天地戦争
第二部 天地戦争
序
「今から1000年前。天と地の繋がりはまだ希薄でありました。交流はさほどなく、地上人の中には、天上人を崇める者も畏怖する者もいました。そして、天上人の中にも、地上人を尊敬する者も見下す者もいました。」
「先生。」
「何ですか?ミリア。」
「それが、なんで今は、天上と地上は争っているの?」
「それをこれからお話するのですよ。ミリア。」
周囲から笑い声がこぼれた。ミリアはせっかちだなあ。そんな声も聞こえた。当のミリアという少女は可愛らしくはにかみながら椅子に座りなおした。
「そんな緩やかな時代が何年も続きました。その間、天上人は、神から与えられた力である『アクセスソーリズ』を研究、研鑽し文化を発展させていきました。一方、地上では神から与えられた自然を対象に研究することにより手に入れた科学技術を根底に文化を発展させていきました。」
終業のベルが鳴った。
「さあ、今日はここまでです。みなさんごきげんよう。」
天の学校クラシュナトラ
ミリアは今年14歳になる。
「ただいま。」
「おかえり。ミリア。」
彼女の母、クラリスは天上世界の学校クラシュナトラの教師をしている。
「ミリア。いつも、話は最後まで聞くように言っているでしょう。」
「だって、お母さんのお話、おもしろいんだもん。早く先を聞きたいの。」
今日、クラシュナトラでミリアに歴史を教えていたのは、クラリスであった。クラリスの担当は歴史である。
「ミリアは歴史が好きなのね。」
「うん。物語は大好き。」
「でも、ちゃんと計算や読み書きも勉強するのよ。」
「うん。」
ミリアは二階へ上がっていった。屋根裏の小さな空間がミリアの部屋になっている。ベッドに転がると傍にあった小さな本を開く。『天地物語』と書かれた一冊は、この天上世界と地上世界の成り立ちをまとめた本である。中身としては、地上の大学生が読む程度の内容であった。著者は「ナギスト=セルマ、クラリス=セルマ。」とある。ミリアの父と母であった。
「ただいま。」
「おかえりなさい。ナギスト。」
ミリアの父、ナギストは天上世界の歴史・文化研究所フロストアベスターの所長をしている。
「軍にまた研究費を削減されそうだよ。」
「そうなの…。」
天上世界にはいくつかの国に分かれている。ミリアの住むセレスト=ナギウム王国はそのひとつである。現国王セレスト=ナギウム14世の統治下の国は今、地上世界と交戦中であった。セレスト=ナギウム王国だけではなく、天上世界のほぼすべての国が地上世界と交戦している。地上連合国軍と天上連合国軍の戦争であった。天上人も地上人もこの戦争を「天地戦争」と呼んでいた。
「地上との講和は進まないのかしら。」
クラリスがスープをよそいながら言った。
「地上人たちはあくまで、天上世界を滅ぼすつもりのようだ。」
アクセスソーリズ
天上人に備わった特殊能力。それをセレスト=ナギウムに住む天上人たちは『アクセスソーリズ』と呼んでいる。
「カルドレスト帝国軍総司令官グラバー提督はどちらにおられますか?」
受付の青年が対応すると、しばらくして、軍服に勲章を着けた一人の軍人がやってきた。地上世界のカルドレスト帝国軍人グラバー提督だった。
「待ちくたびれたぞ。サラバン少将。」
マルストテリア共和国連邦軍軍政部長。それがサラバン少将の肩書である。
サラバンはグラバー提督に案内されて、機密保持室へ入った。8ミリ映写機が天地戦争の一部始終を写し出している。
「掛けたまえ。」
「失礼。」
室内には、グラバー提督、サラバンの他に二、三人いるが、室内が暗くて顔は見えない。誰も各国軍代表の偉い人だろう。
「『天地戦争』も、今年で100年を迎える。」
