それぞれの優しさ
太いカーラーで巻いた髪を念入りに梳かしオイルで艶を出したフローラは、鼻歌を口遊みながら化粧台に映った自分に微笑む。
長年、母のアナベルに仕えてきた侍女なので若さは足りないが、その腕は確かだ。手際良く仕上げられた装いに満足したフローラは、明るい表情で彼女に声を掛けた。
「リース、私の侍女にならない?」
鏡越しに顰めっ面を向けた侍女は、何も言わずにフローラの脱ぎ捨てたネグリジェを抱えて部屋を出て行った。
「どうせお母様は助からないのだし、今からでも私に仕えた方がリースに取っても得だと思うのに」
フローラに取っては優しさのつもりだった。例え、多少反抗的でも使える人間をそばに置くのは当然のことでもある。
物足りない香水を振り掛け直したフローラは、部屋の窓から花壇を見下ろした。暖かさを増しているのに花壇の花々は、萎れて所々枯れていた。
とても気分がいい。
歪んだ笑みを浮かべたフローラは、数歩歩いてからくるりと回転して部屋の外へと出た。
鼻歌交じり廊下を歩いて階段を下りて行くと、両親の寝室からラムダスが出てくるところだった。
「リリーナ、ふたりが起きたらアリストロメリアの紅茶を用意してくれ。頼んだよ?」
「はい。ラムダス様」
寝室の入り口で声を掛けたラムダスに答えたのは、侍女のリリーナだった。ラムダスは、侍女達を付きっ切りで看病にあたらせている。
(無駄なことなのに)
「おはよう、ラムダス」
「おはよう、フローラ。お父様とお母様に会っていく?ふたりはまだ眠ているけれど‥」
「‥‥」
薄暗い寝室の中に視線を向けるとリリーナと目が合った。態と目を細めたフローラに怯えたようなリリーナは、強張った表情で気不味そうに視線を逸らす。
「いいわ。興味ないもの」
「興味がない?」
「ほら、登校時間に遅れるわよ。急ぎましょう?」
不可解そうに顔を顰めたラムダスを急かして庭に出たフローラは、そこで祖母のフィカスを見掛けて顔を顰める。
辛そうに腰を曲げて日々、萎れた赤いアリストロメリアの花の世話をしているフィカスが、目障りで仕方がない。
「お祖母様っ無理しないでくださいっ」
中腰で作業をしていたフィカスがふらつくので慌てて駆け寄ったラムダスが手を貸す。孫が案じ顔で声を掛けても、強情な彼女は頷くだけだ。花の手入れをやめようとはしない。
「もう枯れた花の手入れなんてしても無駄なだけじゃないっ汚いから早く処分して欲しいわっ」
祖母のフィカスの皺くちゃな手は、日に焼けてしまっている。その手を泥だらけにして花壇の世話をする意味が全く分からなかった。
「フローラっ」
叱り付けるラムダスを無視したフローラは、フィカスの視線を感じながらも馬車に乗り込んだ。暫くフィカスを手伝ったラムダスが、御者のリクシーを手伝う息子のリュークに急かされて馬車の踏み板を踏む。
「どうしたのよっ?」
不機嫌そうな視線を向けてきたラムダスに苛立ったフローラが、口調を強めて問い掛けると対座に腰掛けたラムダスが、鋭い視線を向けてくる。
「さっきの興味がないってどういうこと?」
「お父様とお母様が一度でも私に会いたがったことがあるの?」
「‥‥それは」
言葉に詰まったラムダスが、頼りない表情を浮かべる。しかし、それは肯定なのだ。両親に取ってフローラは、辛い時に会いたい家族ではない。
「ないでしょうっ?なら、会う必要なんてないじゃないっ」
「フローラは心配じゃないの?」
「‥‥」
黙り込んだフローラが、不機嫌なのは察しているようだ。目を伏せたラムダスは、呟くように独り言を口にする。
「‥お姉様は、何処へ行ったんだろう?アルフェルト様と一緒に行方不明になるなんて‥やっぱり駆け落ちなのかな」
「やめてよっ!お姉様なんてどうでもいいじゃないのっまさか、お父様やお母様にもふたりが駆け落ちしたなんて言ったんじゃないでしょうねっ?」
「言うわけないじゃないかっ言えるわけがないよ。いつも周りの人たちのために頑張っていたお姉様が、倒れたお父様とお母様を残して駆け落ちしたなんて知ったらふたりがどう思うかっ」
「アルフェルト様は、駆け落ちなんてしないわよっ!お姉様が唆したのよっお姉様ったら狡賢いんだからっ」
「あのお姉様が唆す?あり得ないよ」
「ラムダスっ!」
「あのお姉様に成人男性を言葉巧みに誘惑して誑かすことなんてこと、できる筈がないだろうっ?」
「少し冷静になれよ」と、頭を抱えて苦言を呈したラムダスから顔を背けたフローラは、苛立つままに窓の外へと視線を向けた。
