201-慣れる慣れないの問題でなく
前半はフレーバーテキスト
ゆらゆら
ふわふわ
ぽわぽわ
ぬちぬち
めらめら
『───時間はまだかかる、か』
こえこえ
きこきこ
るるるる
『餌はまだいるのか?』
『わかんない。だって初めての試みだから。まぁ、十分に時間をかけよう。不完全の状態で戦地投入したって、いい結果は得られないもんだし』
『虚神兵か?腐海の最終兵器赤ちゃん』
『オマエそんな風に思っての?』
『うむ!』
『そう…』
らぷらぷ
りででで
あくむむ
むむむむ
『……何語だこれ』
『そこはピだろ。なんでプなの』
『ムーンラプス、か。改名の時期だな』
『来ねぇよ。すげぇ物騒な月になるじゃんか。ラピスだよラピス。ラーピース』
らすぴす
『???』
『???』
????
───以上、まだ覚醒しない、悪夢の卵とのカプセル越し交流記録より。
【名もない悪夢】の覚醒まで、あと───…
꧁:✦✧✦:꧂
「魔王様───ッ!」
「おい誰だ人のこと魔王呼ばわりしてるや……なーんだ、山羊んとこのちびっこか。なんで?僕そんな傲慢不遜悪役大帝王みたいな言動したっけ」
「危ない人Lv京ぐらいは」
「安全な人Lv京ぐらいも」
「拮抗してんのかよ」
ウルグラ隊の訓練風景を見せて貰えるとのことなので、冷やかし気分で向かっていたところ。前方から、こちらに全力疾走する見慣れた異星人、ダビーが駆けてきた。
酷い言い様の姉妹二人を横に押し倒して、ちょっとだけ久しぶりに会うレッサーパンダと…
ハイタッチ。
「いえーい」
「いえーい!」
「……いつの間にそんな仲良くなってたの!?」
「再会の挨拶と聞いたので!」
「合わせてあげただけ」
「そ、そうなんだ」
多分ノワの入れ知恵だな。まったく……察しなかったらどうする気だったんだ。別にいいけど、。瞬時に理解して行動して、子供の夢壊さなかった僕偉くない?
地球の常識(入れ知恵)を実現できたことに飛び上がって喜んたダビーが跳ねたのに合わせて、捕まえて、しぬかり抱き上げてあげて、せーの。たかいたかーい。
わーいい笑顔。
「後でナシラにもやってあげてください。ダビーだけじゃ不公平なので…」
「真面目だなぁ。別にいいけど」
「やった!」
一通りはしゃいでから、ゆっくり床に降ろしてやる。
「あっ、そうだ!ご主人様が呼んでます!皆さんの予定に合わせて、訓練所にいるので、是非お会い下さい!」
「ふーん?いいよ。行ってあげる」
「ありがとうございます!」
「いいってことよ」
道すがらで良ければ。確か、僕とリリー姉妹よりも早く起きた後輩とか先輩たちとかは、なんか訓練に混ざってるみたいだし。回収ついでに観戦して、魔法解析して、んでカリプスとお話しよう。若しくは同時並行。
るんるん気分で歩くダビーに先導してもらって、そこを目指す。
……なんで寝坊したのかって?いや、起きようとしたら邪魔な重石が二つに増えてて、起床を妨害されただけだ。つまり同行してる2人が悪いわけ。
なんでエーテもいたのかは知らない。
僕に恋しくなっては理由にならないから、そこんところよろしく。
「皇帝様を裏切るわけだけど、君は大丈夫なの?なんとも思わない感じ?」
「うーん……ない、ですかね。ダビーが恩義があるのは、ご主人様やレオード様、アリエス様なので」
「へぇ、そうなんた。どんな感じに?」
「奴隷未満の扱いを受けて、食肉加工される寸前に助けていただきました!」
「重い…」
「怖い…」
「酷い…」
「え?」
思ったより闇深だった。聞かなきゃよかった。好奇心は猫も殺すってゆーのは、こういうことを言うんだね。いや本当になんなのその人権侵害の極致みたいな人生。
……怨蟲被害も含めて、放置し過ぎの案件多すぎない?
