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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
人外魔境悪夢決戦
139/234

126-御伽噺を撃ち落とせ


 魔法少女の更なる高み、ドリームスタイル。

 発現できたのは、世界全体で数えてもたったの16……それも、島国日本の限られた魔法少女だけが、その真価を発揮できた。


 そして、今。最初の夢覚者───エスト・ブランジェを筆頭とした覚醒者が、新世代に立ち塞がる。

 絶望に反転した希望が、試練となって。

 ユメを喰らう。


「それじゃあ、始めよっか」


 三対六翼の純白の羽を広げて、無数の十字架が刺さった黄金のヘイローを頭に戴くブランジェが、通常よりも速いスピードで3人に肉薄。

 勿論回避に成功されるが、天砕きの槍は止まらず。

 エーテたちがいた後方の壁を、軽い一突きで倒壊させ、瓦礫に変えた。


「ったぁ!!」

「っと」


 驚異的な破壊力に目を見張ると同時に、飛んだデイズがブランジェの天守りの盾に花斧を叩きつける。

 あまりの頑丈さ。一切ビクともしない壁の如き盾。

 先程よりも力の入った防御に、デイズは歯軋りしながら耐えようとするが……

 一瞬で、身体が重くなる。

 デイズが抑えている間に攻撃に移ろうとした仲間諸共、地面に叩きつけられた。


「ほーら、がんばれがんばれ♪」


───重力魔法<ヘブンズ・グラビティドーム>


「がっ!」

「うぐぐっ…!?」

「おっ、もっ!」


 強力な重力場で押し潰されるが……両手足を支えにして身体が完全に潰れるのを避け、上方からの重力には決して負けず、耐え忍ぶ。

 超広範囲を支配する力に覆い被さられ、逃げ場はない。

 だが、そこは工夫とゴリ押しで生き抜いてきたエーテとその仲間たち。魔力放出と身体強化で、無理矢理伸し掛る重さに順応して、空へと突き進もうとした、その時。

 鏡の破片が、視界に落ちる。


「ノワ様のミラーマジック、種も仕掛けもありません〜、なんてね」


 空から零れた鏡使いの言葉は、耳に入ってこない。


 何故なら。

 その鏡面には───彼女たちに槍の矛先を突き付ける、ブランジェの姿が映っていて。


「やっほ!」

「まずっ!」


 突破を選んだエーテの眼前に、鏡から飛び出たランスが突き付けられる。

 間一髪で首を傾け、回避に成功する、が。

 ランスに付与されていた重力魔法のオーラが、エーテを掴んで離さない。


 逃げられない重力場に引き摺り込まれ、堪らずランスの側面に手をついてしまったエーテに、ブランジェは優しく微笑みかける。 


「ひき肉になっちゃおっか」

「この人怖いっ!」


 天砕きの槍を中心に歪んだ重力が、エーテを巻き込んで空間ごとぐちゃぐちゃにしようと、容赦なくブランジェが魔法に手をかけて。

 あわや大惨事になるところで、彗星が駆け抜ける。


「やらせないわよ!!」

「コメット!」

「おっと───うーん、取られちゃった。ごめん、そっち行ったよ〜」


 星の輝きで強行突破したコメットが、難なく掴み取ったエーテの二の腕を引っ張って、重力圏から飛び出る。花の絨毯で重力場の規模を確認していたデイズとも合流して、暗い空に戻る。

