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第26話「夢ノ一」

 目を覚ますと、湖畔のような泉の中心に出来た、一本の木の下に横たわっていた。

 どれくらい、寝ていたのだろう。

 動くのさえ億劫で、目を開くのさえ難しく思える程、長い眠りについていたようだ。


 どれくらい、寝ていたのだろう。

 父親は、どこに。母親はどこに。

 ようやく目を開く。


 状況は掴めないが、森の中にいた。

 ただ、泉に見覚えはあった。

 中心の木も記憶から引っ張り出してくる。

 長い眠りに埋もれた記憶を掘り起こす。


 ああ、そうだ。

 ここは幻生林だ。

 でも、何故ここに?

 わたしは、父親と母親と一緒にいたはずなのに。

 手を繋いでいたはずなのに。


 今は、誰もいない。

 どうして、一人なのだろう。

 身体をなんとか起こす。


 地面を触った感触が、とても鈍く感じる。

 まるで自分の手が、他人のような感覚になる。

 歩けるのだろうか。

 気だるく、重苦しい身体は少し動かしただけで、悲鳴をあげる。


 これは動かせない。

 自分の身体がまるで他人事のように、重い。

 起きたばかりだからか。

 ずっと寝ていたからだろう。


 寝る前の幻生林とは、形が違うように思えた。

 雰囲気も、獣も。

 泉の周りは澄んだ空気なのに、それ以外は淀んだ空気の感じがした。


「苦戦していますね。それでも起きることは、いい事です」


 誰の声だろう。

 いつの間にか、人がいた。

 先ほどまで、誰もいなかったはず。


 光が眩しく、なかなか声の主を視界に入れる事ができなかったが、聞いた事のある声だった。

 ああ、そうだ。

 魔女様だ。

 あの時の魔女様だ。


「早速ですが、時間もあまりありませんね。私の言葉を信じて、従ってくれますか?」


 両親が信仰し、従ってきた魔女様がそこにいるのだ。

 きっと導いてくれるだろう。

 安堵する。

 一人きりで不安だった世界に、光が差したようだった。

 声の出し方を忘れてしまったか、と焦ったが、声は何とか絞り出せた。


「は…………い」


「いい事です。それでは私の言うことをよく聞いて下さいね」


 そこで、わたしの記憶は断ち切れた。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

これにて、第一章完結となります。

もし、面白いと思ったらブクマ、広告下の評価ポイントを押していただけると歓喜の踊りを披露するかもしれません。

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