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魔法少女、再臨  作者: 音無ミュウト
第二章-b

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【2018年9月17日-09】

 胸に手を当て、自分のこれまでを振り返る弥生に、誰も声はかけなかった。


男の言う通り、弥生は若く、これから将来に向けて選べる選択肢は多い筈だ。


しかし彼女は元々学校に通う事もなければ、そう出来る環境ですらなかった。


何度か四九の任務で学校に通った事があっても、その度に同年代の子供たちとはズレている感覚を思い知らされ、結局こうした場所が自分に似合っているのだと、視界を狭めていたのかもしれない。



(……遥香なら、こう言う場合、なんて結論を出すのかな)



 水瀬遥香。


自分にただ一人、普通の女の子として、友達として接してくれた少女。


もう六年近く会っていなくて、でもレックスのいないあの秋音市で平和に暮らしている筈の少女を思い出し、ギュッとコンバットスーツを強く握る。


そんな時だった。



 何か――空を切るような音が聞こえた。



ウェストがハッと顔を上げて荷台にあった支給品のライフルとリュックサックを掴むと、運転手に向けて叫ぶ。



「RPG――ッ!!」



 彼女の声に合わせて、先頭を走る一台が今、横っ腹に何かが着弾し、盛大に爆ぜた。


急停止をかける残り三台。率先して車から身を乗り出した者達が安全確認をとする前に、どこからか銃弾が撃たれ、次々に死んでいく。


助手席から機関銃を撃つ為に上部口へ昇った男も、今頭を撃たれて絶命。弥生たちは乗り込んでいる装甲車の扉を壁にしつつ強引に身を乗り出し、銃弾の着弾位置などから左方は人が少ないと認識。


元銀行強盗の男が率先して前に出て、ライフルから銃弾をばら撒いていく。しかし今先頭から二番目の装甲車に向けて放たれたRPG(携帯対戦車擲弾発射器)の射出場所を確認し、指で示した瞬間、どこからか放たれた銃弾を脳に受け、ブルリと身体を震わせながら、死亡した。



「スナイパーッ!!」



 同行していた若い男が叫ぶ。スナイパーのおおよその位置を、叫び声と共に示し、殺されるなという叫びであるが、しかし銃弾飛び交う戦場においては、その叫びが聞こえたのは弥生とウェストのみ。


そんな二者は、岩陰に何とか身を隠す事に成功したが、しかし味方が皆戦っている状況で自分達だけが何もしないわけにもいかないと、銃を掴もうとする弥生を、何とかウェストが止める。



「待ってください弥生! 敵は総計二十名以上、こちらは残り数人です! ただ殺されるだけですっ」


「でもウェスト、このままじゃ皆、それこそただ殺される」


「ッ!」



 今、どこからか跳弾してきた銃弾がウェストの頭と、若い男の頭に当たる。

 

 それによって絶命した彼へ手を伸ばそうとする弥生を押さえつけ、彼女を岩陰と自分で抱え、銃弾が当たらぬように守るウェスト。


マジカリング・デバイスである彼女は、通常銃弾で殺される事は無い。しかし銃弾の雨に晒されて、それを受け続け、死なないわけでもない。


岩陰に弥生を隠しつつ、自分の身体を盾にする事で弥生を銃弾から守るウェストだったが、今残りの装甲車が撃たれ、爆散した光景を見届けて、やがて隠れていられなくなるというのは自明の理である。



「……弥生、変身なさい!」


「で、でもウェスト……っ」


「貴女はこんな所で死ぬわけにはいかない! あの二人も言っていたでしょう。貴女は若く、他にどんな道だって選べる。死ななければ、そうした未来へ進む事も出来る。私の様なマジカリング・デバイスに出来ない事を、人間はどれだけでも出来るんです」


「でも、でも、ウェストの力で、人を殺す事になるんだよ。私が自分の銃で殺すのは別にいい。でもウェストの力を使うのは、本来レックスを倒す時だけの筈。人を殺してしまったら、ウェストは人殺しの道具になっちゃう」


「道具はどうあれ、使う人によって左右されます。人に料理を振舞う為の包丁だって人を殺める凶器となり得る。けれどそうする事によって助かる命があるのならば、そうして助かる事を優先なさい。――私は、大丈夫です。私はただの道具ですから、マジカリング・デバイスですから、私の事など考えず、ただ自分が生き残る事を優先しなさい!」


「でも……でも……っ」



 突然の状況に、突然訪れた死の恐怖に、彼女はただ恐怖する。


これまで、彼女は多くの作戦に参加してきたが、大抵の場合、彼女はただいるだけ、もしくは人を、物を壊す時でさえ、自分の力だけで物事を成してきた。


けれど、今回はそうじゃない。そうであればただ死ぬだけだと、彼女も理解している。


――ウェストの力を借り、変身し、敵を殲滅しなければ、自分が殺されるだけだと、理解している。


けれど、理解したくなかった。


大切な、姉の様に思っているウェストの力を、人殺しに利用しなければ生き残れない等と、理解したくなかったのだ。



「お願いです。貴女は生きて下さい。私が何よりも大切に思っている、如月弥生と言う一人の女の子は、こんな所で死んでいい筈はないのです」



 今、数人の男たちが沈黙する装甲車に近づき、生き残りがいないかを確かめている。


そんな中、数人がウェストの存在に気付き、銃弾を浴びせるように銃口を向け、トリガーを引く。


背中に銃弾を受け続けるウェスト。彼女が身悶えながら「早くっ」と叫ぶ事によって。


 弥生は、考える事が出来なくなった。



「ぅ――ぅうううううッ!!」



 呻き、涙を流しながら、彼女は今ウェストの胸に手を当て、叫ぶ。



「変身――っ!!」



 放たれた光に、敵は一瞬だけ銃口を空に向けた。誤射防止の為であるが、しかし彼らがこれから敗北する理由は、その時に銃弾の雨を止ませた事に他ならない。


変身を終えた弥生――魔法少女、マジカル・リチャードは、地を蹴って空を跳んだ。


一瞬で姿を見失った男たちがキョロキョロと、中には通信機へ声を吹きかけどこへ消えたか確認を取ろうとしている状況で、リチャードは涙を拭う事なく、攻撃オプションを選択。



「ファースト・ブラスト……っ!」

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