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十三、感情と想いと理性と告白

「すう、はあ…」


「旦那様、緊張しすぎですわ」


「そ、そう言われても…」


「大丈夫ですわ!私は、何がどうなろうとも旦那様のおそばにずっとおりますわ♪」


 そう言って、にっこり微笑むソリュ。天使ですね、ええ。で、何をしているのかと言うと、これからリルに告白しようとしているところなのです!


 え?何でソリュを連れているのかって?いや…俺が逃げちゃいそうだから支えてくれるそうです…本当に出来た娘ですね!!


「よし!いくぞ!!」


「頑張って下さいですわ、旦那様!」


 俺は頷いてから、リルの待っている部屋へと入った。




「・・・いい加減、話を始めてもらえませんか?」


「う、うん…そうだな」


 ダメでした!!すぐに話そうと思ったんだよ?しかし、中々言葉が出てこないんだ!!ふざけた感じだといくらでも言えそうなのに、真面目なアイラブユーが言えないんです!!さすがのソリュも、部屋に入ってからは表立った言動は出来ないようで、目で応援するだけに留まっております。いや、それだけでもありがたいんだけど…


 俺は、深呼吸してリルと正面から向き合った。因みに、何度の目のチャレンジか分からないほど失敗してます。くっ!いい加減にしろ!男だろ!!


「す、好きです!結婚して下さい!!」


「え!?」


 おお、リルが珍しく目を見開いて驚いているぞ!?それはそれで可愛い…って、何で驚いているの!?リルの事だから、悟ってると思っていたんだけど!?しかし、何度も失敗していたのに出る時はあっけないもんだな。


 ちらりとソリュを見ると、両手を組んで目がキラキラしていた…うん、羨ましそうにリルを見ているだけですね。


 視線をリルに戻すと、明らかに狼狽していた。


「ほ、本気ですか?」


「本気だ!俺の妻になって欲しい!!」


 思わず、前のめりになってリルの手を包むように掴んでしまった。いや、この場合は仕方ないだろ!押すしかないんだ!!


「わ、私は従者ですし…その…」


「関係ない!」


「そばかすもあって可愛くないですし…」


「何言っているんだ?そばかすも君のチャームポイントだろう!?俺は、リルと出会ったその日からドギマギされっぱなしだったんだぞ!君が良いんだ!君だから良いんだ!!」


「で、でも…私みたいな平凡な者が、第二夫人とは言え、八重真様のような将来有望な探索者の妻になると言うのは…」


「え?リルには第一夫人になってもらうつもりなんだけど?」


「え?ええっ!?ソリューネ様がいるではありませんか!?」


「そ、ソリュは第二夫人でも良いって…」


 ちらりとソリュの方を見れば、大きく頷いていた。気のせいだと思いたいが、早く終わらせて私にも告白して下さいと目で訴えて来ている気がした。き、気のせいだな、多分…


「そ、それは余計に問題が」


「俺は本当にリルにそばにいて欲しいんだ!頼む!!俺と一緒になってくれ!!!」


「で、ですが…その…」


 段々と弱くなってきた気がする!もう一押しか!!しかし、これ以上ないほどリルの顔が近い!!キスしてしまいそうだぞ!?何て考えたのがいけなかったのかもしれない。


「手が滑りましたわ♪」


「「!?」」


 何と言う事でしょう!?ソリュに押されて、リルの唇と俺の唇がくっついてしまいました!!これ・・・キスですよねえ!!?!?


 お互いに驚いた表情で固まる俺たちだったが、離れずにいるとリルの瞳が潤みだし、そのまま目を瞑ってしまった。俺は、覚悟を決めて抱き寄せ、息が続く限りキスを続ける事にした。


 しばらくすると、どちらからともなく離れ、お互いに見つめ合った。そして、その時になってあれ?これ行けるんじゃないか?と遅ればせながら思い立った。


「リル、君を離したくない。俺の妻になって、ずっとそばにいてくれないか?」


「・・・はい、私でよろしければ」


「ありがとう!ぜえったいに幸せにするから!!!」


おおおおおおっしゃあああああああああああああああ!!!!今なら何だって出来そうだぜええ!!ひゃっほおおおおおおおおおおおおいっ!!!!!!


