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魔法少女、再臨  作者: 音無ミュウト
第一章-a
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【2010年9月28日-03】

 走って自宅へと向かいます。パパは毎日アタシの寝顔を見てから眠るそうなので、部屋にアタシがいないと、怪しんでしまうかもしれません!


と、そこで。玄関前に、一人の男性がきょろきょろと周りを見渡す姿が見えました。


まだ若さを残した、カッコいい男の人。


 アタシの大好きな、自慢なパパです。



「っ、遥香っ!」



 パパは、急いでいたので姿を隠そうとしなかったアタシを見つけると、すぐに駆け寄って来ました。ベネットは急いで物陰に隠れてくれましたので、アタシは隠れません。



「一体、どこ行っていたんだッ!」


「ご、ごめんなさい、パパ」


「心配したじゃないか! こんなに夜遅くに、女の子がたった一人で出歩くなんてっ」



 目いっぱいアタシに怒ったパパ。ここまで大声を出すパパを見たのは、生まれて初めてです。いつもニコニコと笑顔をアタシに向けてくれるパパが、どうして今日に限って――



「……心配、したじゃないか……っ」



 アタシの目の前で。パパは、大粒の涙を流しながら、ギュッと……ギュッと、アタシの身体を、強く抱きしめてきました。



「遥香がいなくて……パパは、本当に心配したんだぞ?」


「……ごめんなさい」


「許さない、許すもんか。こんなにパパを心配させる遥香は、本当に悪い子だ」


「ごめん、なさい……っ」



 アタシの事を心配したパパの泣き声に、アタシもつい、涙を流してしまいます。


パパは涙を拭いつつ、アタシの手を引いて、部屋へとエスコートしてくれました。


 アタシは、パジャマに着替えて、自分のベットに横たわります。パパは、ベッドの隣に座り込んで、アタシの頭を優しく、撫でてくれるのです。



「何をしていたんだい?」



 先ほどまでの怒りはどこに行ったのか、パパは微笑みながら聞いてくれました。しかし本当の事は言えません。なので少しだけ、ウソをつく事にします。ごめんね、パパ。



「……お友達と、会ってたの」


「お……男の子かいっ!?」


「? ううん、ちがうよ。女の子」


「あー、そうか。……良かった。男の子だったら、パパはまた怒ってた所だ」


「どうして男の子だったら怒るの?」


「それはね、遥香がパパの娘で、パパが遥香のパパだからだよ」


「……パパ、説明になってないよ?」


「パパは遥香みたいに賢くないからね。――で、こんな夜遅くにお友達と会って、何をしていたんだい?」



 アタシはそこで、掛け布団を顔に被せて、表情を見られないように、パパへお話します。



「ケンカ、しちゃった。『一緒にいられない』って、言っちゃった」


「……そっか。それは、何か理由があるの?」


「その子ね、アタシの事を『必要ない』って言ったんだもん。だから、アタシもムキになっちゃった」


「遥香はその子と、お友達になりたい?」


「なりたいって思う。けど、アタシの事を必要ないって言う子と、どうやってお友達になったらいいか、分かんないし、そもそもお友達にならないといけないのか、わかんなくて」



 魔法少女として、アタシはこれからも戦い続けたいと思います。


そして、危険な事であるのなら、アタシは弥生ちゃんと一緒に戦う事で、お互いに守り合う友達になりたいとは思うんです。


けれど、弥生ちゃんはアタシを拒否します。


一人で大丈夫、貴女は必要ないと――そうして心を閉ざす子と、どうやったら友達になれるのでしょうか? なるべきなのでしょうか?



「パパはね、遥香の三倍位生きているけど、これまで生きてきて、友達にならなかった人はいっぱいいる。そりゃあ話しかけられれば返すけれど、友達と言うには少し関係が浅い人が沢山いた」


「パパはその人たちと、お友達になりたかった?」


「いいや。女の子がどうかは分からないけれど、パパは本当に好きな人とだけ、友達になったんだ。親友って、そう言いたいと思える人とだけ、友達になった」


「どうして?」


「その人と友達になりたかったからだよ」



 思わず掛け布団から顔を出して、首を傾げてしまいます。



「それは、答えなのかな」


「答えだよ。友達になりたいって気持ちにウソついちゃ、絶対にダメだ。逆に言うとね、友達になりたいって思わなかったら、友達になる必要は無いと思う」


「じゃあ、友達になりたいって思った子に、拒否されちゃったら?」


「嫌われていない限り、パパは友達になれるように努力した。好きな人に好きになってもらえるように、自分の気持ちを伝え続けた。それが、友達となる為の近道だから」


「嫌われちゃったら、どうするの?」


「その時は、嫌がらせになっちゃうからね、パパも諦める。――でも、パパは今まで、そうやって努力して、友達になれなかった子は、一人もいなかった」



 諦めが悪いから、皆そんなパパと仲良くしてくれた、と。明るく笑ってくれました。



「だから遥香も、その子と友達になりたいなら、諦めちゃダメだ。嫌われるまでしつこく食い下がって、自分の気持ちを、正直にぶつけてごらん。何よりまずは、話す事、だよ」



 グシャグシャと髪の毛に遠慮なく頭を撫でるパパに笑いながら――アタシは、コクンと小さく頷きました。



「頑張ってみるね」


「うん。遥香はパパとママの子なんだから、諦め悪くて当然さ」



 おやすみ、と。頬に軽くチューをしたパパが、アタシの部屋を出ていきます。


パパが居なくなると、アタシはゆっくり目を閉じて、今日は大人しく眠りに就きました。

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