 一連の流れを高速で済ませた動き、その連携に、思わず感嘆とした声を上げながら、ブランジェは合図を出す。

 ならばこちらも、連携を見せてやろうと。

 魔力がうねる。


「上手く合わせろよッ!」

「言われなくても、大丈夫なのです!」

「不安なんだが?」


 記章が増え、装飾が派手になった軍服を男前に着こなすカドック。その隣でマントを生やしたピッドが、これまた装飾が派手になった応援旗を振るう。

 魔法陣を浮かべ、そこに2人で手を添えて。

 二つの異属性を、似通っているからこそできる芸当を、ここに披露する。


「兵仗魔法!」

「列車魔法!」

「「───列車砲<マギアドーラ・カノン>!!」」


 現れたのは、戦車砲を乗せた装甲列車。飛距離などなら移動せずとも広範囲を破壊できる列車砲だが、魔法により空中に線路を引くことで機動力を確保。

 縦横無尽に空を駆ける上、魔法で射程距離も砲弾威力も跳ね上がったバケモノ兵器ができあがった。

 発射台に乗り込んだカドックは、操縦席にいるピッドに伝令。


 その砲口を、エーテたちに向ける。


「ヤバそう」

「撃たれたら避ける暇なさそうね!!」

「オッケー散開!!」


 三手に別れた敵から無作為に選んだ一人に、カドックは砲身を調整して。


「ハハッ、死ねェッ!!」


 どう来ても対処できるようにしていたデイズに、砲弾を撃ち込む。


「こっち来たぁ!?」


 コンマ数秒の差で多重障壁を張るが、破壊には抗えず。


 花の盾は全て貫かれ、決壊。列車砲の砲弾が、デイズの腹部に叩き込まれる───その寸前に、花斧でカバーし、なんとか受け止めることに成功する。

 天運で脅威を退けてみせたデイズだが、なにも終わっていない。なにせ、砲弾の勢いは変わっていないのだから。

ギリギリと音を立て、砲弾と花斧が拮抗する。間近にいるデイズは、砲弾が帯びる熱と纏わりつく殺意に底知れない恐怖を感じるも、我慢して耐え続ける。

 打ち返すのが無理なら、逸らすしかない。

 徐々に徐々に、斧の角度を調整して。デイズは、気力でそれをやり遂げる。


「ッ、はァ!」


 気合いの証、やり遂げた成果がひび割れたクレーターに着弾する。手の痺れは残るものの、列車砲の一発目を漸く対処し終えたデイズ。

 そんな喜びも束の間、追撃が迫る。


「次弾装填完了、発射ァ!!」


 次々と撃ち込まれる砲弾を、速さに慣れた目でくるくる避けて、今度は全力回避で突破する。その頑張りを静かに観測していたピッドは、こりゃいかんと次策を行使。

 発射台で嫌だ嫌だと駄々を捏ねるカドックを無視して、列車砲を動かす。


 夢の線路に車輪を載せて、緊急発進───凄まじい音と火花を散らして、列車砲が空を駆け。

 デイズ目掛けて、突っ込む。


「うそでしょ!?」

「轢き潰してくれるのです!!」

「やめろォ、酔う!この暴走列車ヤバいッ!オレ様が先に死ぬッッッ」


 阿鼻叫喚の追いかけっこと砲撃に、デイズは泣きながら挑むのだった。


 ……そして、危機に陥っているのはデイズだけでなく。


「呪いは好きかい?」

「ワタシはだーいっきらい!」

「背中から刺すのやめようね」

「嫌な思い出が…」

「残念だけど!」

「そか…」


 列車砲がデイズを集中狙いするという非効率な大暴走を発揮している横で、エーテとコメットも攻撃を浴びる。

 相手は、フルーフとノワール、そしてブランジェ。


「歪魔法<イグニ>」

「鏡魔法<ミラードジャマード・アブソリューション>」

「重力魔法<エンジェルビーツ>」

「こん、のぉッ!!」

「はァッ!」


 紅い襤褸にジャラジャラと鎖をつけて、黒い布地に紅い日の丸が描かれた顔隠しの面布をつけたフルーフは、更に強化された歪魔法で空間を燃やす。

 より派手に、ドレスに鏡の装飾が足されたノワールは、エーテとコメットが放つ魔法攻撃を鏡に封印。

 ブランジェの重力強化された槍の一撃も浴びるが、まだ余裕をもって対処する。息苦しい上、魔法が敵に届かない問題は残っているが……それでも、ドリームチェンジした先輩と戦えることへの興奮の方が、2人は勝っていた。