顔を両手で覆ったラムダスは、苦慮しているようで、それから一言も喋らなかった。
学園に登校したフローラは、自席へ向かう前に窓辺で屯する男子生徒達に声を掛けた。
「おはよう、ルシオ、トーマス、ディビット」
「おはよう、フローラ」
「今日も君は素敵だね」
伯爵家のルシオ・ルフェーブル。子爵家のトーマス・フォクス。男爵家のディビット・レイモン。
ロッテナでは、目立つ成績上位の男子生徒たちであり、それぞれに婚約者がいる。
「ねぇ、ディビット宿題を見てもらえるかしら?」
「いいよ」
「やっぱり頼りになるのねっ」
快諾したディビットの腕に腕を絡めて体を密着させたフローラに非難の視線を向けてくるのは女子生徒達だ。
(ふん、僻んじゃってっ)
「何処が分からないの?」
「あー、最後の問題なんだけど‥」
態と耳に髪をかけて下から覗き込むフローラに優しげに微笑んだディビットは、自分の万能筆を使い解答用紙の空欄にスラスラと書き込んでいく。
ライラック学園では、全ての教科で首席となれれば、万能筆と呼ばれているインクが内蔵された羽筆が貰える。
一一先にインクを付ける羽筆より機能的な万能筆は、珍しい貴重品だ。例え貴族でも学生の身分で持つべきものではない
ディビットは、男爵家だか家が裕福なのだろう。入学祝いとして親から万能筆を贈られたそうだ。
「本当に便利よね」
「‥‥使ってみる?」
「ええっ?良いのっ?なら少し借りるわね」
眉を下げて笑んだディビットから嬉々として万能筆を受け取ったフローラは、そのまま授業を受け続けた。
(ディビットは、お金持ちなのよね)
多くの男子生徒が、手の平を返したようにフローラに親切になった。これには、不機嫌そうな女子生徒たちも黙っているしかない。
あまりの可笑しさに笑いが込み上げてくる。
「ねぇ、ルカ?私、ちょっと困っているんだけど‥」
甘えた声で強請ってみるが、隣の席のルカは知らんぷりだ。これに女子生徒達が、クスクスと笑い出す。顔を真っ赤にしたフローラは、苛立ちのままノートで髪を扇ぐ。香水の匂いが強くなった途端、ルカが咳き込んだ。
「先生、窓を開けてくださいっ」
近くの席の女子生徒が挙手をして発言すると、壇上で教鞭を振るっていた教師が振り向いて、生徒たちの表情を確認した。コツコツとヒールの音を響かせながら窓辺へと近付いた彼女は、教室の窓を全開にしていく。
「香水は控えるように校則に定められています。授業の妨げになるようなら使用禁止になる場合もあります。節度を守ってください」
責めるような女子生徒の視線が、フローラに向けられる。それでもフローラは、髪を扇ぐことをやめなかった。
「貴女、体臭がそんなに気になるの?」
「失礼ですが、入浴していらっしゃらないの?」
昼休みになってトイレで香水を振り掛けていたフローラに声を掛けてきたのは、同じロッテナの女子生徒たちだった。
「女性の嗜みじゃないかしら?」
嫌味の相手をしている暇はない。肩にかかる髪を振り払って背を向けた。そんなフローラに襲い掛かってきたのは、個室から出てきた女子生徒だった。
フローラの髪を掴んで乱暴に引っ張った女子生徒の手には、金色に輝く鋏が握られていた。
振り向いたフローラと目が合った女子生徒の顔は、涙で濡れている。
「ルシオを返してよっ!」
床に倒れ込んだフローラの髪を引っ張りながら、金色の鋏で髪を切り出した女子生徒は、ルシオ・ルフェーブルの婚約者、ハミング・フルールだ。
「きゃあーっ!やめてっルシオっ助けてっ!」
傍観している女子生徒達が、止めに入る様子はない。フローラは、叩くようにハミングの顔を片手で払う。ハミングの手が離れた瞬間に這うようにして距離を取ったフローラは、ふらつく足で立ち上がり愕然とする。床には、金の髪が無惨に散らかっている。
「あんたっなんてことするのよっ!」
「好い様ねっ」
狂った人のような表情を浮かべて口角を上げたハミングから逃げるようにドアを開けて洗面台へと向かったフローラは、鏡に映った自分の姿に悲鳴を上げた。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!」
「フローラっ?どうしたの?」
廊下を通り過ぎようとしたルシオ達が、こちらに視線を向けて目を丸くした。
「ルシオっハミングがっ貴方の婚約者が私を虐めるのっ突然、襲い掛かって来て私の髪を切ったのよっ」
