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見捨てられた白銀の少女を救いました。この子を幸せにしたいので、魔王討伐やめて平穏な日々を目指します。  作者: 月見里さん
第五章 自由を駆ける鳥【幻生林編】

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第115話「夢ノ五【1】」

 あの怒号を轟かせる少女はほぼ毎日訪れ、わたしを秘密基地へ連れて行くようになった。


 例え、小雨が降っていようと

「ほどよく肌を滴る感覚と一緒に眺める水面はとても幻想的で、時間を切り取ったように美しいのよ」と連れて行き。


 傘を差さなければ、ずぶ濡れになる大雨であっても

「びしょ濡れになった時の視界へ映す新緑の輝きと、命の息吹の香りは、とっても濃厚で青臭いのよ。土の匂いもいいわね。さあ、行くわよ」と強引に連れ出し。


 水をヒタヒタになるほど溜めた桶をひっくり返したような豪雨であっても

「こういう時にこそ、味わえる感覚というのがあるのよ。口を開く度に入ってくる雨の味も、息もできないほどの強風も体感してこそ、命のありがたみと生の実感を得られるのよ」と無茶苦茶な理論と一緒に飛び出した。


 やはり、今思い返してみても彼女はどこかおかしい。

 正常より異常。正気より狂気。そんな彼女に手を引かれ、連れ出された回数を数えることさえ辞めたあたり。

 いつものように、書斎を力強く開け放つ。


「今日も行くわよ! 本の虫!」


「今日も行くの……?」


 彼女が何度も訪れることが分かっていようとも、わたしは身を隠すことはなかった。

 一応、抵抗の意思表示として今までに何度か隠れたりはした。


 本を積み重ねてその下で(ねずみ)のように姿を隠しても、少女は数秒の時間で見つけたし。

 自室のベッドに潜り込んでも、わたしの部屋へまっさきにやって来た。

 トイレに引きこもっても、騒々しいノックをして叩き出してきたし。


 どこに隠れていようとも必ず見つかった。そして、彼女が必ず最初に訪れるのは、わたしのいるところなのだ。

 だから、隠れるなんて無駄なことは辞めて、大人しく書斎で読書をして、連れ出される。

 そんな諦めで(にじ)んだわたしを変わらず、元気溌剌な声で少女は叫ぶ。


「もちろん! 今日は秘密基地の改築よ!」


「えー……昨日改築終了とか言ってなかった……?」


「やっぱり前の方が良かったから戻すのよ!」


 なんとも頭痛が酷くなる思いつきを口にする。

 もし、わたしが働くようになったら彼女みたいな上司の下では絶対働きたくない。

 そんな未来予想図を描いて、注意事項を記入していたわたしは今日も強引に連れて行かれる。


 あぁ、誰か止めてくれないの。

 何度も切実に願った思いは、虚空に消えていく。


 鬱蒼とした木々の隙間を駆け抜けていく。

 何度も、何十回も通り過ぎていく樹木と顔見知りなはずなのに、この林に入るたび顔が違って見えるのは気のせいだろうか。

 どんどん薄暗い道が暗くなっていくような。

 少しずつ明度が下がっていくような。


 まぁ、木も日々成長していくし、伸ばした枝が太陽の光をより吸収できるようにしているだけだろう。

 そうやって納得させる。

 ただ、日の光も届かないと盛り上がった根で、(つまず)きそうになるから最低限の明るさは確保して欲しいけど、と無茶苦茶な要望を願う。


 やはり、わたしもこの少女の影響を受けているのだろうか。

 ……それはいやだな。


 少なくとも、わたしはそんな自分勝手な女の子ではない。

 物静かで、将来的には深窓の令嬢とはいかなくとも、晴耕雨読の日々を過ごすのだから。

 こんな晴れの日も暴れて、雨の日も無謀なことをする少女とは違うのだ。


 そんな少女を後ろから眺める。

 ずんずんと突き進む後ろ姿は勇ましい。髪も揺れているように思う。

 ただ、なぜだろう。後ろから見ていて、とてつもない違和感。

 彼女の髪色はなんだっけ。何度も見たはずで、今も見ているはずなのに、わからなくなってしまった。



◆    ◆    ◆



 時間は突き進み、樹木の隙間を抜けた先、湖畔が見えてきたが今回はいつもと違う場面であった。

 湖畔の中央にそびえる大樹の下、見上げながら立ち尽くす一人の少年がいた。


 わたしたちと同じくらいの背丈。同い年くらいだろうか。

 漆黒の髪は日影の中でも輝いて見えるほど、ツヤがある。

 大樹を見上げる顔立ちは、少し幼いながらも端正がとれて、目鼻立ちがいい。

 少しぷっくりとした頬も柔らかそう。

 そして、新緑の輝きをそのまま瞳に移し替えたような、エメラルドグリーンの瞳が印象的であった。


 なかなか見たこともないし、わたし達の住む街には見ることがない風貌(ふうぼう)の少年。

 地味めな茶色のローブを着ていたが、一番強烈な印象を与えたのは、少年には()()()()()()

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