表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
遥か彼方の宙を目指して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/309

177-いざ、宙の果てへ


 さて、今日は宇宙へ行く日である。


 ブチ切れMAXの超絶説教×2セットを終わらせて、少し休憩を挟んでから。顔の腫れを元通りにして、見れる顔に戻してきたクソガキ集団を庭園に集める。

 魔城?もう面倒だから時間魔法で元に戻しといた。

 本当は嫌だったけど。時間が無いから、手を抜いて補修するに留めた。

 チッ。


「機嫌直して〜、お願い…」

「お姉ちゃんがなんでもするから…お姉さん……」

「え?穂花?なんで?裏切らないで…?」

「自業自得だよ」

「反省するぽふ」

「なんでぇ」


 今なんでもっていいました?まぁ、たかが知れてるからいらないんですけど。取り敢えず反省してるのはわかっ、本当に反省してるんだろうな?兎に角、なんでもかんでも派手にやればいいってもんじゃないんだよ。

 まったく。兎に角、いつまでも怒ってちゃいられない。

 いい加減話を進めよう……

 ちょうど、時間なことだし。


「荷物は?」

「全部持ったよ!これ持って夢に入るの?」

「つーか、物持ち込めんのか」

「今更なのです」


 遠出っていうか、長旅だからね。暫くは地球に帰っ……転移魔法でわんちゃんあるかないかの距離だから、多分、帰って来れるのは当分先だ。

 あの時は、「星の回廊」とかいう皇帝専用技を利用して行き来できたけど。結局、あの綺麗な亜空間ロードは再現できなかったし。

 負けた気分。


「はい集合集合〜…ん?」


 ワーワーうるさいヤツらが運んできた荷物、を……おい持ってきすぎ。そんな持ってく?あのさぁ、引っ越しじゃないんだからさぁ……おバカさんしかいないわけ?

 取り敢えず荷物検査しまーす。全員並んでください。


「えーっ」

「なにも悪いものは入ってないわ!」

「チェックするようなのは特に!」

「んっ、ない」

「はい問答無用ッ」

「やーっ!」


 渋るのを無視して荷物を取り上げる。ボストンバッグにキャリーバック、バックパック、そこら辺の大荷物入れは別にいいんだよ。そこは個人の自由だし。

 でもね。


「冷蔵庫ごと持ってこーとするな!!」


 それも業務用サイズ!なに、買っ……きららちゃんのか成程、それじゃあ仕方ない……ってなるか!バカ!なんでバカでかい冷蔵庫ごと持ってくるんだよ!

 この大富豪が!際限ないのやめろってこのおバカ!

 って、他のヤツらのもぞろぞろと!


「本棚!」

「ソファ…?」

「滑り台…滑り台!?」

「カーテン!?なんで!?」

「コスプレグッズ……?」

「パソコンは別にいいか……いやデスクトップ!!」

「甲子園の土どっから持ってきた!!」

「女神像!いらない!」

「等身大フィギュア、捨てろ!」

「サンドバッグ……はいいか」

「掛け時計はもっといらん」

「電波式はもっとだ。圏外だばーか」

「クソデカクマ持ってくんな…」

「ちょ、多い!多いっ!」

「大喜利やめろ!!」

「あ゛ーッ!!」


 出発前に発狂させる気か!?お荷物ってレベルの話じゃないんだけど!?いらないだろこんなの!置いてけ!重量制限かけてやろうか!?

 大喜利に命かけんなバカ共が!!

 特に13魔法!いらん家具の押し付けをついでにやるな!

 はぁ……本当にもう……便乗しちゃって……後輩たちに悪影響出しまくってる……もう、純粋無垢なかわいこ達はいないんだね…


 断捨離しよ。


「全部リサイクルだ」

「……やー、その。異空間に収納して持ってく、ってのはできないのか後輩」

「僕をアイテムボックスにする気か貴様」

「悪かったって」


 こんな粗大ゴミ持っくかバカ。僕は容量無制限の超無法収納箱じゃないんだぞ。武器と殺意と食料etcでいっぱいなんだわ。絶対持ってかんぞ。つーかネタでしょそれ。

 ネタって言って?

 ……えっ、マジで持ってく気だったの?え、冗談抜きで言ってる?


