11-魔法少女がいる日常
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魔法少女-夢・星・花-【公式】
明日18:00より配信を放送するぽふ〜!
是非お越しをぽふ!
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頑張っている魔法少女を応援する為の配信魔法。それは戦闘時だけでなく、日常的な場面、所謂今時の配信者らと同じような配信枠も撮ることができる。
魔法少女の認知度を増やす為、応援者を増やす為に。
なにか遊んでいる光景や、魔法を作っている作業風景、視聴者とコメントの殴り合い……従来の配信者とほぼ同じことができるのも、その魔法の強みであった。
……なんでこの話をしたのかって?そりゃ、ちょうど今例の3人がそういう平和な配信を始めたからだ。
魔法少女って人気商売の側面もあるからね。仕方ない。
『えっと、えっと……初めまして、リリーエーテです!』
『こうして話すのは、確かに始めてだったわね……あぁ、ブルーコメットよ。よろしくお願いするわ』
『ハニーデイズだよー!よろしくー!いぇーい!!』
『ぽふるんぽふ!』
『ほまるんだよ〜』
:待ってた
:三億年ぶりの日常配信キター!
:スパチャ解禁まだですか?
:(=魔力)
一つの画面に収まる3人の少女と、その脇にいる2匹のよくわからない妖精たち。そして、それに群がる一般人。事前告知していたとはいえ、数多くの暇人が既に集まってコメントを打ち込んでいる様子。
場所は穂花ちゃんの部屋か。身バレするなよぉー?
リデルにバレたせいで研究がちょっと滞っているから、暇潰しがてら……あと情報収集の為に視聴する。
……エーテちゃん以外の魔法少女のこと、素性を除けばあんまわかってないしね。
「私も見るぞ」
「では私も……すいません、もう少し寄って頂いても?」
「オマエ主に失礼だぞ」
部屋に乱入してきたリデルと遠慮のないメードを無言で迎え入れてやり、ソファで一緒に見ることになった。もう勝手にしやがれください。
『今日は私たち3人のことを知ってもらいたくて、配信を開設しました!よろしくお願いします!』
『質問箱、って言うのかしら。そっちも使うわよ』
『昨日アカウント作っていきなり募集したけど、いっぱい集まったよ!ありがとー!』
『質問内容はぼく達が精査するぽふー!』
『汚物は消毒だー!!』
『ほまるん』
『はい』
:キャラ濃いなこの妹
:(自称)妹
:突然生えてきた疑惑のある妖精
:やめろよみんな!怪しくても信じてやれよ!
:↑怪しんでんじゃねぇーか
:なつかしー!
:wktk
……魔法少女だってアカウントぐらい持つ。公式垢とか個人垢とか、計四つが昨日設立されてた。まだ自己紹介と質問募集しかしてなかったけど。
僕もあるよ。二年前から更新停止してるけど……
アカウントはまだ生きてる。生死不明状態だから下手に動かせないけど。
『えーっと、まずは私たちのことを話した方が、いい?』
そうして始まった3人の自分語り。内容は使用魔法とか魔法少女になった経緯とか、これからどうしたいだとか、視聴者が求める色々な話をそれぞれ語る。
夢魔法と星魔法、花魔法。五大属性外のヤツか。
リリーエーテの魔法は特異的だねぇ。明るい夢があれば明るい魔法に、暗い夢であれば暗い魔法になる……そんな真逆も起こり得る、そんな力だ。
だいぶ危うい雰囲気があるが……仲間のケアがあれば、なんの問題もないだろう。
星魔法と花魔法は特に語ることないかな。強くて優しい魔法ってこと以外。
ちなみに僕は月魔法───あと再現した他の魔法少女の魔法かな。もう僕の前職のことはわかってるでしょ?何か言うまでもない属性の魔法だと思う。
今後僕のことは全知全能オールマイティと呼んでくれ。
閑話休題。
『こんな感じかしら。質問回答行くわよ』
:おけまる
:俺の読んでくれー!
:期待
生真面目で融通が効かないように見えて、ちゃんと見て考動できる……臨機応変に対応できる女の子のイメージができたブルーコメットちゃん。
質問ページを開いて、届いた内容を読んでいく。
うんうん、いいよいいよ。魔法少女になにか聞きたい、画面越しでもレスポンスが欲しい、って人はたくさんいるからね。結構な頻度で変態さんとかバカ野郎とかアンチのコメントが混ざってるから、気を付けてほしい。
今回はぽふるんとほまるんが精査してくれたみたいだし安心だね。
『───パンツの色を教えてください、だって!えっと、えっとねぇ〜、あたしのは〜』
『ストップストップストーップ!!待ちなさい!!』
『デイズちゃん待って!ぽふるん!!!』
『えっえっえっ───…ほまるんッ!!!そこほまるんの担当ぽふッ!!』
『わは』
:!!?