トイレのドアから出てきた女子生徒たちの中にハミング・フルールはいた。恨めしげな表情を向けている彼女に見せ付けるようにフローラは、ルシオに抱き付いた。
「怖いわっ助けてっ!」
「ハミングっ本当に君がやったのかっ?」
「もう、止しなよ。フルールさんを追い詰めたのは君たちじゃないか」
口を挟んだのは無関係なルカだった。
「追い詰めるだって?」
当惑顔のルシオに呆れたような溜息を吐いたルカは、ハミングの手首を掴んで歩き出す。
「何処に行くのよっ!」
凶悪なハミング・フルールを満足に懲らしめられていない状況では、納得できない。フローラは、怒鳴るように呼び止めた。しかし、落ち着いた素振りで振り向いたルカは、責めるような視線を向けてきた。
「君たちには彼女の怪我が見えていないの?」
ルカの言葉に視線を向けてみるとハミングは、不自然に手を抱えていた。押さえられた手に巻かれたハンカチには、赤い染みが浮かんでいる。
「だから何よっ!」
自分で鋏を振り回し勝手に怪我をして同情を引こうとするのは狡いやり方だ。しがみ付くようなフローラの手を払い除けたルシオを見上げると、案じ顔を向けていた。
「ハミングっ大丈夫っ?」
自分を残して負傷した婚約者を追いかけて行くルシオに苛立ち舌打ちをしたフローラは、逆方向に向かって歩き出した。
「ハミング・フルールを本日付けで退学処分にしてくださいっ」
学園の職員で担任教師に事情を説明したフローラに多くの視線が集まる。そんな中で彼女は、椅子に座ったまま顔だけをフローラに向けていた。
「事情は分かりました。けれどね、プリムスさん。貴女の日頃の生活態度にも問題があります。フルールさんに謝罪して和解する方が得策ではないかしら?」
「どうして私が謝罪するんですかっ?」
「貴女が貴族なら分かることではありませんか?フルールさんは、蟠りを残したままルシオ・ルフェーブルと結婚し生活を維持しなければいけないのですよ?」
だから何だと言うのだ。蟠りを作った原因がフローラにあるから、一方的に髪を切られても文句は言うなと言うのだろうか。もし、一歩間違えれば怪我をしていたのはハミングでなくフローラだった可能性もある。手ではなく顔や目を負傷したのなら一生消えない傷になるかもしれない。
「学園は、公平な判断をしてくださいっ私は危害を加えられました。到底、許すことはできませんっ」
「では、フルール家と話し合いをしてください」
(お父様もお母様も倒れてしまったと知っている筈なのにっ)
今朝のこともある。祖母のフィカスが動いてくれるとは思えない。涙を浮かべたフローラは、職員室を飛び出して裏庭へと向かった。
「カエサルっ!」
人気のない裏庭で声を張り上げると、背後から草を踏む人の気配がした。期待して振り向く。しかし、そんなフローラのもとに近付いてきたのは、平民のルカだった。彼の相貌は冷ややかだ。黒い髪にルビーのように赤い目をしたルカは、一見地味な印象を与えやすい。洒落っ気がないのだ。でも、長い前髪で隠れた顔は整えている。綺麗な顔立ちをしている人は、表情がないと少し怖い。
「なんで‥」
「フルールさんに謝罪をするべきだと思うよ?」
「はあっ?」
「これは氷山の一角だよ。君の所為で傷付いた女子生徒は沢山いる。今、謝罪しないと大変なことになるよ?」
苛立ちのままベストを脱ぎ捨てたフローラは、ブラウスのボタンを外して谷間を晒す。
「いい?私の言う通りにして?」
小首を傾げ甘く強請るように囁くとルカの表情が苦痛に歪んだ。
「私を守って‥ルカ?」
一歩二歩と後退するルカを追い詰めるように距離を詰めていく。両手を伸ばしルカの頬を掴んだフローラは、口付けをする。体勢を崩しなからも抵抗するルカを何とか押さえ込んだ。
「私は綺麗でしょうっ?」
「君は‥‥綺麗だ」
その場に崩れるように膝を突いたルカを胸で抱き締めるようにして支え続けた。
「そう‥それでいいのよ」
目を閉じたルカは眠っているようだった。ルカの耳を両手で塞いだフローラが、顔を上げて見詰める先には、ほくそ笑むカエサルがいた。
薄ら笑いを浮かべるカエサルに剥れた表情を向けたフローラは、文句を言うように尋ねてみる。
「あれは合図のつもり?」
「ああ、これですか?」
自分の唇を人差し指で突いて見せたカエサルに眉を潜めたフローラは、規則正しい呼吸を繰り返すルカに視線を下げる。
「どうしてルカには、香水が効かないの?」
「効いているではありませんか?」
「分かっているでしょう?」
「何度も説明しました。個体差です。染まりやすい染まり難いがあるものなのです」