 こいつらヤバ…


「みんなー、配信で行ってきますって言わなきゃだから、早く集まって〜?」

「オマエが主導権握んなや…これ、置いてくから」

「いや、うん。すごいな。まぁ、地球は任せたまえ。最悪財閥連合全ての財力をもって解決しよう」

「身バレ駄目、絶対」

「ハハハ」


 一瞬で人の輪が僕からあっちに移った。なんか悲し。


 オーガスタスに全てを預け、呼んでくるリリーライトについて行く。なんでも、地球を出る前に配信するんだと。平和を望む民衆に行ってきますを言うんだとか。

 ……月に行く宇宙飛行士の記者会見の簡易版かな。

 まぁ何も言わずに飛んでくのも忍びないから、大人しく従うとしよう。


 もう配信魔法はつけてるのか、騒がしい声が絶え間なく響いている。


「やっほー!今から私たち、夢を亘って宇宙に行きます!前人未到の暗黒銀河!制覇してくよ!」

「“星喰い”さんを倒すだけでいいんじゃないの?」

「刃向かってくるヤツは全員敵よ」

「みんな物騒だねぇ」

「今更すぎる…」


:もう!?

:行ってらっしゃい!

:頑張ってな〜。応援しとるわ。

:虐殺だけはやめよう?

:帰りを待ってます

:がんばって!


 文字の声援。好き勝手言いやがって。虐殺する心配までされてんのなんかヤダな。そんなに僕やりそう?そこまでやらかしそうに見える?僕が?そっか…

 否定できないかも。

 ……宇宙に行くのは、“星喰い”にリデルを食われて星が終わるのを防ぐ為だ。平和交渉は、多分無理そうだし……魔法少女との殺し合いを、相手は望むらしい。その果てが滅びでも、あの蛇はいいと思っている。銀河をかけた生存競争なんて、正気じゃない。

 殺すか殺されるか、それだけだ。

 そのリデルを連れてくのは、正直危ないかもだけど……手元に置いておかない方が不安だ。地球に置いていって、気付かない間に掻っ攫われる可能性を考えれば、目の前で奪われた方がいい。


 今後のことも考えれば、リデルの体内に埋め込んである発信機、ちょっと強化しとくか。四六時中位置情報わかる仕組みにしてたけど、圏外に行っても通じるようにはまだできてなかった。移動中に強化しとくか。

 ……埋め込み方?

 魔法で、こう。

 ちなむと無断だ。


「ラピちゃー!おいで!」

「……はいはい」


 なんか懐かしさを感じたのは、きっと気の所為だ。


 声に釣られて近寄る。どうやら、代わり代わりでみんな決意表明してた様子。

 やれってか?


:ラピ様ー!

:お久しぶり

:もっと配信して

:きゃー!

:きゃー!


 渋々顔を出せば、配信画面に映る僕の顔。一斉に賑わうコメント欄。


「お待たせ。それで?」

「決意表明、どうぞ。もうみんなしたからね」

「……参考に聞くけど、何言った?」

「勝って帰ってきますって言った」

「宇宙征服はロマンだけど自重するって言ったぜ」

「来週スタートの新作アニメ、元マネージャーに録画とか頼んだよ」


 それ決意表明違くね?えぇ……そういうのもありなの?それなら僕もやっちゃうよ?

 ダメすか。差別だ。


「ごほん……えぇー視聴者のボケども。取り敢えず、宙のお星様の数でも数えて、僕らの帰りを待っててください。フルスコア、欠員無しで帰ってくるからね……安心して。僕が全部キャリーするから。任せろ」

「私たち、そこまで子供じゃないよ……」

「後始末僕に押し付けるじゃん」

「「「お世話になります」」」

「こいつら…」


:やっぱママじゃん

:可哀想…偏にテメェが優秀なせいで…

:いつもの調子でなにより

:息合ってて草

:自覚あるのね…

:可哀想

:今更


 うるさいやい。

 いつものようにコメント欄と、あと魔法少女とも言葉のプロレスをしてから、話題を移す。


「地球の防衛面は、オーガスタスとルイユ・ピラー、あとクイーンズメアリー……魔法少女狩りに頑張ってもらう。高確率で別働隊が地球に来るだろうから、頑張ってね」

「アクゥームは全ブッパでいいんよな?」

「いいよ。人命優先、避難優先で動け……あぁ、敵さんに塩を送るヤツに、情けはいらないから」

「見捨てていいと?」

「餌にしろ」

「Kill…」

「御意」


:死刑宣言されちった

:ナチュラルに言うよね

:気持ちはわかるけど

:自分以外の裏切り者には容赦ないラピスさん

:殺意たかぁい


 自分のことを棚に上げるのは当たり前だろ。置いていく幹部たちの心配はあるが、ここは彼らを信じて地球の安全を任せたいと思う。帰ってきたら地球がありませんでしたなんて未来は、【悪夢】でも見たくはない。

 一応他にも策は講じてあるけど……どうなることやら。

 なんとかなるか。なんとかできるヤツを残してくんだ。平気だろ。


 不安視することは無い。なにがあっても───…


「勝つのは、僕たちだから」


:知ってる

:応援してるぜ

:信じてます

:がんば!


