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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
ユメと希望、友情のブルーム

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18-不思議がいっぱい、夢いっぱい


 親友の妹が潜在的悪夢適合者だった件。


───激戦を繰り広げたリリーエーテとビル、あと片手を失ったアクゥームの戦いは、出力調整で緩和された浄化の力によって、いつもの如くアクゥームが浄化されたことで終幕となった。

 ドリームスタイルの獲得に、夢魔法の更なる進化。

 見所はたくさんあったが、傍観者として一つ、言わせてもらうとすると。


 夢想魔法、怖くね?なにあれ。

 僕のサテライトビームとどっこいどっこいの消滅力じゃないか。


「覚醒はまだいい。いいんだけど……はァ、まさか初発で見つかるのが一般人とかじゃないとか。これは幸先悪い。見方を変えれば一石二鳥だけども」

「よかったではないか。捕らえれば戦力も奪えるぞ」

「そうなんだけども」


 密かに魔法少女を応援している身としては、この状況はちょっと受け入れ難い。それに知ってる顔相手。ほんと、運命って残酷だよね。

 ……でも、これで無理に一般人を襲う必要はなくなったかな。なにせ魔法少女を襲えばいいのだ。わざわざ危険、ヘイトを買う必要はない。

 暫くはリリーエーテを狙う方針で行こうか。

 どちらにせよ、アリスメアーの悪夢を育むには、彼女の犠牲は必要不可欠。可哀想だが、代替案が出るまで僕らに狙われてくれ。


「だが丁度良かったな」

「まぁ……これでリリーエーテは、仲間達の精神的支柱になったと言えるし……彼女を崩せば、僕らに有利な展開に持ち込めるかもね」

「狙い時だな」

「できるかどうかは別として」

「やめんか」


 大人しく現実を受け入れて、気に入ったのか今日も僕の膝を占領するリデルをどついてどかして、三銃士に新たな任務を下す為に部屋を出る。

 いつまでも甘えられてると動けないからね。

 ……いやだからって裾に引っ付くなよ。伸びる。つーか引き摺られてるのいいの?


「やだ」

「マジで幼児退行……ハット、被って」

【ハッツ!】


 もう仕方ないからそのままに。三銃士だってこの痴態を幾度も見ているのだ。もう慣れただろう。蜘蛛足生やして散歩してたハット・アクゥームを頭部に寄生させ、移動。

 杖を突いて歩を進め、三銃士の魔力反応がある娯楽室を目指す。


「遊戯中失礼」

「あっ、帽子屋さん……むぅ、そこは私の場所」

「やらんが?」

「あげてないが」


 チェルシーも一緒になって裾取り合うのやめない?


「帽子屋の旦那じゃん」

「ボス」

「だからやめろと……む、ポーカー中だったのか。あぁ、手を止めずともいい。耳を貸したまえ」

「………」

「メード」

「はい?」


 ガン無視するのもやめてよ。太鼓に熱中したい気持ちはわからなくもないけど……おい全然叩けてねぇじゃんか。雑魚か?なんでそんな外せるの?才能?

 低得点で項垂れるメイドを余所に、こちらへ意識を割く三銃士へ告げる。


「これからの任務に最優先事項を追加する。まぁ、先日の戦闘映像を見たならば言わずともわかるだろうが……以降我々アリスメアーは、祝福のリリーエーテを集中的に狙い悪夢の覚醒、成長を促す」

「あぁ、承った」

「了解ッス。いやー、アイツも災難だな」

「どんま」


 さてさて、これでvs魔法少女も佳境かなぁ。魔法少女の覚醒が確認できた時点で、新たなステージに立ち入ったと言えるだろう。

 ペローとチェルシー、ビルの三銃士には、これからより頑張ってほしい。

 ……僕もマッドハッターとして出撃するべきか?

