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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
古き憎魔の悪夢災害
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181-知識欲は止められない


 アリエスの“白羊宮”に降り立った僕たちは、住民たちの懐疑的な視線を無視して件の屋敷に到着。石造りの街とは正反対の木造で、二階建ての古き良き建物だった。

 中に案内された僕たちは、侍女衆に応接室で待つようにお願いされて……現在放置中。

 アリエスとは星の有力者たちと会議中だ。頑張れ。


 そして、現在放置され中の僕たちは、応接室で好き勝手寛いでいる。僕はライトと一緒に窓際に寄って宙を眺め、他の面々はソファに座るなり寄りかかるなりしてお茶菓子を摘んでいる。

 勿論、話す内容はこの星、白羊宮について。

 初めての宇宙進出。それも人類未踏の宙、生活圏にまでやってきたのだ。興奮しないわけがない。約一名、電車が吹き飛んだ悲しみにまだ暮れている子がいるが……哀れに思ったデイズとチェルシーの慰めを受けている為、きっとすぐ立ち直るだろう。

 正直、悪いことしたと思ってるけど。

 仕方の無い犠牲だった。


「昼なのに星空が見えるぞ」

「空がないんだねぇ……そもそも空ってなんだっけ?」

「空は空だろ。なんか、こう。光の影響下にある」

「……青空って、なに?」

「太陽の光ってのは、様々な波長の光の混合で白だけど、地上に届くまでに大気中の微粒子にぶつかって……その時他の光よりも波長が短い青色の光が散乱して、地上にいる僕たちの眼に届く時には、空は青色のように見えるんだ。つまり太陽のせい。太陽がないから星空しかないの」

「成程〜」


 爆速詠唱で先輩たちの疑問に答えてやる。確かに青空が無いのは不可思議だ。太陽ないのに、どうやってこいつら生活してるんだ?色々無理だろ。あれか?地球の生活様式は太陽ありきだから、宇宙のとは違うってか?

 ちなむと呼吸はできる。酸素もあるし。

 重力は地球のと同じくらいかな。アリエスとかの将星や異星人が地球の重力にそこまで困惑していなかった辺り、そこら辺は似通ってるんだろう。

 ……太陽ないのに明るいの、なんでだ?

 探検したい。すごい探検したい。

 出ていい?

 出ていい?


「落ち着いて」

「僕は行くぞ」

「ここで自由奔放なとこ見せないでいいから!」

「探究心は止めちゃダメなの!」

「そーゆー子供心で魔法極めてるのはすごいけど、今じゃないから!!」


 太陽ないのに生活できてるのは不思議だし死活問題だろ何言ってんだこいつ。万が一があるだろ。地球人基準だと何が起こるかわかんないんだから。もし太陽なくてヤバいことになりましたー、なんてことがあったらどうする。

 不思議は解決すべきでしょ。

 ……なにか別の光源があるのは確かだ。それを確認して調べるのは、なにも悪いことじゃない筈だ。

 だからその手を離して?

 行かせて?


「止めなくていいの?」

「あの状態のラピスはテコでも動かないぽふ。最近は魔法極めちゃってあんまり食指動いてなかったっぽいけど……興味、できちゃったみたいぽふね」

「そっかぁ〜、お姉ちゃん頑張れ〜」

「冷静に分析してないで手ぇ貸してよ!!」

「無理」

「やだ」


 裏切られてやんの〜、ぷぷぷ!

 あとそこで訳知り顔で悟ってる妖精はぶん殴る。まるで僕が聞き分けのない子どもみたいな……心外だ。慰謝料を請求する。


 ……わかった、わかったから。僕ももう大人だからね。今回は引いてあげる。だから落ち着け。斬りかかるなここ屋内だぞやめろ。屋内じゃなくてもやめろ。

 噛み付くのもやめろ!!


