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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
ユメを喰らうモノ
100/235

87-暗黒に坐す十二の輝き

記念すべき100話目ですが、主人公は出ません。

毎日投稿を欠かさず続け、ここまで夢の物語を紡ぐことができたのは、偏に読者の皆様の応援があってこそ。是非、これからも拙作をよろしくお願いいたします。

では、本編です。

どうぞ。






───暗黒銀河。

 太陽系からは遥か遠くに位置する、異星の生命体たちの特殊な生活圏。“極黒恒星”と呼ばれる皇帝の城を中心に、無理矢理引き寄せられた惑星群が形を成す、宇宙国家。

 ユメエネルギーを生の糧に生きる怪物を頂点に、星々に圧政を敷く支配者たちの、銀河最大勢力。

 希望を持った惑星を襲い、支配下に置くか破壊するか。

 その二択のみを強要する彼らは、今日。“皇帝”の御座す魔城に、暗闇より集う。


 世界を脅かす、十二の巨星が。


「地球?だかに送った偵察部隊が全滅、かぁ……いったいなにがあったのやら」

「……あんな辺境に戦える勢力がいるとはな」

「ケッ。負けたヤツらの話なんざすんな。気が滅入る」

「おやや〜?レオード氏、自分の部下も混ざってたのに。そんな淡白な反応でいいんでござるか〜?」

「……黙れニート」

「働いておりますがぁ〜!?」

「うるさいよそこ」

「はい」


 星座が輝く、銀を象った円卓を囲う異星人。多種多様な種族の支配者たちが、一様に座し、新たな侵略地……過去侵攻するのをやめたことだけがわかっている、未開の地についての議論を重ねる。

 異星人、否、全銀河の住民にとって毒である【悪夢】。

 どんな手段を講じようと祓除できない、世界の瑕疵たる悪意に呑まれ、滅んだと思われていた太陽系の有人惑星。

 数百年の時を経て、再びユメの隆起を観測し、調査の為先遣隊を送ったのだが。

 如何なる手段をもってしてか、部隊は全滅。

 徹底的に破壊されたよか、帰還を許された船団はゼロ。支配者たちは、一切の情報も得ることができず───否、地球という辺境に、殲滅を可能とする戦力がいることのみ把握できた。


