169-モノに釣られてオタ散歩
わーい。なんか貰った!すごい高そうなの。内蔵されたユメエネルギーがすんごいの!これ1個で弱ったリデルの完全復活が期待できるよ?全然やる気ないけど、星一つの運営ならこいつで十分すぎる。
……このレベルがいっぱいあるの?僕破産しちゃう……
それが目的か?
「あっ、この宝石は献上するんで……欲しいのあったら、お金と交換してもらえると。全部魔法少女グッズの購入に使いたいんで…」
「オマエ良い奴だな?」
オタクくんさぁ、人の心掴むの上手いね……アリエスの報告を読んだりして、僕のことを調べたのかな?まあまあそれはいいとして、換金だっけ。
何万でもいいよくれてやる。足りなくても大丈夫。
僕の財布にはオリヴァーが住んでるから。幾らでも資産吐き出せるよ。
「一応、君の好みにあうのはあるかなぁ〜なんて、ぽきの独断と偏見で選びました。珍らしいのから危険なのまで、選り取りみどりで持ってきました。どうぞ」
「つまんなかったらぶっ殺すかんね。おほ〜」
「女の子が出しちゃいけない声ッ!!」
「お姉さんッ!!」
「ごめんて」
だって、すごいキラキラしてるよ?キラキラしてるのが嫌いな女の子っている?いるか。僕は好きだけど。だってキラキラしてるんだよ?
こーゆーの小並感って言うんだっけ。
……てか、さっきから思ってたんだけど。「ぽき」って自称詞でいい感じ?
あっ、そう。
「相場って聴いていいの?」
「勿論勿論。といいますか、後で知られて高すぎんだろでぶん殴られるのはヤなんで……」
「殊勝な心掛けだね。いいだろう、言え」
「上から目線〜」
それから小一時間、観衆の視線に晒されながら物選びを続けた。
:なにこれ欲しい
:めっちゃ高く買い取ってて草
:視聴者プレゼントない?
:市井ぶっ壊そうぜ
「将星の回しもんか?」
「罪の擦り付けやめてもろて…」
「ふふっ」
いたら殺すからどっちでもいいよ。
品物リストに紹介されたブツを書き記す。値段と、あと効能とか秘密とか、危険な理由とか、そういうのを色々と事細やかに。だいぶ分厚い書類になったな…
文字を書いていた羽根ペンを停止させ、魔法で異空間に送り込む。
「独り占めはよくないよね?」
「オマエ金ないじゃん。管理も僕しかできないじゃん」
「いやそんなことないよ〜?」
「いいからどけって」
「私これ欲しいっ!!」
「ダメっ!!」
あげるわけないんだよなぁ。
強いて言うなら、この『不思議な石』でいいよ。幸運値微上昇のスロットアイテムだって。
他はなにを買い取ったのかって?
『古代機械の秒針』とか、『タンデライト鉱石』とか、『ユメエネルギーの結晶体』とか、『伝説の戦士が用いた最強の剣』とか、『禁書指定された魔本』とか、『発禁版暗黒銀河航路図』とか、『ゴーレムの心臓』とか、『紅い色彩の聖水』とか、『不死鳥の卵(加熱済み)』とか……あと、暗黒銀河で使える通貨とか、そこら辺を。
いっぱい貰った。お金はいっぱい払った。
三桁万円払っちゃった。
あぁ、一番は『星喰いの暗黒結晶』かな。あいつが普段漂わせてる暗黒星雲の残滓が、結晶になって戦場に残ったヤツらしい。持ってると呪われそうだけど、これを呪えばあいつに届きそうだよね。期待値も込めて多めに出費した僕をどうか許して欲しい。
勿論興味本位だ。
さて。
「これを元手にお買い物?」
「買い漁ります。できれば、観賞用・保存用・布教用で、それぞれ三品ずつ…」
「本気だねぇ」
「……それじゃあ、場所移そっか。夢ヶ丘で買うよりも、燈京の春葉原の方が品揃え豊富だから」
「それ私もついてっていいかな!?」
「うわどっから来たのオマエ」
「そこから!」
ここで一旦、頑張った後輩と先輩たちとは解散。労いのお駄賃というか、そこら辺の店でアイスでもクレームでも買って帰れと促してから移動を開始。
何故か引っ付いてくるチェルシーと、いつの間にかいたリリーライトをお供に歩く。
正直、邪魔だけど。
「デイズと一緒じゃなくていいの?」
「うん。今日はもう、目一杯遊んだから……それに、今はこっちの方が気になる」
「だよね〜」
ついてこようとして雑に追い返されたデイズかわいそ。
……取り敢えず、大人しくついてくるタレスに、安全策強いるかぁ。
手錠かけた。
「わぁ…」
「いやほら、さ?周りの目もあるじゃん。捕まるフリでもいいからしてて?」