 何て考えながらも、表情には出さないように必至に堪えていた。多分、隠しきれていないとは思うが…


「「・・・」」


 リルと二人で無言で見つめ合う。俺の場合は、正直どうして良いか分かってないだけですが!!え?リルが目を閉じたって事は、もう一度キスをして良い


「ズルいですわ!!次は私の番ですわ!!!」


 訳がなかったよね、うん。いや、ソリュの事を忘れていたわけじゃないよ?乱暴だったけど、きっかけを作ってくれたのはソリュだし、うん。本当に忘れていたわけじゃないんだよ!?


「わ、私とした事が、情に流されてしまう何て…」


 そんなセリフを言いつつも、自分の唇に指を添えながらポーッとしているリル。やばい、抱き締めて良い


「旦那様!!リルばかり見つめすぎですわ!!!」


 訳ないですよね、うん。妻になってくれると言ったのを撤回はしないだろうし、リルとはこれからいくらでもイチャつくチャンスはあるだろうと、無理やり納得した。さすがに、これ以上放置したら色々と尽力してくれたソリュに申し訳がない。


 ソリュと向き合ったが、リルが気になってしまった俺はちらりと視線だけを向けた。


「ソリューネ様との事には、私からは異論などありません。ソリューネ様には感謝しております。本来なら、私は妻になるつもりはなかったのですから…」


 そう言って、視線を逸らすリルは、申し訳ないようなホッとしているような複雑な表情をしていた。その心中を俺なんかが全て分かってやれるはずなどないのだが、全てを知りたいと思ってしまう。意外と、俺って独占欲が強いのかもしれないな。


「リルの許可も出ましたし、私にもお願いしますわ」


 キラキラと期待の籠った瞳で俺を見つめてくるソリュ。うん、真っ直ぐで可愛いよな、本当に。


「ソリュ、君が俺には必要なんだ。二番目になってしまって本当に申し訳ないが、俺の妻になってくれないか?」


「はい、お受けいたします。ずっと、お慕いしておりました」


 いきなり雰囲気が変わったソリュに、え?と思ってしまったが、これが本来の彼女なのだろうか?そんな事を考えているうちに、ソリュも目を閉じた。ここで何故?とか思うほど俺も鈍感ではない。と言うか、分からない奴がいたら驚きだろう。


「ありがとう、ずっとそばにいて欲しい」


 そう告げてから、ソリュともキスをした。しかし、先ほどと同じとはいかなかった。何故から、先ほどはソリュに押されて不意にしたキスだったが、今回は俺からソリュに自分の意志でするキスだったからだ。


 それに起因してか分からないが、俺とソリュの唇が触れる瞬間にあっとリルから小さな声が漏れた。その切ない声にきゅぅっと俺の胸が締め付けられるような感覚を感じてしまった。


 とてつもない罪悪感に襲われたが、今はソリュの事を考えてあげないとソリュに申し訳が立たない。無理やりに、リルの事は追い出し、ソリュとの思い出を思い起こすと同時に、ソリュへの愛しさを感じた。


 それが通じたのかは分からないが、ソリュが離さないとばかりに抱き付いていた手に力を込め出した。俺も、ソリュに負担にならない程度に力を入れ返す。すると、リルとは緊張しすぎて分からなかった事を感じ出してしまった。


 物凄く柔らかい女性の身体と、何とも言えない幸せな香り、そして、包まれるような愛しい体温。


 次第に、俺の身体が熱くなって来る。そして思う、これって何かやばいんじゃないか?徐々に、理性と言う言葉が頭の中を侵食していく。これも、ソリュには失礼になるんじゃないだろうか?そう思った時、長かった口づけが不意に終わり、ソリュが顔を離した。


