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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
マギアガールズ銀河紀行 -古の夢啜り-

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211-君が為のミルキーロード


───同時刻、スターリーマーケット地上部。

 星全体を揺らす震動と、地下全体に張り巡らされていた古樹こと“世界樹”の異常。度重なる異変により、地上部は今、混乱に陥っていた。


「早く!」

「な、なんだーっ!?」

「みっ、皆さん落ち着いて!焦らないで!」

「押さないでよ!」

「この非常事態、“翁”はなんと!?」

「連絡がつきません!また、地下街への通り道も塞がれておりますッッ!!」

「なんだと!?」


 観光客も、買い物客も、警備員も、商人も、組合員も、我先にと未曾有の危機から逃れようと必死になる。一人の恐怖から伝播したそれは、なにがなんだかわからなくてもとんでもないことが起きていることを察知して、少しでも助かろうと足掻く異星人たちの生存本能。今までなかった商店街での異変に、人々は逃げ惑う。

 既に揺れは収まっているが、地表部の木々が一瞬にして変色するという怪奇現象は看過できず。不気味な変化から距離を取ろうと、安全がわかるまで逃げようと、宇宙港へ駆けていく。


 その混乱を、一部の人間───魔法少女たちが、建物の物陰からこっそり覗いていた。

 バレないように、気付かれないように。


「みんな、危機意識すごいね…」

「それだけ異常だってことでしょ。それで、デイズ。皆と連絡は取れたのかしら?」

「できたよ!先輩たちは野次馬根性で情報集め、ベローとビルさんは、リデルちゃんとダビーちゃんナシラちゃんと合流して潜伏中!アリエスさんとカリプスさんは、事態の解明に乗り込もうとしたけど、結局やめて木の密度が薄い場所に避難してるって!」

「……メードとぽふるん、は?」

「迷子になったから助けてだって」

「あのさぁ…」


 エーテ、コメット、デイズ、チェルシーの4人は、もう置いていってもいいかなと呆れながら、迷子の大人と相棒を探しに行こうと立ち上がる。

 ついでに、連絡のつかない姉二人も探そうと。

 何を企んでいるのかは知らないが───この異変の元凶候補に、2人の名が真っ先に挙がったが。

 突然感じた月の波動、そして、光の殺意。

 思い当たる節があったエーテたちは、誰かが何かしらの地雷を踏んだと見ている。やらかした張本人の安否は正直どうでもいいが、今すぐにでも主犯格を回収して、事態の沈静化を図るべきだと。

 だが。


───召喚魔法</magic-■■・強制召喚>


 そんな文字列が、脳に響いて。自分たちの名前が、その空白に埋め込まれていることに気付いた、その時。足元に魔法陣が現れ、輝き、回り、待つ暇も与えずに発動する。

 悲鳴も疑問も挟む隙を与えず、召喚式は起動。

 星の各地に散らばっていた仲間を喚び出して───宙を駆ける列車へ下ろす。


「わきゃっ!?」

「っ、いたた…」

「うおっ、とぉー!ナイス着地!」

「ふぅ…」


 空中に現れたせいか、床に思いっきり尻もちをつく目に遭ったが、それは後で怒るとして。痛みに悶えながら辺りを見渡せば、そこは最早見慣れた夢奏列車の車内。

 自分たちの他にも、合流しようと思っていた仲間たち、探そうとしていた問題児たちが全員集まっていた。みんな困惑している様子だが、誰に呼び出されたのかはわかっている顔だ。


「お姉さん!お姉ちゃん!」


 平気な顔して椅子に座り、何かしらのモノ───戦利品らしき物品を手で弄んでいる2人に、エーテが走り寄って突っ込む。


「おかえりー」

「おかえりーじゃないよ!?ねぇなにしたの!?ちょっと説明してよねっ!!」

「えっ、なにかあったの?知らなかったー」

「ぶん殴るよ」

「ヤダ過激…」


 シラを切る姉の喉にマジカルステッキを突き付けたのは日頃の行いが悪いからである。最近健全な姉妹喧嘩をして仲の良さを深めている為、このぐらいの殺意は日常茶飯事となっている。