「別にいいですけども…」
あと、あの追従してくる円盤どうにかならん?オマエの頭の上でずっとくるくるしてるんだけど。僕らの居場所、ずっと筒抜けで民衆の目が邪魔なんだけど。
お忍びできないじゃん。
下手に認識阻害して、変なことされたくないし……はよどうにかしろ。
「うす。シャウラ〜、透明化するか、宇宙まで撤退して、邪魔にならないようにしてくんない?」
『命令しないでくださいこの売国奴』
「AIに反乱された???」
「ウケる」
ふーん、あの円盤AIなんか搭載してるんだ……おっと、透明になった。撤退は選ばないか……まぁ、逃げないのは当たり前か。上空にある魔力の波長を記憶して、そのまま歩いて移動する。
転移魔法使ってもいいんだけど、まぁね。
この見るからに体力の無さそうな男を無理に歩かせて、消耗させて、さっさとお帰り願おう。献上品がつまらないモノだったら買い物中に亡き者にしてたけど……ちょっとお目溢し。
「むぅ……私のATMくんの方が強い」
「いや、比較するまでもないのでは……?ねぇ、あのAIは何年物なの?」
「そんなビンテージみたいな聞き方…」
「え〜っと、どうだったかな……レオード氏の誕プレで、いらねって押し付けられた魔法石に意思を植え付けたのがざっと三百年前ぐらいで、存在確立させたのが……うん、多分、人工知能としては170歳ぐらい、ですかな?」
「ちっ」
「こら」
対抗心燃やしちゃって……
チェルシーのATMくんは命令遵守タイプで、あそこまで自立した思考はできてないでしょ。まだ改良の余地ありの状態じゃないか。まだまだこれからじゃん。
応援してるから、頑張ってくだしや。
……やばいな、こいつの隣にいるとネットスラングとかなんか使いすぎそうで困る。クソっ、二年前に視聴者共に植え付けられたネット知識がっ…
記憶消そかな。
……こいつ、あのライオン丸と結構な仲良しなのか……誕生日の献上品を譲られるぐらいには、それなりに関係が深いらしい。
アリエスといいカリプスといい、意外と仲良しだよね。
というか、アリエスが意外と交友関係広いってゆーか、仲深めてるってゆーか。将星コミュニティの中でもかなり異質なんじゃねーの?
あいつ捕虜にしたの正解だったな。
……こいつはいいや。下手に捕らえてもハッキングとかやって情報抜いてきそうだし。
予感がする。
そんな感じに邪推しながら……どちらかと言うと期待で目を輝かせている青蠍を、目的である春葉原に連行する。人の賑わい、活気は、異星人がいても変わらず。
こっちを見ても誰も叫ばない……危機感。
まぁ、とはいえ。
ようこそ、オタクの聖地へ───ここでいっぱい、モノ買えるよ。
「ひゃっほーっ!!我が世の春っ!!」
うわ、駆け出した。
逃げたって認識でよろし?ダメ?ダメかぁ……ちょっとすごい勢いだな?アニメートまで行くの?まぁいいけど。でも魔法少女専門店はこっちだよ。
はい連行。こっちよー。
「うわぁー、持ってかれる〜」
めっちゃカメラ撮られてんだから、そこら辺気にしなよバカなんびゃないの?
「最悪電磁波で…」
「住民に被害出したらぶっ殺すから。制作予定の星間砲の原料にするよ?」
「うっそ〜☆」
「よろしい」
頭脳体として使えそうだよなぁ。そんな技術がこの僕にあるかどうかは別として。多分ない。魔法なら兎も角……魔法なら行けるか?わからん。
ここで物騒な思考はシャットアウト。
偶には僕も、同業のナマモノでも観賞するとするか……ムンラピグッズは廃版の方針で。
捨てろ捨てろそんなの。
「私も買おー。ねぇ」
「ん。お小遣いちょーだい」
「……がめつい奴らだな」
「ダメ?」
「うーん」
「悩むな」
なんでオマエ無一文なんだよ。生活費から捻出しろよ。勿体ないって?オマエ、僕の金をなんだと思ってるんだ。僕のじゃないけど。
後でいっぱいオリヴァーに集らな…
最悪、あいつにくっついてお酌するぐらいやんないと、清算つかないと思うんだよね。
パパ活か…
「ラピス殿!ラピス殿!あのお店!すごいフリフリの子が笑顔で液晶に!行きましょうぞ!!」
「いやあれアニメキャラ。現実と二次元は区別して?」
「実体化させればどっちも一緒でござる」
「強硬手段だな?」
「強引〜」
もうかわいい美少女キャラならなんでもいーんでしょ。寄り道は許さんぞ。
この後めちゃくちゃ買い物した。