また、自身の唇を指先で突いたカエサルが不敵に笑む。
「術師との濃密な接触をした彼は、これから貴方の言いなりでしょう」
「アルフェルト様にも効くのよね?」
「そうですね‥‥どうでしょう?彼は頑固そうなので‥。しかし、効果はある筈です」
「お姉様は絶望するわね。ふふふ、楽しみね」
アルフェルト・レガーを諦め切れないフローラは、自分の魂を懸けてカエサルに心を操る詛呪の伝授を頼んだのだ。
フローラの邪悪な企みなど知らないアルメリアは、ラブリエ王国から連れ出したロレッタの心配をしていた。不安なのだろう。彼女は、食が細く夜も満足に眠れていないようだった。
そんなロレッタを気に掛けてアルメリアたちは、代わる代わる声を掛け続けた。
ラブリエ王国からロレッタを連れてレグザ王国に戻ったアルメリアたちは、宮殿に到着すると直ぐ様国王陛下に謁見を申し出た。けれど、謁見の許可は下りず、対応に当たってくれたのは、宰相のシリウス・レイスターであった。詳しい事情を聞いた彼は、ロレッタをレグザで保護することを約束してくれたのだ。
不遇なロレッタの境遇に心を痛めた天音秀事アスレットの提案で一時的にリズリーの侍女としてアデレード家で働くことが決まった。なので、離れることに不安はない。
「頑張ってね、ロレッタ」
「‥‥あの、私」
勇気づけるように別れの挨拶をしてもロレッタの表情は、不安そうである。口籠るロレッタの肩に手を添えたのはリズリーだ。
「何も心配要らないよ。俺たちもステファニアへ向かうからな?」
白い歯を見せて笑んだリズリーの言葉の意味が分からない。
「へ?」
「ルーカスお兄様が謁見を許さなかったのは、ステファニアで王太子決定が遅れている原因を突き止めるために、出航の準備を進めているからなんです」
「ええっ?」
「ソーマお兄様が、宰相のシリウスとレグザに残るので大丈夫ですよ?」
「待ってっシリウスは、ソーマ様を支持する派閥に属していた人よっ?」
片腕を負傷していないシリウスは、ルーカスに命を助けられていない。そんな彼が改心しているのかは、見落としてはいけない懸念材料だ。
(反逆とか乗っ取りとかありそうよねっ?)
現国王ルーカスの不在時を狙って攻撃を仕掛けてくる可能性がある以上賛成できない。
「ソーマお兄様に国を纏める意志はありません」
「シリウスは、こいつを贔屓してんだよ」
「え?天音くんを?」
「話せば長くなるのですが、僕は転生者なので、未来を予測して動くことができました。なので、シリウスが謀反を企むことも予期できたのです。そんな彼に思い直すように説得しました」
「ソーマお兄様が、将来国王になりたくないと言ったらどうするんですか?その時は、シリウスが国王陛下になるのですか?ルーカスお兄様は、国を家族を必ず守ってくださる方ですって食い下がったらしいんよ。そんで、ルーカスが執権し統治する未来を語った訳。そしたらおお〜我が主人よって」
大雑把な説明を終えて「なっ?」と、尋ねてきた與田理人事リズリーに天音秀事アスレットが眉を下げて微笑んだ。
「正確には小さな聖人だって言ったんです」
ふたりの話を複合すれば「私の小さな聖人」と、ルーカスは膝を折ったのだろう。
(成る程ね、シリウスが謀反に加担するのは、アスレットが小さな頃だったから、前世では何もできなかったけど‥天音くんがレグザにいたことでシリウスは罪を犯さずに済んだのね)
「なら、安心だな。御主人様が、不在の時にレグザを焼け野原にする訳にはいかないだろうからな」
冷やかすように言ったアスレット事アルフェルトの言葉には、説得力がある。真面目なシリウスは、何としても主人の帰る国を守る筈だ。
(だから、シリウスは私たちを警戒していたのね)
大切な主人を入れ替えられては堪らないだろう。主人を害する相手に容赦なく牙を向けるシリウスは、優しく穏やかな気質をしている天音秀事アスレットに日々気を揉んでいそうだ。シリウスが神経質になるのは致し方ないと言えるだろう。
「シリウスは優しい人ですよ」
『‥‥‥』
優しげに微笑んだ天音秀事アスレット言葉に皆が揃って言葉を失い渋い顔をしてしまう。
「兎に角、もう一度船に乗り込みましょう?」
気不味そうにしたクレマチスが、背を向け馬車に向かって歩き出す。
「また、後でね?」
「気を付けろよっ?」
見送りに出てくれた天音秀事アスレットと與田理人事リズリーに手を振って宮殿の庭園で別れたアルメリアもアスレットと一緒に馬車に乗り込んだ。