 熱狂は伝染し、辛くても楽しそうな後輩に、彼女たちも当てられる。


「いいねぇ悪くない───なぁ、私達も合体技、ちょっとやってみてみないか?」

「土壇場でー?そーゆーの練習しとこうよ」

「そうなると、あの2人は準備してた、ってこと?」

「コソコソやってたよ」

「ふーん」


 ロマンを追い求めるバカ2人を思い浮かべながら、まあやってもいいかとフルーフの提案に納得して、ノワールとブランジェは魔法陣を描く。

 即席で、特に話し合うこともなく。

 三者の魔法を適当に重ね合わせて、示し合わせることもなく。


 そのような雑さ加減でも、魔法を成立させてしまうのが彼女たちで。


「歪魔法」

「鏡魔法♪」

「重力魔法───…」

「「「───三重凶鳴<セクトフォール・アンチ・マギアファントム>!!」」」


 重ねられた魔法陣から、瘴気を伴った大きな影が、空に幻出する。顔のない無貌の怪物。天使は堕ち、鏡は曇り、呪いに満ちた真性の怪異。

 2人の魔法を殆ど喰らって、歪の力を全面に押し出したバケモノを従える。

 フルーフが。


「知ってた」

「そりゃ侵蝕されるよね…」

「なんかごめん───んんっ、気を取り直して。いくよ。遺言書の準備は、できてるかな?」

「まだ!」

「考えたこともないわね!」

「精々足掻きな」

「!」


 爬行する呪いの怪物は、存在するだけで重力場を乱し、光を吸収して、周囲をより黒く、暗黒の領域を広げながら獲物たちを付け狙う。

 触れれば最後、その身体は魂の真の髄まで飲み込まれ、二度と魔力を練れない不要物に成り下がるだろう。

 意図せずして最強のバケモノを生み出したフルーフは、まあなんとかなるやろの精神で後輩にぶつける。大変迷惑極まりない先輩である。

 そして。


「夢想魔法───<マジカル・ドリームライト>!!」


 掴みかかろうと迫る巨人の影から逃げながら、エーテは夢の光を収束させたビームを放つ。相手は、その巨体から想像できる通り愚鈍で、あまり動きは早くなく。

 エーテの極光が、影の胸部を貫く、が。

 まるで吸い込まれるように、黒に飲み込まれたまま光は背中から飛び出てこず。浄化されることもなく、その身に夢の力を飲み込んだ。

 コメットも星魔法で応戦するが、全て飲み込まれた。

 物理無効、特殊技無効。実態のない巨影、映し出された怪物に、またしても苦戦を強いられる。


「なにあれっ!」

「近付いたら圧死、吸収、挙句の果てには技が効かない!理不尽すぎじゃない!」

「───みんなー!たすけてー!!」

「あっ」


 何度か応戦して、どう対処しようか手間取っていると、後方から全力飛行して逃げるデイズが、疾走する列車砲を背に近付いてきた。

 脳内会議で見捨てて回避を選ぼうとするが、それよりも早くデイズに捕捉され。

 前門の巨影、後門の列車砲に挟まれた。

 勿論、手隙のノワールとブランジェからの攻撃も絶えず襲ってきている。

 絶叫と噴煙を撒き散らし、砲弾も飛ばして近付いてくる列車砲にもどう対処すべきか。そう皆で頭を悩ませながら戦っていると。


「がーんばれー!ってことで、ここは不利な後輩ちゃんを応援したいと思いまーす!これ以上放置してたら、馬鹿共主催の理不尽パレードが始まっちゃうからね。もう少しは後輩ちゃんたちのこと考えたら?」

