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155-アリスメアーの再出発


───あの激闘から、暫く経って。

 結局、昼寝どころか朝まで寝ていた僕たちは、なんとか回復させた魔力を駆使して、戦後処理に動き出した。まぁほとんどは僕がやったんだけど。

 敗者特権っていうか、やむなしというか。

 僕に勝ったから、とかいう理由で、魔法少女のお願いを幾つか聞く羽目になったけど……それもまだ、許容できる範囲の話。


「ふぅ……こんなもんか」


 観戦モードだった“星喰い”の登場には驚いたけど、もう二度と星を渡れないように空間の綻びをぐちゃぐちゃに、結界とかもやり方を変えて再配置……よし、オケオケ。

 魔力切れで機能停止してた諸々も、ちゃんと動くように再接続、設定してと。

 廃城の瓦礫も、部下たちが異空間投入してくれてたから結構楽に除去できた。そのまま粒子分解してないないしておいたよ。


 ……結界の綻び、ヤバいなぁ。真・極光魔法とか諸々で所々穴空いてやがる。街掠めてビル溶かしてんの、本当に無人でよかった……あと廃ビルだったのが幸いした…

 補償とかもせんと…


「ん。うーねぇ。これ」

「うん?おっ、これは……ありがとう、ちょうど探してたところだったんだ」

「んふふ」


 そう密かに頭を抱えていると……チェルシーがおっきな茜色の宝石を持ってきた。夢空廃城の浮遊を維持する為に用意した魔法石だ。城の下部に点在させてたんだけど……崩落と戦闘の余波で、だいぶ破損しちゃったんだよね。

 無事だったのは、これを含めたったの三つか…

 再利用したかったんだけど、これじゃあ魔力補填の緊急アイテムにしかならないか。まぁ、これはこの子にあげておこう。


 ……うーねぇ呼びについて?なんか、この子もこの子で心境の変化があったみたい、でさ。呼び方を変えたいって訴えてくるもんだから…

 別にいいよって軽く応えたら、なんかこうなった。

 完全にほーちゃんのこと意識してるよねぇ……対抗馬になるって言ってた意味は、よくわかんないけど。ちなみにママ呼び案もあった。それは流石に、ね?恥ずかしいからやめさせた。


「♪」


 ……帽子屋さんとか、他人行儀な呼び方じゃないだけ、ヨシとするか。別に気にしてはいなかったけど……これも変化ってヤツなのかね?


 閑話休題、戦後処理のあれこれについて。

 今回、ユメ計画が阻止されてしまったわけで……まぁ、こんな僕の理想に夢を見て、ついて行きたいって感化した民衆の一部に、謝罪文送ったり、お詫びの品送ったりで、なんとかした気分になっといた。

 お詫びの品は、なんていうの?枕元に置けば、嘘偽りのない幸せな夢を見れる石っていうのを、ね。人によっては残酷だろうけど、急拵えなのはこれしかなかった。

 これで自殺でもされても……僕は責任取れないから。

 まぁ、形ある誠意は必要だからね。ちなみに、謝罪会見ならぬ謝罪配信もしたよ。

 AIが。


※三日前

『───此の度は、弊社が皆様にご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした。今後は、再犯防止に勤め、もう二度と悪夢の方がいいですとは言いません』