一応、この子たちの境遇は改善されてるみたいだけど。多分、他にもあるんだろうなぁ……
なんとかしてやりたいけど。そこは、僕たちの領分じゃないし、ねぇ。
頑張れライオン丸。
任せた。
「ここかな」
「ですです」
数分後、歩いた先から喧騒が響いてきた辺りで、堅牢な要塞の外に出た。場所は、来た時に戦わせられた場所とはまた違う、っぽい。似てるけど違うな。
生まれながら戦士である肉食ズーマー星人。その中でも選りすぐりの強者たちが、お互いを鼓舞し、時に貶し合う訓練の様子が、入り口からよく見えた。
……後は、魔法少女とアリスメアーの連中が、混ざって鍛錬してるとこも。
違和感仕事しろ。
「拳が効かねェ!?」
「これが怨蟲を滅した、大偉業の力───!?」
「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!ウルグラの戦士にィ、逃走はないのだーッ!!」
「ぶっ殺せせせせッ!!」
「死合じゃボケェ!」
「最強戦法!秘儀、肉盾!」
「テメェぶっ殺すぞ!?」
「ガハハ、いい盾じゃ!」
「死ねッッッ」
これ本当に訓練?コロシアムの剣闘士たちの罵り合いの間違いじゃなくて、本当の?すごい世紀末なんだけど……近付きたくねぇ。
身内同士の喧嘩なら兎も角、魔法少女にもやるなよ。
あいつらドン引いて……ないな?慣れてるな?なんなら触発されてるな?
ヤバ。
「プチッとするよ〜、ほら、おいで?」
「残忍な殺し合いの時間だ!!」
「悪夢よりも怖い呪いってのを、教えてあげる」
「デスボイスするから!最後まで立ってた人の勝ちね!!せーのっ!!」
「ぶち轢くのですッ!!!」
「盾ごと貫いてあげるわ!!」
「斧投擲コンテストで一位を目指すんだ」
「ながらコンテストで一位を目指すの」
「やっちゃえぽふー!」
「悪くなさそうだな」
「殺気すごいッスね」
「やれっ、メード!私たちの威厳を取り戻すんだ!!」
「重機混成アクゥーム、再起動しま───大変です陛下!電池切れです!!」
「なにぃ!?」
…………こ、混沌…
関わりたくない。特に、女子が率先して殺気立ってるの本当に無理。そこは男二人が血の気多くしてろよ。これは偏見なんかじゃない。純粋に目に悪い。全員顔がいいから余計に鳥肌が立つ。僕よりも弱いのに…
無関係の人を装いたいけど、無理だなこれは。
つーかメードはなにしてるんだ。持ってきてたの?僕は把握してないぞ。
あとながらコンテストってなに。寝ながら戦うって意味ならぶっ飛ばすよ。
目逸らされた。
ぶっ飛ばそう。
「混ざってくるね〜」
「わ、私も行こっ…」
修羅姉妹が乱入しました。もう知らん……エーテも私は違うからみたいな空気出してるけど、全然そんなことないからね。普通に内心ワクワクしてるの、バレてるからね。
……昔の気弱な女の子は何処に行ったのか。
度胸ついたな…
なんか興醒めっていうか、観察する気を無くした。もう後回しにしよう。
「ってなわけで来たよ」
「なんだ、優先してくれんのか?」
「仲間扱いされたくない…」
「……アーカイブ見た感じ、だいたい似たよーなもんだと思うぜ?」
「えぇ」
観戦席にいたカリプスの隣に座る。手には美味しそうなフルーツジュースが。それ何処で変えるの。あ、あそこの売店?売店あるのかこの訓練場。
ダビーが買ってくれるとのことなので、彼女用も含めた駄賃をあげた。
さて。
「抱っこ要求!平等絶対!」
「はいはい。いや本当、なんでこんな懐かれてんの僕……マージでワケワカメ。はい、たかいたかーい」
「きゃー!」
「……ガキの扱いが上手いからだろ。贔屓目に見てもそう思うぜ」
「そう?」
もう一人の召使い、ナシラにと同様のことをしてやって満足させる。うん、ちびっ子は笑顔が一番だ。こいつら、僕よりも年上だけど。バグだろもう。
もう一回とせがむ駄々っ子をあやして、売店から足速に戻ってきたダビーからジュースを受け取り、一旦みんなでフルーツを感じる。
美味い。
「ズズッ……で、なに?何の用」
「あー、や、アレだよ。ノワールの件。悪かったな、と。改めて謝っとこうと思ってな」
「別にいいのに……まぁ、僕らと違って、慣れてるだろう君たちが可能性として考えなかったのは、責めるべき点、なのかな?理不尽が過ぎるけど」
「思い付きで来るから予測しづれぇんだよな、あれ」
「成程」
本当に謝罪の為だけだったらしい。なんだよ、律儀にも程があるだろうに。そも、捕虜の扱いなんざどーなろうと仕方ないでしょ。こうなる前までは、カリプスもあの蛇の陣営だったんだし。渡せと言われて渡すのは当たり前だ。
……こいつも可哀想だな?いきなりレオードの仲間判定食らうの、控え目に言っても可哀想だと思う。あいつ割と理不尽だよな…
やさしくしよう。
「アリエスは?」
「妹なら、確か……あぁ、モフモフセラピーだの言って、部屋に閉じこもってたな」
「いい枕になりそうだ」
「ふざけんな」
でもあの子、前向きに受け入れてるよ?僕の枕としての立場。
……頭抱えちゃった。
次回、アリエスが…!?