グラバー提督が口火を切る。
「私の祖父マグナス=グラバー大佐は、シュトラーハウゼンの戦いで命を落とした。」
「…。」
「…。」
他の人間は黙ってグラバーの話を聞いている。
「それも、これも彼ら天上人の持つ魔法の力による。」
『アクセスソーリズ』のことである。地上世界では、それらの名称は一定しない。「魔法」、「特殊能力」、「魔術」etc.どれもが地上人にとって、未知なる力を表していた。
「彼ら天上人は何もないところから炎を風を水を兵を出す。」
「…。」
サラバンも黙っている。
「これら『魔法』への対策を出さずして、天地戦争の勝利はあり得ない。サラバン少将。」
「はい。」
サラバンは持ってきた映写機のテープを差し替えた。
「こちらはわが共和国の物理学者ノビス=ギリマム博士の研究報告です。」
そのテープには天上軍の捕虜を使った醜悪で残酷極まりない映像が写し出されている。
「それらの結果、わが国が出した結論としては、天上人の『魔法』は、すべて自然界の物質に干渉し、現象を操作するものであるということです。」
「そんなことは分かっている。それをどうやって防ぐかが分からないのだ。」
観客の一人が言った。
「まあ、先をお急ぎなされませんように。」
「…。」
「そのようなことから、天上人の『魔法』は我々、地上の科学技術と何ら変わることはありません。科学技術も、物質の化学反応を使って炎を出し、水を凍らせているからです。」
「…。」
「科学には背景や法則があります。そして、天上人の『魔法』も然り。」
「サラバン少将、結論を急いではくれまいか。我々は決して暇な身分ではないのでな。」
観客の一人が言う。
「失礼。では、改めて。彼らの『魔法』の根源。それは『生命力』です。」
「生命力だと?」
グラバー提督が口を開いた。
「はい。彼ら天上人は、生命活動とは別の余剰分のエネルギーを体に秘めています。それは、身長や体重と同じく個人によって異なります。よって、どの程度の『魔法』が使えるかは、天上人個人によるわけです。」
「ふむ。」
「そこで、彼ら天上人は、国民の中で、その生命エネルギーがより大きな者を選んで軍人に取り上げていると思われます。」
「なるほど。」
「では、軍人以外の天上人。それはどういう人間かお分かりですね。」
「ほとんど『魔法』が使えないか、あるいは使えてもたいしたことはないというわけか。」
「ご名答。」
「となると、やることはひとつだな。」
グラバー提督が立ち上がった。
「それについて、我が国で、布石はもう準備してあります。」
サラバン少将も立ち上がった。
国王セレスト=ナギウム14世
「国王陛下。兵士隊長様がお見えです。」
国王セレスト=ナギウム14世。彼は祖父であるセレスト=ナギウム12世の統治時代から地上との戦争を受け継いでいた。
「どうした。ツバルス兵士隊長。」
「地上のカルドレスト帝国軍が軍備を結集している模様です。」
「天から見たのか。」
「地下格納庫に運び込まれていく飛行艇を地上監視員が確認しました。」
「近々、天上へ攻めて来ると。」
「おそらくは。なので、こちらから先制攻撃を仕掛けるべきかと。」
「先制攻撃は祖父の代から続く御法度だ。」
「しかし…。」
「天上、いやこのセレスト=ナギウム王国は国民の保護に務める。それが国王である私の意志である。」
「はっ…。」
「防空準備を厳重にせよ。」
「承知しました。」
セレスト=ナギウム王国軍兵士隊長ツバルスは下がった。
「隊長。具申は受け入れられましたか?」
「だめだったよ。」
「地上軍の攻撃は激しさを増すばかりです。防衛に徹するだけでは、これ以上、防ぎようがないかと。」
「ツゥルス参謀。」
「はい。」
