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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
対“星喰い”同盟

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212/294

198-“夢星同盟”───結成


 夜も更け、獅子吼が響く荒野の城に、宙を脅かす新しい脅威たちが一堂に会する。

 目的は言わずもがな。15の地球の民も交えて、今。


「───これより、第一回“クソ蛇ぶっころ”同盟(仮)の決起集会を開幕とする。今回の目的は、各々の自己紹介や得意魔法の紹介、今後の計画の算段……あの皇帝サマを、どうやって墜すのか、詳しく話を詰める会だ」

「司会進行は、ホストである俺。レオードが務めてやる。感謝しろ」


 不遜にもそう告げるのは、暗黒銀河の頂点に立つ最強を引き摺り下ろそうと長年画策する、黄金の獅子。

 この場にいる全員を集めた金獅子が、会議を進める。


「んで……誰から話す?」

「そこら辺決めてないのかよ。適当だな」

「俺は主催者様だぞ。逆らうんじゃねェ」

「主催者様が先に自己紹介して、情報が少ねぇ魔法少女に聴かせてやるべきだろうが」

「……正論だな」

「論破草」


 同星に文句を言われ、一応の理解を示したレオードは、頭を掻きながら初対面の魔法少女たちに向けて、己の名を名乗り上げる。

 ついでに、己の魔法を実演と共に披露する。


「将星レオードだ。この星の王、前々から“星喰い”を地に落とす計画を立てていて、今回を機に本格的に敵に回った叛逆者。好きに敬え。固有魔法は“黄金”……全てを黄金に変化させる、マップ兵器持ちだ」

「……有効範囲、速度は?」

「あー、魔力切れを懸念しないでやんなら、この星程度は四十秒とかからずに変えられるぜ」

「結構速いな…」


 ムーンラピスからの質問にも軽く答えて、自分の限界を澱みなく教える。それぐらいは、信頼を得る為に、今後の計画を成功に導く為にも隠しやしない。

 金細工に変化した蝋燭を手に、レオードはせせら笑う。


「硬いの?」

「触ってみるか」

「……おぉ〜」


 黄金蝋燭を投げ渡されたリリーライトが、黄金の質感を確かめるように触る。結構硬質なのか、へし折ろうと力を込めるがなかなか砕けない。

 どうやら、黄金化した存在は余程のことがない限り破壊できないようだ。

 ……負けず嫌いが発症して、聖剣抜刀からの試し斬りで破壊可能なことは周知の事実となったが。会議の場でやることではない。


「えーっと、次は……ぽき?ぽきでいいの?あっ、そう。あー、魔法少女の皆様、お久しぶりです。タレスです……あのその、な、仲良くしてくだしや…あっ、情報戦とかは得意なんで!ネット回線とかじゃ負け無しなんで!!でもあんま頼んないで頂けると…」

「固有魔法言えよ」

「“死蠍”っていう殺意バリバリの毒使いまーす!毒耐性でイキってるヤツも毒殺できまーす!以上!」

「強いのに、なんでそんな卑屈なの?」

「性分です…」


 次に名乗ったのは、将星タレス。レオードとは旧知の仲であり、第三者の視点から見ても獅子贔屓であることには間違ない機械の王だ。

 死蠍魔法という毒を操る力で、不意打ちや暗殺など裏で暗躍するタイプの将星である。

 メインは機械技術だが。


「次」

「……カリプスだ。不本意ながら、こっち側につくことになっちまった。被害者だ。魔法は“黒堊”。知っての通り、死の森っつー呪いを振り撒く……悪いが、俺は人命優先で動かせてもらう。特に妹と部下。後方でいいぜ」

「テメェは前線で儀式させまくるに決まってんだろ」

「すごい力があるのに、勿体ない…」

「フルーフ先輩はこれ以上身につけようとしなくていいと思うんだよね」

「うんうん」


 巻き込まれ事故、若しくは獅子の計略によってこちらの陣営に入る以外の道を絶たれた男、カリプス。哀れながらその瞳に宿った意思は強く、ここまで来てしまったのなら仕方ないと、恭順の姿勢は見せていた。