『うんうん。ねぇ、これ中身違くね…?なんか、気配……おかしいね?』

『逃げたよねこれ絶対』

『チェルちゃんのAIなんだろうなぁ……あっ、メッセだ。夜逃げ準備中だって』

『処刑しましょう』

『賛成ぽふ』


 案の定即バレしたけどね。絶対に気付かれない自信で、魔加合一の複製体にATMくん仕込んで、定型文を読ませただけなのに。

 ……僕が謝るわけないからって?負の信頼やめろよ。

 そのあと正座配信させられたから、それでトントンってことにして。


 ……まぁ、そんな感じで。ぶっちゃけ邪魔な民衆共への反省アピールは、なあなあな感じて済ましてある。所詮は内ゲバだしねぇ……

 イメージ回復とかは考えてない。どうでもいいし。

 何処まで行っても外野だしねぇ……まぁ、お気持ち表明結構届いてるけど、全部無視してる。だって僕は苦情受付センターじゃないからね。知ったこっちゃねぇ。

 ……頑張ったねとかの労いとか、謎の応援メッセージは既読してるけど。


「うるるー、なんか来たぞ」

「……適当に相手しといて。気が済んだら満足して勝手に帰るだろうから」


 あぁ、それと。魔法少女とアリスメアーの関係も、少し変化した。敵対関係にあるのは、ずっと変わらずだけど。ちょっとだけ、仲良しこよしの数値が増えた。

 ……具体的に言うと。


「お邪魔しまーす!」

「寝子ちゃー!あーそーぼっ!」

「……付き添いで来たわ」

「やっほー」

「ぽふ!」


 魔法少女、平気な顔してうちの魔城に出入りするようになりました。


 どうして…


「ん、待ってた」

「呼んだの君か……程々にしときなよ」

「うん!」


 勇みよく交友の輪に飛び込んでいく猫と、わちゃわちゃ騒ぎ出した後輩たちを眺めて……もう仕方がないと、僕は全てを諦める。

 変身していない、生身のまま庭園散策に出掛けた3人に注意するよう呼びかけるのも忘れない。

 仲良くなったなぁ、あの子たちも。

 ……平然とした顔で隣に並ぶ、ほーちゃんの存在からは全力で目を逸らすとして。


「オマエが付き添いでしょ、これ」

「まぁーね。蒼生ちゃんは素直になれないんだよ。あっ、これ特割チケット。一緒に温泉、行こうね」

「えー、やだ」

「なんでぇ」


 一応受け取っておくが……結構な人数分あるな?なに、魔法少女とアリスメアー全員で行く気?正気かこの女……いつものことか。

 ウッドデッキの上でお絵かき帳を広げるリデルを2人で見下ろしながら、いつものように駄弁る。

 ……魔城と繋がる鍵を寄越せ、ってのを命令されてさ。なんか、負けたのが勝ったヤツの言うことを聞く、なんて雰囲気になって、さ……気付いたら決まってた。泣く泣く渡す羽目になった。

 なんでや。


 一応、勝った全員……魔法少女11人分の願いを聴いて叶えるのは、本当苦労したけど。

 大半が可愛らしいのだったからよかったけども。

 穂花ちゃんは一日デート券、蒼生ちゃんは手加減なしの訓練メニューの作成依頼、きららちゃんはアリスメアーの株買取、ほーちゃんは魔城行きの鍵の譲渡…

 ごめん全然可愛くなかった。特にきららちゃん。

 うち、株なんてあったの?慌てて確認したけどやっぱりなかったから、取り敢えず保留にさせてもらった。流石に仕方ないよね?想定してないんだもん。

 ストイックな蒼生ちゃんと、姉の対抗馬になった義妹は後でちゃんと対応する。

 うん。


 で、問題は。この場にいない他の魔法少女……ネットで厨二全開の“六花”と名付けられていた、ゾンビマギアたちなんだけど。


「差せーっ!差せーっ!」

「ッ、あーっ!?なにしてんのー!?」

「ちょっ、賭け金どうだったっけ?私どんだけ賭けてた?胴元!胴元ーっ!」

「ざっとこのぐらい…」

「あかん死ぬぅ!?」

「わァ…」


 庭園の横にあるだだっ広い空間に、今回を機に新設した特設レース場。そこで、色とりどりのフラミンゴが全力で駆け回っているのを、競馬の如く騒ぎ立てる集団がいた。

 なにを隠そう死人の六花、他のおっさんsだ。

 現代版コーカスレース。グルグル終わりのない競走から競馬要素を足して、ちゃんとレースにした元夢の国伝統の改造版だ。


 休日のダメなおっさんとか、大学生みたいに騒ぎ立てるアホ共を静かに眺める。ちなみに、メードとルイユが今回胴元をやっている。メアリーは画面外で申し訳ないけど、理性のタガがまた外れた狂化状態で警備巡回中だ。