「いまだ、天上軍の優位は変わらない。それはいらぬ心配だよ。」
「現状を一番お分かりなのは兵士隊長かと。」
「私に国王を裏切れというのか…。」
「ご決断を…。」
レクリエイターの一族
「ありがとうございました。」
クラシュナトラの授業が終わった。ミリアはそのまま遊びに出かける。
「ただいま戻りました。」
「おかえり。クラリス。」
今日は、ナギストの仕事は休みだった。軍が臨時対地上防空演習をするということで、フロストアベスターは一日閉鎖となった。
「ナギスト。今日、クラシュナトラで『アクセスソーリズ』の測定があったの。」
『アクセスソーリズ』の測定は、セレスト=ナギウム12世の統治下から始まった。子どもたちに宿る潜在生命エネルギーを測定することによって、高等な生命エネルギーの保有者は優先的に軍兵士学校に進学させる制度になっている。
「ミリアのアクセスソーリズ測定値よ。」
クラリスは一枚の紙を差し出した。結論から言うと、ミリアのアクセスソーリズつまり潜在生命エネルギーは規格外の量であった。
「ミリアのは、私が調べたから、他の先生たちには知られずにすんだわ。」
「やはりミリアは、本当にレクリエイターの生き残りだったんだ。」
実は、ミリアはクラリスとナギストの本当の子どもではなかった。二人の間に子どもはいなかった。ある夜、クラリスが路地を歩いていると、一人の女性に出会った。その女性の腕には赤子が抱かれていた。
「私は軍に追われているのです。どうかこの子だけは助けて下さい。」
女性はクラリスに赤子を渡すと、急いで走っていった。あとには軍兵士が、彼女を追って行く姿が見えた。その赤子の左腕には、六文字からなる言霊の刻印があった。
「あの刻印はレクリエイターの一族のもので間違いなかった。」
レクリエイターの一族。古代から天上世界に存在したという一族。彼らは莫大な生命エネルギーを保有し、一子相伝の禁術を伝えているという。その禁術を受け継いだ者の左腕には、禁術を発動させる六文字の言霊が刻まれているという。天地戦争が始まって以来、世界を書き換えるとまで言われた禁術を秘めるレクリエイターの一族は天上世界の国軍から追われていた。
「このことが王国軍に知られたら、きっとミリアは戦争に利用されることになるぞ。」
「そんなことはさせないわ。」
「ああ。これは僕と君だけの秘密だ。」
少年イスパ
セレスト=ナギウム王国の街から離れた森の奥にカルドレスト帝国軍の一人乗り小型飛行機が着陸した。中からは一人の少年が降りて来た。少年の名前はイスパ。背には鞄を背負っている。小型飛行機を木々で擬態させると、少し離れた木陰でイスパは鞄を開けた。中身は通信機である。モールス信号を打つ。カルドレスト帝国軍諜報部通信科一兵。それが今年15歳になるイスパの肩書であった。
「これが天上の国…。」
初めてみる天上世界は不思議な感じだった。カルドレスト共和国では天上人は地上人の敵であると明言されていた。その理由はイスパにはいまいち分からない。とりあえず、天上人は地上人の敵であるらしい。しかし、イスパには、そんなことよりも、見たこともない世界に対する好奇心の方が勝っていた。イスパは孤児だった。親に捨てられたのか、親が死んだのかは分からない。物心ついたときには、カルドレスト帝国の首都コッペンの孤児院にいた。院長のマザー=ヘルマは優しい人だった。幼い頃からイスパは好奇心の強い子だった。よく一人で街へ出掛けて迷子になって戻ってきた。そんな子だったので、初等科を終えると軍に志願した。知らない世界をこの目で見たかったからだった。マザー=ヘルマは反対したが、イスパは聞かなかった。
「楽しみだな。」
