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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
マギアガールズ銀河紀行 -星砕きの英雄-

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223-勝利への執念、星爆の祈り

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すいやせん…


 リリーライトとムーンラピスのドリームスタイル───豪華絢爛、正しく王を名乗るに相応しい重厚感と、可愛さ美しさの全てを兼ね揃えた、最強フォームになった2人。悪夢の住人たちを震え上がらせ、あらゆる敵の一切合切を真正面から跳ね除け、勝利をもぎ取ってきた覚醒の力。

 その人類の希望を、真正面から打ち砕かんとするのが、将星カンセール。


 そして───希望の対極にある絶望、星雲を乗っ取ったネビュラ・アクゥームの顕現により、カンセールの戦況は著しく悪化した。

 最強二人、夢魔一匹。

 たった一人でこれを相手しろと言われても……侵略者は笑みを絶やさない。


「やったるかによォ!!」


───百瞳魔法<アルゴス・覆滅>

───暗黒魔法<スクリーム・ダークマター>

───極冠魔法<ポーラーアイス・スター>


 滅びの魔眼、暗黒物質の狂乱、凍てつく星の大破壊……カンセールとその配下たちが有する魔法の中でも、強力な技を使って、まずはネビュラ・アクゥームに攻撃する。

 何百年と従えてきた星雲を失うのは痛いが……

 過去の全てを捨て去ってでも、この戦いを征する意味がある。


 雲状の怪物に物理攻撃が効くとは到底思えない。故に、カンセールは魔法主体でアクゥームを責め立てる……その戦闘の傍ら、嫌がらせとばかりにちょっかいをかけてくる魔法少女たちも対処しながら。

 顔のないムーンラピスには純粋な恐怖を、相も変わらず笑顔のリリーライトにはこいつヤバいなといった恐怖を、それぞれ向けて。

 拳を穿つ。


「オラァ!!」

「くふっ、いいねぇ!」

「やるじゃんね!」


───月魄魔法<ルナティック・ボンバー>


───極光魔法<ブリリアント・シャイン>


 最強二人を相手取りながら、ネビュラ・アクゥームへの攻撃を止めないカンセール。攻防一体の卓越した戦闘術で魔法を捌き、斬撃を凌ぎ、銃弾を防ぎ、拳を叩き込む。

 以前までの彼ならばできなかったことを、執念で。

 勝利を掴む為の貪欲なまでの渇望が、カンセールの背を押す。


 勿論、彼の奮励を黙って見過ごす程、魔法少女は決してやさしい生き物ではなく。

 猛攻は止まらない。


「ッ、お前たち!」


 ネビュラ・アクゥームもまた、氷漬けにされたり魔眼で質量を減らされたり、暗黒物質で抉られたりはするが……ただで攻撃を受けてやる程、柔い存在でもなく。

 突然化け物になった星雲に向けて、逃げるように砲弾を撃ち込んでいた戦艦が一隻、突然内側から破裂するように爆発した。


 原理は単純明快。ガス状の星雲が艦内に入り込み、中で質量を伴ったまま膨れ上がって、圧迫したのだ。

 本来ならば不可能な挙動も、アクゥームは可能とする。


オオオォォォォォ───…


 暗黒星雲に分類されるネビュラ・アクゥームは、とある特殊な星間ガスを多分に含んでいる。それは非・地球人に殺意を振り撒く、自殺本能を引き出す粒子。

 触れた瞬間、自ら命を絶って死にたくなる。

 そんな毒である星雲がガス状に散布され、艦隊のあった空間全てを支配する。


 つまり。


「時間をかければかける程、不利になるのは、君だ!」


 どっちが悪かわかったもんじゃ───失礼、この蒼月、闇堕ち済みだった。

 失笑。


 幾つもの戦艦から血が吹いて、次々と自刃する者たちで溢れていく。


「ハッ!成程かになァ!だが!そんなもんで死を選ぶ……意志力の弱い配下なんぞ、幾らでも減って構わんかによ」

「えぇ?酷いね?どいつもこいつも最低だぁ」

「カッカッカッ。そも、我らは侵略者。星の安寧を拒む、外道最低の集まりだかに。戦場で死ぬのは至極当然!その死に方が惨めであっても……文句はないだろうよッ!仮にあっても知らんかにがなァ!!」