「負けたらテメェの責任だからなー!オロロロロ…」

「いや勝っちゃダメじゃん。趣旨忘れすぎか?あたししかマトモなのいない感じ?」


───歌魔法<ハピネスライブ>


 あまりの暴挙に見ていられなくなったマーチが、仲間に反旗を翻して加勢。というよりも、エーテたちに歌魔法でバフをかけてあげるだけだが。

 それだけでもマシになったのか、エーテは笑顔でお礼を告げる。


「ありがとうございます!」

「いいってことよ〜♪ぶっちゃけ、マーチちゃんは戦闘が得意なわけじゃないしね。歌って踊ってアイドルするのが仕事なので」

「そんなんだから死んだんだよ。鍛えなよカス」

「ねぇ仲間が理不尽ー!酷いよぉ〜!!」

「正論なのです」


 ドレス衣装になったアイドル服を着こなして、マーチは先輩風を吹かせようとしたが、フルーフの正論とピッドの同調、その他諸々で遂に撃沈した。

 ふらつくウタユメドームには最早目もくれず、エーテは強化された身体を駆使して砲撃を躱し、思考を巡らせる。

 撃たれた砲弾が影に呑まれて消えていく。

 ピッドの操縦とフルーフの操作で、なんとか正面衝突を回避しているのを見る。


 そもそも───影というからには、何処かに影の大元、本体がある筈で。


 実は既にそれを探していたコメットと共に、目を配る。


「───ッ、ねぇ、あれ!」


 それを真っ先に見つけたのは、列車砲の砲弾を打ち返すとんでも技術を身につけ始めたデイズで。

 指差す先には───巨影の更に上空に浮かぶ、鏡。

 認識阻害で気付けないようになっていたその鏡面には、確かに歪な人の像が映っている。どうやら、その巨大鏡の中に住まう巨人を、現実世界に具現化させているようだ。

 つまり、壊すべきは。


「あれってことね!」

「すごい!よく見つけられたね!?」

「なんかね、飛んでくる砲弾を下から眺めた時に、こう、う〜っすく空が歪んだ?みたいになって!微妙な違和感に気付けたんだよね!」

「すごいっ!!」


 弾丸のあまりの速さに、空間の歪み是正が追いつかず、ほんの一瞬認識阻害が阻害されたらしい。放たれた砲弾の歪みと、魔鏡を隠す歪み。二つの焦点がデイズの視線より重なって、違和感を生じさせたのだ。

 つまり原因は明白。

 目標を見つけて空を飛び、迷いなく突き進む後輩たちをカドックは追う。


「まるでオレ様が悪ぃみたいな!やめろよな!!」

「だからワタシは止めたのです……月お姉様のお城にも、バカスカ撃ち込んで……センパイなんか後でどうなっても知らないのです…」

「そん時は庇えよ!?」

「いやなのですっ!」


 バカスカ撃って影響を予測できなかった彼女が悪い。


「即興の割にはいいのできたと思ったけど……いい感じに弱点が浮き彫りになっちゃったか〜」

「一応、邪魔しよっか」

「しゃあなしだな……おいマーチ!妨害音波でもなんでもいいから少しは敵っぽいことしろっ!!」

「んえ〜?まぁいいけど……あ、これじゃどっちつかずのコウモリ女じゃん!」

「ドンマイ笑」


 後輩よりも早く鏡の前を陣取って、強い言葉を投げ合いながら立ち塞がる。

 そうして放たれるのは、容赦のない強撃。


───歪魔法<タタリビ>

───鏡魔法<ミラードジャマード・ランページ>

───重力魔法<ヘブンズ・トランペッター>

───歌魔法<カオス・リズミック>


 術者以外の運命力を燃料にする青い祟り火。これまでに封印してきた魔法を暴発寸前まで高め、一気に解き放って全てを薙ぎ払う鏡。天の力により星の力場を掌中に収め、圧縮した重力を破壊光線のように放つ破壊砲。音を聞けば勝手に身体が踊り出し、足をもつれさせ、強制的に魔力を体外へ漏出させて無力化する怪音波。

 並の怪人程度ならば掠るだけで殺傷できる魔法の乱舞。四つの殺意に、エーテたちは晒される。

 だが。


「こんな苦境、今まで幾らでもあったわ!」

「乗り越えちゃうもんねー!」


───星魔法<シューティング・ブルースター>

───花魔法<キュア・ドリーミングフラワー>


「負けないっ!」


───夢想魔法<ミラクルハート・カノン>


 城壁のように分厚い魔法の強撃を、青い星撃が一直線に突き進む。魔力を削られ、勢いを削がれながらも、彗星は止まらない。その歩みを支えるように、咲き誇った花々が向かってくる魔法を相殺して、道を作る。