「事前情報、と言うか……大昔の記録を見る限り、彼ら、地球人は同じ形態のようだね」

「それはまた……仲良くできそうですね」

「出たよ人型至上主義。こんな差別女に好かれるヤツらが不憫でならねェ」

「!? 言われようのない罪に泣きそうなんですが!?」

「事実ではないのかね」

「へァッ!?」

「草」


 会議の場でありながら、好き勝手に口論する……それを咎めるモノはおらず、時間が許す限りの罵倒を繰り返す。真の支配者たる王がいない内は、自由だから。

 獅子の鬣を持つ粗暴な異星人。

 後ろ髪が蠍の尾になった陰気な異星人。

 天秤を携えた司書の異星人。

 羽衣を纏った美麗な異星人。

 馬の下半身を持つ狙撃手の異星人。

 鎧を着込む牛の異星人。

 総勢12の怪物たちは、円卓に投影された青い星に力拳を叩きつける勢いで、会議を紛糾させる。

 複数の惑星の主であり、王の軍門に下った敗者であり、従属を選択した賢きモノたち。

 だが。胸中を占めるのは、なにも恐怖だけではなく。

 確実に授けられる旨味に、力に、価値に、彼らは心から王への忠誠を誓っている。


 そう、彼らこそ。暗黒銀河最強たる、十二の支配者。


 “暗黒王域の十二将星”───“星喰い”に頭を垂れる、星の絶対者たちだ。


 そして。彼ら十二の怪物を統べる、真の絶対者こそが。


「───会議は進んだか、我が眷属たちよ」


 円卓の間に現る、新たな異形。暗黒星雲を身体に纏い、その身に従える暗黒の王。蛇のような尾を揺らし、悠然と上座を目指す、銀髪の美丈夫。

 彼こそ、彼ら十二将星を従える、暗黒銀河の君臨者。

 紫紺の魔瞳に星を宿し、口腔には宇宙を秘める、この世全ての宇宙から“星喰い”と呼ばれ、恐れられる、あらゆる生命体の頂点。


 星を喰らう皇帝───ニラフクトゥ・オピュークスだ。


「王よ!」

「申し訳ありません」

「よい。辺境の守護者たちは、我々の想定を、我の想定を大きく超えていた」


 指の一振りで生命体を全滅できる星喰いは、他の将星と同じように、正直言って地球の守護者を舐めていた。だがその認識は直ぐに改められた。

 最大限の警戒をもって、ことに当たらねばならないと。

 主の意思を察して、その通りだと頷く将星たち。基本的皇帝に従順な将星たちは、特に異論を挟まない。

 木っ端とはいえ、宇宙全体で見れば強者と言ってもいい戦士たちを送り込んだのにも関わらず、なんの情報も持ち帰って来れなかった。

 由々しき事態だ。


「ククッ、だが……面白い」

「陛下?」

「なに、辺境だと軽んじていたが……どうも、あの星には我を楽しませる未知が潜んでいるようだ」

「それはそれは…」

「めんどくせぇ」

「おぃっ」

「あ?」


 ニラフクトゥにとって、絶対的強者である己に抗う者は総じて面白い、愛でる対象だ。簡単に殺せるが、どれだけ刃向かってくるのか見て楽しむ。

 赤子の手をひねる前に、見て、受けて、感じて。

 そうして全力を出し尽くした塵芥を、無造作に殺すのが彼の流儀だ。見応えのあったモノは無理矢理にでも配下に引き入れるが。


 そうしてニラフクトゥは、くつくつと笑みを零す。


 まだ見ぬ脅威───後に魔法少女と呼ばれる、うら若い子どもの存在に、暗黒銀河の最強たちは議論を重ね。

 部隊を再編成して、再び進撃させることで決定した。


 今度は、幾人かの将星を乗せて、確実な成果を獲得し、星喰いに抗う戦士を探る為に。

 宙からの脅威は、またやってくる。


「あぁ、楽しみだ…」


───地球を守護する小さき命が、全力で此方を血祭りにあげるとも知らずに。








꧁:✦✧✦:꧂








「アリエス」


 王を交えた将星の会議を終え、疲弊した一人の異星人が魔城の廊下を歩く。溜息は全て押し殺して、内心の思いをひた隠しにしながら生きる彼女に、背後から声がかかる。

 一瞬の硬直の後、おずおずと後ろを振り向く。

 彼女───アリエスという異星人を呼んだのは、獅子の鬣を持つ、金色の将星。


 同格である金獅子の支配者───レオードは、いつもの得意気な顔でアリエスに呼びかける。


「な、なんでしょうか…」

「そうビクビクすんな、食いやしねェよ……ククッ、突然悪いな。ちょっとツラ貸せ」

「めっ」


 幻羊一族の頭目であるアリエスにとって、獅子の王たるレオードは危険視すべき格上であり、本能的に恐怖が勝つ将星なのである。

 先祖が元は同じ惑星に住んでいた、分かたれた種族たる彼らだが、その関係は決して良好では無い。

 モフモフの白い髪の毛を逆立たせ、少女は震える。

 草食動物としての本能は消えず……手を掴まれたまま、王者に連行される。


(めぇ〜〜〜!?なん、なんで?なんなのこのライオン、めっちゃ怖いよぉぉぉ)


 悲鳴を心の中で上げながら連れていかれた先は、あまり余人が立ち寄らない、奥まった場所にある銀河城の一室。故郷とは全く違う機会質な真っ白の部屋には、彼女以外の先客がいた。