 しかし、抱きついている手は離れず、俺を見つめてくる。そして


「末永く、お願いしますわ。愛しの旦那様♪」


 そう言い、腰にあった手を俺の首に回してくる。ソリュの表情は、言い表せない妖艶さを秘めていた。見つめ合ってしまった俺は、再び身体が熱くなってソリュの事しか考えられなくなってしまっていた。しかし


「そこまでです!その…ちゃんと式を挙げてからが良いと思うのです、そ、そういった行為は…」


 リルの言葉にハッとなる。完全に飲まれていた!?知りたくなかったが、自分が絶対にハニートラップにやられるタイプだと悟った瞬間だった。


「残念ですわ。リルを本気で怒らせてはのちに響きますし、今回は引いておきますわ」


「そ、そうですか」


 ほっと表情を和らげたリルだった、その後のソリュの言葉でまた崩す事となった。


「最初は、第一夫人のリルと言う訳ですわね」


「そ、そんな事を言っているわけでありましぇ!?」


 慌て過ぎたのだろう、リルがまさかセリフを噛むとは思わなかった。リルは、顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。可愛いな。


「ふふっ、私の時は手加減など要りませんわ」


 そんな事を耳で囁くように言ってから、名残惜しそうに腕を外しソリュは俺から離れた。俺も、ソリュの体温が晴れていくのを名残惜しく感じてしまっている。うん、まだ熱が残っていますね…


「や、八重真様の婚約を祝して今日の晩御飯は豪勢にしましょう!」


 復活したリルは何故かテンション高くそんな事を宣言しだした。ええ?


「いや、リルも祝われる側だと思うんだけど…」


「それはそうですが!私しか料理が出来ないのでお任せ下さい!!」


「は、はい。そうですね…」


「楽しみですわ♪」


 うん、お察しの通り、俺とソリュは料理が壊滅的です。いや、出来ないわけじゃないんだよ?俺が本気出せば!・・・レトルト食品くらいわけないぜ!うん、手料理とか言ったらぶっ飛ばされますね。


「そ、それでは」


「あ!食材が足りないなら買い出しとか」


「いえ、常にこうなるかもしれないと思いまして、多めの備蓄を心掛けておりますので、問題ありません」


「さ、さすがリルだな」


「それでは、しばらくソリューネ様とお待ちください」


「リルにもソリュと呼んでほ良いのですわ」


「え?しかし…」


「これからは、同じ男性を支える者同士ですわ。名の呼び方くらいは近付けても良いと思いますわ」


「…分かりました、ソリュ」


「それで良いのですわ♪」


「で、では」


 照れを隠すようにリルは足早に部屋を出て行った。うーん、俺としては手伝って新婚夫婦みたいなイチャイチャをしてみたいんだが…


「これから、二人でリルに料理を習うのも悪くないかもしれませんわ」


「確かに、それは良いかもな」


 相変わらず、こちらの心を読んでいるような事を言うもんだな…




「ふう、食べ過ぎた…」


 リルが大量に作ってくれた料理を、俺は腹がはち切れんばかりに食べた。いや、俺テンションが可笑しかっただけが原因じゃないんだ!ソリュが俺に食べさせようといつも以上に料理を口元に運んで来たのもあるけど、リルが対抗意識を燃やしてソリュと交互にあーんをして来て…色々な意味で勿体なくて食べ過ぎてしまったのだ!!仕方ないと思いませんか!?


