236-祝福のテーゼ
こんばんわ。
またまた素敵な支援イラストを頂きました!!ご支援誠にありがとうございます!!
ナハト・セレナーデ
https://x.com/suijaku01/status/1975863863628439564?t=PnMdh4DrVRmzDkycMWQr5A&s=19
前回のラフの完成版だそうです!かっこいいですね。
作者の些細な要望も叶えてくださり、もう何も言うことがない感無量でごさいます。
玉座onラピちゃんです。
https://x.com/suijaku01/status/1975864618271797676?t=YZ8-eS-pbWOuyxKYUnU3IA&s=19
闇堕ち後の御姿らしいです。ホントか?味方ぽさのオーラ隠せてないぞこの人。手から零れ落ちたトランプカードは三銃士がそれぞれイメージされているそうな。
「ラピスならできる、勝つのは彼女だ」といったイメージとのこと!結果はお察しですが……いやー、それにしてもかっこいい。かっこよすぎる。ありがとうございます!
マギアガールズ秘話-⑤「燃ゆる彼岸の咒」
https://x.com/suijaku01/status/1975864825285873776?t=Hd2LXPwpnN1-TnJIhibXJg&s=19
青い炎に呑まれたフルーフに別れを告げる、あのシーンをラフで描いて頂けました!
こんなに書いていただけて嬉しいです!
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作者の執筆意欲も湧いてきます。是非ともワンクリック!
今後とも拙作をよろしくお願いいたします!では、本編のお時間です。
どうぞ。
さて、そんなわけで。
凄惨なカルト儀式の末路なんかは、宇宙警察って組織が全部やってくれるっぽいから、押し付けるとしよう。まぁちゃんとした機関がやってくれるのなら、それでいい。
これで枢機卿共みたいなクソ加減だったら笑うけど。
もうこれ以上は知ったこっちゃないし?関わりをもった相手が無事なら、それでいい。
デミアとはここでお別れ。
僅か半日にも満たない関係値だけど……彼女には格別の感謝を送らねばならない。
もう二度と、憎悪に身を任せるんじゃないぞ。
怪我の処置も程々に、仲間たちが慌ただしく発着準備を進めているのを置いといて、僕はリデルとコーカスドムスを対面させる。
「女王様」
「久しいな、壊夢よ。また逢えて嬉しい。オマエの復活を女王リデルは喜ぼう」
「有り難き幸せ…」
再会を祝している元・女王と元・臣下。ちみっこいが、秘めている力は言うまでもなく。こいつらが形振り構わず暴れてしまえば、この星はもっと壊滅的な被害を被る。
消耗覚悟で頑張ればなんとかなるの、鉄板だよね。
感慨深そうに会話しているのを余所に、事情を知らないデミアに教えてやる。
「【悪夢】って知ってる?」
「えぇ、勿論。あ、その関係者ってこと?」
「正確には、僕らの故郷の地球ってとこの悪夢そのもの、かなぁ。なんていうの?悪夢の住人、適合した怪物、ってところかなぁ」
「えぇ…?」
自分が傍に置くと決めた、謎に喋るフラミンゴの正体を察したのだろう。ドン引きながら、もう手ぇ離そうかなと逡巡し始めた。
わかるよ。でもちゃんと責任取ってね。
せっかくなんだから、蘇っちゃったうちのフラミンゴのお世話、ちゃんとしてね。
返品は不可なんで。
さて。
リデルがコーカスドムスに近況報告して、世代交代とか王位継承とかを話しているのを早々に切り上げて、準備ができたと叫ぶみんなを追い掛ける。
名残惜しいかもだけど、時間が惜しいからね。
宇宙警察に捕まるわけにもいかない。皇帝と敵対してる現状、下手に捕まって、ねぇ?
僕は怖いので逃げます。
警察に捕まるとか未経験だけど、捕まったら終わりって一般常識があるので。ホームグラウンドである地球ならばまだ兎も角、宇宙はちょっと、余計にね?
というわけで列車に手をかけ足をかけ、ボロボロのまま手を振るデミアに手を振り返す。その背後で苦しげに呻く背信者たちをちゃんと足蹴にして、彼女は笑顔で僕たちを見送る。
「じゃあね」
「えぇ。またいつか。会いましょう」
「早く迎えに来たまえよ」
「うるせ」
デミアのその腕には、虚無顔のフラミンゴがぶすくれた顔をしていたけど。悪夢の大王と一緒に行動できないことが不満らしい。連れてくわけないだろ。
でも、まぁ……ちみっこくなった方が似合ってるんじゃない?危険度も低そうに見えるし、どうでもいい敵からの警戒心も削げるぜ?その虚無顔はどうにかすべきだけど。
意外とサマになってるぜ。
「不服」
受け入れろよ。
……数分後。
「またね〜」
「バイバーイ!」
「最後まで面倒見れなくてごめーん!!」
「元気になりなさいよ〜!」
「達者でな」
惨劇の跡が色濃く残る白い大地を見下ろして、僕たちはデミアとコーカスドムス二世とお別れした。
多分、出会うのは当分先かな。先だといいなぁ。
どっかしらで姉とはエンカウントする運命だろうから、そこでも有り得るかなぁ。
なんて未来を予想しながら、夢奏列車は次なる地を求め線路を駆けていく。道中、宇宙警察と遭遇しませんようにとみんなで祈りながら。
次は旅館か。うーん、そろそろ安寧が欲しいよ?