「ったく…」

「私悪くなくなーい?」

「十分悪いぽふ」

「えぇ〜」


 解せない顔するな。解せ。


 そう苛立ちを込めて睨んでいると、トントンと扉を軽くノックする音が。こっちは立て込んでるので、対応とかは社交辞令が得意なペローに任せた。

 頼んだぞ社会経験者。


「えーっ、面倒ッスね……んしょ。どうぞ〜」


 渋々とソファから立ち上がったペローが入室を促せば、ガチャリとドアノブが回って扉が開く。現れたのは案の定アリエスとシェラ、あと長老の3人。

 意外と早く終わったな…?

 入室してきた3人は、取っ組み合いから漸く解放されて荒い吐息の僕たちを見て首を傾げたが、アリエスはすぐにあっ察しの顔をして話を始めた。

 おい無視するな。


「えーっと、その。一応、話し合いで決まったことを……お話、したいなぁ……って、思ったんですけど……改めた方がいいです、か?」

「いやそんなことないぜ?」

「じゃんじゃん話しちゃっていーよ」

「そこのバカ二人は無視でいいよ」

「……自由ですな?」

「いつものことですね…」

「ドン引くな」

「うんうん」


 言いたいことは無限にあるけど、今回はここら辺でお口チャック。続きを促す。時間は有限だからね……さっさと会議の結果とやらを聴いて行動に移したい。

 ……でも休憩時間は欲しいかな?

 あと、悪夢由来の力がないと対抗できない敵がいるってわかったんだ。僕だけじゃなく、魔法少女にも対抗できる手段を確立する必要がある。

 どうしようかな?


「色々あったんですけど……取り敢えず。白羊宮は皆さん関連の出来事……皇帝陛下への叛逆に組みするか否かは、ノータッチを選択することになりました。あ、私はその、ちゃんと共謀するので…」

「別にそれはいいよ。期待してないし」

「つーかいらないわな。現地のヤツらまで巻き込むのは、オレらも本意じゃねェし」

「傍観、中立の方がわかりやすくていいね」

「敵対しないならそれでいいよ」

「……ね?僕らこんな感じだから。正直、アリエスだけでいいんだよね」


 対皇帝戦、白羊宮はノータッチ、ね。おっけーいいよ。そもそも味方して欲しいとも思ってないし。邪魔しないでくれるならそれで。草食動物らしく見上げててください。

 取り敢えず、有力者会議で決まったことは以下の通り。

 ・アリエスは同行する。

 ・それ以外は不干渉。

 ・地球人への敵対行為(内通・襲撃・邪魔)など諸々の不利益な行為をしないことを約束。

 だってさ。正直信用はできないけど……その時はその時でいい。


「儂らは争いを好まん。あなた方の戦いに、民を巻き込むわけにはいかんのです……」

「……勝手に戦ってろください、ってのが本音です」

「正直だなぁ。正論だけど」

「安全第一だものね。戦闘好きな私たちがおかしいのよ」

「あたしは例外枠にして欲しいかなぁ〜」

「以下同文」

「寝言は寝て言えよな〜、ってね!」

「ひどい!」

「……ごめんね、一喋ったら十返ってくる連中で。続きをよろしくしても?」

「あ、はい」


 確かにレスポンスは大切だけどね?僕も人の事とか全然言えないんだけどね?

