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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
人外魔境悪夢決戦

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130/307

117-vs“禍夢”のビル


 リーサルドラゴン。石のような質感の鱗と、強靭な力、龍の躯体を有する(ズット)・アクゥームであり、三銃士、ビルの専用機。

 対ブルーコメット用に調整され、破格の魔力消費により全能感溢れる近接戦闘を可能とした悪夢兵器。

 あの聖剣兵装一機の火力を浴びても、溶けなかった鱗。

 口腔から放たれる魔力熱線は、幾重にもなる魔力障壁を容易く貫くという、試行時点でムーンラピスのお墨付きを得た最高傑作。


 その怪物が齎す破壊を、ブルーコメットは真っ正面から迎え撃つ。


「星魔法───ッ!!」

『何度やったって無駄だぜ?こいつの耐久力は、テメェの火力じゃ貫けねェ!』

【グオオォォォ───!!】

「くっ!」


 石造りの怪竜を駆るビルは、自信満々に吠えながらも、最大限の警戒を常に張り巡らせて相対する。

 今はまだ、ロクに攻撃が通じていないとしても。

 あの魔法少女ならば。

 鉄壁すら飛び越えて、こちらに攻撃を通用させてくる。そんな可能性に溢れているのだから。どれだけ警戒しても足りないぐらいなのだから。


───無双魔法<フィジカル・ギフト>


 その警戒の現れとして、リーサルドラゴンに身体強化の魔法を上乗せ。更に防護を強め、膂力も底上げすることで魔法少女を追い詰める。

 竜尾の薙ぎ払い、叩き付け、拳の殴打に竜頭の頭突き、翼から放つ暴風など、攻撃の嵐がコメットに降り注ぐ。

 その全てに、慈悲や甘さは一ミリたりとも存在しない。


「こんなのっ…なんてこと、ないわ!!」


───星魔法<スターライト・ブレイカー>


 負けん気の星撃が、リーサルドラゴンの眉間に直撃し、その図体を大きく揺らす。脳震盪必須の技であったが……やはり、衝撃は内部まで届かず。

 それどころか、硬い竜皮を貫くこともできずに終わる。

 思ったように攻撃が決まらないことに、コメットは強く歯噛みする。


「くそっ!」

『口が悪ぃぜ?ほぅら、魔法のおかわりだ!!』

【グオオォォォ───!!】


───竜火砲<ドラコニック・バスター>


 口腔から放たれるは、全てを焼き尽くす業火。魔法すら焼滅させる怪竜の炎から、コメットは飛行魔法を駆使して逃げ回る。

 一度目の時点で、障壁は燃え尽きた。二度目の放火には回避を選択する。

 勿論、逃げながら思考を回して───コメットは、ふと思う。


 なんで、星の一撃を、ドラゴン擬きが防げているのか。


 理不尽な思考ではあるが、先の戦いでの経験で星魔法が通用する範囲をよく考えるようになった。今、自分が両足で踏み締めている大地。その根幹である“星”を司る魔法。それが、何故ファンタジーの空想に敗れるのか。