「宇宙の掟は厳しいねぇ」

「修羅かな?」


 全ては自己責任と笑うカンセールだが、それでも被害を最小限に抑える為に、やはりネビュラ・アクゥームを先に討伐するべきだと、力を振るう。

 魔法少女の2人も、どう頑張るのか見たいようで。

 本気で妨害はしないが、手加減抜きの攻撃を、定期的に放つ。


「僕に勝つんだろう?」

「私に勝つんでしょ?」

「「───これぐらいは乗り越えなくちゃ、同じ土俵とは言えないぜ?」」


───極光魔法<グリン・スラッシュ>


───月魄魔法<アビス・キルゾーン>


 二色の剣閃がカンセールの甲殻を削る。カンセールは、防御に全振り。回避を捨てた特攻で突破するにはいらない怪我を負いすぎてしまうが……まだ、許容範囲。

 外側が削られた程度で、血は流れていないのだから。


「同じ土俵、ねぇ……まだ、その端っこに乗っただけの、若輩者ってことで、許して欲しいかにけど……そーんなの気にするようなタマじゃあねェかにしなァ!」

「仕方ないから、その期待。乗り越えてやるかによォ!」


───影魔法<アナタ・シルエット>


 自分の影を切り離して、影法師を実体化させる。それはカンセールの影そのものと言うだけあって、内包する力は本体と同程度。

 もう一人の自分を作り上げたカンセールは、影を2人にぶつける。


「へぇ?」

「わぉ!」

「───ッ!」


───蛸壺魔法<タコツボラッシュ>

───攻殻魔法<ブレイブシェル・ボクシング>

───闘蔵魔法<バトル・タートル>


 影法師は蛸壺を召喚して殴り掛かると共に、カンセール本体と同様の硬さの甲殻を強化、オマケに戦闘民族の亀の力を降ろして、複数のブーストをかけまくる。

 最強の拳闘士となった影法師は、そのまま吶喊。

 タコ足と共に魔法少女に殴り掛かって、本体の邪魔などできないように阻む。


「かった!」

「悪くない」


───極光魔法<リヒト・エクスカリバー>


───月魄魔法<マジック・デスペラード>


 二つの攻撃を浴びても、影法師は怯むことなく。

 当然、対等とは言い難いが。世界最強の女たちに、影は必死に食らいつく。


「カッカッカッ…」


 そして。


「アクゥーム……確か、地球由来の悪夢が作った怪物……だったかにか?まったく。カニのモノを勝手に作り替える所業、本当に性格の悪い……カニの500年の栄光が、全部敵に回るとか。気分最悪かに」

【オオオオオオオォォォォォ───…】


 こちらを見下ろす二つの眼球を見上げて、カンセールは感慨深そうにボヤく。自分の星を戦艦に作り替えて、その周りにあった星雲を掻き集めて、侵略に利用して。

 元より国土の小ささから侵略に転換したのがキャンサー星人である。若い身空で一族の新たな長になり、侵略者の最高指揮官になったカンセールは、自国を丸ごと戦艦へと作り替えるという突飛な発想を強行して、新天地を目指し進軍を開始した。

 ……後に、巨蟹宮のあった宙域が、近隣の超新星爆発で吹き飛んだことで、カンセールの支持は揺るぎないモノとなったのだが。


 そんな長年連れ添った星雲を、ここで全て破壊する。


 思うところはあるが……必要であるならば、壊すことに躊躇いはない。

 そも。彼は侵略者。

 奪うことに躊躇いはないし、奪われることに躊躇いなどない。


「行くかによ───皨魔法」


 将星カンセールが使う魔法には、一つの共通点がある。それは、全て侵略によって彼の配下になった魔法であるということ。配下にならなかった敵の魔法は使えない。そう自分で定義して、使えるように努力して。