イスパの任務はスパイであった。1週間後、カルドレスト帝国軍は、セレスト=ナギウム王国に少数精鋭部隊による奇襲攻撃を仕掛ける予定になっている。その他の天上の国に対しても、それぞれの地上国軍が同時刻に同じような奇襲を仕掛ける。地上連合国軍の最高指揮司令官はサラバン少将であった。それまでに各天上国の施設配置や部隊配置の偵察にスパイが放たれたのだった。天上人の服に着替えるとイスパはセレスト=ナギウム王国の街に向かった。
ミリアとイスパ
セレスト=ナギウム王国の街は、イスパにとって見るもの聞くもの初めてであった。地上の人間と天上の人間は見た目は変わらない。しかし、それぞれの国の建物や服装などは発展した文化が違うからだろうか異なっている。イスパはあらゆるものをノートにメモして歩いた。
「うわ!」
「ごめんなさい!」
誰かにぶつかってしまった。ミリアだった。
「僕がよそ見をしていたからだ。怪我はないかい。」
「ううん。あなたこそ大丈夫。」
イスパに天上人への偏見はなかった。彼は好奇の目でミリアを見た。
「君はこの街の子?」
「そうよ。ミリア。ミリア=セルマ。」
「ミリア。僕はイスパ。」
二人はすぐに仲良くなった。
「イスパはどこから来たの?」
「えっと…遠いところだよ。」
「他の国から来たのかな。」
「そんなところだね。それよりミリア、あれは何だい?」
「あれは王宮よ。国王様が住んでるの、あと兵士の人たちも。お母さんからは近づいちゃいけないって言われてるわ。」
「ふうん。」
イスパはノートにメモした。
「じゃあね。ミリア。ねえ、また明日もいろいろ教えてくれるかい?」
「いいわよ。イスパ。」
ミリアはクラリスとナギストの待つ家へと戻り、イスパは小型飛行機が置いてある森へと帰って行った。
「ただいま。」
「おかえり。ミリア。」
「ねえ。お母さん。今日、新しいお友達に会ったの。イスパって言うの。」
「聞かない名前だけど、どこの子かしら。」
「遠くから来たって言ってたよ。」
「そうなの。」
クラシュナトラの教師をしているクラリスは、この街の子どものことならだいたいは見当がつくはずだった。しかし、新しい友達と会えてうれしそうなミリアの笑顔の前に小さな疑問は消えていった。
クーデター
「陽動作戦は順調か。」
カルドレスト帝国軍総司令官グラバー提督は軍部隊を視察していた。地上連合国軍による天上国への奇襲は3日後に迫っている。天上国への奇襲攻撃は帝国軍の少数精鋭部隊が行う。グラバー提督指揮のカルドレスト帝国軍は天上国セレスト=ナギウム王国軍の大規模な陽動作戦を実施する。天上国軍を王国から遠くに引き離しておくのである。
「グラバー提督。急報です。」
「なんだ。」
「天上国に放っておいたスパイからの通信によれば、天上国にクーデターが起こったそうです。
「血迷ったか!ツバルス!」
「もはや、防衛に徹しているだけでは、戦争は終わりません。」
セレスト=ナギウム王国軍兵士隊長ツバルスの部下たちがセレスト=ナギウム14世を捕縛している。ツバルスの横にはセレスト=ナギウム王国軍参謀ツゥルスの姿がある。
「ツゥルス。貴様の差し金か!」
「国王よ。12世から続く統治方法ではもはや王国は成り立ちません。ならば、クーデターを起こし、政変を促すしかありません。」
「何を言うか!国民が許すと思うか。」
「国民に軍を許す力はありません。軍に優先的に力を与えたのはあなたの祖父であるセレスト=ナギウム12世ですよ。」
「ふざけるな!」
「あなたには退位してもらい、次の元首はツバルス兵士隊長に就いてもらいます。」
サラバン奇襲戦
セレスト=ナギウム王国は滅んだ。そして、新たに軍主導による政体ツバルス元首国が成立した。街は戒厳令下となった。ツバルス元首国の天地戦争方針は積極的攻勢であった。参謀ツゥルスによる軍の再編成が行われた。
