95-月と太陽、二年ぶりの公式コラボ配信
「みんなー!やっほやっほ!みんなの太陽、どっか行ったお天道様の代わりに世界を照らす、最強無敵の魔法少女!リリーライトだよ!!」
「……………ムーンラピス」
「むー」
「……君だけのお月様、悪夢を壊すムーンラピス。はい、これで満足?」
「うん!」
:あびゃぁ
:口上きちゃぁ〜!!
:Foooooooo!!!
:待ってました!
:やったぜ
小っ恥ずかしい……
はいどーも。作った飯食って帰ろうとしたら拉致されて配信させられてる潤空ちゃんだよ。不本意だけど、穂希の無茶ぶりには慣れてるからね。
つーか、ここで1回頷いておかないと、後が面倒い。
配信やろうのラブコールでこっちがもたない。ストレス太りするぞ。
……ちなみに、今の口上を考えたのは勿論穂希である。決して僕ではない。
「今日は啀み合うの抜きで、ラピちゃんとおはなし♡して交流したいと思いまーす!」
「普段やってるじゃん。配信しないで喋ってるじゃん」
「視聴者のみんなにも、証拠として見せなきゃかな、って閃いちゃって」
「いらないよね?」
:いる!
:いるに決まっておりまんがな
:何故いらないと思った
:見せて
:毎日配信しろ
:please!
:いる
「ほら」
「熱狂的すぎて気持ち悪い。新米たちの見ろよ」
「正直、復活した先輩たちにも配信して欲しいんだよね。やってくれたの、あの時の1回だけじゃん。苦情と要求が私のアカウントに来てるんだよね」
「大人気じゃん。故人のアカウントなんて破棄しちゃえばいいのに。てかそれは当人たちに言って?僕別に自制とかさせてないし。あの人たち好き勝手に今遊んでるだけよ?この前ビデオレンタル行って、死んだ後に終わったアニメみんなで見てたよ」
「平和だぁ」
気になっていたのであろう先輩たちの近況を伝えれば、コメント欄は大盛況。まあそりゃそうか。僕だってこれの当事者じゃなければ感情湧かせてたかもだろうし。
気持ちはわかる。
……かといって、この変態たちに同調するのはちょっとやだな。
「で?今日なにするん。なーんにも聞いてないんだけど?教えてよ」
「ふふふ……聞いて驚け!」
「うん」
「───なーんにも考えてない!無計画!そう、これこそリリライクオリティ!!」
「帰るね」
「待ってぇ〜!!!」
「べー」
そうだろうとは思ってたよ……この考え無しめ。少しは信頼させろよ。
そう蹴落とすと、ライトは必死に縋り寄ってくる。
「お願い〜!ゲームでも雑談でも魔法談義でも質問会でもなんでもいーからぁ〜!一緒に配信やろ〜?私たちの超絶仲良し風景見せよ〜?」
「チッ……わかった、わかったから。スカートが落ちる」
「パンツ見せて」
「バカ」
ダメに決まってんだろ。ったく。そんな発言してたら、キモい変態のコメントがうじゃうじゃと……
うわぁ…
:ktkr
:最強のチラリズムを求む
:カメラ寄れ
:じーっ
:じーっ
「……知ってると思うけど、コメント打つアカウントって特別仕様だから、持ち主の年齢性別わかるんだよねぇ……今ここで呟いたヤツ全員の曝露してやろうか」
「やめようねそれは。私が悪かったから。ごめんちゃい」
「ふざけてんの?それじゃあ宣言通り……は?おいなんで女性率高いんだよバカか???」
「ウケるw」
このアカウント共知ってるぞ、二年前から張り付いてた変態コメ職人たちだ。なんだ女しかいねぇのか……やっぱおかしいよこの世界。
同性に対しての容赦が無さすぎる。
:いや、流石にセクハラじゃん
:設定持ちの絵なら兎も角、ガチJKはちょっと…
:犯罪臭がすごいので
:ごめん全然配慮になってなかった
:許してくれ
男性視聴者の紳士っぷりを見ろよ。一部の考え無しも、ちゃーんと改める心の持ち主ばかりなんだぞ。……女の子相手に、かっこいいとこ見せたいバカの集まりの可能性も否定できないけど。
ライトの過激発言(意味深)で沸き立つコメント……もう無視するしかないなこれ。
わかりきってたことだけども。
そう軽く決意して、ライトが持ってきた最新ゲーム機を手に取る。
「バトろ」
「いーよ。キャラは自由?」
「もちろん!」
:きちゃぁ
:ブレイクブシスターズきちゃー!!
:定番よな!
:女の子がボコボコに殴り合いゲーム!?
:キャラボイスとダメージ音がすっげぇ過激すぎて18禁の仲間入りしかけたゲームじゃねぇか
:子供もいるんですよ!