 妹という駒と、魔法少女というワイルドカードの存在が彼を引き留める鍵となる。

 ……まぁ、他より裏切る心配をする必要がないぐらい、この男は誠実なのだが。


「えと、えっと……あ、アリエスです…捕虜、でした……なんか知らない間にアリスメアーの幹部にされてました、ただの羊です……魔法は、“夢繋ぎ”っていうので、あと、体質で魅了とかできます……」

「ちなみにラピちゃんも魅了できます。ってことは私たち魔法少女にも効きます」

「おいバカ言うんじゃねぇよ」

「マジで?」

「へぇ…」


 一番初めに魔法少女と接触した将星、アリエスの挨拶を最後に、将星全員の名乗りが終わる。今や十二将星というよりも悪夢の住人としての側面が強い彼女は、オロオロと震えながら縮こまるしかない。

 ……まぁ、アリエスがこのような末路を辿った原因は、そこの獅子のせいなのだが。

 閑話休題。


 そして、彼ら将星に仕える異星人。代表としてこの場にいるのはたった7人だが……この場にいることを許される程度には、彼らもまた強者。

 レオード配下の獣人戦士、“獅子の四魔牙ウルマ・ズーマファング”のフェリス、リュカリオン、コルボー、ムゴク。タレスの作った万能の人工知能、シャウラ。そして、カリプスを盲信する小さな召使い、ダビーとナシラ。

 彼ら総勢11名が、“星喰い”に逆らう異星人の代表者だ。

 その更に下に、レオードのウルグラ隊、タレスの造った機械神獣がつく大規模な軍勢。異なる惑星の王たちが手を結んで、孤高の皇帝に反旗を翻す。

 名付けるのであれば、“異星連合”───若しくは、“異星革命軍”。


「こっからは僕たちかな?」

「そうだねぇ。代表するなら……ラピちゃん?」

「お姉ちゃんも入っていいんじゃない?」

「そう?やったー!」


 そんな彼らに与するのが、宇宙の辺境、地球から銀河に飛び出して殺意をひらけかす、15人の地球人。

 魔法少女の代表格、2人の最強。

 “蒼月”のムーンラピスと、“極光”のリリーライト。この伝説たちが、魔法少女とアリスメアーを率いて、異星人と手を組む。


「リリーライトって言いまーす!魔法は“光”!太陽とか、オーロラとか、色んな“光”をひっくるめた魔法が使える、 最強の魔法少女です!裏切ったら聖剣チャキってするから気を付けてね」

「ムーンラピス。“月”、“悪夢”、その他諸々。勿論君たち将星の魔法も、学習すれば使える。以上」

「へぇ、俺の黄金もできんのか?」

「すぐには無理だけど、五時間もあれば習得できるよ」

「クハッ!聞いてた以上にバケモンだなァ。んなら後で、うちの隊の魔法訓練見てけ。思うところはあるが、使える手札は多い方がいい」

「やったぁ」


 同盟予定者から直々に許可を貰い、魔法研究者としての血が騒ぐラピス。その後も魔法少女たち、アリスメアーの幹部たちが名を名乗る。

 圧倒的に若い彼らだが、その実力は折り紙付き。

 月と太陽を除いても、この場にいる四将星と渡り合える実力者ばかりだ。


「俺らの目的は皇帝陛下の討伐。若しくは、扱き下ろす。支配者の地位を降ろして、各々の理想を実現するのが……俺が提言する同盟の意義だ」

「僕たちは……こいつ、リデルが食われるのを止める為。ユメエネルギーの根源を食うヤツがいなくなってくれれば安泰だからね」

「同感だな。星を殺されちゃあ話になんねェ」

「それは支配する場所って意味の星でしょ。野心強すぎ。もうちょい隠せよ」

「無理だな」


 両陣営共に、目指す未来は違う。レオードは、最終的に暗黒銀河の頂点に立ち、弱肉強食という、強者優先の社会から、弱者を尊ぶ社会の構築を目指す。

 その政策をすれば、慈悲深い君主として彼は名を馳せ、強者よりも数の多いか弱き民衆の声を手に入れられる。

 その反面、今まで恩恵を受けていた強者たちの声が煩いだろうが……それをなんとかするのも、レオードの手腕にかかっている。


 魔法少女は、地球という星のユメの根源、リデルの命を守ること。彼女を食われれば、地球はエネルギーを失って滅亡してしまう。

 そんな無視できない未来を防ぐ為には、星の脅威であるニフラクトゥを討つしかない。和平は不可能。故郷である地球を捨てて“星喰い”の傘下に入る未来など、魔法少女が選ぶわけもない。