 考えてみれば。

 かつて地上に繁栄した恐竜は、隕石によって死滅したと云われている。氷河期による凍死の意見など、信憑性やら新説などは詳しくないが。

 コメットは思う。

 恐竜も竜。その竜を滅ぼした隕石も、大元を辿れば星。星であるならば、例えファンタジーの領分にいようとも、ドラゴンを狩ることは可能なのではないか。

 “星”という概念を司る魔法ならば、その程度の小細工、簡単なのではないか、と。


 その思考に行き着いた時点で、答えは出たようなもの。


「ふふっ……悪いけど。あなたの威勢は、ここで崩させてもらうわッ!!」

『なにする気か知らねェが……いいぜ、やってみろ!!』


 未だに途切れぬ破壊光線を避け続けながら、コメットは己の魔力を星槍に込める。

 願うは一撃。竜の鱗をも貫く、星の輝き。


 迎え撃つ準備を整えながら、ビルは来たかと目を見開き応戦する。自慢の決戦仕様をどう対処するのかと、興味と期待を綯い交ぜにした想いと共に技を繰り出す。

 ただでやらせるわけがない。

 破壊を、蹂躙を、焼却を。ドーム状の戦闘フィールドを広く使った攻撃でコメットを追い立てる。

 そして、多少の傷はあれど……コメットは、被弾覚悟で空を突き進み、リーサルドラゴンの隙を縫って、その懐に潜り込んで。


「───星魔法<シバシュルーブ・インパクト>!!」


 それは、恐竜全滅説の候補とされる、二種類の衝突体。大昔の逸話になぞり、結合させた名を冠する星の魔法。

 星が有する爆発的な魔力を、破壊力を、解き放つ。

 引き締まった竜の腹。蛇腹状の硬すぎる皮膚に守られたそこへ向けて、星槍を突き刺す。

 今までならば、先端が食い込むこともなかったが。

 逸話になぞらえた星の爆発を推進力に、槍がドラゴンの腹を食い破る。


『なにっ!?』

【オオオオォォォォォォォ───!?】

「ハァーッ!!!」


 勿論、それで終わるわけもなく───内包された星が、星槍を通して、リーサルドラゴンの内部で炸裂する。

 とてつもない衝撃が、空間を震撼させ。

 内部破壊の爆発に、リーサルドラゴンは白目を剥いて。躯体を覆う龍鱗が、内部から弾けて吹き飛び、次々と床や天井に突き刺さって飛散する。

 その破壊規模は一目瞭然。防御の大半を、内からの力でなくしてみせた。


『がっ、ぐぁぁッ!?』

「くっ、ぅ……ふふっ、どうよ!幾ら硬かろうと、私の、魔法少女の星が!負けるわけないのよ!!」

『……くっ、ククっ……あぁ、舐めちゃいねぇさ。だが、誇れッ!こいつは予想外だ!!』

「ッ!?」


 それでも、形勢逆転、とはならず。


 たたらを踏んだリーサルドラゴンは、ビルの操作ですぐ体勢を整えて……咄嗟に距離をとったコメットに、魔法でボロボロの身体を大きく振るう。

 それは、体表面を覆うだけになった、ちぎれかけた鱗を邪魔だと振り払う行為。同時に攻撃へと転じて、飛散した石の龍鱗は弾丸となって星を穿つ。

 コメットの背中に、深々と鱗が突き刺さった。


「ぐぅッ……この、程度ぉ!!」


 苦痛に顔を歪めるが、コメットは止まらない。


「次で、仕舞いよ!」

『ハハッ、いいぜ。全力で迎え撃ってやるよ───さァ、ここが正念場だぜ……見せてやれ、リーサルドラゴン!!全てを破壊しろ!!』

【グオオォォォ───!!】


 宣言と共に、飛距離を稼いでから───星の輝きを纏うコメットは、飛ぶ。

 顎門を開き、口腔を覗かせ、魔力を迸らせるその竜へ。

 

 同じ魔法では芸がない。それに竜を狩るならば、もっと相応しい名前がある。


 イメージするは、竜殺しの星。


「行くわよ───<アスカロン・ジャッジメント>!!」


 青い星の輝きが、暗く閉ざされた世界を力強く照らす。目を閉じざるを得ない極光に、ビルは舌打ちを打つが……しっかりとリーサルドラゴンを操作して、迎え撃つ大技を準備する。

