表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
遥か彼方の宙を目指して
184/234

171-楽園への片道切符


「───はい、みんな集合〜。第ほにゃらら回、スーパー魔法少女夜会の開催を宣言します。司会進行は対暗黒王域ぶっ殺し隊隊長、ムーンラピスです」

「もっと可愛い名前にしない?やだよその蛮族仕様」

「宇宙逆侵略し隊」

「まだ物騒」

「キャピキャピとゾビゾビのコラボレーション!新旧最強魔法少女、イレブン!」

「おっけー」

「マジで?」


 某夜会にて、ヤケクソ気味に言い放った文字の羅列で、僕たちのグループ名が決定した。センスの欠片もないゴミグループの首魁となった僕は、大人しく席に着いた同胞、そしてアリスメアーの幹部たちの視線に晒されながら話を進める。魔法少女の座る円卓を囲うように半円形を幾つも設置する羽目になったけど、仕方ないね。

 かつては敵対していた両陣営が、こうして隣り合う……何度でも言うけど、昔じゃ考えられないことだ。

 感慨深い、ね。


 ……あっ、イレブンじゃねぇ。一欠けだったわ。あいついつ回収しようかな。


「今回の議題はー?」

「もうそろそろ宇宙進出、しよっかなって。その準備回、みたいな?」

「なるへそー」


 現在地球にいる異星人は4人。将星だけど捕虜になったアリエス、潜伏しているカリプス。そして、召使いであるダビー、ナシラのコンビ。

 他の異星人は全滅してるか撤退してるかでゼロ。

 海外に潜もうとしたモブもいたけど、そいつらは手早く仕留めておいた。今日本にいるヤツで十分。それ以上は、いらないから切り捨てた。

 当たり前だよなぁ?


「宇宙なぁ〜、そういやこの前の奴、凄かったな。ネットニュースになってたぜ」

「あぁ、宇宙人も買う!って宣伝になってたね」

「ウケる」


 ちな、魔法少女グッズ爆買いに満足したタレスは、今やネットの玩具である。


 ……あの後、また新しい賄賂を貰ったのは内緒である。すごい命乞いだった。それだけ魔法少女を……いや、僕を脅威に思っていると同時に、味方になりますという訴えを必死にしてきた。

 有用ではあるっぽいんだよね。自分の技術力を機械獣と人工知能でアピールしてたし。

 捨て置くには勿体ないか。

 控えのモンポケとしてパソコンにナイナイしておくのはありかもしれない。

 

「静粛に。今回は宇宙に行く為の手段の発表、そしてどう敵をぶっ殺すかの会議だよ」

「だから物騒…」

「エーテ、しっ」

「ん」


 ちょっとそこ、妹の躾がなってないですわよ。形式上、物騒になるのは仕方ないことですわ。そこんところご理解よろしくて?

 面白半分でお嬢様言葉を使って詰めれば、面白いぐらい青ざめて首肯された。

 そんなに恐ろしいか。

 そうか。


 さて。


「まず、宇宙への行き方から。当初はピッドの列車魔法で銀河鉄道する気だったけど……状況が変わった。また別の手段で、確実に、安全に星の海を渡れる方法があるのが、わかってしまったからね」

「え?そんなのあるの?私知らないんだけど」

「……大凡の検討は付くと思うんだけど、まぁいい。その移動手段については、現在我々の監視下にある宇宙人からご説明願おう。おいで」

「お、お邪魔してます…」

「!」


 僕の呼び出しに答えたのは、かれこれ数週間の付き合いである羊の将星。万物を夢に誘い、見惚れさせ、そうして己が思うがままに貪り食らう。本人の気質があんなんじゃなけれぱ、かなり厄介な敵になっていたであろう異星人。

 “夢幻包羊”のアリエス・ブラーエ。

 かつて僕の夢の中に侵入して、唯一生き残り。この僕を魅了の状態異常に陥らせた戦績を持つ女。

 今は僕の枕だ。


「そっか!“夢渡り”!」

「せ、正解です。き、気乗りはしないんですけど……私の夢に入り込む力で、銀河を航海することなく、目的地までひとっ飛び、です」

「お〜」


 まさに飛んで火に入る夏の虫。わざわざ僕の元まで来たその偶然、奇跡を評価したい。あの日殺さないで見逃した僕のことも評価したい。

 流石は僕。魅了なんてズルにかかっても強いんだ。

 勿論、“夢渡り”にもデメリットはある。夢から出るには相手を選ばなきゃで、夢の世界から現実に現出した瞬間、攻撃される可能性は考えなきゃいけない。

 暴力で解決するけど。


 “夢渡り”をすれば、下手に宇宙旅行しないで済む。仮に悪夢がそこにあっても、悪夢のスペシャリストがここにはたくさんいる。下手に星と星の間を渡って、宇宙怪獣とか面倒なのに襲われても嫌だし。

 それなら、僕たち魔法少女とアリスメアーにはそこまで害じゃない夢の世界を渡るだけ。

 楽な方を選ぶのは当然だ。

 ……最終的には、銀河鉄道して敵の本拠地に突っ込む、お決まりのシーン作るけど。


「暗黒銀河……王域だけ?そこに入ってからは銀河鉄道で突っ走るよ。わざと目立って、敵の動きを促す……まぁ、特攻突撃だね」

「ワタシの出番なのです!」

「頼んだよ」


 ……鏡と鏡を繋げて奇襲も考えてたけど、捕虜になって持ってかれちゃったからね。ノワールの使用案は悲しみと恨み辛みと共に棚に上げておく。

 今頃なにしてるんだか。


「基本刃向かってきた敵は皆殺しで」

「いや、それはよくないよ。甘いこと言うけど、降伏とか命乞いとかしてきたら見逃そ?全員殺しちゃ、後が本当に大変だと思う」

「生かしてた方が面倒でしょ。敵討ちとかやだよ僕」

「大量虐殺でいらない恨み買うのも良くないよ。それに、将星って星のトップなんでしょ?下手に殺して情勢悪化、その余波がこっちに来る可能性だって、あるかもじゃん」

「……そこんとこどうなの、アリエス」

「え、えっと、星によって政治体制が違うので、絶対とは言いきれないですけど……将星はその星の代表ですから、どうしても混乱は生じるかと」

「……そりゃそっか。でもなぁ〜」

「うーん」


 ほーちゃんとブランジェ先輩の言い分は最もだ。あまり強く否定できるもんじゃない。でも、なぁ……虐殺しても後釜はいるでしょ。そいつに頑張らせればいーじゃん?