:やめろーーーッ!!
:やばたにえん
:妖精さん???
:これもう敵だろ
:確信犯
なんだよあの妖精。役に立たねェーな。デイズちゃんもよくないね?なんでそんな堂々と秘め事話せるの?流石に女子中学生の下着事情は話しちゃダメだよ?
センシティブすぎる。そういうのはネタ枠の人にやれ。
……特定できねぇかな、このコメント送ったクソ野郎のこと。
うちの猫の同級生……かなり親しく接してくれてる子を辱めるんじゃない。
『んんっ……気を取り直して、次ッ!』
画面背景で叱責暴行を受けているピンク色のクマ妖精を無視して、リリーエーテが配信を再開。次々と、効率よく質問を捌いていく。おおう、慣れてるな……あーあれか。お姉ちゃんが配信でそうやってるのを見てたから……
そういえば画面外でアシスタントしてたね。
……あの妖怪太陽、もといリリーライトは定期的に日常配信をしてたもんねぇ。
当時は僕も呼ばれて、コメント欄と格闘したものだ。
っとと、過去を懐かしんでいるうちにコメントに流れる質問に回答する時間になったようだ。
『みんな疑問止まんないねー』
『……まぁ、私も昔はそっち側だったから、あんまり強く言えないわね』
『あはは』
……うーん、僕も試しに送ってみるか。勿論匿名で。
ペロー@三銃士
:弱点教えてください
:↑
:↑
:ちゃっかり紛れてんじゃねぇ
:腹抱えて笑ったw
:帰れ!
「なにやってんだあのバカ」
「んっ、んん……らしい、というべきか?」
「折檻の準備はできておりますが」
「捨てとけ」
上司としてお叱り一つはくれてやった方がいいかもな。前々から思ってたけど、なんでペローは堂々と配信画面に現れるわけ?スレ監視中もそうだけど、バカなのかな。
いい加減にしろよ。実名報道に近いことしてんのよ。
ほら、あのリデルでさえ困惑してるんだから。ネットに疎い老人を困らせるな。
『えっ、えぇ……なにやってんのベロー』
戸惑うエーテちゃんには後で菓子折りをもってこう。
『弱点は、そうね。キラキラしてるのが苦手よ。石なんか特に苦手ね!』
『おまんじゅー怖いじゃんそれ』
『なんのことかしらね』
お饅頭怖い?あれか、懐かしい……古文だかで勉強した覚えがある。お陰で一時期流行ったよなぁ。お饅頭怖いの流れでジュース強請ったり弁当強請ったりしてたよ。
いやまぁ僕は強請られた側なんだけど。集られてた。
魔法少女同士だからって許されるもんじゃないのよ……何回奢らされたか。
『───あっ、もうこんな時間!そろそろ寝なきゃ!』
『あら、本当ね。それじゃあ、今日の配信はここまでよ。今後も……そうね、よろしくお願いするわ』
『ばいばーい!』
:乙!
:これからも応援してます!
:またねー
:Bye
かれこれざっと二時間、配信は無事終了した。僕的にもためになる配信だった……うん、やっぱ自力で調べるより本人に教えてもらった方がわかりやすいよね。
黒くなった配信画面を閉じて、ミルクコーヒーを一口。
あまーい。うまーい。苦いのきらーい。
子供舌の3人で同じのを啜りながら、今回ので手にした見解を交換する。
「崩すならリリーエーテからか」
「夢魔法に干渉できれば、そうだね……僕みたいに闇堕ち悪堕ちさせてみる?」
「オマエみたいなの2人もいらん」
「喧嘩か?」
いいだろ別に。つーか僕みたいにひねくれてねぇーよ。
散発的に起こる言葉の殴り合いを嗜んでいると、今までずっと黙りこくっていたメードが立ち上がって、なにやら決意した顔で拳を振り上げた。
なに、どしたの君。いきなり意気揚々と。
そう疑問に思ってリデルと一緒に見あげていると、謎にとんでもないことを言い放った。
「───そうです、私たちもアカウントを作りましょう」
「は???」
そして提案は可決された。何故だ。