 竜火砲をより強く。竜の躯体が砕ける程の圧力が響き、空間は振動する。捨て身で此方に突っ込むコメットごと、強大な魔法を焼き付くさんと。

 溜められた力は、一気に放出され。

 世界が紅く染め上がる。


『やれェ!!』

【グオオォォォ───ッ!!!】


───竜火砲<ファイナルドラゴン・ノヴァ>


 リーサルドラゴンの命、内包するユメエネルギー全てを注ぎ込んだ業火が、正面から来る星槍を焼く。

 真っ向勝負、その熱気にコメットは怯まない。

 恐れない。

 幾ら肌が焼けようと、コスチュームが灰になろうと……突き進む。


 身を焼かれながらの愚直な前進は、実を結び。


「無駄よッ!!」


 ブルーコメットの星撃が、火砲を放つ口腔まで届いて。本能的に逃げようとするリーサルドラゴンの全て、口から胴体までを貫いて。

 破壊する。


【グオオォォォ───ッ!?】


 身体が焼ける。

 内側が破裂する。

 全てが終わる。


 星槍が全てを貫き終わり、床を大きく転がるコメットの痛む視界に、最後の咆哮を上げて倒れるリーサルドラゴンが映る。


「ッ、ハッ!ざまぁないわね!!」


 勝気に吠えたコメットは、握り拳を作って天に掲げる。竜殺しとなった自分を称えるように、星の魔法少女としてまた一段と成長した自分を褒めるように。

 ……その高揚感は、すぐに警戒へ塗り潰されるが。


「───無双魔法<ウェポーナイズ>」


 触れたモノを武器に作り替える、三銃士の魔法の詠唱が響き渡る。


「執拗いわね…!」

「おいおい、ひでぇこと言うなよ……戦いは、まだまだ、これからだろう?」


 爆煙の中から現れる、無傷のビル。その手には、灰色の武骨な両手剣。あまりに大きな、そして見覚えのある色の魔法武器を、ビルは片手で持って肩に置く。

 表面を覆う石の鱗に、柄にある煌めくひび割れた宝石。

 大剣を構成するそれらは、コメットが討伐したばかりのリーサルドラゴンのモノ。


「……そういえば、アクゥームも武器化できたわね」


 破壊された道具の再利用。破壊の竜剣を持ったビルに、傷をある程度治したコメットが槍を構える。

 ここからは、純粋な武技の見せ所。

 鍛え上げた腕前を披露し合い、傷つけ合い、技をもって勝利を掴む死合。


「アリスメアー三銃士、“禍夢”のビル───いざ、参る」


 悪夢の尖兵が、マッドハッターの懐刀が。正義を憎み、世界を呪った怪物が、躍り出る。

 竜剣の一振りがタイルを叩き割り、空間を震わせる。


「真剣勝負───いざっ!!」


 そうして繰り広げられる、星槍と竜剣の闘舞。お互いに勝負を譲らない、武器と武器のぶつかり合い。鍛えられた武技をもって、相手の命を狙う。

 純粋な暴力の押し付け合いは加速する。


「テメェの正義はこんなもんか!?エェ?」

「こんのっ、程度で!決め付けるのは、早計っ、よっ!!うっ、らぁッ!!」

「ふんっ!」

「っ!」


 正義を問う。

 かつて、正義を見失ったビルが、血濡れた道を強いられ辿ったように。確固たる正義の核を持たぬ者は、外からの干渉で意図も容易く瓦解する。

 如何にその命を賭そうと覚悟していようと。

 こころなき彼らは、形を見失わせ、狂わせ、都合のいい駒に仕立て上げる。


 その忌まわしき血の正義の雁字搦めから、ビルは未だ、解放されていない。


「テメェの正義は、なんだ!?」


 ここは、それを吐露する最後の場。果たして、目の前の魔法少女の正義は、どれほどのモノか。

 他者からの押し付けか、自分で名付けたモノなのか。


「私の、正義……」

「考えてもいいぜ?勿論、斬り合いながら、なァ!!」

「くっ…」


 ブルーコメット。空梅雨蒼生の始まりは、春の長閑さが色濃く残っている時期に、突然ほまるん……後に先輩だと正体を知った伝説に、勧誘されたこと。

 当時は突然のことだったが……困っている人を、それも親友が苦しんでいると知って、即座に飛びついたが。

 今思えば。

 確かに、そこに自分の意思は介在していなかった。否、薄かったと言える。


 それでも。


 その時、いや、それから。自分はどう思ったか。どう、魔法少女として頑張ると決めたのか。

 懐古する。

 想起する。


「そう、ね。私の正義は───尊重、かしら」


 価値あるもの、尊いものとして大切に扱う、その尊重。それを正義と定義したコメットは、今まで繰り広げてきた戦いを、その過程を、思い返す。

 苦しくて、時には吐きそうになって、今に至る全てを。


「ほう?続けろ」

「今まで、色んなことがあった。ほとんどが、あんたたち悪夢との戦いばっかだったけど……その全てが、私たちの想いと、あんたたちの想いのぶつかり合いだった。到底、手を取り合えない、そんなのはかりだった」

