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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
古き憎魔の悪夢災害
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184-やればできる子一等賞


「礼を言おう、御客人。そして、誠に申し訳なかった……姫様を連れていこうとするお主らを試すどころか、酷な目に遭わせてしまうところじゃった……伏してお詫びする」

「いやそんな畏まらなくても!ぶっちゃけ当然だし!」

「警戒は当然だもの。別に、故意じゃないのもわかってるから、問題ないわ」

「仕方ないね」


 頭を下げる長老になんてことないと手振りする後輩らを余所に、僕は白羊宮全体にもう一回サーチをかけて、虫が潜んでいるかどうかを確認。うん、いないね。

 わざわざ屋敷の外まで出て確認したけど、平気かな。

 知らずの内に寄生されてた自警団の人も、今は救護室で安静にしてるから問題なし。

 元気に笑ってるよ。


「ありがとな嬢ちゃん!」

「いやぁ、虫とか無理だわ。草好きだけど虫は無理だわ。無理寄りの無理だ」

「わかった、わかったから。お前に畑仕事やらせねぇから安心しろって」

「ガハハ!」


 布団に寝転びながら元気に笑う草食動物たち。ふーん、ケモ耳エッチじゃん…筋肉もいいな……あんま男に興味がなかったけど、こう見ると健康的な男って悪くないな。

 ……もしかしてだけど、身近にいる雄がペローとビルとオリヴァーしかいないのって、健全じゃない?

 うーん、同級生が全滅してるのが痛すぎる。

 まぁいっか。


 取り敢えず虫襲撃の第二波はないっぽいから、星全体にかけられていた厳戒態勢は解除された。まだちょっとだけピリピリしてるけど、それは仕方がない。

 ……おっ、ビルたちが農作業の手伝い申し出た。

 あと、戦闘とかで荒廃した農地の修復も。これで好感度爆稼ぎだね。


「うぅ、助かりました…」

「……話を聞いた限り、将星のいる星を付け狙ってるってイメージであってる?」

「多分、恐らく?私も詳しくは…」

「情弱め」

「めぇ…」


 怯えてるアリエスの頭を撫でて落ち着かせてやり、さてどうするかと考える。このまま予定通りに出発しても僕はいいんだけど、後腐れなく飛び立ちたい気持ちはある。

 アリエスの故郷ぐらい、守ってやるべきかな。

 星全体に結界とか張るなり……いや、それだと自衛心がカスみたいなことになるか。うーん、どうしようっかな。面倒くさい…


「ラピス様ぁ」

「……全部は守んないよ」

「それでも、いいんです。逃げれる時間があれば、私たち草食系の一族は、生き残れますから。ですので、どうか、なにとぞ…」

「仕方ないなぁ」

「やった〜」


 いやぁ、うんうん。お気に入りの枕からのお願いなら、応えてあげないわけもないよね。

 まるで茶番だな。


 星の支配者の許可は得たんだ。展開するのは……一先ず生活圏だけでいいか。それ以外の森とかは、知らん。虫の温床になりそうだけど、そこまでは知るかよ。

 指の一振りで白羊宮の一角、人が密集している広範囲を結界で覆う。出入りは自由。ただ、怪獣とかの悪意、敵意ある生き物を感知するように仕組んだ。感知先は、長老でいいかな。


「これはまた、高度な…」

「すっ、すごい。今の一瞬で……アリエス様、あなた一体なにを連れて来たんですか!?」

「陛下が認める宇宙最強ですけど…」

「ンマ?」


 多分この星一の魔術師のおっさんからドン引きの視線をもらったところで、一先ずの処置を終える。いやぁ、地球よりも小さい星だからなんとかなったわ。なんなら月より小さくないかこの星。小惑星すぎない?よくこのサイズで圧迫されてないな……

 あっ、ズーマー星人の全てが住んでるわけじゃない?

