惑星諸共敵を滅ぼす大虐殺部隊であった。
その一番槍が、ここにいる。
「まだまだだぜ?」
溌剌に笑うエルナトは、次に人差し指を天に掲げる。
それもまた、魔法使用の合図。これでもかと、新世代を相手に油断することも慢心することもせず、全力を尽くし叩き潰さんとする為に。
誓う。
「オレは“宣誓する”───【メーデリアの勝敗が決する、その時まで。この戦いを止めない】と!!」
「ッ、宣誓魔法!?」
宣言と共に、エルナトの“存在感”が倍増。可視化できるオーラがより強く、重みを増して、輝きを増して、更なる高みへの覚醒を促す。
それは最強へ至る為の旅程。
肉体一つで銀河の頂点に立たんと、己が持つ全てを捧ぐ彼女の真骨頂。
「なんだ、知ってるのか?安心しろよ、これも闘神魔法の機能の一つだぜ。んまぁ、混ざってるって言った方が早いんだけどなァ」
「厄介だなぁ…」
「褒めの言葉だ」
父親譲りの“重突魔法”。
母親譲りの“宣誓魔法”。
祖父譲りの“覚醒魔法”。
祖母譲りの“岩漿魔法”。
血統のように、連綿と続く固有魔法の全てを受け継ぎ、たった一つの形に昇華させた魔法。それがエルナトの固有魔法である、“闘神魔法”。
全てを破壊する最強の突進。宣誓による概念的な強化。ただでさえ強靭すぎる肉体を更に強化する、恒星突撃にも耐えうる肉体の覚醒。溶岩を操るのではなく、溶岩を己の味方につける星の支配権。
それら全てを統合した闘神魔法は、正に四魔法の要素の良いとこ取り。
身一つで全てを破壊する力。
破れば自傷ダメージを喰らう宣誓。
その破壊の力をも耐える覚醒。
溶岩を己の血液とする特質。
その全ての体現者。前将星タウロスの完全上位互換……将星に昇格すると共に、【非公式】の将星強さ番付二位(または三位)に君臨した殲滅王。
暗黒銀河が、金牛宮が誇る破壊の大化身が、心の底から楽しそうに笑う。
「メーデリアが勝つか負けるか。それまでの間……オレを退屈させてくれるなよ、ガキンチョ共ォ!!」
「望むところ!!行くよ!!」
「えぇ!!こんぐらいの壁、乗り越えてくれるわ!!」
「どれだけ強くたって、あたしたちが負ける道理にはならないもんねーだっ!!」
意気揚々と吼えた魔法少女たちの魔法と、将星準最強の魔法が激突して。
また一度、世界が揺れた。
将星最強 アルフェル
準最強 サジタリウス
エルナト
って感じの番付です。準最強、総合力ではエルナトの方が強いんですけどね。




