第57話「一週間後」
それから一週間後の王政関係者を交えた『魔王』に関しての情報共有という会議の場。
そこには、魔女と思わしき女性が二人いた。
一人は紫の髪を短めにしつつもボリュームのある髪型だが、襟足はスッキリしているために重い印象はなく、落ち着いた雰囲気を感じる。
そして、瞳は橙色で、エヴァンを見つめる。
というより、睨んでいた。
もう一人は、布を目の上に巻き、その上から口まで隠れる黒色の仮面を付けていた。
髪の色は、金色で肩にかかる程の長さだが、毛先は外に跳ねていた。
そして、仮面を付け目隠しをしているのにも関わらずエヴァンをしっかりと捉えて、顔を外さない。
ローブ姿のこの二人の女性に睨まれ、エヴァンはとてつもない居心地の悪さを感じていた。
その居心地の悪さより数時間前。
黙する鴉を早朝に飛び出たエヴァン。
そして、いつものように傭兵馬を借り、王都まで行こうと思い歩みを進めようとしていた。
アヴァン、ヘレナ、ローナへ「行ってきます」と言って、進む背中を珍しくエティカは止めた。
「ま、まって」
先週は、眠気に負けながらも見送っていた姿とは違い、今のエティカは真剣にエヴァンを見つめていた。
珍しく止められたエヴァンは快く立ち止まり、エティカの目線に合わせる。
「うん、どうした?」
当の呼び止めたエティカは、モジモジと。
そして、意を決する。
「こ、これ」
差し出したのは、小さな巾着だった。
「これは?」
「お守りですよ」
ローナが代わりに答えた。
「お守り?」
「はい、先週よりエティカちゃんに教えながら完成した物です」
差し出された巾着を大切に受け取る。
ほんの少しの重さがあった。
「あ、あの……」
受け取ったのを確認したエティカは絶えずモジモジと。クネクネと。
恥ずかしいのだろう。
それでも、白い頬を赤くしながらも。
「きを、つけて、ね」
エヴァンの無事を祈った。
紅色の瞳は真っ直ぐエヴァンを射抜く。
「ああ……。ありがとうな、エティカ」
あまりにも嬉しく、思わず抱き締めたエヴァン。
出会った頃からの骨の感触は無くなっていた。
エティカからのお守りを大事に、そして、エティカ自身をも大切に、抱き締める。
朝の尊いやり取りから数時間後には、女性二人の視線を一身に浴びる事になるとは、この時のエヴァンは思ってもいなかった。
数時間後、エヴァンと二人の女性、ロドルナともう一人。後は王城騎士の数名の集まったテーブルに戻る。