「ツゥルス参謀。」
「地上軍の出撃先は分かったか。」
「はい。ここから西に30マイル程離れた湖畔に集結しています。」
「我々が進撃することはないと思い油断しているな。ツバルス元首。進撃は今をおいてありません。」
ツバルスは全軍に出撃の指示を出した。
「グラバー提督。」
「天上軍の動向は分かったか。」
「偵察機の報告ではこちらに向かって大規模艦隊が侵攻中とあります。」
「めずらしい。やつら打って出たか。全軍に防衛態勢をとらせろ。」
地上歴1303年。天上歴2056年。13:36。後に、その最高指揮司令官の名前をとって、サラバンの奇襲戦と呼ばれる戦いが始まった。
カルドレスト帝国軍諜報部通信科一兵イスパは、実はこの奇襲作戦のことは知らされていなかった。秘密保持のために一兵士の命は顧みられなかった。ただ、偵察任務は1週間だけと決められていた。ツバルス元首国はカルドレスト帝国軍精鋭部隊の攻撃に成す術はなかった。街にいたのは力を持たない一般人だった。
「ミリア!どこにいるの!」
自分の知らせた情報が街の人々を虐げる助けをしていたことに気づいたとき、イスパはミリアの姿を探した。
「歯向かう者は殺せ。他の天上人は捕虜にしろ!」
街は炎と煙に巻かれている。あの見るもの聞くもの初めてで、美しかった街が、今、自分の知らせた情報のせいで破壊されていく。それは15歳の少年には重すぎる現実だった。そのなかで、彼はミリアを探した。せめてミリアだけは破壊させないように。
「ミリア!」
「イスパ!」
ミリア、ナギスト、クラリスの姿があった。皆、泥や血にまみれている。
「どうなってるの?何が起きたの!」
ミリアは混乱しているようだった。
「君がミリアの友達のイスパか…。」
ナギストが言った。イスパはカルドレスト帝国軍の軍服を着ていた。ナギストとクラリスはすべてを悟った。そして、その中でミリアを助けようと炎と煙の中を駆けてきた少年イスパのことも。
「僕の本当の名前はカルドレスト帝国軍諜報部通信科一兵スバルと言います。」
スバルは頭を下げた。
「ミリアの父のナギストと母のクラリスだ。」
クラリスはスバルを見てにこっと微笑んだ。そして、膝をつき、ミリアをぎゅっと抱きしめた。
「天上人がいたぞ!」
カルドレスト帝国軍の兵士が気づいたようだった。
「娘を、ミリアをよろしく頼むよ。」
「ミリア。幸せにね。ミリアの母親で幸せだったわ。」
「父さんもだ。ミリア。さあ行くんだ!」
スバルは泣き叫ぶミリアを連れて逃げた。遠くからは銃声がした。
終
その後のことは覚えていない。泣き叫ぶミリアをなんとか森まで連れて行き、一人乗りの小型飛行機に無理やり乗せて飛び立った。それから、スバルとミリアの姿を見た者はいなかった。
「天上国の占拠が完了しました。」
「分かった。」
カルドレスト帝国軍の損害もひどかった。しかし、戻る国を失ってしまったツバルスとツゥルスの艦隊は混乱に陥った。戦況は一変した。同時刻、その他の国々でも、奇襲作戦が成功していた。天地戦争はひとつの山を越えた。それから20年後、天地戦争は天上人の降伏によって幕を閉じることになる。グラバー提督は戦争の集結を見ることはなかった。彼はこのサラバン奇襲作戦で撤退間際のツバルスによって命を落とすことになる。しかし、このときはまだ、そのことを彼は知らない。
「グラバー提督。」
「なんだ。」
「天上国に潜伏させていたスパイの一兵士の行方が分からないようです。」
「そんな一兵士の命、死のうが生きようが知ったことではない。」
天上では一筋の飛行機雲が空を流れていた。