 そうなの。ぶっちゃけ肉食と草食で別れてるところとかよくわからんのよね君らの種族。

 どうでもいいけど。


「リデル」

「む?なんだ、今忙しいぞ」

「ハット・アクゥームに餌付けすんな。太る……オマエも手渡されたモノ全部食ってんじゃないよ」

【ハットス!】

「だーめ」


 足元で人の帽子にクッキーあげてるバカを摘み上げて、間借りしている空き地の一角に戻る。ここに、また新たな列車を組み立てて宙に昇るんだ。

 夢と夢の移動は、もうやんない予定。

 ……肝心の車掌さんは、また壊されるのは嫌だの吠えて逃げてるけど。

 困った。


 あぁ、リデルを手元に置いてるのは、誰かさんに奪われないようにする為だ。当たり前だよなぁ?奪われるんならちゃんと順序立ててから奪われてほしい。

 まだその時じゃないんだから。

 その時が来るかも定かじゃないけど。僕らは流れに身を任せている。


 さて、今のうちに僕から距離を取ってるかわいい後輩を引き寄せて、と。


「いーやーなーのーでーすー!!」


 無茶言うな。


 泣き喚くピッドを説得して列車を作らせる。いやぁ〜、いつ見ても素敵な機関車ですね。

 改造します。


「やーっ!!」

「威嚇するな」


 この子ほんと、普段は忠犬なのに電車関係になると僕に噛み付くよね……いい度胸だ。心がへし折れるまで、拳で徹底的に上下関係を叩き込んでやろう。

 昔は配信があった手前そういうのやらなかったけど。

 悪役という闇の大義名分を振り翳して、やってみるのもまた一興。


「ダメだよ?」

「感知するの早すぎんだろうが」

「私はラピちゃんの全てを知る女…」

「怖い怖い怖い」

「成敗!」

「ぎゃっ」


 はいはいいつもの。

 ……なんてことがあったりしながら、次の星に行く為の準備をあらかた終わりにする。うん、もし次もあの金魚に爆撃されたとしても、耐えられる設計にしたぞい。絶対に壊させないから安心しろよな!

 作っては壊してはナンセンスだし。この単純作業をまたするのも嫌だし。


 さて。


「それで。さっきからジロジロと……塀に隠れてないで、出てきたら?鹿さん」

「……シェラとお呼びください、魔法少女」


 コソコソ隠れて監視していたアリエスの補佐官、確か、そう。名前はシェラタン。随分とまぁ、かわいい名前だと思わない?顔は可愛い系じゃなくて、美人さん系だけど。

 鹿の角が生えた薄緑色の彼女と、対峙する。

 何の御用かな?


「結界の件、ありがとうございました。お陰で、不必要に怪獣に怯える必要がなくなりました」

「どういたしまして。まぁ、すごい簡易的なのだけどね」

「それでもです」


 あらま、意外と律儀。でもその恨みがましい視線はよくないと思うんだ。もうちょっと感情隠せよ。私ってば敵意ありまくりですよって自己主張しすぎなんだよ。

 わかりやすくて僕は好きだけど。


「……単刀直入に聞きます。あなたは、アリエス様をどうするつもりなのですか」

「どうって……まぁ、殺しはしないよ。そこは約束する」


 それ以外のことは、もうしちゃったし。ごめんね。


「……私は、アリエスとは子供の頃からの付き合いです。あの人が、ライオン然りヤギ然り、あなた然り、変なのに絡まれてばかりなのも、よく知っています……泣かせたら承知しませんから。宙の果てまで追いかけますので」

「ごめんもうめっちゃ泣かした」

「ぶち殺します」

「判断が早いっ」


 包丁取り出して刺しに来るの早いな!?悪いの僕だから下手に責めれないぞ?つーか過激。保護者なのかオマエ。ちゃんと手綱握っとけよ。もう手遅れだけど。

 荒ぶる鹿をなんとか宥めて冷静にさせる。落ち着こ?