 僕が視聴者諸君に望むことは……そうだね。毎日、宙を見上げて、僕たちの帰りを待つこと。待って、祈って……応援してくれさえいれば、それでいい。

 簡単だろう。今までしてきたことだろう。

 なんの心配もいらないさ。それに、配信魔法は高頻度でつけるんだ。それ見て応援して、コメントに文字打ちでもしてればいい。


 ただ信じて待て。たったそれだけを、僕は望む。


「さぁて───準備はできた?」

「問題ありません」

「いつでも行けるッスよー!」

「あとは夢と繋げるだけだ」

「おっけぃ」


 今日の為に作ってきた兵器群……僕とほーちゃんの家の地下から運ばせたブツを背負った彼らに礼を告げて、遂に宇宙出発への音頭をとる。

 わいわい談笑する魔法少女たちに声をかけて、その他も含めた、宇宙へ行く全員で円を作る。

 アリエスを囲んで。

 シュールだな… 


「万全を期す為に、“夢渡り”は僕の夢から入る。万が一、あっちにも同じ技の使い手がいて、出待ちされてたら……面倒だしね」

「うるるーの夢空間は、悪夢色だから問題ないな」

「……えっ、でも、私たちが侵入したところは……あっ、魔法少女の浄化パワー。成程」

「自己完結早いな」


 僕の「夢の世界」は、二つの要素が入り交じっている。魔法少女“蒼月”としての夢と、悪夢の大王“蒼月”としての悪夢の二つだ。前者はアリエスたちに踏み入られたけど、後者は踏み入れない。だって、普通の【悪夢】よりも……死の気配が濃厚だろうから。

 そんな危険地帯へ、“夢渡り”をさせる。

 ……自分の領域を危険地帯呼ばわりするの、正直すごい嫌だけど。


「心の準備は?」

「大丈夫!」

「ばっちこーい!」

「いけるよ!」

「おっけー……それじゃあ、アリエス。初めて」

「はいっ!」


 みんなで一緒に、夢の世界に行けるように、アリエスの魔力の波長と、僕たちが合わせてやる。

 目を閉じたアリエスが、息を吸って、吐いて……

 魔力の循環を速めて、夢色の力で僕たちを包んでいく。暖かな光が、少しこそばゆい。


 あぁ、実際体験するのは初めて、だけど。

 案外悪くないね。


「───“あなたの夢と、わたしの夢・終わりの果てまで・泡沫の夢を、あなたと共に”」

「夢繋ぎの魔法!私たちを、あの宙の向こうへ!」


 発動は一瞬。

 視界が明るく染まって、意識が一瞬飛んだ感覚がして。ゆっくりと、目を開けば……


「おぉ…」

「わぁ…」


 蒼い満月が見下ろす、星空と水面が広がる夢の世界が、僕たちを出迎えた。


 ……どっちも同じ景色なのは、良いのか悪いのか。


「あれぇー!?ワタシの夢奏列車、なんかゴテゴテに……なんでぇ!?」

「あっ…なんでだろうなぁ」

「不思議だなぁ」

「うんうん」


 そして、星空が反射する水面に立つ、桃色の夢奏列車。何故か武装が増えてるけど、きっと気の所為だろう。全然大丈夫だと思う。

 似合ってるし。

 造形師ピッドの癇癪を抑えながら、荷物を持って車両に乗り込んでいく。僕は全部異空間にしまってるけど、皆は手荷物だから、そのお手伝い。

 ほら、浮かせて運ぶよ。


「全員乗った?」

「点呼───…不要!全員確認!」

「よろしい」


 それじゃあ、行こっか。

 一両目に集まって、車掌室を背にしたゴーゴーピッドに合図を送る。


「車掌さん、出番だよ」

「はいなのです!それでは夢幻鉄道、暗黒銀河行き───出発、進行っ!なのです!!」


 いざ、宙の果てへ。

 夢奏列車、出発。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