脱獄生活1日目 前
目を覚ますと辺りはまだ暗かった。
昨日は早くに寝たはずだが疲れがあまり取れてない。
恐らくこのカチカチのベッドのせいだ。
いくら刑務所のベッドだとはいえ犯罪者に与えるベッドなどこんな粗末なベッドで十分なのだろう。
むしろ布団があるだけありがたいと思うべきだ。
俺は起き上がると部屋の反対側で寝てる時雨に目をやる。
時雨は気持ちよさそうに寝息をたてながら寝ている。
こいつの布団だけふかふかなのでは?思うくらい幸せそうな顔をしている。
この場にいない残りの2人は隣の部屋で寝ているらしい。
とりあえず昨日看守長が説明してくれた事や1日の流れを思い出す。
看守によるとこの刑務所内では盗賊用の特殊な結界により便利な盗賊スキルが使用できなくなっているらしい。
1日の大体の流れはこうだ。
朝6時に朝ご飯が配られる。
それからしばらくしたら運動場での自由時間。
それが終われば食堂で夜ご飯。
ご飯を食べたら刑務作業。
の流れになっている。
お昼ご飯が無いのは納得がいかないがそのかわり夜ご飯は食べ放題形式らしい。
今から夜ご飯が楽しみだ。
どんなものが並ぶのかな?
「やぁ、おはよう」
夕ご飯の事を考えている間に時雨が起きてきたらしい。
起きてきた時雨としばらく雑談をしていると、看守長が俺たちの房がある二階へとやってきた。
「おはよう諸君。私は今日から君たちを担当する事になったものだ。俺のことは看守と呼んでくれ。よろしくな」
とても明るくはっきりとした口調の看守は初対面でなかなかの好印象を与えてくる。
「では早速君たちの朝ご飯だ。栄養バランスがしっかりと考えられているからしっかりと全部食べろよ?」
朝食の献立を自慢げに言いながら看守は俺たちに朝ご飯を配る。
見ると確かに栄養のありそうな献立だ。
てっきり刑務所だから臭う朝ご飯だろうとあまり期待していなかったから正直嬉しい。
よくよく考えれば夜ご飯が食べ放題形式なのだから食にはお金をかけているのかもしれない。
そんな事考えながら朝食を取る。
「うまい」
思わず声が出てしまった。
それほど美味しかったのだ。
俺たちは義賊をやってるだけあって自分たちにあまりお金をかけてこなかった。
なのでこんな料理は感動を覚えてしまう。
時雨も幸せそうに食べている。
こいつを見ているとなんだか幸せになってきそうだ。
俺たちが朝食を食べ終えるとすぐに看守がやってきた。
「やぁ諸君。今日は普段のスケジュールとは違ってこの刑務所の施設を紹介しよう。さぁでたまえ」
看守は今日の予定を言いながら房の扉を開ける。
俺たちは房から出ると隣の房の扉の前には正志と稔がいた。
「2人ともおはよう。よく寝れたかい?僕はあまり寝れなかったよ。あの硬い布団に慣れるには時間がかからだろうなぁ」
正志が軽くストレッチをしながら言ってくる。
やはり稔もあの布団はあまり好きではないらしい。
「おはよう。俺もあまり寝ててないよ。慣れるには時間が必要だね、でもそんな事より...」
正志に同情しながら俺は言葉を続ける。
「そんなことよりなんでお前はびしょびしょなの?」
俺の前には何故かびしょびしょに濡れてる正志がいる。
「あぁ、正志なら朝トイレで体があってたんすよ」
「なんだ。そんなことか」
と、いつもの出来事なので稔の返答を軽く流す。
「⁉︎ さ、さぁ諸君案内するからついてきたまえ。それと風呂は週にに一回だからな。あまり汚れるなよ?」
看守は顔を引きつらせながらしれっととんでもないことを口にした。
「おい!看守!週に一回ってどうゆう事だよ!」
「そうっすよ!時雨の言う通りっす!ただでさえトイレの中で泳ぐやつと一緒にいるんす!3日後にはどうにかなっちまいそうっすよ!」
時雨と稔が抗議する。
しかしそんな抗議も虚しくスルーされた。
「では、紹介しよう。この目の前の建物は職員棟だ。」
房がある建物の外に出ると目の前には房とは比べものにならないほど綺麗な建物があったり左手側に少しすすむと大きな広場がある。
おそらくあれは運動場だろう。
「普段諸君がここに来る事がないと思うが、怪我などしたらこの棟にある医療室に運ばれるようになっている。他には書類を管理する部屋だったり囚人たちから没収した荷物管理室などもある」
看守は職員棟にある施設を紹介してくれた。
「では次。運動場へ行こうーーーー」
ーーーーこうして俺たちは大体の施設の案内をしてもらった。
「さぁ諸君、腹も空いてきただろう。食堂へ移動しようか」
一通り施設の案内が終わると食堂へ向かう。
1日目が思ったより長くなりそうなので2回に分けたいと思います。