 ジャブなのか本気なのかわかんないけど、一応の許しは得れたみたい。


「殺しますから」

「わかったってば…」

「それと」


 今度は何。まだあるの。


「アリエス様の体内の、あの不吉な力…」

「……スゥー、なんのことかな。よく、わかんないけど。きっと、そんなことも……あるよね。ここは、寛大な心で受け入れるべきだと思うんダ」

「御覚悟を」

「待って♡」


 すいませんでした!!








꧁:✦✧✦:꧂








 なんてことがありながら、お昼過ぎ。お礼にと昼食まで恵んでもらってから、少し経って。

 次の星に行く、出発時間だ。


「あの、お姉さん」

「なぁに、エーテ」

「あのね……さっきの虫が、もう来ないように。なんとかできない、かな」


 銀河鉄道の最終調整を終えて下車すると、降りてすぐに待ってましたと言わんばかりにエーテが待ち構えていた。小首を傾げて聞いてあげれば、真剣な顔で訴えられた。

 ふむ。あの虫か。確かにこの星からは追い出せたけど、また来ないとも限らない。その為の結界は張ったけど……元凶を叩かなきゃなのは理解できる。

 でも、それを僕らがやんなきゃいけないかと聞かれると首を傾げざるを得ない。

 それに。


「わざわざ敵を増やす必要、ある?その虫、あの蛇野郎の関係者を呪うんだろ?わざわざ僕らがぶち殺して、勢力を減らす必要、ある?」

「でも、ただ殺戮するだけの奴らを、黙って見逃すのは、無理だよ…」

「……まったく」


 あまちゃんだなぁ、君は……いや、君たちは。エーテの後ろで、こっちを見る後輩たちと、戦闘に参加した2人も物言いたげな目で見てくる。

 なんだよ。確かに進路を決めるのは僕だけどさ。

 僕に伺いを立てるのは間違っちゃいない。でも、すごい面倒臭い。


「お願い、お姉さん!」

「……場所もわからないのに?どうやって見つけるわけ?痕跡から探すのも一苦労なのは、魔法少女成り立ての君もわかってるだろうけど」

「うぐっ、それは、まぁ……どうにかして?」

「曖昧だなぁ」


 でも、意志は固いと。やる気と善意だけはあるんだから困っちゃうよねぇ……

 仕方ない。でも。


「いいだろう。寄り道は、旅の醍醐味だしね。道中の危険因子を排除するのも、悪くはないしね……でも、あの虫の根源が何処にあるのかは、君たちが見つけろ。僕はそこに進路を合わせてやる」

「……ありがとう、お姉さん!私、頑張るから!」

「なにあなた一人でやる気満々なのよ。私もいるわよ」

「あたしもね!すぐに見つけちゃお?」

「うんっ!」


 よき友情かな。

 マーチ先輩の記憶を見てわかったけど、あんなに醜悪な生き物が闊歩してるのは、確かに頂けない。吐き気がするぐらいだ。ただの虫なら兎も角、あそこまで怨嗟に満ちた異形は目に毒だ。ここで根絶しとくのも悪くない。銀河の誰にもできなかったことを、僕たちの手で成し遂げる……すごいロマンチックな気がする。

 要は一匹残らず殲滅するなり、その術式?機構の本体とやらを潰せばいいんでしょ?

 楽勝楽勝。魔法少女に不可能はない。

 ……実を言うと、寄生虫を通して繋がり自体は確認済みなんだけどね。縁って言えばいいのかな。宇宙の何処まで繋がっているのかは、既にわかってる。

 でも、それを言っちゃうと……全部僕任せでよくない。今更だけどね。


 それじゃ、出発時刻は延長しよっか。


「はい急いで。あんまり遅いと置いてっちゃうからね〜。僕は待ってるからさ」

「うんっ!行こ、みんな!」

「えぇ!」

「おー!」


 ……どうやって見つけるつもりなのか、知らないけど。頑張ってくれ、後輩。


 先輩面して待ってるわ。


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