「さて、それでは私は先にお風呂を頂きますわ」


「ん?珍しいな?」


 俺に一緒に入ろうとしていつもリルとひと悶着起こすのにとかは言わない。藪蛇になるのは目に見えているから。


「何やら、リルから真剣な話があるようですわ」


 そう言って、俺にウィンクしたあと部屋を出て行った。


「リル、話って?」


「ええと…ですね…」


 リルにしては歯切れが悪いな?何かあったっけか?俺が、何かあっただろうかと一生懸命にない頭をしぼっていると、リルが結審したように口を開いた。


「その…き、キス何ですが…」


「キス?」


 して欲しいならしますよ!!って、違うか?しかし、キスだけでは確証は得られない。だけども、リルとキスするチャンスかもしれないのだから真剣に考えてみよう!


 まず、今日はリルとしてから、ソリュとも…ん?もしかして、俺とソリュがキスした時に漏らした声が関係している?…可能性は高いな。


 だとすると、俺からソリュにキスした事が原因で声をあげた可能性が高いと思うんだ…と、すると?俺が感じた俺からリルにしてないって事か?…他にないよな?


「俺からキスして欲しい…とか?」


「あ…っ!?」


 またも無意識に漏らしてしまった声だったqのだろう、リルは慌てて口を押えて視線を彷徨わせた。今日は、リルの意外な顔が見れて個人的には幸せだ。これは、俺からいった方が良さそうな流れだな。


 そう思った俺は、リルに近付き肩を掴んだ。


「俺も、ちゃんとリルにもしないとと思ってたんだ。いいんだよな?」


 リルの目を見てしっかりと質問すると、恥ずかしそうにしながらも頷いて見せた。


 それを確認した俺は、リルと二度目のキスをした。二度目は一度目と違って不意打ちじゃなく覚悟を決めてからしたから平気かと思ったが、そんなことはなかった。


 じわじわと身体の芯が熱くなって来る。それと同時に、掴んでいるリルの肩から緊張が伝わって来て、俺のリルに対する愛しさの限界を超えた。


 気が付けば、リルをキスをしたまま抱き締めていた。リルも、恐る恐ると言う感じで抱き返してきている。


 時間にすれば、僅かなのだろうが、俺の芯はどんどんと熱さを増していった。リルの体温や、柔らかさやなどが全て愛おしくなっていき、このままでは自分を制御出来ないかもしれない!と、理性を総動員しようとしたところで


「まさか、舌の根が乾かぬうちになんて事はありませんわよね?」


 俺とリルは、同時にビクッとなって声の主、ソリュの方を見た。うん、すっごくにやけております。


「ふ、風呂に行ったんじゃなかったのか?」


「意外と押しに弱そうなリルが、自分の発言を撤回するような事態になったらまずいと思って様子を見る事にしたのですわ」


 と言っているソリュだが、そのにやけ顔を見るに、絶対にリルを揶揄うためなのは明白だった。俺は、空気を入れ替えるために冗談でも言う事にした。


「それなら、このまま3人で風呂にでも入るか?」


 こういえば、リルにジト目でダメだと言われてはいおしまい。ちょっと勿体ないけど…ちょっとどころじゃないけど…


「だ、ダメです!そんな事したら歯止めが…あっ!?」


 またも自分の発言が信じられないとばかりに口を押えて驚くリル。いや…うん…ここでそんなセリフが出るとは俺も思ってなかったんだよ…


「し、食事の後片付けをしてまいります!!!」


 そんな言葉を残し、物凄い速さで食器を手にして部屋を出て行った。一度じゃ運べないでしょ?とは突っ込まない。もちろん、残りをすぐに運んでついて行くなんて事も出来ませんね…


「旦那様も、結構意地が悪いですわ」


「いや…まさに、不可抗力なんですけども…」


「二人で揶揄いに」


「行きません!」


「では、二人で燃え上がりますの?」


「燃え上がりません!」


「残念ですわ♪」


「残念ではあるかもな」


 俺は、ため息と共にこの後どうしようと悩むのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


一応きりが良いタイミングなので、次話から少し主人公視点以外の番外編を挟みます。その都合、更新が少し遅れるかもしれませんが…少なくとも4日後には更新する予定です。


次話も宜しくお願いします。

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