人の無い顔に指を突っ込みたがる馬鹿共を蹴散らして、車窓からの景色を眺める。
もう遠くになった白い星を見て、一つ思う。
あの子、逃げなくてよかったのかな。将星への人質とかそーゆーのは関係なく、最初、保護してやるのも吝かではなかったのだけど。
それが務めだと、デミアは頑なに残る選択をした。
遺族への謝罪やら信者への説明やらは、関与していない極一部の枢機卿にやらせるらしいから、別にいいけどさ。心配だよね。それが彼女の決断なら……見聞きした全てを伝える役目があると言うなら、否定はしないけど。
……その後にこそっと耳打ちされたお願いは、個人的に承諾しかねるが。
取り敢えず、一件落着ってことで。
めでたしめでたし。
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「……行っちゃったわね」
白煙を吐きながら星空を駆け抜ける鉄の箱……機関車と言うらしい魔法の乗り物を見送って、デミアはほんの少しだけ寂しそうに言葉を紡ぐ。
ある意味儀式の被害者である怪物を強めに抱き締めて、ボーッと宙を眺める。
別に、不安があるわけではないが。
こんな星、さっさと捨てて逃げ出したい気持ちだって、デミアにはある。姉のように全てを投げ出して、何者にも縛られずに生きていきたい気持ちもある。
それでも……関わったからには、捨て置けない。
結局神様は助けてくれなかったから、信仰心なんてのは薄くなったが。元・司祭としての務めぐらいは果たして、退場しよう。
「あぁ。行ってしまったなぁ……これからどうするのだ?死天使の子よ」
「ポリマ姉に縋るわ。こんなクソみたいな妹でも、手放す女じゃないのはわかってるし」
「そうかい」
もう星教会にはいたくない。
いたくはないが……身寄りがいないので、不本意ながら妹に頼るしかない。その為には、帝都に行かなくてはならないが……
「あの人たち、帝都を襲うのよね…」
星喰いと魔法少女の戦いに巻き込まれるのはごめんだ。戦いの余波で死にそうな雰囲気しかない。戦闘能力のない自分たちは、大人しく僻地に籠っていた方がいい。
……きっと、姉二人は無視するんだろうけど。
皇帝好き好きちゅっちゅっな忠臣と下僕になってる愛に生きる女たち。末妹の静止なんて大丈夫だと捩じ伏せて、きっと魔法少女に挑むのだろう。
本当に何故アレにハート目を浮かべるのかわからない。デミアは首を傾げた。
「……まぁ、いっか。最悪命乞いして、どっちの陣営でもいいから生き残れるようにすれば」
「いいんじゃないかい?君の好きなようにするといい」
「言われなくても」
声色の変わらない音程で笑うコーカスドムスは、自分を乱雑に扱わないよう頼みながらデミアにされるがまま。
悪夢の大王、自分たちの新しい主の命令に従う。
このデミア・ウィル・ゴーを、可能な限り守ることを。五体満足で再会できれば、殺さないで放置してやらんこともない、という言葉に従う。
彼としても、この二度目の生。不可抗力で始まったが、満喫しないではいられない。
冥土の土産として、宙を知らない同胞に伝えよう。
それぐらいしか、今の自分にはできないのだから。この新たな契約者と共に生き、終わりの時まで好きに生きる。その傍らで、彼女を守るとしよう。
そう決めた。
「ふんむ……取り敢えず、私は君の護衛だ。思うところはあるだろうが、よしなに頼むよ」
「えぇ、よろしくお願いするわ。後、別にアナタの出生はどうでもいいのよ。アドゥーが雑魚くって、アナタの魂が強かった。それだけのこと。確か、自業自得ってヤツよ」
「達観としてるねぇ」
デミアはコーカスドムスを肯定する。
儀式の首謀者が死んでしまったことは悲しいが……今のコーカスドムスは、アドゥーの肉体をそのまま使っているわけでもない。転生魔法という摩訶不思議な法で、自力で新たな肉体を持って生まれ直した者。
云わば別個体だ。
巻き込まれ事故で蘇った形のコーカスドムスに対して、デミアは同情と憐憫を抱いている。起きて早々葬られては堪らないから。
……離れ離れになるその時まで、交友を深めておくのも悪くない。
「さ、行くわよ。アンタも大人しくしてなさい。ワタシの使い魔ってことで通すから」
「御意に。よろしく頼んだよ、死天使の子」
「えぇ」
警笛を鳴らす宇宙船が、続々とアルタードームへ近寄る光景を見上げながら、デミアは歩く。その手に持っていたコーカスドムスを肩に乗せて、出迎える。
その目には覚悟が宿っていた。
被害規模が大きすぎて確実に隠蔽、歴史の闇に葬られる内容ではあるが。一から十まで、真実を伝えて記録させてやろうと。
跳ね除けられたら、首謀者扱いで免罪逮捕されたら。
ムーンラピスもお墨付きの相棒を、ヤツらに消しかけて生き残るだけだ。
「あぁ、そうだ」
「うん?」
「ワタシはデミアよ。死天使の子とかやめなさい。物騒で人目に付くわ」
「注文が多い子だ……わかったよ、デミア」
「よろしい」
いつの日か、また魔法少女たちに会った時。しっかりとお礼を言えるように。
憎悪を殺さず、瞋恚をひた隠しにして。
「……スピカ姉、死なないといいけど」
最後、素っ気なく返された助命嘆願を思い返しながら。
猫を被ったデミアは、ゾロゾロと降り立った宇宙警察を出迎えるのだった。
次回、一方その頃×3