 入室するレオードと、青ざめた顔で入ったアリエスに、二つの視線が突き刺さる。


「めっ」

「……なんだ、我々だけではなく、アリエス嬢まで貴様の後始末に回すつもりか」

「ハハッ、ひでぇ言い様じゃねェか。えぇ?」

「自覚がないのなら薬草院で治療を受けることをオススメするわ」


 2人を……正確には、レオードを待っていたのは彼らと同格の将星たち。

 ブルネットの体毛を持つ、牛頭の男、タウロス。

 ブルーオーシャンの髪を持ち、身体の一部が聖水である知的な女、メーデリア。

 戦闘力だけの面で言えば、アリエスよりも遥か格上たる将星だ。


「あ、あの?」

「そう焦んなラム肉」

「め、めぇ……やっぱり食べられるんだぁ…」

「脅かすなライオン野郎」

「さっさと話を進めなさいよ」

「ククッ、そう急かすんじゃねェよ。まぁいい。言い争う時間も惜しいからな」


 椅子に座ったレオードは、頬杖をついて、呼んだ将星に命令を下す。


 同格の将星相手にすることではないが……金色の獅子がそれを気にするわけもなく。

 傲慢不遜に、笑う。


「オマエら。本部隊よりも先に───地球に行け」


 会議で決まった決定を覆す、無視する、他人に強要する独断専行。意味のわからない命令を、メーデリアはかなり不機嫌になりながら却下する。

 皇帝の決定の前に、別の行動をするなど。

 決して許されることではない。例え、命が幾つあっても足りない行為だ。


「なにを考えているのですか!!貴方、自分が言っている意味がわかっていて!?」

「レオード、貴様、まさか……」

「ハハッ、そう逸んなよ。無能な偵察共に代わって、俺に情報を寄越せ。それだけで俺にアドバンテージができる。オマエらにだって利はあるだろうよ……別に、皇帝サマもこんなんじゃ怒んねェよ」

「チッ、経験談か。己の不始末を押し付けるなど…」

「うるせェな。タウロス、テメェは俺に貸しがあるだろ。メーデリア、テメェもだ」

「ッ…」


 彼らの失敗は、ただ一つ。上昇志向のあるレオードに、弱みを握らせてしまったこと。


「あ、あの。私は…」

「アリエス。テメェには一番重要な役割をくれてやる……なにせ、テメェの力があれば、皇帝サマにもバレないで、あっちに行けるんだからな」

「! ま、まさか……“夢渡り”をしろと!?」

「その通りだ。なんだ、怖ぇのか?別に、ユメの空間から地球に潜り込んで、情報を掻き集めるだけでいいんだぜ。死にやしねェよ。バレなきゃな」

「めめ…」


 勿論のこと、アリエスは逆らえない。獅子に故郷である母星に破格の経済的支援をしてもらっている以上、ここで断ればどうなるのかは、火を見るよりも明らかである。

 従順でいざるを得ないアリエスは、レオードの強制力に頷くことしかできない。


 同時に、タウロスとメーデリアにも、肯定以外の返事は許されず。


「それじゃあ、頼んだぜ?同胞諸君、健闘を祈る」


 命令だけ残して、後は知らんと退出したレオード。その生意気な後ろ姿に舌打ちと溜息を返して、その場に残った3人は言葉を交わす。

 王様気取りの将星への不満と、強制任務への不快感。

 自分たちの今後がどうなるのか、湧き上がる不安やらを押さえつけて。


「おい、どうする」

「……やるしかないでしょう。事実、レオードの言う通り私たちにもメリットはある……デメリットの方が、大きいでしょうけど」

「………が、頑張らないといけない感じ、ですよね?」

「逆らうのは得策ではない、わね……陛下に報告しても、あのお方は笑って済ますでしょうし」

「めぇ…」


 理不尽な要求にも、今は応えるしかなく。

 各々、準備を済ませてから……獅子に急かされる前に、銀河を飛ぶ。


「業腹だが、準備はできたぞ」

「こちらも同じく」

「そそ、それじゃあ…行きます、よ……!」

「あぁ、宜しく頼む」

「お願いしますね」


 アリエスの魔法で、必要な過程を、邪魔な障害を一通り無視することで。


「───“あなたの夢と、わたしの夢・終わりの果てまで・泡沫の夢を、あなたと共に”」

「夢繋ぎの魔法!私たち3人を、地球まで繋げて!」


 銀河を一つに結ぶ、夢の世界へ───一足先に、3人の将星が降り立った。


敵陣営新キャラです。

ちなみにレオードとアリエスは獣人、獣耳が生えた人間に近しい見た目の異星人です。

完全獣型かは迷った。

でも癖に従った。

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― 新着の感想 ―
血祭り♡
100話おめでとうございます!!! 完全獣型ならギリ倒せそうだったけど、癖によって魔法少女陣営が倒すの躊躇いそうになってそうなのおもろい
全銀河の住民にとって毒である【悪夢】  夢を食う勢力どころか食われる側にとっても毒なんだ……  夢の世界……仕事………あっ(察し)  どれだけ敵が強大に見えてもまったく不安にならない安心感
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