「確かにな」


 前向きに今を望む魔法少女と、悪夢を理想とする彼ら。その激突は、一向に終わりを見せない。意見の対立、一切擦り合わせることもなく、ぶつかり合ってきた。

 同調することも、そうだと理解し合うこともなかった。


 だが。


「アリスメアーの想いも、私たち魔法少女の想いも、その全てを尊重して。大切にして、大事に思って……お互いに意見をぶつけ合って、それを形にすること。それが、私の考える、正義の形……かしら」

「対話を必須とし、心を通じ合わせると。悪くはねェな」

「そう?」


 かつてのアリスメアーとのような、無慈悲な敵だからと対立するのではなく。

 傷つけ合うのではなく。

 対話を望む。ただのぶつかり合いでは、終わりにしてはいけないと。対立したままで終わってはいけない。例え、仲良くなれずとも。わかり合うことは、理解し合うことは必須であると。


 魔法少女として成長を重ねて、ブルーコメットは時分の正義をそう結論付ける。


「甘ちゃんめ」

「知ってるわ」


 笑うビルに、嘲りはない。そういった、真っ当な正義は正しく肯定する。

 とはいえ。


「共感はできねェがな!!」


 敵は敵。自己を貫き通すのに、理解も共感も必要ない。全うすべきは命令のみ。例え横道に逸れても、道を誤って背いても。最終的に使命を果たすのが、ビルの正義。

 血に塗れようとも、成し遂げる。

 邪道だろうと、もう関係ない。ビルの定めた形は、そうなのだと決定付けられた。


 故に、真っ向から。その正義を打ち破り、拒み、自身の正義を貫くのみ。


「答えはないでしょうに!」

「そうだなァ!そこに固執するなんざ、バカなヤツらさ!そして、俺はその一握りのバカだ。正義がどうだの無理に考え過ぎて、とち狂ったバカさ!」

「狂ってるようには、見えないけど!?」

「そうか!そいつァよかった!安心したぜ……それなら、まだ狂える余地がある!」

「ッ!」


 悪に徹しろ。教義に反せよ。悪に堕ち、己を貫け。


 いつだって、だれかの思うがままに振り回されてきた。いつしか嫌気が差して、自分を捨てて。自暴自棄になって我武者羅に走って。

 自業自得で死にかけて、救われて。

 そこで得た一時の安寧が、心地よくて、暖かくて。逆に胸が苦しくなった。


 だから、組織の汚れ役となって、帽子屋に加担した。


 若かりし頃に掲げた正義は形を失い。残ったのは、ただ破滅に突き進む伽藍堂。


 悪夢に荒んだ心を呑まれて、穢れてしまった無頼漢。


「そう、それが…あんたの心の闇、ってやつね……なら、この私が、受け止めてあげるわ!!」

「余計なお世話だな!無意味ってのを証明してやるッ!」


 希望を信じられなくなった心に、少しでも届くように。ブルーコメットは駆ける。竜剣をいなし、防ぎ、自分から責め立てて。

 最初はビルに押されていたのに、いつしか。

 戦場で成長するコメットが、暴れるビルの剣戟を完璧に読み始める。


「くっ」

「あんたの、自分の絶望を他人に押し付けないところは、素直に尊敬するわ!でも!そうやってグジグジ苦しんでるとこを見せて、それを平気だって吠えてんのは……正直、癪に障るのよ!!気に食わないわ!!」