 そこで不貞寝キメてるメードも行かせよう。役職は幹部補佐なんだ。資格はある。

 あぁ、そういえば。


「ところでメード。君には破壊した庭園のシステム復旧、魔城の修復作業があった筈だが……見た所、まだ終わっていないようだが?」

「ギクッ……いえ、これから再開する予定でした」

「吾輩が痺れを切らして作業を手伝う、代わりに担うのを待っていただろう」

「ギクギクッ」


 冷や汗ダラダラ目を逸らすメードの首根っこを掴む。


「やー……」

「なんて哀愁漂う……いや自業自得だけど。骨は拾っときマスカラね〜」

「ナム」

「ケッ」

「うむ」


 半泣きで引き摺られるメードに容赦なく、心を鬼にして連れ出す。まだ崩壊したキッチン直ってないだろうが……そして二度とあそこに立つな。オマエは所詮メイド服着たニートなんだから。

 酷いって?あの惨状を見て同じことを言えるものか。

 そろそろ己の料理の腕前を自覚すべきだ。散々僕たちが不味いと断言してるのに、そんなわけないと希望を持って実効に移すな。

 諦めろ。


 ……リデルはなんでこの子を蘇生して配下にしたんだ?疑問が尽きない。


 アクゥームの幼体が寄って集って死体食みしていたのを見つけて、ちょっと気になって回収した死体。そこに僕のユメエネルギーを注いで疑似蘇生……死体に根付いていた人格を再生して生まれ変わったのが、今のメードである。

 元同志に討伐された幹部怪人の因子を注ぎ込んだせいで複数の怪人の力を行使することもできる。

 あの透明化は彼女本人の気質から生まれた魔法だが……僕とリデルの継ぎ足しで、なんでもできる筈の化け物へと変貌してしまった。


 家事能力は皆無だが。何故そこだけ……注ぎ込みすぎて壊れたのか?


 いや生前の家事能力知らんけど。元の家族構成と死因と趣味嗜好ぐらいしか知らないからなぁ……別に知りたくもないし……いや、やっぱ知りたいかもしれん。

 絶妙に気になる。どうやって生きてきたんだオマエ。


 取り敢えず、この問題児を魔城の外へ連れ出さねば……破壊した責任はしっかり取ってもらわないと。


「手伝って……」

「駄々っ子……むぅ、自分が悪いんだからちゃんとやれ。真面目にやってもらわないと困るぞ」

「あぃ……」


 魔法でちょちょいってやるだけなんだから。肉体労働は強いてないぜ。


 ……あ、三銃士にリリーエーテ以外の適合者も探せって御触れ出すの忘れてた。流石にね?一般人の……できればいなくなってもいい、裏社会にいそうな人とか犯罪者とかでいないか探して欲しいな〜、なんて。

 なら遠出させろ?それぐらいいいけど……


 え、遠征?








꧁:✦✧✦:꧂








 アリスメアーとの戦闘後、苦戦から覚醒を経て、新たな領域に入ったリリーエーテこと明園穂花が気絶してから、一夜経った日の朝。

 搦手を使うアクゥームの対処、解決策、今後どう戦うか反省会を開く……その前に。先んじて新形態を手に入れた穂花に、麻痺にやられて行動不可となり、復活したものの覚醒に出遅れた蒼生ときららが厳しく詰問する。

 自分だって強くなりたい。一歩遅れたのは悔しい。

 これからの戦いで置いてけぼりにならないよう、2人はかなり強めに穂花を揺する。


「いいなー!アタシも早く覚醒したい!」

「どうやったのよ。こう、コツとかあるなら教えなさい」

「わー!待って待って!落ち着いて揺らさないで!ごめんそこまで覚えてない!こう、無我夢中っていうか……多分意志の力とかそんなんじゃないかな!?」

「成程ね。いいわ、それで納得してあげる」

「命拾いした〜ねっ!」

「助かった……」


 今後アリスメアーに命を狙われることが確定した穂花。彼女を守る為にも、共に戦い、抗う為にも、悪夢に逆らう新たな力は必須。焦る必要はないんだよと諭しながらも、蒼生ときららに両脇を固められて嬉しくなる。