 その成果の一つが、この魔法。

 既に、持ち主である男は死んでいるが───彼に忠義を尽くしたその過去は、変えられず。

 終わった星の輝きを、新たなる始まりを。

 両の掌に集まった星の魔力を、一つに重ねて……輝きを束ねる。


 それは、全てを吹き飛ばす星の輝き。終わりと始まり、星の軌跡を垣間見よ。

 カンセールの魔法において、最高威力を誇るその技は。


「───<スーパーノヴァ>ッ!!」


 天高く吠えて、たくさんの戦艦を飲み込み終え、残った四割を破滅に追い込んだ大災害に。

 一条の流星が宙を駆け抜け、突き付けられる。


 その輝きを、ネビュラ・アクゥームはジッと見つめて。身体を構成する星雲で、星の輝きを包み込んで、無に帰す行動に出ようとしたところで。

 瞬きよりも早く。

 星の煌めきが。


 世界を色付ける。


──────…ッ!?


 爆光が、辺りを塗り潰して───カンセールの観察眼が見抜いた弱点、アクゥームの核を、正確に貫いて。

 星雲を晴らす。


「ッ、ガハッ……流石に、この魔法は負担が多いかにね」


 思わず膝をついたカンセールは、込み上げてくる痛みに我慢できず吐血する。だが、まだまだ動ける。この程度で終わるわけにはいかない。まだ、まだ……暴れられる。

 そう吼えて、星雲が晴れた宙に背を向けて。


 甲板に降り立ったリリーライトとムーンラピス、塵へと消えていく影法師が見えた。

 身体に影が戻ってくる感覚に笑いながら、立ち上がる。


「待たせたかにか?」

「いーや、そんなに」

「そう逸るな。ククッ、言っちゃなんだけど、もうちょい誇っていいんだぜ?アクゥームは文字通り悪夢の塊。僕ら地球人は兎も角として、君たち異星人には致死毒の塊だ。正面戦闘じゃあ死ぬ方が早い」

「お〜、そう考えると、すごすぎるね?」

「カニカニカニ……そいつはどうも。でもかになァ、前座程度で喜ばれても、このカンセール様の喜びにはならんのかによ」


 魔法少女からの称賛を吐き捨てて、星雲晴らしの英雄は腰を低く構える。


 なにせ、まだ───至極の勝利を味わっていない。


 魔法少女という“極上”を、まだ倒せてすらいない───満足するには程遠い。カンセールが真に求めるのは、この最強たちに勝利すること。

 味方の生き死になど、そこまで重要視していない。

 この暗黒銀河は弱肉強食。優勝劣敗、適者生存の完全な自然淘汰。


 大事なこと故に、再三語るが───この宇宙において、勝利こそが最も尊ばれる、最優先事項。

 生き死によりも、勝つか負けるか。


 皇帝“星喰い”が齎した強者準拠の絶対法の前では、その慰めも通用しない。


「本気だね」

「物騒だなぁ〜。でも、そーゆーわかりやすいとこ、私は嫌いじゃないかな」

「カッカッカッ。そうかにかそうかにか…」


 勝負を優先するカンセールに、筋金入りだなとラピスは無い顔を顰めて。わっかりやすーいと軽く応えたライトは聖剣を一振り。緊迫した空気感を切り裂くように、次へと進めるように笑う。

 もう、これ以上の問答は不要だと。

 いつでも技を放てるように、力を溜めるカンセールに、武器を向ける。


「心の準備はできた?」

「死力尽くせよ。全部受けてやる」

「強者の余裕かになァ。全く、これだから強いヤツは……カッカッカッ!いいだろうかに。望むところかに。さァ、ラストバトルと行こうかに!!」

「ハッ!」


 勝気に笑うカンセールの宣戦布告に、2人は笑って。


「かにかにかにかにうるせーんだよ。ったく……いいぜ。有終の美ってのを、飾らせてあげるよ」

「ふふっ、いーよ!やろ!」


───月魄魔法<ケイオス・ムーンハザード>


───極光魔法<ラディアント・アークカノン>


 受けて立つと、二つの輝きが無窮の宙を染め上げる。


 至近距離で放たれた大破壊を目前にして、カンセールは笑みを深めて。


「勝つのは、オレだァ!!」


───極砕魔法<クラッシュスマッシュ>


 拳を放った。


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― 新着の感想 ―
カニさんイケメンすぎる。 ここからアリスメアーに 入って悪夢+死体化でさらに強化でいるってマ??
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