「ッ、減らず口をッ…!」

「悪いけど、喋るわよ!今は、私が言いたいこと、延々と喋らせてもらうわ!」

「なっ!?」


 声高らかに叫んで───コメットの槍が、ビルの剣を、大きく弾き飛ばす。

 武器を手放したビルが、次策を打つよりも前に。


 コメットが、ビルを押し倒し。勢いよく、その背を床に叩きつける。


「ガッ───!?」

「あんた、自分がいつもどんな顔してるか……この私が、第三者の目線で教えてあげるわ」

「あん?何を言って…」


 目線を合わせて、至近距離で見下ろす。そうして、己の所感を告げる。


「いつも顰めっ面で、仕事人で……アリスメアーとしての職務を全うしてる。私たちと戦ってる時は、本当にいつも楽しそうだった」

「……そりゃ、殺り合うのは嫌いじゃねぇしな」

「でもね」


 その後に続く台詞に、ビルは言葉を失う。


「あんたが仲間を……三銃士の2人を見てる時は、特に。とっても、やさしい顔してるのよ」

「……は?」


 最初は驚いたのだ。あんなに好戦的な男が、あそこまでやわらかい表情ができるものなのかと。それだけ、ビルにとって、あの空間が……新たな同胞の存在が、大切なモノなのかが。コメットにはわかってしまった。

 最悪なのは、本人がそれを自覚していないこと。

 彼らの傍にいるのはキツいと、血濡れた手で触れるのは憚られると、距離を取って、逃げていること。仲間たちを信じている癖に、本人に自覚がないこと。

 それが無性に腹立たしい。


「相手からも、信用もされてて、信頼もされてるのに……あんたは気付いてない。あいつらに、先輩に、相談とかはしたことあるわけ?」

「……基本、互いに不干渉を貫いてるからな。過去とか、経歴とかは教え合ってねェ」

「なら、この戦いが終わったら、しなさい」

「はァ?」


 そう言ってから、コメットはビルの身体から離れて……また武器を取れと催促する。

 まだ、戦いは。2人の真剣勝負の一騎討ちは、終わっていないのだから。

 わけもわからぬまま、困惑するビルはそれに従う。

 竜剣を拾って、感触を確かめて。今、言われた言葉を。濁った脳裏に反芻する。


「……心を許してる、か」


 そうなのだろうか。自分では、もうわからない。


 迷走しているビルは、思わぬ方向から突き刺さった棘に頭を悩ませる。

 甘ったれた感情が、まだ自分にあることに驚く。

 職務の為に手に入れた演技だと。仮初のそれだと、己は思っていたが故に。


 だが……会敵した相手の言い分を、受け入れてみるのも悪くないと思えて。本当にそうなのか、確かめてみるのもまた一興。

 何処か上から目線に、そう思う。


「意外とね、話せば人間、楽になるものよ」

「……そうかよ。まぁ、前向きに……テメェに負けたら、そうしてやるよッ!」

「ふんっ!」


 これが最後だと。一騎討ちを申し込み、矛を構える。


「アクゥームみたいに浄化しちゃって、消しすぎたら……ごめんなさいね」

「本末転倒じゃねェか。なら、殺しても許してくれよ」

「いやよ」


 最後まで軽口を叩きあって、駆け出す。


───星魔法<ブルー・シューティングスター>


───無双魔法<ジャスティス・ブレイカー>


 星槍と竜剣の激突が、暫しの拮抗の末……どちらかを、大きく吹き飛ばす。壁に身体を強く叩き付けて、血反吐を吐き捨てて。

 それでも、何処か、顔は晴れやかで。


「あぁ、悪かァ…ねェな」


 戦いの結末が、どうなったかは───殊更、語るまでもないだろう。


 多少なりとも、心の闇は、晴れたのだから。


───“彗星”のブルーコメットvs“禍夢”のビル

 勝者、ブルーコメット。


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次で3人は終わりかー
二連敗! 子猫は状況を好転させるか、 それとも三連敗か、明日が楽しみだ
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