 ……仕方ない。ここは僕が折れるしかないか。

 性善説っていうか、甘っちょろい方向に舵を切った方がいい時もあるし……


「……あまりにも殺意の高いヤツとか、皇帝サマの根強いシンパとかは殺そう。生かしておくメリットがないし……捕まって終わりで済むのは、それこそこいつぐらいだ」

「めぇ…」

「あ、私が思う一番面倒なのって、虐殺したせいで地球がヤバいとこだって宇宙全体に認識されて、攻撃される未来だと思うんだよね」

「正面から轢き潰せ」

「言うと思った」


 ……可能性なんて、虱潰しにやっても際限がない、か。うーん。これ以上は、もうなるようになれ〜、としか言えないかな?

 正直、将星とそれ以下には、苦戦はすれど負けることはないと思うんだ。歴戦の強者とはいえ、ゴリ押しっていう素晴らしいマンパワーでどうにでもなる。

 実際、蜻蛉返りで強襲した時もパワーでゴリ押ししてたところあるし。


「一般人とか非戦闘員には手出ししない、その当たり前を守ってれば別に良くない?正直、雑兵を殺さないのは今更だと思うし。あとは臨機応変でいーでしょ」

「そうなっちゃうよねぇ〜。まぁ、なんとかなるかぁ」

「なるかなー?」

「なるんじゃね?」

「そっかー」


 そう楽観視しながら会議を進めていると、ビルがスっと手を挙げた。


「ちょっといいか」

「なにかなビル。あぁ、疑問があればすぐ挙手したまえ。気が向いたら応答してやる」

「口調口調」

「んんっ…」

「……あー、本題入るぞ。ボス、まさかだが……全員で、宇宙に行くなんざ言わねェよな?流石に地球に留守番とか残すよな?」

「? 全員で行くけど…?」

「防衛力捨てんな」

「確かに」


 一瞬マッドハッター時代の口調になったが、閑話休題。うん、そういや、そのことについて考えてなかったな……そうだよ、いるよな留守番。全戦力で暗黒銀河叩こなんて思ってたわ。脳筋すぎる。

 僕らが宇宙行ってる間に地球が攻め込まれないとは限らないもんな……

 ありがとうビル、気付かせてくれて。

 普通に全員で殴り込むつもりだった。でも、かといって誰を残すべきか……


「アクゥーム設置でなんとかならんか?」

「戦力としては不安。幹部最弱のオーガスタスとルイユを指揮官として残すべき」

「この猫酷いこと言いよるな?」

「事実だからなんとも言えん」

「三銃士とメードはZ・アクゥームでの撹乱と破壊工作を頼みたいから、戦力から外すつもりはないし……こいつらゾンビも連れてかないわけにもいかないし……あーくそ、魔法少女人形量産するか…?」

「もう味方がやる作戦じゃないね」

「最初からじゃね?」

「そうだったわ」


 ……もういっそのこと、復活怪人は置いてくか。金持ちヤクザと占い師だけじゃ心許ないし、メアリーも置いて、警備体制を整えよう。正直、首切り役人が前線から離れる事実は心細いけど……いや、仕方ない。

 でもメアリーが地球にいた方が、防衛力としては最大の期待値なんだよな…

 いっか、別に。

 最悪、地球をこっそり悪夢で包んで宇宙人が近寄れない状況にしちゃおう。

 ユメ計画縮小版だ。


「本末転倒じゃんか」

「ダメだよお姉さん」

「こいつらとうとう姉妹で心読み始めたぞ。やめろ。あと冗談だから」


 どんな顔すればいいんだよ。


 あーだこーだ言い合って、軌道修正して、ここはもっとこうしろだの提案に提案を重ねて……僕が最初考えていた最強の宇宙侵略計画は、かなりいい形になった、と思う。

 目標は“星喰い”の討伐。

 仲良しこよしは無理。あいつ、リデルのことご飯としか見てないんだもん。生かしておくと損しかない。悪いが、地球事情で死んでもらおうか。多分、あんなんでも宇宙の抑止力の一つとして機能してるんだろうけど……ここで、その均衡をぶっ壊す。

 大波乱になるって?知るか。そこからは宇宙人共の腕の見せどころだ。


「終わりよければすべてよし───勝てばいいさ。なにせこの世は弱肉強食。敗者がグチグチ言うのは、宙の理では忌避されることらしいし」

「……そうだね。勝って、希望を掴もっか」

「頑張ります!」

「んふふ」


 ……ダメだったら、僕が手を出そう。政治はからっきしだから、色々押し付けるけど。

 一番は地球。人類の今を、明日を守ること。

 奪わせない。

 壊させない。


 宇宙の勢力図を書き換えて、ぶち壊して……魔法少女の名を刻むとしよう。 


「それじゃあ、解散───各々、残りの時間を有意義に。準備を進めると共に、楽しむように」

「デート行こ!」

「空気読め」


 宇宙進出は四日後。

 頑張ろっか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