 ……偶には、理性戻して運営した方がいいかもね。あの決戦の日にそう思った。

 さて。


「で、本当にまた繋ぎ直したの?」

「うん。意味わかんないよね……アイツらから僕の手元を離れた癖にさぁ…」


 あの日、離反を表明した彼女たち。

 だというのに……何故か、また僕の支配下に置かれたいなどと言いやがりまして。意味わかんないけど、そういう望みがいいっていうのなら、叶えるしかなくって。

 また繋ぎましたよ。えぇ、もう二度と僕の死霊の術から逃げるなんて、考えることもできないように。対フルーフ術式も組み込みまくってね。

 ふーんだ。


 ……理由としては、もう逆らう理由もなくなったのと、フルーフ先輩よりも安心安全のラピス印の支配下にいたいだとかなんとか。全員共通の願いだったよ。意味不。

 奪われる心配してんの、どうなんだろ。

 わかんないけどね。術式が奪われない保証なんて、まあ無理だし。


「ふざけやがって」

「そりゃ〜、そうだよ。あの人たちだって、魔法少女なんだから」


 納得できなかったら叛逆する。悪夢との対立も、僕との一時的な訣別も、言っちゃえばそういうことだ。そもそも宇宙人と殴り合ってるのも、“星喰い”の支配下にあるのを納得できないからだし。

 敵対したのもそういうことだ。

 ……理解できるから、それ以上は言わないけど。まぁ、いいよ。受け入れてあげるよ。僕大人だから。そもそも、僕が裏切ってるのを許容してもらってるんだし……文句は言えないよね。

 言うけど。

 ケッ。


「うあーっ!?貯金ないなった!わーっ!!」

「アイドル終了のお報せ〜っ!地下行き確定かな?今すぐラピ大先生に営業してきな?主に枕の方で……あっ、枕はもういるから無理か。ざーんねん♪」

「ふぎゅぅ…」

「……そんな顔してもダメだから。賭けの才能ないアホはそこに直れ」

「うぃ」

「むぅ」

「ひん」


 全員ダメじゃねぇか。何円賭け……うっそだろ?全財産本当に賭けるヤツがいるかよ普通。マジで馬鹿じゃんか。貯金全ブッパはバカの所業なんだよ……

 仕方ない。胴元2人、今回はお試しってことでなかったことにしてやって。

 次は容赦なくいっていいよ。

 崇めろ。


 ……そんな感じで、まぁ。色々やって。戦後処理っぽく対応を頑張った。


 ちなむとアリスメアーはこれからも定期的にアクゥーム投下に勤しむので、そのつもりで。アクゥーム召喚からの討伐っていうお決まりのフェーズが、結構大事でさ。ユメエネルギーの発生と回収、あと地球の循環の為には、あれ結構な頻度でやんなきゃなんだよ。

 だから、これからも魔法少女とは一応敵対関係。

 もうほとんどエンタメ的っていうか、魔法少女を画的に勝たせる話になってきてるんだけど……そこの話は、また今度で。


「……それで」


 肝心要の、目下一番の問題に入る。


「あいつが……あの将星勧誘マンより先に、僕らの決戦を見に来てたってのは、確かな情報なんだろうねぇ……時と場合によってはその毛刈るぞ」

「めぇ……私、うぞづがなぃ…」

「可哀想」


 どういうわけか隠し事が下手なアリエスを問い質して、曝露させた内容に。あの呪い拡散黒山羊がいる面倒臭さに顔を顰めるのだった。

 堂々としてろよ。

 隠れんな。


黒山羊「無茶言うなよ」

金獅子「捕まったらテメェの星に重税かけるからな」

青陰蠍「シンプルカスで草」

星蛇皇「魔法少女、早く来ないかな…ワクワク…」

夢羊枕「めぇ〜!?」

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可哀想な羊さんだ。………ジンギスカンはヤギだっけ?チッ!
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