164-ミロロノワールの非日常
捕虜、なっちった☆
やっほー、ミロロノワールだよ。なんか、ねぇ……頭に鉄ぶっ刺さって負けちゃった。ウケる。どうやら、幸運の神様はワタシ達に味方してくれなかったみたい。
……ラピピ、激おこなんだろうなぁ。
あいつ、怒ったらずっと怒ってるか、スンってなるかの二択しかないからなぁ。まあいっか。暫くはセンパイ達が盾になってくれるだろうし。
大人しく捕虜やってよ。
連絡はするけどね☆
てか、今はそれよりも……
「おいニンゲン!魔法少女!魔法少女の話してください!早く!早く!」
「説明!説明!」
「いーよ、話す話す。でもちゃんとワタシのこと、名前で呼んで欲しいな〜」
「ノワール!」
「ノワール!」
「宜しい」
腰掴んでせがんでくるガキンチョ……ダビーとナシラに魔法少女の色んなの話すことを、すっごい勢いで求められちゃっててさ〜。かわいいね。せがむ頭を撫でてやって、髪の毛を堪能する。
……ちょっとごわついてるなぁ。お風呂、入れてないんかな?臭くはないけど。
考え過ぎかな?
まぁ、こんな感じで2人に密着されるようになった。
懐かれた〜って安易に思いたいけど、純粋に子供だから興味ある話に必死なんだろうね。ワタシだって、小さい頃話の続きをせがんだからなぁ。
話す内容無くなったら、ぽいっ!ってことにはならないことを祈る。
あと、意外と丁重な扱い。普通にソファに座らされて、お話してる。ボロくて汚いけど……住めない環境じゃないから許容してやってる。
いや本当に、寝床もちゃんと提供されるは、ご飯も一応あるは、暇になっても子供たちがいるっていうか……
なんだこの環境。
ワタシ捕虜だよね?
心配になってきた。
「7年?7年でこれだと?つーかどんだけ死んでんだよ……魔境すぎんだろこの星…」
「失礼だな。ラピピとかラトトとみたいな天上がポンッて生まれてきただけの世界だよ」
「バカがよ」
頭を抱えている山羊さんには同意する。ホントそう。
魔法少女の致死率は安心安全の99パーセントっていう、信頼できる値だからね。残りの1が4人しかいないけど、まぁそれはね?残り9人が死体の再利用なの、戦力足りてなさすぎでしょ。
ラピピとラトト、あとブランジェ先輩が百人分のパワー持ってるから、問題ないかもだけど。
あのパイセンも意外となぁ。2人には霞むけど。
ワタシ?クソザコナメクジですが。ドリームスタイルに覚醒できたのも、ほぼ運だと思うよ?このワタシに、その素質あるように見える?絶対おかしいって。
覚醒はしてないけど戦闘特化の同胞には負ける自信しかないよ。
「魔力無限のエタニティリングとか、決闘フィールド作るマッドパーティとか、自分の命と引き換えに一度っきりの極大奇跡を起こせるアドゥームサクリとか、海外勢のでもヤバいのはいたらしいからねぇ〜……お生憎様、ワタシが魔法少女になった時には死んでたけど」
「無敵英雄のスーパーガール、騎士王エックスカリバー、運命操作のフォーチュンレッド……いや、なんでこいつら死んでんだよ。おかしいだろ」
「惑星地球魔境説、補完されちゃったわ」
「怖い〜」
「むぅ〜」
インチキ性能の先輩が多いんだよねぇ。それに比例して怪人も大概ヤバい性能なんだけど、ね。死んでもカエルがいれば復活できるとか、災害をガチャ感覚で起こすとか、残機無限の死の押し付けとか……多分、ワタシが知らないだけで、もっといっぱいいる。
そんでもって、そいつらの魔法を使えるラピピは本当にヤバいヤツだと思う。
いやー、それでも、同世代になれてよかった。安心感がすごかったからね。
「取り敢えず今回はここまででいか……はァ、纏めんのも一苦労だぞこれ」
「がんばれ!」
「……手伝わせるか」
「捕虜に!?」
ちなみに、山羊さんとも良好な関係は築けてるっぽい。変に攻撃とかされないし、そもそも拘束されてない。うんおかしいね?アリエスちゃんもそうだけど、捕虜はすごい丁重に扱うのが普通なの?拘束とか尋問とかやらんの?
正直拍子抜けだ。そーゆー覚悟して来てたんだけど……甘っちょろい、のかな?
……よく考えれば、アリエスちゃんも自由だったっけ。
いやあれは、ラピピっていう、最強のカードがいるからできてるんかな?
それなら、これは?
