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見捨てられた白銀の少女を救いました。この子を幸せにしたいので、魔王討伐やめて平穏な日々を目指します。  作者: 月見里さん
第五章 自由を駆ける鳥【幻生林編】

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第116話「夢ノ五【2】」

 さあ、そんな少年がいて興味津々に観察していたわたしと対照的なのが、この少女でしょう。

 勇往邁進(ゆおうまいしん)と来た彼女の目線の先には、大樹を見上げる少年。

 わたしがある程度の観察を済ませたと同時に、少女は駆け出した。


 わたしを強引に連れ出すよりも勢いよく、素早く、音もなく。

 ドタドタとした足音ではなく、少ない接地面積での走り方。

 それはものの数秒、瞬きする間もなく少年の元に辿りつく。

 その瞬間的に移動した勢いを乗せ、少女は少年の頬を思いっきりぶん殴った。


 少女の腕にまとわりつく空気が(ねじ)れ、先を尖らせながら頬に到達すると同時、圧縮された力が少年に向け弾ける。

 遅れてわたしに聞こえてきた衝撃波は、凄まじい轟音であった。

 とても人間を殴ったとは思えない重厚な音。



 ドゴォッと聞こえた気がした。



 空気が衝撃波で震え、周りの枝葉もガサッと強風に煽られたような揺れ方をし、地響きさえ感じるほどの衝撃が少年を襲う。

 呆気にとられたわたしが、それら全てを認識できたのを不思議に思うものの、なぜ彼女がそんな行動をとったのかが気になった。


 彼が、秘密基地にいたのが気に入らないにしても殴るのは違うだろう。話し合いすらしないの。

 いや、それより彼女を呼び止めなければ。真面目に分析する暇なんてない。



「――――!」



 そう思ったわたしが、声を出そうとする。

 しかし、音にならずただ口をパクパクと開閉するだけに留まる。

 あ、そうだわたしはあの子の名前すら知らない。


 わたしが、打ち上げられた魚のように開口と閉口を繰り返していると。


「誰よあんたっ!!!」


 わたしを呼び出す時の声量よりも大きな、思わず耳を抑えなければいけないほどの爆音が発せられる。

 耳を塞いだはずなのに、キーンと耳鳴りがする。

 どれだけ、大声を出すの。


 蚊帳の外のわたしが、呑気にもそんなことを考えていると頬を殴打された少年は元気に答えた。


「おうっ! 俺はイラミジャア・レイて言うんだっ。よろしくっ」


 そう、太陽の輝きのように笑顔を浮かべた。

 あれ、さっき頭が木っ端微塵になりそうなほど、殴られた少年の頬には傷一つない。腫れてすらいない。

 そんな事がありえるの?


「あらそう! あたしはイラオ。よろしくね」


 あ、イラオという名前なのね。

 それより、殴っておきながらお互い自己紹介をするのは、律儀なのか流れが理解できていないのか、わからないけどわたしはついて行けそうにない。


 なにより、親しげに談笑まで始めた。

 出身はどことか、なんでここに来たのかとか。

 え、さっきまで加害者と被害者みたいな構図だったはずでしょ。なんで、仲良くお話してるの。


 まぁいいか。ここは、仲良くなれそうな二人に任せて退散しよう。

 そして、本を読みに帰ろう。好都合なことにイラオという少女は、イラミジャアの顔を真剣に見つめているし今が好機でしょう。


 早速行動しようとわたしが、抜き足差し足忍び足と後退し始めると。


「本の虫! あんたも来なさい! こいつ面白いわよ!」


 キラキラとした笑顔でわたしを呼び止めた。

 あー……結局逃げられないのだ……。

 後ろ髪を掴まれたようなわたしは、渋々と二人の輪の中に入っていった。

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