 そして、夢の光が放たれた星に追いつき、ブースターの役割を担って。

 どうしても威力は弱まってしまうが……

 なんとか、攻撃は目標の鏡まで届く。

 しかし座標がズレてしまい、星は魔鏡の中心ではなく、側面に着弾。完璧に壊すことは叶わず、星夢の光は無惨に砕けてしまった。


 だが、傷はつけられた。


「このまま───ッ、きゃあ!?」


 今度は、より多くの魔力で、無限に等しい魔力で魔鏡を破壊しようと、エーテが一歩踏み出した、その時。

 足元が爆発する。


「地雷ッ!」

「追いついたぜ、後輩ィィ!!」


───兵仗魔法<ダンス・ランドマイン>


 透明になっていた魔力地雷が炸裂して、エーテの歩みを妨げる。止まらない列車砲が、カドックとピッドを乗せて後方より強襲する。

 当たれば即死、迷っている暇はなく。

 デイズは、爆破で目を回すエーテを抱えながら、更なる閃きを見せる。


「そうだ!コメちゃん!」

「っ───悪くないわね!やるわよ!エーテッ!さっさと起きなさい!」

「ご、ごめん…」


 以心伝心でやりたいことを告げて、3人は動き出す。


 列車砲、その操縦席に向けて、思いついたデイズは花の魔法を被せて目眩し。視界を遮られて、ピッドはあわあわ戸惑ってしまう。

 ついでに発射台も塞ぐ。


「やーっ!?操縦不能なのです!」

「おいこれじゃ見えねェじゃねェか!撃てねぇ!!いや、ここは直感でぶっぱなす!」

「───それはどうかしらね!」

「なに!?」


 照準を見えない先にぶち込もうとした、その時。

 声高らかに、火を放つ主砲へ向けて、コメットが魔法を叩き込む。発射直前だった主砲は、正面から星を食らったせいで激しく火を噴き。

 爆発する。


「メインウェポンやった!」

「あぁん!?舐めんな!まだサブウェポンが……チィっ!用意周到だなァ!?」

「ふふん!」


 吼えるカドックを先読みして、他の砲台も狙い撃って。馬鹿正直に突き進む列車砲を、ただの鉄の塊にする。無論そこで終わらすことはなく。

 停車を知らない列車砲の下部に回ったデイズが、上手く速度を合わせて。

 列車砲の側面に手を添えたデイズが、進路に介入。

 花魔法でレールに干渉して、上向きにして、目標までの道を整える。


「ふん、りゃぁ!!」

「ッ、まさか!」

「ちょいちょい、自滅路線は不味いって!エーテちゃん、そこどいてー!?」

「無理っ!」


 囮役、諸先輩の魔法の受け止め役をしていたエーテが、漸く思惑に気付いた彼女たちの叫びを無視して、背後から勢いをつけて突っ込んでくる列車砲の道を開ける。

 慌てて妨害するも、加速する列車砲を受け止めることは難しく。


「ブラン!なんとかしろ!」

「いやだよバッカ!傷物になっちゃう!!そんなデカいの受け止めたくないっ!!」

「今更だろ重力仕事しろッ!!」

「自爆じゃんね!?」

「あーっ!?」


 手を伸ばす巨影も、魔法の濁流も、障壁にはならず。


 結界に守られていた魔鏡に、魔法少女を乗せた列車砲が突っ込んだ。


 5人のそれぞれの合体魔法が、爆風と共に崩壊する。


「ヨシ!」

「ナイスよデイズ!」

「ふふーん!」


 存在しない無貌の影も、列車砲も、全てが無に帰した。


「……2人ダウンかな」

「なんまんだぶ…ご冥福をお祈りします…」

「───ゲボァ!!殺すな!クソっ!夜鍋した列車砲が!オレ様たちのロマンがァ〜!!」

「残念なのです…」


 ボロボロで煤に塗れたカドックは、同じように項垂れて悔やむピッドを脇に抱えて生存。まだまだ余裕そうなその表情には、確かに焦りは感じられない。

 横並びになった六花は、下方向で笑う後輩たちを見る。


「機転は十分、気力も最高。足りないのは、なんとかする実力かなぁ?」

「ワタシら相手は兎も角、だけどねー?」

「なら、もうちょい遊ぶか」

「次はもっとデカいの持ってくるのですっ!!」

「そういうわけだ。悪ぃが、もう少し付き合ってくれよ。まだ、あっちも佳境じゃねェからな……おい、あの2人は何処行ったんだ」

「あたし達が空行っちゃったから、邪魔しないように城に戻ってったよ。ライトちゃんがお腹蹴られて叩き込まれる感じで」

「可哀そ」


 もっともっとと、成長の場を望む後輩たちの目に、心が動かないわけもなく。


 両陣営の魔法少女が、遂に決着に臨む。



























































































































































































───そんな甘え、許すわけないのにね。


 戦いは佳境に入る。

 死から蘇った自分たちが、一体誰の支配下にあるのか、忘れたまま。



 次回、絶望


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