「下手にテメェを傷つけて、あのラスボス様の尾を踏みたかねェからなぁ……」
「そんな地雷じゃないんだからさぁ〜」
ありがとラピピ。でもオマエ、将星にもめっちゃくちゃ怖がられてるぞ(笑)
ウケる。
でも、お陰でわかった。やっぱりワタシは……あの子に頼らないと生きていけないってことが。悔しいけど、まあ仕方ないとも思う。搦手で行動制限するワタシじゃあ……どうしようもない敵が相手じゃ、終わっちゃうもんね。
あの日、魔法少女狩りに、手も足も出なかったように。
今は、良好な関係を築けてるけど……死因と仲良くなる未来ってのも、よく考えればおかしい。もう、そういうのだと思うしかないってこと?
……別にいっか。
「で、ここ拠点なの?ボロくね?」
「仕方ねェだろ。現地活動にゃあ犠牲は付き物だ。あぁ、悪いが出掛けてくる。13時からバイトなんでな。ダビー、ナシラ、ちゃんと見張ってろよ」
「はい!お任せ下さいっ!」
「委細承知!」
「……なに、日雇いしてるの〜?意外〜」
「路銀は大事だろう?」
異星人の偉くて強いひとが日雇労働してるの、控え目に言って笑うんですけど。
……今のうちに鏡で連絡するかぁ。
あ、そうだ。
「山羊さん、帰ったら銭湯行かない?ちゃんと身体洗お?女の子は特に、ね?」
「……それもそうだな。やっぱ、魔工具だけじゃなぁ」
「なにその便利なの」
「魔法と科学の合わせ技だ。同僚が旅先には必須だろって作ってくれた」
「なーる」
そういうわけで、彼らを銭湯に誘導できた。よかった、このボロ屋、お風呂ないからどうなることかと……これで清潔さを保てる。やったね。
山羊さんも行こうとは思ってたらしいけど、自分の目が届かない場所にいさせたくなかったみたい。風呂場だから余計に危ないもんね……お父さんかな?
取り敢えず、ワタシはこの子達のお世話をするよ!
ラピピよりも先に、このモフモフを堪能するのだ!絶対あげないもんね!
「……お前、捕虜になってんのに気楽だな」
「その空気を作ってるの、あなたってご存知でない?まだシリアスにできるよ?」
「性に合わねェな」
「あま〜っ」
本当に苦手なんだろうなぁ。お陰で付け入る隙がある。
……多分、彼もそう思われていることはわかった上で、乗ってきている。面白いね。何処までこの人で楽しめるか期待値上がってきた。
そう邪心を抱きながら、日雇労働に出掛けた山羊さんをお見送りした。
「セントー?なんです?それ」
「身体を綺麗にする、公衆浴場だよ。アミューズメントも完備されてるとこがあるから、そこに行けるように交渉、お願いしよっか。キレイキレイ、したいでしょ?」
「お風呂ですか!入りたいですっ!ココ最近、宇宙船にも戻れてなくて、ちょっと…」
「遊ぶ!遊ぶ!」
「はいはい」
……宇宙船、あるんだ。ふーん。いいこと聞いた。
んまぁ兎に角、ラピピと銭湯で合流しよ〜っと!多分、ラトトついてくるけど!
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───星空☆スパリゾート。星ヶ峯有数の大衆浴場にて。広大な敷地の全てをリゾート空間として作り上げ、星ヶ峯最大級の源泉使用量、身も心も温まる施設が山盛り沢山のスパリゾート。ただの銭湯よりは確かに値が張るモノの、精神年齢が幼い子供たちがこぞってここに行きたがった為選ばれた、超巨大温泉施設。
老若男女人種を問わず迎え入れるそこで、今日。一つの珍事が起こる。
「ねぇ、君〜。風呂上がりに僕と卓球しない?」
「二対一とかどーよ。卓球、負けたら子宮にモンゴリアンデスワームだよ」
「怖い怖い怖い怖い怖いッ」
「名付けて死卓球」
「まんま!」
殺意の高い知り合いみたいな女二人に囲まれて、必死に逃げようとするノワールがいたとかいないとか。会う予定ではあったが、思ったより殺意高くて想定外だったとか、舐めたことを抜かしていたが、今や涙目である。
勿論カリプスは察して逃げようとしたが、既に入り口で金を払った手前、せっかく稼いだ日銭が…と金銭的事情で逃げることが叶わず。
遭遇した。ちょっと奮発した矢先に魔法少女に遭遇するこの運命……最早呪われているのではないだろうか。もう空を仰ぐしかなかった。
またもや何もわかっていない子供たちを他所に、少女は囲まれる。
「やるの?やらないの?」
「やらない方向でお願いします!ご心配おかけしちゃって大変ごめんなさい赦してっ!!」
「日本語めちゃくちゃじゃん」
「やーい小卒!」
「自分語りかな?」
「残念!もう高卒認定でーす!お前らとは一味もふた味も違うんだよぉ!」
「でも試験受けてないよね?自称だよね?」
「はい」
「草」
デジャブ