 もう自分は一人じゃないんだと、改めて実感できて。


「でもよかったぽふ。ホノカが諦めないでいてくれて……ろくに役立たい妖精でごめんぽふ……」

「そ、そんなことないよ!ぽふるん達にはいつもお世話になってるもん!!」

「それでもぽふ。今回の反省は次に活かすぽふ」

「勤勉ね……あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ。これからもよろしくお願いするわ」

「一緒に頑張ろうね!」

「みんな……ありがとうぽふ……!」

「いい話だなー」

「こら」


 落ち込んで凹む皆でぽふるんを励まし、萎びれた体毛を元のふわふわに戻す。触りたくなるその質感は大人気で、気落ちでゴワゴワやらになられては困る。ストレス発散と退屈しのぎでクマ妖精をモフっている魔法少女にとって、これは死活問題なのである。

 ついでに、一連の流れを興味無さそうにパックジュース一気飲みで無視するほまるんもモフり返して、彼女たちは気分を一新。再び会話を弾ませる。

 如何にアクゥームの攻撃を浴びないで戦うか。連携で、各々の強みをどう活かすか。

 また次も勝利を勝ち取れるように、救いを求める誰かの手を掴めるように。


「ドリームスタイルかぁ」


 穂花は新たな力に想いを馳せる。かつて憧れたその姿。リボンがひらめく可愛さも、煌めく光の粒子、軌跡を辿る極光のかっこよさ。女の子らしさを最大限に引き出した、あらゆる悪夢を晴らす希望の姿。

 配信画面で、実物で、お遊びで……色々な角度で、姉が変身して見せてくれたのは、今でも覚えている。

 迸る極光がアクゥームを断ち切り、浄化した光景も。

 無数の弾幕が風穴を空け、黒が蝕み、ハサミが飛び交い全てを切り裂く。数多くの魔法少女が切り札として、更に継戦できるよう持続性を上げて築き上げた、覚醒の基礎。

 今の自分たちがドリームスタイルを確立すれば、きっと長時間戦える。


 それだけの手段を、先人たちから、妖精たちから彼女は齎されている。


 ……お膳立てされている気がするが、そこで終わらないようにしなければならない。貢献できるように、ちゃんと活かせるように。

 最強の姉の名に恥じないよう、穂花は決意する。


「穂花〜、魔力ちょーだい」

「えぇ?またー?いいけど……はいっ」

「あいあとー」


 ほまるんに呼ばれて、大人しく指を差し出す。すると、穂花の指を口に含んで……ちゅうちゅうと、穂花の魔力を吸い始めた。これは最近定期的に行われる、ほまるんへの魔力供給である。

 理由は不明原理も不明。魔力を指から吸う形で、妖精は魔力を補給している。


「……前から思ってたけど、なにがしたいの?それ」

「ちゅぷ、ちゅぱ!んーとね〜、今の私、魔力で無理矢理身体動かしてるようなもんでさー。魔力が切れちゃうと、動けなくなっちゃうんだぁ」

「ヤバいじゃない」

「死体を無理くり動かしてるようなものぽふ……ほんとはあんまり動いて欲しくないんだぽふけど」

「無理ー☆だから魔力ちょうだい?治療だよ治療」

「メディーッッック!!」

「呼んでも無駄だよ」

「達観してる……」

「わーお」


 あまりに酷い理由だった。今までされるがままで一度も聞こうとすらしていなかった穂花でさえ、それがおかしいことはわかる。魔力がないと動けない身体ってなに。

 そう疑問を呈するも、それ以上は軽く流されるだけ。

 ほまるんの謎。ハッキリ言って、この場にいる誰よりも不思議なのが彼女の存在だ。ぽふるんの妹だという自称、そして他称。こうして魔力供給を要求してくるところも、彼女を不思議たらしめる要素だ。

 ただ、穂花の心に警戒はない。妙に馴れ馴れしかったり知り過ぎていたりと疑問は浮き上がるが……そこは彼女の魅力の一つと捉えている。

 ほまるんを大事な仲間だと本心から思っている。

 だからこそ、こうした魔力供給を快く受け入れているのだが。


「早く治るといいね」

「……うん♪」


 いつの日か、元気な姿で笑い合う為に。


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― 新着の感想 ―
誤字報告です。ご確認をお願いします。 誤: 低得点て項垂れるメイドを余所に、こちらへ意識を割く三銃士へ告げる。 正:低得点で(以下略)
厄ネタか?厄ネタなのか?ほまるん?
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