 その後の話では、一泊だけ滞在してもいいよって許可を貰えた。いやぁありがたいね。交渉する必要が無くなって何よりって気持ち。

 ……さて。


「聞きたいことがあるんだけどさぁ……いいかな?」

「それ、拒否権とかないやつですよね……?あ、なんでもないです。それで、聞きたいこととは…?ラピス様たちが知りたいことは、だいたい話した気がするんですけど…」

「まるで僕が脅したみたいな……まぁいいや。それでさ、この星についてっていうか……暗黒銀河の恒星、太陽ってどんな感じなの?」

「……? あぁ」


 多分、白羊宮だけじゃないと思うんだよね。ここ全体、暗黒銀河全部が、この星と同じ感じだと思うんだよね……見た感じ、太陽っぽいのは宙にないんだけど。

 一際目立つ、明るい星はあるんだけど……太陽みたいに目が潰れないから、多分違うと思う。

 位置的にも違う気が微レ存。


「えーっと、その説明をする為には、まず、暗黒銀河の形から説明しますね。言っちゃえば、皆様が住んでるとこ、太陽系と似たようなモノなんですけど」

「……ふむふむ、それで?」

「陛下が御座す帝都を内包する、“極黒恒星”を核として、複数の惑星が順々に囲んでいるんです。私たち十二将星の統括する星と、陛下の支配下にある星々が、です。でも、太陽系みたいにこう、線の上で星がぐるぐる回ってるわけではなくて……えっと」

「そこからは私が。ここ暗黒銀河の星々は、陛下のお力で恒星に引き寄せられる形で集合しています。その関係上、将星の方々の星が隣合っていることも普通なんです」

「シェラの言う通りです。それで、あの。ここ白羊宮は、実は一番外周にありまして……なんと言いますか、銀河の端っこなんです」

「辺境じゃん」

「はい…」


 そこら辺の構成は、まぁおさらいって感じだけど、大分ごちゃついてんね。航路図も見せてもらったけど、確かに将星管轄の大きな星が、列になってたり隣だったり、色々あるけど……星の配列とかめちゃくちゃだな?

 これ占星術に影響でない?ヤバいよ?星を動かせるのは知ってたけど…

 ってことは?


「まさかだけど、光源って…」

「“極黒恒星”の光って、銀河の端まで届くんですよね……黒いのに。明るいんですよねぇ」

「魔法パワー、ってこと?なんでもありじゃん」

「あなたが言います?」

「ぐう正論」


 なんでもありの僕がいえることじゃないよね……流石に自覚はあるよ。あるからラスボス張ってたんだし。未だに現役ですよ僕は。

 決戦時と同じスペックで戦えます。

 普通負けたらパワーダウン、ナーフされるもんだけど、僕は例外だからね。


 しかし、そうか……恒星の中に街があるのもおかしな話だったけど、そっか……光、届くんだ…そこら辺が一番の驚きだわ。地球の常識は地球内でのみ適応されるってか?光の屈折とかどうなってんだよ。魔法か?マジカルパワーアンドファンタジーなのか?それっぽいな?

 そんなんで納得しちゃダメなんだろうけど。

 ……うん、別にいいか。妥協しよう。蜻蛉返りの襲撃で酸素対策とか放射能対策とか、なんもしないで活動できた実績があるわけだし。多少は楽観視しても問題ないか……

 結論、勝てればなんだっていいや。

 そうだろう?


「話は一段落したかね?そろそろ、君たちの泊まる部屋や湯浴みの部屋などの案内をしたいのだが…」

「わーい。そうだお爺ちゃん、後で伝承とか教えてよ」

「馴れ馴れしいのぉ…」

「長老から離れなさい野蛮j、ゲフンゲフン。宇宙滅ぼせるヤバい女!」

「悪化しとるが」

「ごめんなさい…うちの子、目上の人にもクソ度胸で……なのに怯えるし泣くしで……」

「バカか?」


 態度は取り繕えても、ズバズバ本音言っちゃうタイプの鹿さんなのか……外交の時に苦労してそう。見えてる地雷そのままにするのやめな?美徳かもしらんけど。

 ちなむとそーゆーの僕は気にしない派だ。

 だって僕に礼儀なんて高尚なモノが備わってないんだ。責めれなくない?

 変に畏まられるよりも断然マシだよ。

 それはそれとして。


「舐めた口聴いてんな…」

「あぶぶぶぶぶぶ!」

「わー!わー!ごめんなさい許してあげて!後で私のこと幾らでもモフモフしていいですから!!」

「もふもふ…」

「姫様???」


 意識向いちゃうのはもう仕方ないよね。本能がこいつを枕にしろって言ってるんだ……

 この後しっかり弁明した。


 流石に枕扱いは、ねぇ?不味くない…?今更だけど。


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