 故に、二つの陣営の利害は一致していた。

 打倒“星喰い”の為に、同盟を組み、宇宙最大規模の敵を討つ。


「裏切んなよ?」

「んな命取りなことしねェよ。この状況下で俺ら全員抹殺できるヤツに、そんなチンケなことするか」

「信じて欲しい?」

「なにやったら信じてくれんだ?」

「あー……うーん、魔法集めはさっき提供さてくれるって言質取ったし…」


 両陣営が、もしも敵対すれば───圧倒的に不利なのは将星たち異星革命軍だ。

 最大の懸念はそこである。

 故に、レオードはムーンラピスたちの信頼を勝ち取り、自分は絶対に裏切らないと確信を持ってもらいたい。彼にとっても、目的を達する為に手を取り合った相手と剣呑な関係になるのは防ぎたい。

 逆に何を求めると委ねられたラピスは、想定外の質問に首を捻る。


「悪戯な問いだったね。今あるモノで満足するよ。まぁ、信じてあげるよ」

「寛大な心に感謝するぜ」

「それじゃ」

「そうだな」


「「───俺たち/僕たちの同盟に異論があるヤツは、今、ここで手を挙げろ」」


 示し合わせたかのように、異口同音の問いを投げ掛け、配下たちに問い掛ける。

 その言葉に、会議に居合わせた全員の喉が鳴る。

 別に、嫌だと言ってもいいのだ。なにせ、これに賛同を示せば最後、後は勝って生きるか負けて死ぬかの二択しか許されない。


 自分の命が惜しければ、ここで降りるのも賢い判断だ。そう暗に許しを与えるのに対して……ここに集まった強者たちに、そんな甘えを受け入れる心はなく。

 不本意だと、心外だと、バカを言うなと、全員が無言の笑みを形作る。


 数秒の沈黙をもって、全会一致。この場の全員が同盟に賛成したと看做す。


「ククッ、いいだろう。では」

「あぁ。僕たち魔法少女、及びアリスメアーは。君たち、暗黒銀河の裏切り者と組もう───楽しくやろう。陰鬱な空気は嫌いなんだ」

「同感だな。安心しろ。退屈にはさせねェよ───俺も、気分が悪ぃのは嫌いなんだ」

「そっか」


 かくして、二つの陣営は手を取り合った。

 今までの小さないざこざも、些細な出来事も全部綺麗に洗い流して。


「ところで」

「うん、なに?」

「名前どうする。指標はあった方が士気が上がる。適当にでも名付けた方がいいだろ」

「……あー」


 最後の議題は、この同盟の名称。千年以上の栄華を誇る暗黒銀河に、一つの終止符を打ち込むのだ。生半可な名前は付けられない。

 こればかりは勝手に決められやしないと、その場にいた全員で頭を悩ませる。途中で一人一個ずつ案を上げたが、ロクなもんじゃないのが大半だった。

 故に、主将2人が一番頭を悩ませる。


「星の名前は付けたいよねぇ」

「奇遇だな。だが、まぁ……あんま長ったらしいと、後で面倒に思っちまうな」

「……魔法少女は夢を守る戦士。それと、うちのリデルは夢星っていう固有存在なんでしょ?それなら、安直に……こんなんでいいんじゃない?」

「……随分と可愛らしい案じゃねェか。まぁ、悪くないと思うぜ」


 夢を守る戦士、夢星、青き星、異星革命軍───それら全ての要素を内包させた、簡潔な二文字で表す同盟。

 複数の案を出した上で決定した、その名前は。


「“(ゆめ)(ぼし)(どう)(めい)”」


 ここに結成。


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