:見なきゃいいだろ
:喧嘩すな
起動されたのは、みんなだいすきブレイクシスターズ。アニメや大手ゲームの女子キャラクターのみを集めた……ちょっとニッチなバトロワゲームだ。
コメント欄の通り、かなり際どいけど、大丈夫。
魔法少女の配信サイトに、そーゆー制約とかないから。普通の動画サイトだとアウトなことでも、うちのサイトは平気なものばかり。
まあ魔法少女が死ぬ瞬間も、一般人の死体とか後一歩で死んじゃう瞬間とかも映しちゃうから……こればっかりは仕方ないね。
お得意のキャラクター……ハート尻尾の電気こねずみを選択する。
「なんでそいつなの」
「復帰つよつよじゃん。一撃も強いし」
「負けないもんね」
ライトが選んだのはステファニーという、四角い世界のなんでもできる女主人公だ。強さランキングではかなりの高得点を叩き出した総合的つよつよキャラだ。
やれる幅も広いしね。確かに強い。でも負けない。
ブロック積んで妨害、投げつける、斧ぶんぶん、金床の雨降らし……
邪魔だな。
こっちは体当たりと電撃と尻尾斬りだけで勝ってやる。
:悲鳴厨の出番ないなった
:無言とケモノじゃねぇーか!
:スタンバってました
:ここはあなたの居場所じゃないのよ
:森におかえり
:辛辣で草
:帰れ
「おりゃおりゃおりゃー!」
「その程度で……はめ技使えると思うな!」
「ぐへぇ!?ッ、まだまだー!!」
「このっ!?」
「ふふっ……あれぇ!?」
「バカめ」
はい画面外〜。このまま三回落としてゲームセットだ。
ちなみにゲームの腕前は、自称だけどそれなりに上手い自信がある。でも最近……というか、近年になって初めてゲームに触れたチェルシーが、ゲーム方面でもその才能を開花させて勝ちに来るから油断できない。
あの子も大概チートだよな…
勉強もできてゲームもできて、意外と運動もいける……激しめは無理か。でも、咄嗟の動きと柔軟は、目を見張るモノがある。
……抑圧されてなけりゃ、もっと多方面に才能伸ばせてたのかな。
「ねえ、私と遊んでるのに他の女のこと考えるのやめて?嫉妬で刺すよ」
「独占欲つよ〜」
「……ちなみに、誰のこと考えてたの?」
「……チェルシーの毒親ぶっ、ゲフンゲフン、悪夢の底に突き落として正解だったなぁ〜、って」
「殺したな?」
「チガウヨ?」
:やったな
:やったな
:やったな
:やると思ってました
:知ってた速報
チェルシー@三銃士
:ありがとう
:泣
:泣
……あっ、ガチで殺してはないよ?生きてるかどうかは知らんけども。ねぇ知ってる?【悪夢】にずっといると、精神がどうなっちゃうのか。
ユメ計画用に、精神を守る心象障壁は作ってある。
無垢な人間が、幸せな悪夢の中でも生きられるように。でも、なにもしないで生きられる程、悪夢の世界は穏やかではない。
悪夢なんだから当たり前だけど。
……で。チェルシーの行方不明な親御さんは、試験的になにも施さないで悪夢の中に送ってまして。
のびのびと。
もう一年以上、ずっと……なんの対策もせず、心と魂を剥き出しにしたまま。
あの妖精が耐えきれなかったそれを、そこら辺の人間が耐えられると?
なわけないよねぇ。
「大丈夫大丈夫……殺してはいない。監禁罪は適応されるかもだけど」
「どっちにしろなんだよなぁ」
「本当に大丈夫。視聴者のみんなも安心してよ。君たちが夢の中で暮らす暁には、彼らの教訓をしっかり踏まえて、心と魂を完璧に保護する守りを丁寧に張ってあげるから。死んだり狂ったりはないと、この僕が保証しよう」
「……ますます危険な気がして止めなきゃいけない気分になるんだけど?」
「気の所為だにゃ」
「そうかな〜」
:騙されないぞ
:守られてるんなら、別に…
:惑わされちゃダメだ!
:その適当さ、どうにかならんの?
:相変わらずで泣いた
:安心と安全のムラピクオリティ
:できるか
信用の無さに笑った。そりゃそうだわ。ま、こいつらが納得しようが拒否しようが、決定権は僕ら魔法少女にあるわけで。
強行って一番いい言葉だよね。
そう思わん?
「程々にね」
「はいはい……あっ、必殺技!ズルいぞ!!」
「早いもん勝ちだもんね〜!」
「ぐわー!?」
「へへん!」
ちなみに、この後ちゃんと勝った。頑張った。
盤外戦術でこちょこちょされようが、僕が負けるなんて未来はないんだよ!
でも穂希は後で殴る。
【二年ぶりの仲良しアピ】やっぱチョロい闇堕ち幼馴染となんかやる【ラピラトの日常部屋】
最大同時視聴数:約100万人
高評価:いっぱい
低評価:それなり
───配信は終了しました