救出作戦開始
深夜を助けるとなると、まず探さないといけないのはあいつが連れて行かれた場所だった。
「ワルプルギスの夜がこの辺りで起こる以上、日本国内。それも遠くには連れ出されていないだろう」
清十郎の推論はおそらく正しい。
わざわざ小角が動いたことを考えてもこの街か、この近辺のどこかにいるのは間違いないと思われた。
それに深夜の能力を抑えるために、霊的な力が強い建物に隔離するという条件がある。
この街で神社や寺のような神聖な場所以外で、俺んちより霊的に強い建物はそうはない。
街中のそういう施設ももちろん探したが見つからなかった。
「やっぱり郊外かな」
「そうだろうな。俺の知らない飛輪の施設が街中に密かにあったとか、そういうのでなければだが」
月雲と推論し合う。
「それなら八代のお父さん知らないかな? ずっと帰ってきていないけど、式神なら家にいるんでしょ?」
「どうかな。最初はまちがいなく知らなかっただろうが、今はどうなっているか。私情を挟みまくるやつだが、立場上知っていても教えてくれねえだろう。それどころか敵になるかもしれねえ」
「お父さんを巻き込みたくないんだね」
「……あいつがどうなったって知るか」
くすくすと月雲は意味ありげに笑った。
なんだよ、その目は。
……ま、伊緒里と千春にはまだ父親だろうさ。
頼らないと決めた以上は自分でなんとかするしかない。
陰陽師の術、風水と方位の流れを占いで探し、良い気の集まる場所を大まかに予測をたてる。
霊的に強い土地は陽気が集まるところと相場が決まっているからだ。
この辺りの地図や飛輪の資料とにらめっこしては、気の集まる場所に式神を飛ばした。
俺は小角のように自分を模して授業を受けさせたりだとか、器用なことをさせることはできない。
その代わりただ情報を届ける、情報を調べてくるという連絡・調査の一点に限れば式神の発動距離はそれこそ北は北海道から南は沖縄まで可能だ。
出来ることが少ない分、数を使役することも出来る。
そんなわけで調査を続けていたら、郊外の山ん中で時々飛輪が使っているらしい用途不明の古い洋館を発見した。
式神を特に念入りに飛ばして探ってみたら、外はぼろいが中はどうやら人がいる気配があること。最近車が入ってきた形跡があること。何より内部には式神が入っていけない結界が張ってあったことからそこだとあたりをつけた。
夜、俺たちは鬼を退治すると見せかけて合流する。
飛輪から深夜を助け出すと決めて三日目の夜だった。