 遅れた青春だ。

 そんな感じに説明を求めるエーテに、ライトは苦笑いで隣を見る。助けを求める目を向けるのだが……ラピスは僕知りませんの顔だ。


 キレたエーテはチェルシーを差し向けた。猫の飛びつき顔面ダイブが炸裂した。


「おぶっ!?」

「うーねぇ、隠し事はよくない」

「容赦なくなったね、寝子……まぁ、色々あったんだよ。あの混乱はその副産物。気にしなくていーよ」

「でも…」


 避けずに受け止めたラピスは、チェルシーを抱き上げて膝に乗せながらそう言い聞かせる。

 無論、それで納得するわけがないのだが。


「放置でいいの?」

「あぁ。勝手に収束するさ。ただ、僕らに不都合なヤツが消えただけ。んまぁ……あれだよあれ。気持ち悪すぎて、青少年にはお見せできないヤツだっただけだよ」

「……そっか。うーねぇがそう言うんなら、知らない方がいいって、こと…だよね?」

「物分りがよくて宜しい」

「ん…」


 納得はいってない顔だが、飲み込まないといけないと、本能的に理解する。それだけ、ラピスが、ライトまでもが話す行為を放棄している。

 ご褒美と頭を撫でられて、チェルシーは黙殺された。

 その雰囲気に、聞きたがっていた他の面々も口酸っぱく言うのをやめる。

 ただし。


「除け者とか酷いよね」

「戦力的に逆らえない人にそう言われるの、頭来るわ……下剋上しようかしら」

「チェルちゃんを誑かさないで!!」

「隠し事とはいい度胸だなァおい」

「人ゴミに巻き込まれて死にかけたんだけど?」

「事前にすごいことやりますとか言えよな」

「耳元で音楽フェスやるよ。これ決定事項だから」

「ちょっと降りて線路に立ちませんか?しっかりきっかりぶち轢くのです」

「めんどくせぇ……」

「はい蚊帳の外蚊帳の外」

「この七支刀モドキ(お土産)刺しても?」

「デートの邪魔でもされたのか?」

「んめぇ…でも、そういう所がらしいというか、んぅ〜、絶対ライオン案件…」

「あー、っぽいな。やってそう」

「教えろー!」

「ろ!ろ!」


 やっぱり納得していなかった。非難轟々雨霰である。

 うるさいうるさいと文句を跳ね除けながら、我関せずと車窓からの景色を眺める。


 たくさんの宇宙船が、惑星を脱出する風景が、どんどん遠ざかっているのが見えた。もうあの星に、然程の問題はないのだが……暫く売上が下がるのは事実だろう。

 なにも知らない商人からすれば、商売上がったりだが。

 原因究明が終わるのは、いつ頃になるのか。ちゃんと、真相を明かすのか。


 そこまでラピスたちが関与する必要もない。文句とかは言い足りないが。特に、マリシャーの所業を黙認していた連中には、中指を立てたい気持ちだ。


 ……それに、この話は、これでおしまいだ。


「んもー!ぼくにも言えない話なのぽふー?ちょーっとは共有するぽふー!」

「えへへ、ごめんね〜。ちょっと無理!」

「えー?」


 同族が被害に遭った妖精ぽふるんには、一番聞かせたくない話である。リリーライトの顔面に張り付く子グマを、ラピスは余所目で眺めて、黙る。

 想いが裏切られる話は、彼が一番嫌いな話だから。

 気付かれないように、悟られないように、悪いヤツらがいたんだよで話を締める。

 それでいいのだ。


 ……妖精たちを殺したのは誰なのか、原因とかは、今のところわからない。外傷もなければ、船の損壊もない……可能性として上がるのは、例のワイバーンか。

 あいつなら、わざわざ捕食せずもユメを啜れる。

 うーん、判断材料が足りない。モヤモヤするが、きっといつかはわかるだろう。この道中に、その答えがあるかも知れないから。そんな運命を信じて思考を閉じる。


「まぁまぁ……次の星では、ちゃーんと殴り合い、させてあげるからさ。ね?」

「そんな、私たちが戦闘狂みたいな…」

「似てきたね」

「なんかヤ…」

「なんでえ」


 まるでも何も手遅れである。


 愛と希望、そして悪夢を乗せた列車は、秘された真実を新たな積荷にして駆け上がる。次なる目的地は、暗黒銀河最大の武器工場。

 その名も、“ネオ・エネルギープラント”。

 兵器以外にも、宇宙線などから電力や魔力エネルギーを生産する設備もある、銀河最先端の工場である。民間とはあまり関わりはないが、その重要性は推して然るべき。

 暗黒王域に大ダメージを与える工場襲撃。その瞬間は、刻刻と迫っていた。



───速報です。

スターリーマーケットでの異変において、連合商会より、新たな情報が発信されました。曰く、この星を支えていた世界樹の代替わりが、我々の預かり知らぬところで起き、その影響が星全体に作用した、とのことです。

今回の騒動の余波で判明した、行方不明者が存在していたことについては───…

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